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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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激突 エリスVSデュグリス

デュっというのがdhuで打てることを初めて知りました。

あまり使わないとは言え、知らなかったのは少し恥ずかしい。

今話は先行したエリスの戦闘シーンです。うまく表現できているといいんですが。


一方先行したエリスは直径30m程はある円柱状の形をした部屋に出る。

ここからまっすぐ奥の通路に行けば希望の泉がある小庭にたどり着ける。

なお左にも通路がありそちらに行くと野外の広場である第2演習場に行ける。


部屋の中央に一人の人影があった。それはただ突っ立っていて誰か来るのを待っていたようにも見えた。

「誰?」語気を強めることなく短く冷静にエリスが質問する。それと同時に剣を取り出しその人影に向けた。


「ふふふ、エリスお嬢様。さすがにいきなり剣を向けるのは失礼ですよ。レディとしてもう少し……」

「じい、ね」


エリスは話し声ですぐに気付いた。それは慣れ親しんだ声だったからだ。

3姉妹のうちクエスとエリスは魔法使いとしての戦闘にだいぶ馴染んでいた。


その練習に付き合っていたのが長女のクエスの場合は総隊長のベルグド

そして次女エリスの場合が、エリスが「じい」と呼んでいる男、この国の軍の副総長デュグリスだ。

エリスは思わずあんたもか、と不快な気分になるが冷静に魔法核を後ろで組み上げながらデュグリスの動きを観察する。



「エリス様、パーティーを抜け出してこのような場所に来られるのはあまりよろしくありませんな」


微笑を浮かべエリスを諭すように話すデュグリス。

しかしエリスはその言葉を挑発と判断し軽く流す。


あなたとは話す暇も意義もないと言わんばかりに5cm程の氷の球を作りデュグリスに向かって飛ばす。

<光の盾>で受け止めるとやれやれと言わんばかりにデュグリスは肩をすくめた。


「流石にせっかちすぎませんか?エリス様はもう少し落ち着かれた方がいいですな」

そう言ってデュグリスは剣を取り出し構えた。


じいまで裏切っているなんて。

エリスは今までの思い出を壊された気がして怒りがわいてきたがすぐに考えを切り替えた。


「じい、悪いけど時間がないの。どかないなら殺すわ」

淡々とした口調で魔力を溢れさせて詠唱を始めるエリス。


「やれやれ、本当に話が早すぎますなぁ。たまにはおしとやかに大人しくされて、捕縛されてはくれませんかね」



エリスは右手にエリス専用として与えられた氷属性の魔力が流れやすい剣を取り出しデュグリスに向かって走る。

それを見たデュグリスは同じくアイテムボックスから剣を取り出し、右手に構えてエリスの一撃を受け止める体制をとった。


エリスは迷わず突撃接近し剣を交える。金属打音が部屋に数度響き合う。

エリスは剣を交えながらデュグリスの足元を凍らせようとするが、それを見抜いているデュグリスは受け流しながらも常に動き回りエリスの近場にとどまらず足元の凍結を避け続ける。


