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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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魔物討伐戦16

ここまでのあらすじ


魔物討伐が完了し、祝勝会が始まる。コウに絡むやつも出てきたがそこはボサツがきっちり追い返した。


その後料理を堪能しつつ初めてのお酒を飲んだりして俺たちは楽しい時間を過ごす。

ちなみにこの世界では魔素体になったらお酒は年齢に関係なく飲んでいいらしい。


泥酔したとしても魔法で回復できるので安心だが、急な戦闘が始まらない限り普通は酔った状態を楽しむ。

その辺俺は酒初心者なのでシーラに勧められた甘いものやすっきりした低アルコールのものを中心に飲んでいる。


美味しい料理をつまみつつトマクがやっていた料理を口に運ぶのを真似したり、今日の戦いでどこが良かったとか笑いながらマナやシーラと話した。


精神的にも肉体的にも疲れた魔物討伐だったが、無事に終えた今となっては楽しく貴重な経験だったと言える。

そんな中、時々話したことのない人がやってきては挨拶を交わしたが、功績をあげたからか準貴族の俺に対して結構丁寧な対応ばかりだった。


スタッフに何度目かの料理を取ってもらっていた時、護衛数名と共に当主メルティア・シヴィエットが会場の前方にあるステージへと上がる。

3人で食べながらそれを見ていると、魔法で声を大きくしてメルティアが話し始めた。


「本日は我々一門の危機を助けていただき感謝する。数日は見込んでいた魔物討伐がたった1日で片付いたのは幸運だと言えよう。

 今宵は大物討伐の賞金授与と共に感謝を述べようと思い足を運ばせてもらった。クエス・アイリーシア、コウ・アイリーシア、両名はここにいるか?」


確か最後の報告会で表彰式はやらないと聞いていたんだけど。

とはいえ、今更ぼやいても仕方がないので俺は弟子たちに背中を押されつつステージへと向かう。


先にクエス師匠が来ていて俺はその後ろを付いて行く形でステージへと上る。


「そちらの希望通り簡単に済ませる。分かるがそう不満な顔をするな」


メルティアは笑顔で自信ありげに堂々と話す。

師匠も抵抗する気はないようで呆れつつも仕方ないかといった感じだった。


「簡単に済ませるぞ、クエスは大木の巨人と岩角の狼を1体ずつ討伐。80万と5万で計85万ルピの進呈だ」


メルティアの言葉とともに頭上に800,000と50,000と表示された光が、少し経つとバラバラになって師匠の左手に集まっていく。

クエス師匠に左腕の上に所持金が表示され、それが増えていくのが見えた。


ずいぶんとおしゃれな・・いや、ちょっとオーバーな演出だが、TVとかで見ていた100,000と書かれた大きなパネルを持ち上げてアピールする演出よりはましかもしれない。

