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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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魔物討伐戦11

ここまでのあらすじ


クエスたちはようやく状況を理解し、部隊を二手に分けコウたちを後方へと向かわせた。


俺はクエス師匠から指揮を任され、部隊後方にいると思われる狼狩りの指示を受けた。

こういう状況で戦場未経験の俺に部隊の指揮を任せるのはどうなのかとも思ったが、マナやシーラがいる以上この部隊分けが最適なのかもしれない。


ベルフォートさんを指揮官にすれば師匠たちは2人だけになるし

こっちの部隊では俺がピンチになればマナたちがベルフォートさんの指揮に反して勝手に動く可能性もあるからだ。


部隊の指揮は当然未経験だが、作戦は後方に行き狼の残党を始末することで複雑なことは要求されていない。

それに戦闘中弟子たちに指示を飛ばしながら戦うやり方は師匠たちのとの1対多の訓練でやってきたことなので、今更できないわけじゃない。


俺の先頭にマナを配置し、俺の後ろにはシーラ、その後ろに荷物持ちの3人という陣形で森の中を進む。

マナはこういった森の中で同じ道を戻る経験もあるらしく、先頭のガイド役としては最適だ。


それを俺が広範囲の索敵でカバーしながら進む。

進みながらだと先ほどのような広範囲を探知するのは難しいが、<風のサーチ>と魔力拡散により80m近くは探知可能だ。


「なぁ、師匠は連絡兵のことに言及しなかったけど、助けても別に構わないんだよね?」


俺は走りながらマナに聞いてみた。


「別に助ける分にはいいと思うけど、そのために無理はするなってことじゃないかな」


「だよな」


どうするべきか困っていたが、マナの一言で可能な限り連絡兵を助けるという方針を決める。

そんなやり取りが聞こえたのか、後方の3人の荷物持ちの一人が俺の近くに来て大きめの声で話しかけてきた。


「コウ様、我々は覚悟をもって一光様の部隊へと志願しています。まずはご自身の身と作戦の遂行をご優先ください」


「あぁ、わかってるよ。ありがとう」


荷物持ちをやっている兵の言い分もわかるのでとりあえず笑顔で返す。

とはいえ、師匠は出発前の作戦会議で『誰一人欠けることなく』と言っていた。


物事が理想通りにいかないことくらいわかっているつもりだが、ここは連絡兵を助けることで師匠の言葉が曲がらないよう努力したい。

そんなことを考えながら黙々と十数分ほど森を駆け抜けていると、左右に魔物の反応を感じた。


「左2、右1、70mほど」


俺が探知した瞬間マナとシーラのゴーグルにも表示されるのでいちいち口に出す必要もないのだが

帰り道が間違っていないかを確認しながら進むマナには、声掛けの方が楽だろうと思ったのだ。


「私が左を」


そういうと進む速度を緩めずシーラが型を3つ作って、<光一閃>を2発放つ。

40m近くまで接近していた狼を見事に打ち抜いたのか、左の狼がほぼ動かなくなる。


その間に俺が右の狼1匹を木々の間を抜ける<風刃>を飛ばして絶命させた。


マナは特に何も言わず黙々と進み、それを俺たちが追いかける。

全てを任せたと語るマナの背中から、俺に対する大きな信頼感を感じた。


さらに森の外へと進むにつれ土の狼と出会う頻度が高くなる。

まるで森の中へと進んで切る気分になるが、木々の間隔が開き始めたので方向は間違っていない。


時々討ち漏らして接近されることもあったが、シーラが障壁で足止めしたり俺やマナが直接剣で切り落とすことで対応しながら進んだ。

こうやって見ると2人とも本当に頼りになる。


