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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
5章 貴族への階段(190話~255話)
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護衛役マナの1日

今回はちょっと視点を変えて…


私の名前はマナ。今だとアイリーシア家に所属しているので、マナ・アイリーシアがフルネーム。


以前は多くの者が過ごす日常生活の裏で、この連合に巣くう存在不要なゴミたちを処理する掃除屋だったんだけど

今仕えている師匠に出会ってから日常が劇的に変わっちゃった。


掃除屋ってこの世界に必要な仕事なのはわかっていたんだけど、同時に、何かあった時は簡単に切り捨てられる存在だということを受け入れておかなきゃいけない仕事。

そんな私たちはいわば使い捨ての兵器。


今の師匠の下にスパイとして潜り込んで失敗した時、もうこれで終わりかなと覚悟はしていたんだけど…

師匠が私のことを全力で欲しがってくれたのは、本当に嬉しかった。


それも、私に十分に仕事をさせてくれて、私の仕事を失敗という形だけど終わりにしてけじめをつけさせてくれて、その上でなお、私を欲してくれた…捨てられるはずだった無価値な私を。

あれは…嬉しかったな、正直無茶苦茶な人だとも思ったけど、その分私がこの人を守ってあげなきゃなって思ってしまった。


だから私は…ずっと師匠のそばにいようと誓った。

これを私の最後の仕事にしたいから。



と言っても、あの時の私もさすがにこんなすごい立場になるとは思っていなかったよなー。

師匠はめちゃめちゃ魔法の才能あるし、良くも悪くも将来は大きな存在になるって思っていたけどさ。


まさかあれから1年もしないうちに、多くの貴族たちを配下に持つ1つの都市の責任者、貴族の最終目標ともいえる都市長の地位に就くなんて。

そして私はそんな都市長をそばで警護する専属の護衛に就任しちゃった。


正直、掃除屋からランクアップしすぎだよねー、裏方で血と泥にまみれるような仕事をしていた私が、一番注目を浴びる人のそばにいて一緒に注目を浴びることになるんだもん。

いやぁ、あの時師匠について行くと判断した私を褒めてあげたい。


そしてそんな私を受け止めてくれた師匠には、感謝してもしきれない。

1年前の私に、将来こうなるんだよって言っても、はぁっ?としか思わなかっただろうなー。


都市長専属の護衛ってどれくらいの地位なのかというと、普通は都市内で上位数名に入るくらい実力を持ち、いざという時は都市長の代わりに近衛兵の指揮を執ることもあるくらい偉い。

まぁ、今回は期間限定だしそこまでの権限は与えられていないんだけど、兵士とか文官なら私が通ると廊下のわきへよけて、頭を下げるくらいは偉いんだよね。


この都市に正式な近衛兵はいないけど、都市長護衛の兵士を指揮する権限くらいはある。

やばいよね?先日までは荒くれものと大して変わらない存在だった私がだよ。




そんな私の朝は早い。


前は不定期な仕事に就いていたこともあって、朝とか夜とか起きる時間がぐちゃぐちゃだったけど

ここでは専属の護衛に就任するということで体をちゃんと慣らしておいたのだ。私、偉いでしょ?


都市長に就任した師匠に恥をかかせるわけにはいかないからね!