「エリス様、その手は何度も見ておりますからそうそう当たりませんぞ」

デュグリスはやや余裕の表情だ。


「それに今までエリス様が訓練で私に勝ったのは2度だけでしたかな」


デュグリスは余裕の表情で楽しい思い出を語るかのように、そして動揺を誘うように話しかけてくるがエリスは動じない。


このトラブルの間一度だけ解いたが、この危機的状況でエリスは補助魔法の<氷の心>を自分に使っている。

物事の損得などを冷静に判断できる氷の心のおかげで、想像以上の惨劇が起きている今も、エリスは決して動揺することはなかった。


「勝ったのは最近の2度だけどね」

特に感情を込めず、淡々と事実だけを述べるようにエリスは呟いた。



近接戦は互いにリスクも大きいため、二人とも接近戦から切り替えて少し距離を取る。

そのタイミングでデュグリスが<斬撃光>を使い縦一閃の斬撃を飛ばす。


エリスは攻撃を横避けると自分の後ろに発生させた<氷の槍>を横に避けた直後に飛ばす。

斬撃は氷の槍に当たらず、氷の槍がデュグリスに当たり吹っ飛んだ。


エリスはチャンスと思い<地を這う冷気>で追撃するも、想定よりもデュグリスが遠くに飛んだためけん制にすらならなかった。

デュグリスはさらに距離を取るために、槍の威力を殺しつつもあえて腹部で受けて後方に飛んだのだった。


エリスは焦る。冷気系は相手の動きを鈍らせたり制限する効果も多いが、遠い相手には効率が悪い。

このままじりじりと押すことはできるかもしれないが、それはこの戦闘に時間がかかりすぎてしまう。


問題は後ろから来ている姉妹のクエスとミントだ。

2人ともまだこの状況になれておらずうまく立ち回れない可能性が高い。

姉も妹も兵士に対して直接攻撃をしている事が一度もなかったからだ。


せいぜい防御態勢で攻撃を防ぐだけの立ち回りでは

近衛兵にはそれでやり過ごせたとしても、副総長のデュグリス相手では簡単に押し切られてしまう。


その結果姉や妹がデュグリスに捕らえられたり、瀕死状態にされたりしたらエリスも戦う意思を手放すしかなくなる。

厳しい話だがエリスはこの戦闘に時間をかけるわけにはいかないのだ。


(じいもそれをわかって時間稼ぎかな……後ろから敵の援軍が来ても詰みだし、最悪の状況ね)



