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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
2章 下級貴族:アイリーシア家の過去 (18話~46話)
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祝宴そして悲劇の幕開け

ここから2章本編の始まりです。過去変になります。主人公のじゃないけど。

楽しんでもらえるといいんだけど、不安ががが。

とにかく書き続けるのみです。

貴族は魔法使いになれる才能がおおむね高いため、11歳である程度の能力を調べ12歳になると魔法使いになるのに必要な契約の儀式を行う。

魔法使いになった者は12歳から下級魔法学校へ、15歳から中級魔法学校へと通う。

そしてその中から優秀なものだけが18歳から3年間この連合に2つしかない上級魔法学校に通うのだ。


この日アイリーシア家は都市アイリーの城内でパーティーを開いていた。

このパーティーはクエスのルーデンリア上級魔法学校に首席で合格したことを受けてのものだ。


上級魔法学校の中でもより優秀なものたちが集まるルーデンリア上級魔法学校で首席合格となれば

それは国上げてお祝いしてもおかしくはない。


ちなみになぜ合格時に首席とわかるかというと、ルーデンリア上級魔法学校では入学時に全員順位が明示されるからだ。

この学校では常に順位が示された環境で3年間競い合っていくことになる。



上級魔法学校にトップで入学ともなれば下級貴族でなくとも非常にめでたいことであり、その者の将来を期待し一門を挙げて祝賀会をやることがあるが

アイリーシア家は下級貴族に属しているだけあって、発言権はあまり強くなく他国へのアピール力も大きくはない。


それに加えアイリーシア小国は、少々異端な属性を持つ国家であるため一門内でのつながりが弱く

今回は娘の門出を祝して自国内だけでパーティーを行うことにした。


祝い事やると決めた時、娘たち3人がそれぞれゆっくりと喜びを分かち合いたいと主張したので

国王と王夫は相談し日程を2日に分けて、初日は国内向けパーティーとし、2日目は身内や親しいものだけで小さめの祝賀会にする構成にしておく。



初日、城の中庭の芝生に20近いテーブルを用意し、数多くの食事と酒をせっせと準備する侍女たち。

パーティーの出席者はこの国の兵士の幹部組と一部の大臣たち60名ほどだ。


またそれ以外に、姉妹の面倒を見てきた侍女たちの一部も出席していた。これはクエスからの強い要望だった。

この初日のパーティーは華やかではあるが、他の国からのゲストはいないため全員やや緩い格好をしている。

主賓のクエスも動きやすい簡単な服装で父母の間にいた。



中庭が見渡せる少し高いきれいな石造りのフロアに国王とその夫、そしてクエスが立っている。


「クエス、いよいよ1月からルーデンリア上級魔法学校に行くことになるな、頑張るんだぞ」

父オーリスがクエスを見ながら笑顔で言う。


「クエス、無理をしてはいけませんよ。問題があればすぐに連絡しなさいね」

母であり国王エルミがクエスに優しく語る。


「父上、母上、ありがとうございます。あと1月先ですが向こうで必ず立派になって戻ってきますから」


父と母への話を終えるとクエスは会場に向かって一礼をする。


「1月後、3年ほどこの国を離れますが立派になって戻ってきます!それまでは皆さん、父を、母を、妹たちを、そしてこの国をよろしくお願いします」

そう言ってクエスはパーティー会場の出席者に向かって再び深々と頭を下げ、出席者たちからは拍手で迎えられる。


下級貴族と言えども上級魔法学校に入学することはさほど珍しくはない。

下級とはいえ貴族として国を治めているだけあって、魔法の才能にそこそこ優れているので入学するだけなら何とかなる。


ただクエスは上級魔法学校でも格上のルーデンリア上級魔法学校に主席の合格だ。

将来はこの国の国王かルーデンリア光国最強の光の守護者の一員になるかと、周りの期待も大きかった。