こんな弟子を持てて俺は幸せ者だな、そんなことを考えながら進んでいる時だった。

大きな魔力反応を感じて俺はマナが進むのを止める。


「ストップ。大物がいる、たぶんさっきのやつとほとんど変わらない感じだ」


「師匠、さっき連絡兵が緊急事態の信号弾を上げたのはもっと先だから、今から救援は厳しいかもしれない」


死亡している、そんな言葉をあえて使わないマナの優しさを感じた気がした。


「わかった・・。あれは属性有利な俺がやるから、マナは後方の3人の援護を、シーラは俺とマナたち両方のサポートを頼む」


最初は俺とマナであの大物を倒そうと思っていたが、索敵範囲を広げるごとに周囲の魔力反応がぽつぽつと増えていくのを見て作戦を変えざるを得なかった。

3人もある程度戦えるらしいしが、この数だと3人だけの対処は難しいかもしれないからだ。


連絡兵の元へいち早く駆けつけることも大事だが、まずは自分の任された部隊に死者が出ないことを優先させる。

ここで狼たちを倒し切れば連絡兵の元への増援だってなくなるはずだ。


そう思いながらマナと入れ替わるように俺は先頭に立った。

岩角の狼との距離はおよそ50m、すでに向こうもこちらの存在に気が付いているらしく周囲の魔力を増大させている。


魔法の反応を感じ俺は広めに<水泡の盾>を展開する。

正面から飛んできた20ほどのこぶし大の岩が分厚い水の中で勢いを殺され水中から真下へと落下する。


とっさにカウンターとして放った俺の<風刃>は大きくジャンプして避けられた。

さらに木々を使って飛び跳ねて一気にこちらまで接近してくる。


「こいつは俺が、他は任せる」


今度は自分に言い聞かせるようにそう宣言して、俺はあえて向かってくる狼に対して近づくように前へと飛ぶ。


さっき師匠たちが倒した奴と比べるとわずかに小さいが、感じる魔力の質はほぼ変わりない。

2発の風刃を放ってけん制するが、岩角の狼は首元を×の字に切られながら無理やり突っ込んできた。


「マジ?」


俺はとっさに<風の強化盾>で障壁を作るが、鋭い金属のような爪が薄緑に光る障壁を切り裂くようにぶつかる。

一瞬受け止めたかと思ったが障壁にヒビが入るとすぐに砕け爪が俺の方へと迫りくる。


「<光の集中盾>」


シーラが叫ぶと俺の正面に薄黄色に光る障壁が現れ狼に一撃を受け止めてくれた。

礼を言うのを後にし、俺は足元の風の板を消して地面へと落下しながら<風刃>を飛ばす。


あまりダメージは期待できないが、少なくともこの魔法なら相手を傷つけることならできる。

だが岩角の狼は先ほどの障壁が気に入らなかったのか、ターゲットを変え木を足場にしてシーラの方を見ながら向かって行く。


「お前の相手は俺だろうが!」


シーラを狙わせまいと俺はストックから強化した<百の風矢>を取り出してすぐに放つ。


それを見た狼は<岩壁>で地面から3mほどの壁を作り出し防ごうとするが、強化した魔力の矢の大半がそれを貫き岩角の狼の胴体を中心に数十本刺さる。


ボサツ師匠と比べて数も威力も落ちるとはいえ、着実にダメージを与えられたらしく、茶毛で覆われた腹部あたりから赤い血がしたたり落ちていた。


「グルルルゥ」


やはり俺の方が危険だと思ってくれたのか、こちらを向いてうなり声をあげる狼。

<風の槍>を放つと狼はそれをかわすように斜め前へと飛んでこっちに突撃してきた。


狼の爪を受け止められる程度の小型の盾を前に出し、剣を構えながらもう一度<風の槍>を放つ。

それをかすらせながら突っ込んできた狼は爪ではなく大きな口を開く。


2m弱の巨体の狼が開く口は俺の頭など1口で飲み込めるようなサイズだった。


「師匠!」


マナがこっちを向いて叫ぶ声が聞こえるが、俺は狼のあごに<加圧弾>を使い強い力で狼の口を閉じさながら右前へと転がり回避する。