あっちは安っぽいもんな。まぁ、よく考えると目の前のこれもあまり変わらないけど。


「次は、コウ・アイリーシア」

「は、はいっ」


初めて見る光景に俺は思わず見とれて考え事をしていたので、名前を呼ばれたことに1テンポ遅れて気づき慌てて返事をする。


「コウは岩角の狼1体を討伐、初参加にしては大した活躍だ」


メルティアがそう言うと再び頭上に50,000という数字が光りで表示される。


それが光の粒子となってバラバラになり俺の手のひらに集まっていき、左腕の上に表示された所持金が97,900から

上の桁の数字が現れて147,900となった。


それを見てちょっと感動していたが、すぐに礼を言っていないことに気が付き軽く頭を下げる。


「ありがとうございます」

「それなりの働きをしたのだから当然だ。礼は不要」


それだけを告げるとメルティアは会場全体に顔を向ける。


「後1時間程は自由に飲み食いして構わない」

そう言ってステージから去っていった。


かなりあっさりとした賞金授与だったが、メルティアはある意味貴族のトップである当主らしい司会だった。

賞金の授与式みたいなものが終わったので、俺は師匠と共にステージから降りる。


「まぁ、せっかくなのでもう少しは楽しんでいきなさい。帰る時はちゃんと声をかけるから」


そう言って師匠はすぐに別の人の方へ向かって行く。

偉いと色々と忙しくあまり浮かれる時間もないのだろう。


俺は周りを見て改めてこの祝勝会に感謝しつつ、もう少しこの雰囲気を味わうことにした。



◆◇◆◇



クエスはコウと別れてユリオンのいる融和派が集まっている場所へと向かう。


見えてきたのはすごく不満そうなルルカにそれに手を焼いているトマク

さらにそれをうまくなだめているユリオンに、そのそばで不満そうにしているユリオンの部下メビス・レンディアートだった。


クエスがそこへと近づくと、ルルカが歯を食いしばるようにして不満を口に出すのを我慢しながらこちらを睨む。

おおよその流れを理解し近づきたくなくなったクエスだったが、どうしてもユリオンに話をしたかったので仕方なく声をかける。


「ユリオン、ちょっと話良いかしら?」


「おっ、一光様。今ちょうど一光様の話が出ていたんですよ」

「出てません!」


笑って話すユリオンにルルカが反発し、それ以上話させまいと強引に止めようとする。

クエスはそれを冷めた目で見ていた。


するとトマクが空気を呼んだのか、強引にルルカを引っ張っていく。

開放されてほっとしながらユリオンはクエスの元へとやってきた。


「なんか、お楽しみのところ悪いことをしたみたいね」


「いやいや、一光様。その冗談はさすがにきついですって。それで、話って何です?」


「ちょっと風の国の大将メダリススと渡りをつけて欲しいのよ、相談したいことがあってね」

「へぇ」


それを聞いたユリオンは何か面白そうな話かなと顔をほころばせる。

あまり首を突っ込まれたくないクエスは顔をすぐにしかめると、ユリオンは軽く笑って1歩さがる。


空気を読んですぐに立ち位置を変える上手さは、さすがと言ったところだ。


「いいよ、早い方がいいなら明後日には都合つけておきますよ」


「助かるわ。こんな席でいきなりの頼み事悪かったわね」


「いやいや、ルルカ嬢から助けてもらった分くらいは働きますよ」


別に貸しはないですよとアピールしながらいろんなつながりを作っていくのがユリオンの巧妙さだ。


クエスもそれはわかっていたが、ここはコウの探知範囲の件で早急に風の専門家に当たっておきたいので

軽い貸しを作ったと思いつつ彼の言葉に甘えることにした。


これで何とかなったかなと思った矢先、トマクが抑えることに失敗したのかルルカが堂々とクエスのところへとやって来る。

それを見たユリオンはこれ幸いにと急いで席を外した。


後ろで頭を下げるトマクを見ながらルルカの愚痴を聞いてあげることにし

結局クエスはこの後10分ほど興奮したり泣きそうになるルルカに付き合わされる羽目になった。



その後いろいろな人物と近況報告を兼ねた顔合わせを済ませ、クエスはコウの所へと戻る。


ボサツが一度横やりを入れた影響からか周りの者たちはコウに深入りできず、思ったよりは人だかりができていない。

コウの周りにはシーラとマナが脇を固め、その周囲にルーチェとユリオン、さらにライノセラス家の第3王子バルクも会話に参加していた。


「バカスが息子をけしかけたのね」


ぼやきつつコウへと近づくクエスだが、全員食べ物の話で盛り上がっているようで悪い雰囲気ではなかった。

コウを含めユリオン以外は王の子供たち、つまり若い者たちだけで盛り上がっているようだ。


ちなみに戦争後に生まれた者達は新世代と呼ばれているが、その中にはもちろんクエスも入っている。

ただクエスの場合はあまりに過酷な環境での戦闘経験が豊富なため、戦闘経験の少ない新世代に入れられないこともしばしばだが。


そんな若い者たちが話している内容がくだらないからか、ユリオンがいまいち入り込めておらずクエスから見ていて面白い光景だった。


「楽しんでいるようね」

「あっ、師匠」


コウが振り返って笑顔を見せる。


「そろそろ帰るわよ」

「わかりました」


コウが了解するとシーラとマナも弱めのお酒を飲み干してグラスをスタッフに返す。

ルーチェとバルクは笑顔で手を振って去っていった。