朝5時頃には起きて、自室で魔力の調子を整える。

私も偉くなったんで専属の侍女が1人与えられている。

こまごまとした作業をやってくれる、便利な使用人だ。


と言っても日中、師匠?都市長?…まぁ、師匠にずっと張り付いているので、朝と夜しか顔を合わさないんだけどね。

あー、掃除してくれるのは便利かな。


もちろん女性だよ。師匠がやきもち焼いちゃうといけないからね。


私が起きて魔力の調子を整え終えた頃、ノックをして彼女が入って来る。


「おはようございます、マナ様」


「おはよっ、リリシエス。今日はなんか特別なことあったっけ?」


「いえ、何もありません。いつも通りです」


「そっか、じゃ私はいつものように訓練所行ってくるから適当にやっててね」


「分かりました。お気を付けください」


彼女の仕事は…やっぱり私の部屋の掃除くらいじゃないかな。


最初の頃は、護衛中に飲む水とか魔力回復薬とかを明日までに用意しててとお願いしたりしてたけど

それも定期的になってきて、常時ストックを置いてくれているから指示することがあまりない。


まぁ、暇は暇でいいんじゃないかな。

師匠に確認したけど、専属の侍女は暇だろうが忙しかろうが給金は変わらないらしいし。




訓練場へ来ると、夜間シフトに入っていた兵士たちが寝る前に体を動かしている。

自主的にやっている奴じゃなくて、やらされているやつだけどね…。


この辺はルーデンリア光国とは違って夜は暗くなるので、<明かり>の魔法で周囲を照らしながら警戒することになり、夜の見回りは結構神経を使うらしい。


この都市の守りをやっている守備隊は4つの班に分かれて1日3交代制で外敵にたいする警備をしている。

特別な集中訓練じゃない限り、シフト後の訓練は指導があるとはいえ結構緩いものになる。


5人や10人で隊列を組んで1つの目標に対して<光の槍>を一斉に放ったり、お互いにタイミングをずらして継続攻撃をしたり

1人1人が動く目標に対して正確に魔法を当てるといった単純な訓練をやったりしている。


私から見るとバカバカしい訓練だけど、兵士たちは戦場で面への攻撃と、個への集中攻撃の2パターンが出来れば概ね合格なので

訓練として最低限満たしていると言えなくはない。


そこに絡んだところで何の得もないので、私は横目で訓練の様子を見つつ全体に声をかける。


「おはよー」


私の声にここで練習していた兵士たちが皆動作を止め、こちらを向いて姿勢を正す。


「おはようございます。マナ様」


毎日朝夕ここに出入りしているせいか、すっかり私も有名になっている。

この都市で一番強いコンラッドにも1対1で勝っているので、一部の兵士たちからは尊敬の眼差しを受けるけど…ちょっとまぶしいのでやめて欲しい。


うれしいっちゃうれしいんだけど…個人的に声をかけてくるのだけは勘弁してほしいなぁ。

言っちゃ悪いんだけど弱い人にいちいち構われたって時間の無駄にしかならないし。


今日の指揮官は誰だろうと見渡してみると、奥に兵士たちを指導しているナミルがいた。


「ナミル、おはよー」


呼ばれたこと気がつき視線を私に合わせると、ああやっぱりかという顔をする。

私との戦闘訓練で連戦連敗中なので、あまり好意的に接してくれないんだよね。


「あぁ、マナ殿か。それだけ強いのに毎朝練習を欠かさないのはさすがだ」


ただナミルは私に敬意を示してくれる。

突然やってきて自分より強かったというのは悔しかったんだろうけど、毎朝練習を欠かさないのには敬意を示してくれるらしい。