「今日は私の長女クエスの祝賀会だ!祝いに来てくれた皆の者たちよ、私たちからの日頃の感謝の気持ちだ。思う存分飲み食いしてくれ」


王夫の掛け声で会場内は盛り上がる。クエスに対して多くの者たちが手を振っていた。

城内の多くの兵士たちにも酒と普段より良い食事が振舞われて国全体が祝賀ムードになっていた。


パーティー会場内では幹部兵士や内政の大臣などを相手にクエスが感謝を述べながら挨拶周りをしている。

参加者たちは口々に「クエス様おめでとうございます」と言い合い

クエスは照れたように「ありがとうございます」と笑顔で返していた。


会場にいた総隊長のベルグドがクエスに声をかける

「クエス様おめでとうございます。これからは剣技の訓練ができなくなると思うと私も寂しくなります」


にこやかなベルグドをみてクエスは笑顔で会釈すると

「まだ1月あるので、厳しい稽古をお願いしますよ」

と、クエスは元気そうにこぶしを突き出して見せた。


「うむ、2年後はエリスの番だろうな。あの子も優秀だからなぁ」

3女の父親であるオーリスは誇らしく思うものの、次々と娘が領内から出ていくことになりそうでわずかな寂しも抱く。


「それに、あいつは少し性格が変わっているから心配だな。無理に上級魔法学校に行かずとも、いや、だが貴重な経験にはなるしなぁ…」

「あなたのわがままで娘の人生の幅を狭めるのは良くないですよ」

母であり国王のエルミが父の独り言を諫めた。


「そうだな。しかし3人ともここまで優秀だとうちの国もこの先盤石だろうな、うんうん」

「ええ、そうですね。今はまだまだ未熟な部分も目には付きますが、10年、20年後は本当に楽しみですね」


国王とその夫はこの光景を二つ並んだ豪華な椅子に座りグラスを片手に、将来を考えて物思いにふけっていた。



一方パーティー会場から少し離れた場所

芝生の庭園を囲む壁の上に座って空を見ている少女がいた。

肩までは届くかどうかの薄い青色の髪をした次女エリスだ。


城壁から外側は4メートルほどの崖になっているが

優秀な魔法使いにとっては危ない高さとは言えないし、いつもそういう所にいるエリスなので特に誰かが注意することはなかった。


エリスはこの国の第2王女だが普段からあまりものを言わない大人しい少女と思われていた。

しかし練習の時には淡々とした動きで、見る者に空恐ろしさを感じさせることから、城内でもあまり良いイメージは持たれていない。


本人は色々と語る事は好きではなく、あまり他人からの評価も気にしないタイプだったこともあり

その評価を知ってはいたものの、特にそのイメージを払拭するような行動はとっていなかった。


「エリスお姉ちゃん、こんなところで何やってるんの?あっちでクエスお姉ちゃんのパーティー始まってるよ~」


三女の妹ミントがエリスの後ろから近づき声をかける。

ミントはクエスや国王エルミと同じ系統のやや濃い緑の髪でツインテールにしていた。


「私も頑張らなきゃな、と思って空を見ていたの」

淡々と独り言のように空に向かって返答する。


そんなエリスを後ろから抱きつき、城壁から芝生側まで引っ張る。

ミントは長女のクエスとも仲がいいが、エリスのことは特に大好きでとても仲が良かった。


「ん、わかったわミント。私もあいさつくらいは必要ってことでしょ?」


引っ張られて転んだエリスは渋々起き上がり会場の方を向く。

会場は盛り上がっているようで、その騒がしいさが少し離れたここまで伝わっていた。


「めでたいことだし騒がしいのも嫌じゃないけど」

「だったら気分が変わらないうちに行こう!行こう!」


姉クエスのお祝い事が嬉しいのだろう。

はしゃいで元気そうにするミントにエリスは抵抗を諦め、大人しく会場の近くまで引っ張られることにした。



会場の近くに来るとエリスはちょっとした違和感を感じる。

みんな笑顔で楽しんでいるように見えるが、不穏な緊張感がところどころ走っているように感じる。


「ん、んー、何かちょっと変な雰囲気」

「え?そうかなぁ?確かに今日のパーティーは屋内じゃなくて外だけど別に変った雰囲気じゃないと思うよ~?」