「覚悟を決めなきゃ」

エリスはボソッとつぶやくと魔力を込め詠唱を始める。


距離を取っていたデュグリスはこのままいけば何とかなりそうだ、そう思っていたためエリスの行動の変化に気付くのが遅れた。

今までとは流れが変わったことに気づいたデュグリスは急ぎ<光の玉>を6発放つ。詠唱妨害と軽いけん制だ。

エリスはかわすかと思いきや詠唱を止め、自身の魔力障壁を使って打ち消しつつ距離を詰める。


デュグリスは驚き斬撃を飛ばすがエリスは剣ではじく。

ある程度近づくとエリスは魔法を発動した。それは<氷獄の檻>

デュグリスの周りに青く光る檻が発生し、檻の中は急激に温度が下がっていく。


「くっ、やりますな」

そういいながら剣で切ろうとするが、檻の氷柱には途中まで食い込むものの破壊には至らず脱出できない。

途中まで切り込みの入った1本の氷柱は、剣を離すとさっきまでの切込みがふさがっていく。



デュグリスは冷え切り体が凍り付き始める中、魔力を集中させ<剣の光>を使い右手の剣に光の魔力をまとわせ幅広い大剣に変化させる。

そして光の魔力をまとい大剣となった剣を青い檻にめい一杯叩きつけた。

ヒビが入ったかと思うとそのまま青い檻が砕ける。


追撃を入れようと思って詠唱しながら傍にいたエリスは想定外の状況に驚きの表情を見せる。

破壊した勢いのまま、デュグリスは<剣の光>で再度形状を変える。


エリスに対して先ほどよりはやや剣の幅が狭まった分長くなった光る剣を振り下ろす。

右手の剣でエリスは受け止めるものの押し込まれ、左肩が剣の光に触れ肉が削られる。


咄嗟に左手からエリスは<氷のブレス>を相手の顔付近に吹きかけ剣を押し込む力が弱った隙に右側へのがれた。

傷口と流れる血を瞬時に凍らせるエリス。

デュグリスはエリスの奥の手を打ち砕き勝利を確信したからか穏やかな表情を見せた。


「エリスお嬢様、無駄な抵抗はこの辺でやめておきませんか。この辺で剣を収めてもらえるのなら、わしはお嬢様だけは何があっても守り通しますぞ」


私だけ?言っている意味がよくわからずエリスに迷いが生じる。

デュグリスは敵なのか、それとも敵を欺く味方なのか。

だがエリスには「自分だけ」という言葉が引っ掛かった。なぜ自分だけなのか。


「私だけとはどういうこと?」

冷たい瞳でデュグリスを睨むエリス。見慣れているデュグリスにも今のエリスが怒っているのか迷っているのか判断が付かなかった。


「そのままの意味です。エリスお嬢様だけなら私がこの身をかけてお救いしましょう」

「母は?姉さんやミントは?」


その問いかけにデュグリスは何も答えない。エリスは怒りがわくもののすぐに<氷の心>の効果で冷静になる。

目の前のじいは裏切り者なのはほぼ確定だ。私たちの逃亡を邪魔しようとしているのは明らかだからだ。


ただ、先ほどの裏切った総隊長や近衛兵達とはどうも立ち位置が違うように見える。


だが今のエリスにとってベルグドとデュグリスの立ち位置の違いなど些細な差でしかない。

母も姉も妹も捨てろなど、そもそも選択肢にも入らない。


「悪いわね、やっぱりじいには死んでもらう」

「エリスお嬢様さえいればアイリーシア家は維持できます。今のわしに打てる手はこれしかないのです」


「そう……。だけどあなたの行為はあのゲスな目をしたベルグドと何も変わらないわ、私から見れば」


そう言いながらエリスは氷の塊をデュグリスに向けて放った。

デュグリスは一瞬虚を突かれたがギリギリのところで氷の塊をかわす。


「ゲス?ああ、ベルグドに色々と言われたのですかな?あの男はそもそも最初から裏切っていた男、一緒にはされたくありませんな」

「私から見れば同じよ」


淡々とはしているが、どこか怒りを含んだような吐き捨てた言葉にデュグリスは説得不可能と判断した。


「仕方ありませんな、何とかエリスお嬢様を行動不能にして無理やりここから脱出させるとしますかの」

「はぁ、じいはもう勝ったつもりなのね」


エリスはデュグリスを視線から離さず呆れたように言い放った。

さっきの氷獄の檻を脱出されたのなら、今エリスにとって使える手はあと一つしかない。

意を決してエリスは魔力を放出し始める。


「ふふふ、今度は何を見せてくださるのかな?」

デュグリスはまだ余裕を見せていた。



エリスは膨大な魔力を放出し、複雑な型をストックから取り出して魔法を行使する。

周囲に50以上の氷属性の魔法核をデュグリスは確認したが、これが何の魔法なのかわからず困惑する。


見たことのない型を見て警戒を強めたのかデュグリスはエリスから距離を取り、防御魔法をストックし始めた。

これさえしのげばエリスお嬢様にはもう手はないだろう、そこで取り押さえるしかない、そう考えたのだった。



「これで終わり。受け止めてみなさい<白き死の世界>」


接近する前から、互いに会話をしている間もひそかに型を作ってはストックを繰り返し、準備して詠唱していた魔法だ。


部屋全体の天井が青白く光り部屋に雪が降り始める。避けようのない雪が部屋全体に降り出した

その雪がデュグリスの腕に当たるとそこの表面が凍りつき、表面だけにとどまらず内部までも細い範囲ながらも凍結し始める。


次々と雪が触れた場所が凍結しデュグリスは苦しみながら対処する術を思いつかず焦る。

「な、なんだこれは。広範囲でこの威力、これはまずい……」


咄嗟に<光のドーム>でガードするも多数の雪に触れた部分が次々と凍結し、そのままひびとなり数秒後にはドーム状のシールドが割れた。


想定外の威力を持った魔法の上、範囲が部屋中で逃げ場がない。

このままガードしていてはじわりじわりと全身を凍結させられると思ったデュグリスは賭けに出る。

