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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
5章 貴族への階段(190話~255話)
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都市長のお仕事7

ここまでのあらすじ


魔石採掘機の現場に立ち会ったコウだが、賄賂を断り値引きへと交渉した結果

交渉担当のネミエスから睨まれる結果となった。


その後時間があったので、この採掘機の仕組みをあまりわかっていない俺のために、パミルが簡単な装置の説明をしてくれる。


その間、今回の取引担当であるネミエスとノットリスは、後からやってきたハース魔動機械の作業員たちに同行して

既存の壊れた採掘機の解体費用やその手順の確認作業を始めていた。


「この機械は魔石が壊れたり反応しないよう丁寧に地面を掘りこんでいきます。掘った魔石や石を含む土は細かな土とそれ以外に分類して

 1つ前に掘った穴へ土だけを放り込んでいく仕組みです」


「なるほど。でも魔石ってそんな簡単に魔力に反応してしまう物だったか?」


魔物を倒した時に得られる魔石は何度も触れたことがあるが、魔石が勝手に魔力となって霧散するところなんて見たことがない。


「都市長様は魔石をご覧になったことはないのですか?」


「いや、購入したこともあるし、魔物の魔力が凝縮した物にも触れたことはあるんだが」


一瞬俺ってそんな世間知らずに見える?と焦ったが、魔石くらいは師匠のお使いで買いに行ったこともある。

まぁ、貴族の中には買いに行ったことがない者がいてもおかしくはないのだろう。


「ということは、地面から掘り出した魔石は扱ったことがないのですね。地面に埋まっている魔石は強い魔力に反応して魔力を放出してしまうことがあります。

 魔物の魔石は特定のパターンが刻み込まれており簡単には分解しませんが、地面の魔石はパターンがないのですよ。

 なので掘り出した後に使うには更に加工が必要ですし、魔石を掘り出すのは機械か素体の者の人力が必要になるんです」


「そうだったんですか、勉強になります」


「えぇ、えぇ…」


それくらいも知らんのかという反応をされた気がしたが、一度知ってしまえばそれでいいんだ。

今まで知らなかった自分を恥じる必要はない…はずだ。


「それで一定の深さまで掘りえると、レール沿いに機械を動かしまた掘り始めるという流れになるのです」


他にも動作に関してある程度細かいことまで教えてもらった。

レールの延長なども随時行ってくれるので、これからもハース魔動機械にはお世話になるだろう。


聞いた内容から、作業員の主な仕事は掘り出した土から分けられた石と魔石の選別だろう。

他には掘り終えた穴の近くに簡単に掘り出せる魔石がないかの確認、後は機械の動作や簡単なメンテナンスくらいになる。


売り先は師匠たちの国で決まっているのでそこも心配いらないし、これなら収入も約束されたと言っていいだろうな。

となれば一番の問題は稼働開始の時期だ。


「それで、稼働できるまではどれくらいかかりそうです?」


「この壊れた機械を回収している間に設置準備のほとんどを終わらせられるでしょう。それに今は他の新規注文もないので、遅くとも4(つき)後には」


パミルの言葉に俺は思わずガッツポーズをしたくなった。

当初の予定では半年程かかるといわれていたので、1月は短くなったといえる。


試算上、今の税収よりもこの魔石採掘による収入の方がはるかに大きくなるらしいので、1日でも早く稼働できるのは僥倖と言っても過言じゃない。


「それはありがたい、こちらとしても1日でも早く稼働してもらえると助かるので」



この後俺はちょっと上機嫌になってしばらく雑談を続けた後、ここでやることはもうないと判断しこの場から引き揚げる。


俺はあくまで責任者であって現場担当者ではない。