エリスの突然の反応にミントは疑問を返した。

皆グラスを片手におめでとうございまーす!と盛り上がってるパーティー会場にしか見えないからだ。


「なんだろう、何人かの視線が変だと思う。ミント、悪いけど母さんに伝えてもらえないかな」

そう言いながらもエリスはミントを見ることなく会場から視線を外さない。


「えー、って反対してもエリスお姉ちゃんには無駄だから一応伝えてくるね」

そういって駆け出した直後、後ろから見慣れない格好をした兵士が2人近づいてきた。


出席者の数は多分、あの会場だけで一致しているはず。

中庭の外れに警備を配置しているのも不自然だし、恰好からしても近衛兵でもない。この人たちはおかしい。


エリスは何か良くないものを感じてとっさにミントに指示を出す。

「ミント、ケイ2、お願い」


ミントはエリスの緊急事態確信大の<ケイ2>を聞いて、表情を変えて会場に走り出した。



駆け出すミントには大して興味も示さず、二人の兵士はエリスに近づいていく。

片方は若くて少し軽そうな雰囲気で、もう一人は割としっかりした雰囲気だ。


「エリスお嬢様、我々は警備の巡回ですよ。そんなに怖い顔をしないでください」


にこやかに若い方の兵士が語る。だがエリスは警戒を緩めない。

エリスが地面に対して指を右から左にやる、途端にエリスと巡回の兵士との間に背の低い氷のラインが出来上がった。


「そこから先に進むのなら容赦なく攻撃する、立ち去りなさい」

エリスの厳しい態度に思わず驚いたのか2人の兵士は後ずさる。


「え、エリスお嬢様落ち着いてくださいよ。我々は…」

「聞く気はない、立ち去って」


しっかりした兵士は自分の言葉をさえぎられて拒絶されたのに驚いたのか、少しおろおろとしだす。

だが何を言っても無駄そうだと思ったのか、兵士たちは仕方なく後ろを向き歩き出した。


その時だった。エリスの右側、崖を這い登ってきたと思われる兵士が壁から一人飛び出し、光の四角いシールドをエリスに向かって飛ばしてきた。

咄嗟のことでエリスは反応が遅れたが、周囲に魔力を出して威力を相殺しつつ右腕でガードするも吹き飛ばされる。


「しまっ…」

飛ばされながらエリスは一瞬で型を作り<十の氷矢>を発動し計3人の兵士を狙う。

兵士たちはガードするも安全のため距離を取り、エリスに対して攻撃態勢をとった。



これはみなに知らせないといけない、明らかにまずいことが起こっている。

そう感じたエリスは矢を放った後飛ばされながら詠唱し、立ち上がって空に向かって手を掲げる。

<氷岩落とし>を発動させた。


「これできっと気付くはず」エリスは期待を込めてつぶやいた。

3人の怪しげな兵士たちはエリスの作り出した氷の塊が出来上がる早さに驚き、ガードしようと自分の手前に<光の強化盾>を発動する。


その頃ミントは走って会場内を抜け、国王である母親エルミのもとへとたどり着きエリスからの緊急事態を報告する。


「お母様、エリス姉さんが怪しい人を発見しました。急ぎ警戒態勢・・ぅえ?」


ミントがそう報告していたとき、エリスが4mほどの上空に作り出した巨大な氷の塊は兵士たちを狙わず会場の近くに向かって落ちた。

地に落ちた巨大な氷の塊はその見た目の恐ろしさに反してとても脆く、細かく砕けて会場内にまで飛び散る。

砕けた小さな氷が派手に飛び散ることで、多くの者が異様な状況に気が付いた。


魔法紹介

<十の氷矢>共通魔法:10個の矢のような魔力の塊を飛ばす。個別狙い可能。

<氷岩落とし>20㎝くらいの氷の塊を空中に作り出し相手に落とす。

<光の強化盾>共通魔法:普通の盾より硬い。速さと硬さのバランスはまぁまぁ。

共通魔法とは他属性で同じ型でも同じような魔法が展開できるもの。


いつも読んでくれている皆様、ありがとうございます。

毎日更新は日々厳しい状況ですが、ぼちぼちとやっていきます。


修正履歴

19/06/30 上級魔法学校の期間を2年に変更

20/07/16 かなり文章が変だったので大幅に修正。

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