もうちょっと仲良くなれたら師匠の力にもなってくれそうだけど…無理に近づけさせると拒否しそうなタイプだしなぁ。


「ねぇ、軽く1戦やらない?」


「ふぅ、今日は少し疲れているからやめておく。それに言い訳を考えたくないからな」


「固いなぁ。疲れている時だって戦わなきゃいけない時もあるんだよ?」


「確かにそれは反論できん。だが疲れているときにマナ殿ほどの相手と対峙したら…決死の覚悟で私は逃げるな」


上手いこと言ってナミルはすぐに兵士たちの方を向いた。


「ちぇ、じゃ私は兵士たちと遊んでくるね」


「いくらあいつらが望んでいるからって、手加減してくれよ。守備隊が怪我人だらけになるとかなわん」


私は背中を向け手を振ってナミルに答える。

弱い者いじめをするのは趣味じゃないので、こっちだって一方的にいじめるつもりはないのに。



その後兵士たち10人に周囲を囲まれる形で戦闘訓練を始める。

兵士たちは結構離れた距離で私を取り囲み、<光の槍>で私に攻撃をあてる練習。


強めの魔物を取り囲んだ時の想定戦になる。

逆に私は複数の兵士に囲まれた時の対処法の練習というわけ。


人数がいないとできない練習だから、この環境はなかなかありがたい。


時には私の側にターゲットを置いて、それを守りながら周囲の敵を排除する練習をやったりもする。

保護ターゲットはもちろん師匠を想定したものだ。


といっても、師匠が動けないほどやられる相手に複数囲まれてた時点で、私も負け濃厚なんだけどね…。


兵士たちとの戦闘訓練を開始し、周囲から飛んでくる光の槍を防いだりかわしながら、威力を落とし爆発を付与した<火の槍>や<小爆発>を使って反撃する。

私が小爆発を多用し飛ばされるように不規則に動くからか、周囲にいる兵士たちはなかなか私に魔法を当てられない。


魔物の中にはここまでじゃなくても不規則に動くやつもいるのに、全く当てられないのは…ちょっと心配になるなぁ。

更に私が上手く回避して同士討ちを誘うと、兵士たちは思い切って攻撃できなくなり


その隙を狙って手をこまねいている兵士たちを1人、また1人とリングの外へと飛ばしていった。

最後の1人が飛ばされてリングの外に落ちたことで練習が終わる。


「躊躇しすぎだよ?魔物の一撃は今の攻撃よりはるかに痛いんだから。練習のときみたいに上手くタイミングをずらして攻撃し続けないとだめじゃない。

 それが出来ること前提での練習なんだよ、これ」


「はいっ、すみません」


「もぅ、返事だけは一人前なんだから…」


私が困った顔を見せると、兵士たちは申し訳なさそうにしつつもちょっと喜んでいるように見える。

訓練は遊びじゃないんだけどなぁ。


その後も数セット兵士たちの相手をして、最後は手を振って訓練場を後にした。




軽くリフレッシュして朝食会へと行くと、ほとんどの席が埋まっていて私は最後の方だった。


私のような他家の者が遅れてやってきたにもかかわらず、テレダインス家からの視線はどちらかというと優しい。

師匠が支給金を上げてからこの朝食会の雰囲気もがらりと変わったんだよね。


前は師匠が来るまで、こっちを睨んだりテレダインス家同士でもう少しギスギスしていたんだけど…。


今日は師匠の隣の席。護衛だから当然だけど、時々シーラと席を代わってあげている。

独占しちゃうのは…良くないからね。私とシーラは同じ弟子同士なんだから。


私が一歩早かったから、姉弟子ってことになるけどね!