このままここで役に立てないまま居続けるよりは、別のところに言って手伝いでもやった方がいいからだ。


「ネミエス、ノットリス、この場は頼んだぞ」


「お任せください」


まぁ、文句は後で聞くとするかと思いつつ、まだ少し不機嫌そうなネミエスの言葉を背中で聞きながら、前から見ておきたかった住宅の建設現場へと向かう。




現場に着くとすでに2軒目、3軒目も建設に取り掛かっており完成も見えてきている。


4軒目以降も基礎はすでに終わっているようなので、これは手伝いがいがある。

丁度お昼になっていたからか、作業員たちは皆地面に座り込んで昼めしを食べていた。


「順調そうじゃないか」


俺が声をかけると責任者と思しき体格のいいおっさんが慌てて立ち上がった。


「こ、これは都市長様。このような場所を見に来ていただけるとは…」


その男の言葉を聞き、他の作業員たちも慌てて立ち上がる。


「すまんすまん、皆の食事を邪魔しに来たわけじゃないんだ。座ってくれ。俺も食事を終えたら午後は手伝うから、その時は指示を頼むよ」


「えっ、なんと?都市長様?えっ?」


手伝うと言っても俺のやれることは限られている。


驚かせてしまったが、昼飯を邪魔してまで今から説明しなくてもいいだろう。

「詳しくは後で」と簡単に告げて、俺とマナはさっさと立ち去りこの区画にある食堂へと向かった。



そこはこの一帯や各作業員に食事を提供してもらっている食堂の1つだ。

建物はこの第7区画の中では奇跡といってもいいくらい原形をとどめており、一応ここで食事も可能になっている。


以前は全く客もおらず閑散としていることの方が多かったらしいが、最近は作業員へのデリバリーにより繁盛しているようで

従業員を増員して都市内の配達に精を出しているらしい。


こういった食堂はこの区画にも他に何箇所かあるらしいが、ここのが一番おいしいと伐採の作業員たちが言っていたので、機会があれば是非一度寄ってみたかったのだ。


「普段はエニメットに昼食をお願いしているが、今日はちょっと楽しみだな」


「うーん、さすがにエニメットのよりおいしいものは出てこないと思うな~」


マナは俺の期待に少し疑問のようだが、なんでも物は試しだ。一度は行ってみないと新しい発見もないからな。


店に着くと外に10席ほど、中にも席が多数見える。

別館のような場所は扉が閉められ中の様子はうかがえないが、思っていた以上の規模で驚いた。


「いらっしゃいませー」


俺たちに気がついたのか、中から一人若い女性がやってきた。


「2名だが、今は大丈夫か?」


「ええ、それではお好きな席にどうぞ、えっと、メニューは4種類ですが…」


「じゃ、一番おすすめのものを頼むよ」


そう言って俺たちは外にある席に向かい合って座った。

少し椅子がきしむがそこは我慢するしかない。


マナがちょっとだけ不満そうだったが、そのわかりやすさに俺は苦笑いする。


「ええっと…それでは唐揚げでよろしいでしょうか?」


「あぁ、2人分頼む」


注文を受けた子はすぐに店の中へと入っていった。

店の中にはちらほらと客がいるのが見えるが、混雑するほどではない。


まぁ、家の多くが崩壊している地区だし、昼時に客がほとんどいなくても無理はないが寂しいものだ。

今やっている計画が進めばここも客があふれるようになるだろうか、そう考えながらマナを見ると何か言いたげにしている。


「どうした、マナ」


「どうしたって…なんでわざわざこんなところに食べに来たの?」


「いや、みんながおいしいって評判だったしさ」


「ふーぅ、どうせ市民の感想なんだから師匠は真に受けすぎだよ」


マナが言うように朝からうまいものを食っている俺たちにはいまいちかもしれないが、それはそれで味の水準が知れるしいいことだと思うんだけどな。


「それで、午後は師匠どうするつもりなの?」


「あぁ、さっきの建築現場を手伝おうと思ってさ。材料は来ているらしいが組み立てや建築が手間取っているらしいので、そこを俺がサポートしようと」


