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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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脱出へ 国王エルミの奮闘

あらすじ

敵の迫る包囲網、そこから何とか脱出を試みるエルミと3姉妹。

今回は国王(女王だがこの国では国王呼びです)エルミの戦いになります。


城内に逃げ込んだエルミたち一行は横10m程高さ5m程の広く長い通路にいた。

エルミは無事に逃げ切るためにも娘たちに目的地の確認をする。


「城内の小庭にある希望の泉、3人ともわかりますね?」

母の問いかけに3姉妹とも首を縦に振る。


その小庭とは3姉妹が幼いころよく遊んでいた城内にある行き止まりの部屋のことで、希望の泉はそこにある池のことだ。

場所だけでそこで何をするかを伝えないのは、今そばにいる兵士たちを完全には信用できないからだ。



目的地に急ぐため国王エルミが先陣を切り、それに続いて3姉妹とその護衛の兵士達が廊下を走りだした瞬間、数多くの光の矢が背中から飛んでくる。

「敵襲です。国王様方は早く目的地までお進みください。ここは我々が食い止めますので」

そういいながら兵士たちが魔法障壁を展開する。


エルミはこの時にやっと現状が最悪の状況だと理解した。

ここに逃げ込むことは相手にとっても計算の内で、先ほどの会場だけでなく城内も敵が待ち構えている。


しかも先ほどのように味方のふりをする者すらいないとなると

順調に追い詰められているという証拠でもあり、味方の援軍はすでに期待できないと考えるのが妥当だった。


夫の命は絶望的だろうが今更後戻りもできない。

とにかくエルミは必死に娘たちを脱出させる術を考える。

この子たちさえいれば一旦壊滅したとしても、アイリーシア家を再建できる。


数名の兵士たちに後方を任せ親衛隊3名や娘たちと走りながらエルミは詠唱をし、攻撃を加えてきた後方の遠間に向かって<千の光矢>を放つ。

この攻撃は守ってくれている兵士たちへの援護というより、あくまで敵の足止めだ。

盾になってくれた兵士が少しでも長く生き残ればそれだけ逃げる時間が稼げるから援護しただけで、彼らを助けるためではない。



その後、後方を気にすることなく前へと進み、しばらくすると目的地へと続く側道が見えてくる。

ここから側道に入り細い上り坂の通路を進んでいけば、空が見える目的の小さな庭に出られる。

その庭は希望の泉と呼んでいる枯れた噴水台と池のあるスペースになっている。小さい庭と言っても先ほどの宴会場よりは小さいだけでそこそこのスペースはある。


目的の側道へ向かおうとすると、側道の近くの通路の正面に20名ほどの白い鎧を着こんだ近衛兵が横一列に並んで立っていた。

この通路の先は城内でも一番広い演習場がある。そこには近衛兵の待機所に続く通路もある。

彼らがそこからやってきたようで、全員甲冑に身を包み武器を手に持っていて準備万端と言った感じだ。


明らかにその近衛兵らはここで待ち構えているように見え、エルミたちを助けに来た感じには見えない。

エルミはまだ相手の手のひらの上から逃れられていない事を感じさせられる。

歯をかみしめながらこんな状況になった理由がわからない自分を悔やんだ。


一方クエスとミントは多くの近衛兵を見て安心する。普段自分たちの側にいる見知った顔もちらほらいたからだ。

「あ、ロードン!助けて…」クエスが声をかけようとすると

20名ほどの近衛兵が一斉に貫通力の高い<光の槍>を詠唱し放ってくる。


「ちっ、考えたくはなかったがやはりか……」

エルミは通路の真ん中で立ち止まり、自分たちの周囲を囲む2mほどの高さの<光の周壁>を急いで唱え、正面・左右から飛んできた光の槍を防いだ。


光の槍が当たるたびに、ガッという打撃音とパリンと槍が細かく砕ける音がする。


「国王様、残念ながらここから先はお通しできません」

「諦めて降参してはいただけませんか」

「お嬢様方には危害を加えることはありませんので」


目の前にいる近衛兵たちが次々と声を上げる。

その後ろには見慣れぬ黄色いマントを羽織る男がいた。あれが謀反兵たちの黒幕なのだろうか?