これだけはシーラにだって譲れない。


師匠が横に座ったので小声で「おはよっ」って声をかける。

すると机の下で私の手に軽く触れてくれた。


食事が終われば最近恒例の要望&おべっかラッシュ。

師匠は良く表情を変えずに話ができるなと感心する…私なら確実にキレてるよ。




日中は大体師匠について行ってお仕事の手伝い。

師匠が時々疲れた様子を見せるとすかさず声をかける。


「師匠、はい、お茶」


「あぁ、ありがとう。少し休憩するか。すまーん、ちょっと休む」


「了解しましたー」


現場の責任者が答え、それを見て師匠は風の板を作り出して座る。

もちろん私が座るスペースもある横長の風の板だ。


「師匠は頑張るよねー」


「んっ、まぁ…頑張ってはいるが。それより戦闘訓練に時間が割けずおろそかになってるのが不安だなぁ…今じゃマナに負け越しそうな気がするよ」


「んー、だったら今日5本勝負しない?私が勝ち越したらお願い一つ聞いてよ~」


「…そりゃ、負けられないな。ろくなことにならん気がする」


「えー、ひどっ」


それを聞いて師匠は笑う。

私は師匠が笑ってくれればそれでいい。


話を転がし、上手く疲れや不安から気を逸らせたようでほっとする。

多分私がそういう所に気をまわしているのも師匠なら気づいているんだろうけど、今はこれでいい。


師匠は親しいものに対して結構気を遣ってくれるから、その分私も気を遣う。

今の目標は私が気を遣わなくて済むような存在になることだ。


師匠の安全を守るという仕事なのだから、肉体的なものだけでなく精神的なものも守れるようになりたい。

そして…いつかは師匠と…


「マナ、たぶんだが…想像が漏れ始めているぞ」


「ぐっ」


師匠は近距離だと雰囲気を察知する感覚が本当に半端じゃない。

主属性が風の魔法使いでもこんなに敏感じゃないと思うんだけどなぁ。


そういや感知範囲もおかしかったし…師匠って地味にところどころ規格外なんだよねぇ。


「さて、仕事に戻るか」


「そうだね、でも師匠、無理しちゃだめだよ。ハイペースでやると周りがついていけなくなるんだから」


「あっ、ああ。気を付けるよ…」


ある程度自覚があるのか、師匠はばつが悪そうにしている。

本当に困った人だ。でも、それがまたいいのかもしれない。




夕方、夕食会はかなり楽しい。

朝食会とは違い仲間内に近い集まりで気を遣わなくていいからか、雰囲気がいい。


結構まじめな話もするけど、割とどうでもいい話をしたり美味しいデザートの情報共有をしたりと堅苦しくない。

師匠も大抵楽しそうにしている。


こういう環境ばかりだといいのにとつくづく思う。


都市の収入も順調に増え、皆の給料も上がった。

この都市も徐々にいい環境になりつつあるけど、不満を持つ者がいなくなることはないのもこの世の常だ。


「不満なのって以前からそれなりの地位を持っていて自分の利権保護に必死な人だけだよなぁ…」


騒がしい部屋の中、思わず私がつぶやくとシーラを挟んだ隣にいる私の方を師匠が振り向く。

そう言えば風ってそれなりに地獄耳だったっけ…うーん、厄介な。




そして夕食後。

訓練場で師匠と1対1の実戦訓練だ。


朝~夕のシフトだった兵士たちがもう終わりにしようと上がる頃で、この時間帯は訓練場に人がいないことも多い。

だけど今日は兵士たち30人くらいと珍しくコンラッド総隊長がいる。


「おっ、コンラッドじゃないか。すまないが訓練場の一番大きいやつ借りるぞ」


「わかりました。今はだれも使っておりませんのでどうぞ」


そう言いながらちゃっかりと見学するのに良い位置に座り、私たちの戦闘訓練が始めるのを待っている。

コンラッドはかなり強いので私も勉強になるからと何度も相手をしてほしいと誘っているけど、2勝2敗になって以来、お願いしても受けてくれない。


負け越すと軍事の指揮を執るトップとして威厳が無くなるとかで逃げ回るんだ、ずるい。

私なんて師匠に負け越しまくりなのに…。


まぁ、立場的にあまり良くないのはわかるんだけどね。

でも私は期間限定の部外者なんだから、そんなに気にしなくてもいいのにねー。


「そう言えば師匠、お願い言ってなかったけど、私が買ったら魔法書を1冊買ってね、欲しいやつがあるんだ~」


「あぁ、いいけど…魔法書ならいつでも買うぞ。マナに必要な物ならな」


「実は……コアボムの魔法書が欲しいんですっ!」


「<核爆弾(コアボム)>!?…あれ、火属性LV42必要じゃなかったっけ?」


属性LVが届いていなくてまだ覚えられないのだから、そんな無駄なものは要らないと言いたそうな師匠らしい反応だ。

でもね、火属性のロマンともいえるこの魔法、欲しがらない火の使い手なんてこの世にはいないと断言できる。


たとえ覚えられないとしても、そこには火のロマンがあるんだからね!