「ふーん、風の魔法とかで?」


「それもあるけど、魔力で包んで物を動かす物体移動があるだろ。あれで建材を高い位置に物を運んだりさ。重い物とか特に俺が運ぶと楽できると思わない?」


マナが少し考えた様子を見せ、すぐに笑顔になる。


「それなら私もできるから手伝わせて。護衛は街中だし最小限で大丈夫でしょ」


マナは火属性なので人や物を運んだりするのが難しいと思っていたが、魔力で包んで運ぶいわゆるテレキネシスのようなものなら彼女にも可能だ。


「そうだな、じゃ、マナにも手伝ってもらうか」


話しているうちに唐揚げが届く。

まぁ、間違いなくから揚げだが、何を揚げたものなのかはわからない。


「4ルピになります」


身なりもいいし魔法使いだと思ったのだろう、ルピ単位で請求された。

さっき見たメニューには365ヒールとなっていたが、ここはけちけちしても仕方がないか。


「じゃ、2人分で8ルピね」


俺が手渡すと彼女は喜んで去っていく。


「えぇ、私も払うよ~」


「いいって、その分今日は護衛と作業の両方頑張ってもらうから。期待してるよ、マナ」


「うーん、いいよ、了解」


ちなみにこの唐揚げは食用の鳥を揚げたものらしいが、地球での鳥唐とも道場で食べていた鶏のから揚げとも違う味だった。

結構うまかったのでまた来たいなと思っていたところ、マナも結構気に入った様子なので安心した。


「師匠が来るのなら、また一緒に行ってもいいかな」


最初不満を言ってただけにバツが悪かったのか、俺から視線を逸らしながら呟いていた。

可愛い奴だなと思い少しからかいたくなったが、さすがに外で人の目もあるのでやめておく。


今回の賭けは勝ったようだ…後はこの鳥が真っ当なものだということを祈ろう。

まぁ、魔素体の俺たちなら、少々毒素があったとしても魔法で解毒できるんだけど。




食事を終え建設現場へと行くと、なぜかメルボンドがいた。

今日、彼は伐採と木材加工現場の様子を見て回る予定だと聞いていたはずなのに。


「あれ、メルボンドが何でここにいるんだ?」


「突然都市長様が来たという連絡を受け、私がここにやってきたのです。ちゃんと言っていただければ手配しましたのに」


「悪い悪い、普段の様子を見ておきたいと思ってさ。メルボンドも忙しいだろうし、ここの作業が少し滞っていると聞いたから俺がちょっと行ってテコ入れでもしようと…」


俺の言い分を少し呆れたように聞いている。


まぁ、言いたいことは何となくわかるけど…プレジデンテだって現場に出て効率を上げていたし、俺も少しは頑張っておきたいんだが。

それにここは都市内で魔物の危険だってないんだし。


「はぁ~、お気持ちはわかりますが…さすがに現場が混乱しかねません。都市長様の故郷では国や都市のトップが現場で手伝いをやるのですか?」


ゲームではそれっぽいことやっていたと言いたかったが、さすがにそれはまずいと思い言い訳を飲み込む。


「す、すまん。だけどせっかく来たんだ、少しは手伝わせてくれよ。これは俺の一押しの事業なんだし」


俺を説得するのは無駄だと判断したのか、メルボンドはここの責任者を呼んで説明し、ひとまず俺が手伝えることとなった。

都市長の立場って、案外面倒くさいな…。


その後は俺とマナが加わって住民たち向け住居の建築が再開された。

どんな空中にでも足場を作れる俺と、建材をどんどん好きなところに運ぶことができる俺とマナの活躍で作業がどんどん進む。


俺たちが頑張るからか、作業員たちもいつもよりやる気が出たようで今日1日で4軒完成した。

次の5,6軒目もかなり完成に近づいており、上々の結果が出たようだ。


今話も読んでいただきありがとうございます。

次話は4/15(水)更新予定です。


ブクマや感想など頂けると嬉しいです。

誤字脱字を見つけましたら、ご指摘いただけると助かります。 ではでは。

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