そんな男に付いて行き、国を裏切ったことを堂々とアピールする近衛兵たちに嫌悪感を覚える。


「あら、裏切っただけでは飽き足らず、雑兵の者どもが雁首揃えて戯言を吐く光景を見せてくるとは驚かされました」

エルミは近衛兵たちを怒りをぶつけ挑発しながらも、頭の中を少し落ち着かせ少しずつ目的の通路側に移動する。


母の行動を理解してか、エリスも共に動き、残った付き添いの兵士たちも動揺するクエスとミントを誘導する。

エリスは次々と先手を打たれている今の状況を察し、相手の予想の裏をかくことで単独で行動することを決意した。


母の決意を感じ、自分の役目を理解したエリスも単独で動き出す。

「先行します。2人をお願い」

側にいた味方の近衛兵に姉と妹のことをお願いすると、エリスは一人先にその通路へと走り出した。



エリスがこの場から逃げ出したにもかかわらず相手に動揺は見られない。

となれば、あの通路の先にも準備がしてあるということになる。


あの庭にたどり着く前に1つ広い部屋があったのでそこにも待ち伏せが配置してあるのだろう。

エルミは圧倒的に手数が足らないことに焦りながらも冷静に状況を分析する。


今すぐこの場から娘を連れて側道に行くのは得策じゃない。

狭い側道で両側から遠距離魔法を打たれ続ければ、数で優っている相手が自分たちを削り切れるのは明らかだからだ。


「2人ともこの場は危険よ、エリスに続きなさい。ガルドロア、娘たちを頼むわね」

エルミは正面の20人はいる近衛兵たちから一切視線を外すことなく、側にいる味方の近衛兵の一人に娘達を託した。



怖くて体がうまく動かないのか、ミントは背を向けた母を見ながら味方の近衛兵に連れられてゆっくりと通路に向かう。

クエスはミントと近衛兵が一緒に通路に入ったのを確認すると、敵となった近衛兵たちを警戒しつつ、後ずさりながらも通路へと入って行った。


娘たちがこの場から去り、母エルミは気合いを入れる。

とっととこの場を片付けて後顧の憂いを断ってから娘たちの元へと向かいたい。


「さて、裏切った上で私を馬鹿にしたようなアドバイスはもう品切れですか?」

殺気に満ちた目でエルミは敵対する近衛兵たちを睨む。それと同時に側にいる2人の味方の近衛兵に念話で指示を出す。


「あなたたちは私から離れて自分の防御に徹しなさい。あの通路へ向かう敵がいた時だけ撃退をお願いしますね」

「了解しました」


相手の近衛兵たちは娘たちが全員逃げ出すという状況になってもまだ動かない。

となると、娘が向かった通路の先も兵の配置は盤石で、役目は自分の足止めということだろう。


戦闘に慣れたエリスが先行しているので近衛兵が少々いたくらいでは致命的な状況にならないと信じたいエルミだったが

あまり時間をかけていられないとも判断したエルミは<光の防御陣>を唱え周囲に魔力の塊を4つ出し突撃した。


近衛兵らとの距離を半分ほど詰めたところで<斬撃光>を唱えて自分の剣に光を帯びさせる。

エルミの扱うやや細身の剣は非常に高価で魔力通しのいい名刀だ。

その名刀が光り、相手を切り刻む準備を示した。


剣が光りだすと同時に、先ほどから裏切った近衛兵たちを挑発しながらもばれないように型を作りストックしていた<錯覚>の魔法を使う。

エルミが<錯覚>を発動した瞬間、20人の近衛兵のうち12人がだれもいない場所にエルミがいるように見えたのか、虚空に魔法や剣を振るいだした。


正常な者たちは落ち着いており、近づいて来るエルミのタイミングを見計らい<百の光矢>、<光の槍>でエルミの突進を妨害するが

先ほどの発動した防御陣による魔力の球があまり厚みのない円状に変化し相手の攻撃魔法を防ぎきる。

円状の盾をすり抜けてくるたくさんの光矢は、エルミが身の回りに発する魔力の層を突破できずにほとんど消えてしまった。

わずかな光矢が障壁を潜り抜けエルミに当たるが、エルミにはかすり傷程度しか追わせられない。


距離が詰まり、近衛兵達の真ん中の相手に剣の間合いギリギリまで近づいたとき、端から<収束砲>が放たれる。

エルミは咄嗟に後ろに飛んで剣を振るう。

光る斬撃が宙に光の跡を描がいたと同時にそれが正面に飛んでいく。

斬撃は2人の近衛兵の鎧を貫通して胸部にまで達し、彼らは出血しながら後ろに飛ばされた。


再び左右の先ほどとは別の近衛兵がエルミに向かって<収束砲>を放つ。