ちなみにユリオンはいつの間にかいなくなっている。

立ち回りが上手いというか、身のこなしが軽いというか、ついつい警戒したくなるがあれはあれで使える男でもある。


クエスたちは多くの貴族や兵士たちに声をかけられながら楽しい宴会の場を一足先に後にする。

そして転移門でいつものアイリーシア商会を経由し、アイリーシア家占有地の本家側へ飛び道場への帰宅となった。



ちなみに今回の都市ボーキュトスから転移門で飛ぶ際に、転移門を警護する兵士たちから英雄扱いを受けたコウが照れながら軽く頭を下げると

兵士たちは慌ててより深く頭を下げてコウにもっと堂々としてくださいと進言していたのが、クエスはツボにはまったらしく大笑いしていた。


横にいるボサツは収拾のつかなくなったその場で呆れながら困り果てていたが。



本家から道場への通路を開くとクエスたちはそこで別れる。

既に夜遅くエニメットは普段だと寝ている時間だったので、そのまま自分たちも寝ようかと相談していると庭の方が明るくなっているのに気が付く。


「こんな遅い時間まで練習でもやってるのか?」


「私たちが予定通り明日帰宅だったら今日1日はエニメットの自由時間でしたから」


「ん~、そう言われると今日中に帰ってきて何か悪い気もするなぁ」


「でももう帰ってきちゃったし、今更こっそり部屋に戻るのも」


「だな、しょうがない」


結局3人はそのまま庭へと向かい、魔法の練習しているエニメットに声をかける。

エニメットは皆の早い帰宅に驚いたが、すぐに笑顔で皆が無事で帰ってきたことを喜んだ。


その後すぐに大部屋へと行くと、今日のことを聞きたがるエニメットを中心に話が盛り上がった。

その中で今回の討伐での報奨金の話が出る。


「それで、今回の討伐金なんだけど・・4:3:3で分けるとかどうかな」

3分割する案は案に拒否されているので、コウはあまり妥協しているとは言えない妥協案を出す。


「反対です」

「反対かなぁ」


「えぇ、なんで?」

コウはちょっと自分を多めにと提案したが、今回も即刻却下された。


「普通、弟子の分は師匠が貰います。弟子はせいぜい小遣い程度ですよ」


「いや、でもさクエス師匠だって俺にちゃんと分けていたし」


「それは師匠に私たち弟子がいるからです。現状私たちは特にお金も困っていませんし、師匠が持っておいてください」


かたくなに拒否するシーラにコウはただ困っていた。


「だったら私たちが必要な時にお願いするから、その時に師匠が出してくれればいいかな」

「それいいですね」


マナの提案にシーラも乗っかり、エニメットまで賛成したことで1:3となり、コウも渋々その意見を受け入れる。

他人のお金を管理するという経験のないコウだったが、ここは師匠という立場、そう言うことにも慣れておくべきだと思うことにした。


大物との戦闘の話から怪我の話になったが、コウの傷は浅めで問題なし、マナの怪我についてはテントに戻った後ボサツ師匠の治療でほぼ完治していたが

シーラが岩角の狼から受けた怪我については骨にひびが入っており思ったより重傷で、コウはカプセルで治療することを勧める。


ちなみに祝勝会では痛むのを<痛覚鈍化>を使い続けて誤魔化していたらしい。

せっかくの祝いの席だっので、そこを責めるのはさすがにかわいそうだと思いコウもとやかくは言わなかった。


治療カプセルを使えば6時間ほどで完治するということだったが、帰ってきたすぐカプセルというのはさすがにシーラも凹んでいる。

凹んでいる理由はカプセルが嫌なだけではなく、戦闘で心身共に興奮している今、コウとより一層盛り上がれそうだと考えていたからだ。


とはいえ、放っておける程度の軽傷ではないので、コウはシーラを説得する。


「ちゃんと治しておかないと明日からの修行に障るよ」


「だけど・・明日の朝にはちゃんとカプセルに入るから今夜だけは」


「いや、もう今日は寝るだけなんだから今のうちに回復しておこうよ。今日の戦闘の復習は明日の朝からやるんだし」


「いや、でも・・うーん」


シーラはマナを見ながらちょっと悔しそうな顔をする。

だがコウはシーラの手を取って優しく説得する。


そのままコウは説得を続け、シーラはしぶしぶカプセルに入ることにした。

入る前に2人が話しているのを見てコウは弟子たちの仲の良さにほっこりしていたが、そこは勘違いしている方が幸せかもしれない。


その後エニメットも自室に戻ると、マナはコウと一緒に寝るとわがままを言い出して、数分間しがみつくマナに折れたコウは自分の部屋へと招き入れる。

これでシーラより1歩リードできるとよろこんだマナだったが、2人とも疲れきっていて結局すぐに寝てしまった。


こうして魔物討伐は終わり、コウたちに日常が戻ってきた。


これで4章が終わりました。次回はおまけ話とか、設定とかかな。

今怒涛の27連勤の途中で気力が根こそぎ奪われ中ですが、更新は頑張ります。はい。


さっさと5章行けと言われそうですが、ごまかしの時間がいただけると・・助かる。。。

何か質問等ありましたら、感想などを使ってお気軽にどうぞ。

もちろん、ブクマや評価、誤字脱字のご指摘も大歓迎です、嬉しいです。すごく嬉しいです。


次回は2/6(木)更新です。 今ちょっと書きかけのおまけ?話、要らない気もするなぁ、でもなぁ出したいキャラがいるんだよなぁ。

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