「そうですよ、でも欲しいんです。火属性なら誰もが憧れる魔法だし」


「うーん…マナ、火属性いくつだっけ?」


「多分ここに来る前とほとんど変わってないと思うよ。でも、私が勝ち越したら欲しいなぁ~」


「はぁ…。じゃ、負けられないな」


私のわがままを聞き師匠のやる気が上がる。

師匠との1戦はこうじゃないと面白くない。


実戦訓練とは言え、数本連続してやる場合は負傷級の一撃を与える前に止めるのが通例だ。

じゃないと連戦できなくなってしまう。


周囲の兵士たちもギャラリーとして集まってくる中、5本勝負が始まり…熱い戦いとなったが、1勝4敗という悲しい結果に終わった。


最初は押せ押せで動きの悪い師匠を簡単に追い詰めることができたが、2本目はそれを逆手に取られて逆転され

それ以降は調子を取り戻した師匠を攻めきれず…じわりじわりと押される展開になってしまった。


「うーん、悔しいぃぃ」


「いやぁ、危なかった。水と風で有利取れているのに押されるんだもんなぁ。また腕がなまってきたかなぁ」


「次は負けないからね」


「次も負けてやる気はないからな」


意地悪そうに言う師匠の腕に抱き着くと、師匠は腕を自分の体に寄せて私を近くに引き寄せる。

変な声をかけてくる兵士たちにもこうやってアピールしておかないとね。ナイス、師匠。


「それじゃ、名残惜しいけど書類確認があるから先に戻るよ」


「うん、頑張ってね」


「マナは無理するなよ」


師匠もだけどねと思いながら見送る。

執務室は兵士の守備も固いので私はここに残って兵士を含む軍部を取り込む仕事に移る。


と言ってもここで兵士たちや指揮官たちと訓練したりだべったりするだけなんだけど。


元々利権を取り合っている文官系たちとは仲の悪い人たちが多いから、思ったより簡単にこちら側に取り込めたんだけど…良いことなのかなぁ。

先ほどの戦いを楽しんでくれたのか、コンラッドが話しかけてくる。


「先ほどの戦いはさすがでしたな。これでは私がマナに勝てないのも納得だ」


「そんなことないですよ~。それよりコンラッドさんなら師匠と戦ってもいい勝負できるんじゃないですか?」


「あれを見て勝てる自信が湧く者などこの都市にはいないだろう」


コンラッドさんはあまりお世辞を言うタイプではないので素直な賞賛なんだと思う。

師匠が褒められると私もうれしくなる。


私の心が読めたのか、コンラッドさんが少し暖かい目で笑っていた。


「うーん、じゃあ自主練しようかな…コンラッドさんは相手してくれないんでしょ?」


「私も軽く自主練するとしよう。すまないな」


コンラッドが去っていくと周りにいた兵士たちが指導してくれと寄って来る。

しょうがないので私は自主練を兼ねて兵士たちの訓練に付き合ってあげた。




師匠が去って1時間くらい体を動かしたところで自室に戻る。

師匠はまだ仕事をしているだろうけど、今日は立ち寄るのを止めておく。


さっきまで十分相手してもらったんだし、ここからさらに絡むのは師匠の貴重な時間を奪うことになりかねないし。


「警備、お疲れさまー」

「はっ」


私がにこやかに手を振って声をかけると、私たちの部屋に続く廊下を警備している兵士たちが軽めに私を確認する。

魔力パターンなどで偽物でないかチェックしているんだと思う。


彼らはメルボンドの指示でこの場に配置されていた。


普通の都市長ならばこんな警備が四六時中必要になることはないんだけど、師匠は3年限定とはいえ外部の者だから万一に備えておいている。

それに師匠は能力なども含めあまり詮索されたくないことが多いので、簡単に接触できないようにするためにも兵士の存在は便利みたい。


彼らのチェックはすぐに終わり、角を曲がって一直線の廊下を進んで自室へと戻る。

この廊下沿いには師匠の自室兼執務室の他、メルボンドやシーラ、エニメットの部屋などもある。


城内でも内部に位置していて、一応誰でも通ることは可能だけどこの廊下に入るだけでもチェックを受ける必要がある。

ちなみに部屋の前にまで兵士がいるのが師匠の部屋だ。それ以外の部屋の前は誰もいない。


ここにはいつもやっている夕食会の会場もあり結構人が出入りするので、通路の出入り口を警備している兵士たちは大変そう。

そう言えば、この廊下に至る通路の両側を警備している兵士と師匠の部屋の前を守っている兵士に対しては私に指揮権があるんだったっけ。


「お疲れさまー、私は部屋に戻ってるから」


扉の前に立っている2人の兵士に軽く手を振りつつ、私は自分の部屋へと戻った。


今話も読んでいただきありがとうございます。

次話に話の流れが続くので、閑話ではないですがちょっといつもと違う視点で書いてみました。


誤字脱字がありましたら、ビビっとご指摘ください。

感想やブクマ、評価など色々頂けるとうれしいです。

では次話は5/19(火)更新予定です。

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