全力で魔力を自分の周りに放出しエリスの魔法をある程度相殺しながらもくらいつつ、相手に突進する<光圧突進>を使った。


光のオーラを発しながらエリスに向かって突進してくるデュグリス。

雪に触れる度オーラが凍結して少しずつ剥げていくが突進は止まらない。


エリスは魔法維持のため咄嗟に動くことが難しく、避けられ無いと判断し

左手を伸ばし<氷の強化盾>を3枚重ねたように展開しつつ、左手にだけ魔力を集め防御能力を高める。


ガシャ、ガシャと音を立て強化盾を砕きデュグリスのオーラが、突進してきた体が、エリスの左手にまで達した。

一瞬受け止めるもののエリスの左手は小指と薬指がちぎれ、肘までの骨は何か所も砕け

左腕の肌は肩の近くまで所々光の線が走り、そこから出血して腕を伝い水滴となって地面に落ちる。

だが何とかデュグリスの突進を受け止めていた。



吹き飛ばすことはできなかったものの、エリスの左手を使い物にならなくし次の一撃をぶち込める接近状態まで持ち込んだので、勝利を確認したデュグリス。


しかし、いつの間にやらエリスの右手には今までとは違う薄い青色で5つの魔石のようなものが付いたやや細身のロングソードが握られていた。

そしてその先端は・・デュグリスの胸に突き刺さっていた。


その突き刺さった部分から直径10cm程は完全に凍り付き、剣の突き刺された中心部分の凍ったデュグリスの体の一部がパラパラと剥がれ落ちている。


息もできず苦しそうにしながらもデュグリスは問いかける。


「な……それ、は……エリス様、いつの、ま…使え…よう……」

「さっき、と言いたいけど無理に使用したから右手が凍ってしまったわ」


その剣はアイリーシア家の家宝である氷属性の精霊武器、アイスカリバー。

精霊武器とは精霊が作ったとされる特別な武器のことで、この世界に一定の数しかない。また未確認の物も多い。


精霊の圧倒的な魔力を直接発揮でき、現存する武器のどれよりも高威力を誇り、付加効果や特別な技を出せる最高の武器になる。

剣などの場合精霊の魔力が常時発揮されているため切れ味がすさまじく、国宝級の武器でないとまともに受け止めることすらできない。


ただしその武器の力を発揮するにはそれなりに条件が必要になっている。

その条件はある属性が一定のLVまで達していること、一定の儀式を受けていること、特定の精霊と契約していることなど、様々なものがある。


その条件を満たさずに使用した場合、威力は少し落ち、付加効果も出ないばかりか、使用者に何らかのダメージや呪いの術式を付与する危険なものでもある。


この精霊武器は各貴族がこっそり隠し持っている事が多いが、持っていることがばれるだけでも狙われるため情報を公開しないことが多い。

そのため情報があまりまとまっていないのが現状だった。



「はは、そ、れなら、障壁も、魔力も、防げま……」

デュグリスの体は剣が刺さっていたところがほとんどなくなってしまい大きな穴が開き、エリスが剣を引っ込めるとデュグリスは力なく崩れ落ちる。


「さよなら、じい」

崩れ落ちたデュグリスを見下ろしながら剣を鞘にしまって回収し、自分のボロボロになった左腕を肩から手まで見つめる。

戦闘開始から<痛覚鈍化>により痛みはあるものの大したことはないが、さすがにこのままの状態は良くないのでエリスは自分で対処することにする。


「ミントが見て騒ぎ立てたら……まずいわね」


失った左手の指はどこへ飛んだのかわからなかったためくっつけるのは諦め、無くなった指の部分は氷で作り何となく手の形を取り戻す。

もちろん氷の指は動かすことはできないが、指が無くて必要以上に心配されることがないようにしたエリスなりの配慮だ。


一応パッと見ならば指はあるように見える。だが、ほとんどの者は近づけば一瞬で気づくだろう。

左腕の各出血部はさっさと魔法で凍らせてとりあえずの止血を済ませた。


「右手は……やっぱダメか。儀式は終えたんだけどLV不足ね、仕方ない」

剣を握った形を保ったまま動かない右手はいつ元に戻るのかエリスにはわからない。精霊のみが知ることだろう。

ただ言えるのはここを脱出するまでに戻ることはなさそうだった。


最近は遅い更新になってすみません。そろそろ毎日更新がきついかも。

いつも読んでくれている皆様、本当にありがとうございます。

ブックマークや誤字報告、感想などじゃんじゃんお待ちしています。

誤字脱字等ありましたら、ご指摘ください。


魔法紹介

<地を這う冷気>氷:2つの冷気が地面を這い進む。足に当たると凍結する。

<光の玉>共通魔法・光:初歩技。各属性の効果のある魔力球を相手に投げる。

<氷獄の檻>氷:近いほど檻の強度と効果が高い。檻の中はどんどん温度が下がる。

<剣の光>光:光の魔力で剣を長くしたり太くしたりできる。威力も上乗せ。

<氷の心>氷:心が動じなくなり目的に対して効率よく考えることができる。段階がある。

<白き死の世界>氷:範囲魔法。一定範囲に雪を降らせ雪に触れると触れた部分の内部と周辺が凍り付く。

<光のドーム>共通魔法・光:球体の半分のドーム状で覆う障壁。中級者用で結構硬い。発生後は動かせない。

<光圧突進>光のオーラを帯びたまま突進する技。攻防一体の魔法だが防御面はお察し。


修正履歴

19/02/01 改行追加

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― 新着の感想 ―
[一言] 鋼がでできません。 違う物語になったような気がする。 鋼が魔法を覚えて、強くなるのを楽しみにしています。
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