周囲に展開していた魔力の塊が再び円状になり受け止め、威力が拮抗したのか2つがそのまま砕ける。

がカウンターで飛ばした斬撃が右側二人の近衛兵を襲い。一人は深手を負った。


遠距離ならダメでも接近戦なら国王を止められるのでは、そう思った近衛兵の1人はエミルに突撃し剣に魔力を帯びさせ上から勢いをつけて振り下ろす。

だがその攻撃は国王に届くことなく、振り下ろす前に光る球体に捕らわれる。

近衛兵をとらえた球体が少し浮き、眩しく光りはじけたかと思うと、両手足の肘膝の関節だけが空中に浮いたように残り、その後その手足が地面にぼとぼとと落ちる。一瞬にして接近戦を挑んだ近衛兵は消滅した。


「くそっ、ここまで強いとは…。想定よりまずい状況だ」

近衛兵があわてて後ろの黄色いマントの男に話しかけようとしたところエルミの剣から剣の形をした光が伸びその近衛兵の胸を貫く。


「私の相手をしているときに相談とは余裕ですね」

そんなエルミを見て黄色のマントの男は後ろに飛んで退却した。


エルミはある程度近づき黒幕と思しき男の顔を確認したいところだったが、残っている近衛兵はまだ多く錯覚でまともに動けないうちに処理しておきたいと考えその男を追うことは諦める。

この距離からではその男はマスクをしており顔を見ることもできず、またその男は魔法を使うこともなかったので魔力パターンや得意魔法からの推測も不可能だった。



「近衛兵なのに私の強さを理解していなかったなんて、本当に残念ね」

そういいながら横一線に振るわれたエルミの剣の斬撃を近衛兵は二人がかりで受け止めるが、斬撃を防いだ剣がやや上方にはじかれバランスを崩し後ろへ2,3歩後退する。


「なっ!」

エルミの剣の1撃に驚いた近衛兵に向かって、追撃とばかりにエルミが<4光折>を唱える。


エルミの後ろに光が発生しそれぞれ斜め4方向に射出されたかと思うとその兵士の胸に向かって光が屈折する。

近衛兵は胸に小さな<光の強化盾>を出すが、直前で再びそれぞれ屈折して頭・左肩・腹左足に直撃。

重傷を負い倒れ込んだ近衛兵を見ることなく、エルミは別の近衛兵を縦真っすぐに切り左手と左足を切断した。


その後もエルミは軽くガードしてはやや前のめりに反撃、近衛兵が少しでも隙を見せれば遠慮なく殺害。

大きな攻撃は回避しながらもカウンター気味に小~中威力の光の<光一閃>を当てる。


<錯覚>を受けた近衛兵のうち半分は何とか正常に戻り剣を構えるものの、いまだに錯覚を受けている近衛兵は隙だらけで次々と絶命させられていく。

返り血を浴びまくりながらも容赦なく惨殺していくエルミは、近衛兵たちから見るともはや恐怖の対象になっていた。


そして数分後には20名いた近衛兵は全滅してしまった。

エルミも体のあちこちにかすり傷は多く負ったものの、動きを制限されるほどのダメージは負っていない。


「さぁ、あの娘たちを追うわよ」

エルミは後ろで見るだけだった近衛兵2名に声をかける。


2人は盾を構え通路をガードしつつもエルミの恐ろしさに震えていた。

2名の近衛兵たちは自分たちが裏切ったあちら側にいないことを幸運と思いつつ、エルミの指示に従い3姉妹が向かった通路に入り急いで後を追った。


遅くなってしまいすみません。様々な理由でそろそろ連続投稿が途切れそうです。

でもやれる範囲で頑張っていきますので、よろしくお願いいたします。

地味にあとがきに時間がかかる・・・


魔法紹介

<光の槍>共通魔法・光:防御系に対し矢より貫通力の高い魔法

<光の周壁>共通魔法・光:〇の盾くらいの硬さの障壁を自分の周囲に展開する。上は開いてます。

<光の防御陣>光:意識するだけで障壁になる4つの光属性の魔力を自分の周囲に出す。

<斬撃光>光:数発斬撃を飛ばせる。効果中武器の切れ味も増す。

<錯覚>夢:対象が違う場所にいるように見えさせる魔法。互いに見える場所にいないと解けるのが欠点。

<収束砲>光:上級兵が使える光の魔力を集中させ放つ魔法。型から魔力が満たされるまでの時間が長い。

<4光折>光:4か所から光一閃(レーザー)を発射する魔法。設定で数回曲げれる。


修正履歴

19/02/01 改行追加

20/07/19 表現を一部修正

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