狼も左前脚で俺を攻撃しようと動いたが、急激に口を閉じられ着地もうまくいかず頭から地面に落ち、そのまま滑って木の根元に頭をぶつけて止まった。


チャンスと思い魔力を展開しつつ<風の槍>を3発倒れている狼へと放つ。

お尻への1発は命中するが、腹部と頭を狙ったものは<土の強化盾>により阻まれた。


怒りに燃える目で俺を見ながら立ち上がる狼。

口元は急に閉じられたせいか、よだれみたいにだらだらと口から血を流している。


「マナはそっちを集中、俺へのサポートはあくまで余力で、いいね」

「はい」


厳しい口調で指示するとマナは俺の声に振り向くことなく答える。

最近の師匠との訓練では俺の方を見ることなく戦えていたが、実戦となればやはり不安が増すのだろう。


逆に言えば俺がもう少し余裕を見せられれば、マナも安心して目の前の敵に対応できるのかもしれない。

もう少し実力をつけれていればと思うが、今ここで考えることではないと切り捨て目の前の敵に集中する。


5mほど先にいる狼がすっと左の飛ぼうとするのを見て俺は<風刃>を放つ。


当たれば傷を負わせることはできるものの、決定的な一撃にはならない風の刃だが

狼の動きが早くゆったりと型を組んでいる隙を見せないため、この程度の攻撃を繰り返すしかない現状がもどかしい。


それから数分間、少しずつダメージを与えるが決定的な隙を見いだせず、互いに肉体と精神を削りながらのにらみ合いが続く。



このままではらちが明かないと考え、俺は作戦を変更することにした。


「シーラ、防御面任せていいか」

俺はゴーグルからの通話でシーラに尋ねる。


「はい」

「こっちも了解」


シーラだけでなく荷物持ちを守っているマナも了解してくれたので俺はストックを使い強力な魔法の型を準備する作戦に切り替える。


このまま削り続ければ勝てる可能性もあるが、森への被害も大きくなるし連絡兵の元へ早く駆けつけたいので

こいつと悠長に戦い続けるつもりはこちらにはない。


それに、もし小型の狼が今より大量にやってくればマナやシーラではさばききれなくなる可能性も出てくる。

そうなれば目の前のこいつに俺以外の相手を狙う隙を与えかねない。


強力な一撃を用意すべく、俺は<風刃>や<風の槍>を飛ばしてけん制や軽いダメージを与えつつ、型を出し入れしては作成を急ぐ。


遠距離での魔法のうち合いだと俺が攻撃でシーラが防御、狼側は攻撃してカウンターを食らうという状況なので

3回繰り返したのち無駄だと悟ったのか、狼は直接攻撃へと切り替えてきた。


鋭い爪でひっかいてくるが俺は左手の小さな盾で受け止める。

だがその一撃の力が強くそのまま俺は吹っ飛ばされる。


しかしすぐに<受け壁>を使い、木にたたきつけられる前に空中でクッションのような空気を作り自分の体を受け止めさせる。

この隙にマナに攻撃をしてもらいたかったが、向こうは次々と飛びかかる狼を燃やしたり爆散させるのに大忙しのようだった。


激しい戦闘中で集中力が分散し、すでに50mの範囲しか狼の位置を特定できていないが、それでもマナやシーラの役には立っているようなので探知は切れない。

そのため型作りもあまりうまくいかず、いつもの倍ほど時間がかかる。


何度目かの攻撃を飛ばされつつ受け止め狼との位置が少し離れると、相手は魔力を発しながら少しずつ後ずさる。


「師匠、岩弾連打が来ます!」


シーラの声に俺は発動前で保持していた風刃を2発適当に発射して、型を作りながら水の属性に切り替える。


「ちっ、あれか」


今の距離だと最初の時より近いので威力も上がり、全弾受け止められるか怪しいがやるしかない。

狼の目の前に30個ほどのさっきより大きい石が現れると同時に俺は少し広めに<水泡の盾>を使った。


先ほどまで防御はシーラに任せていたが、この攻撃だけは1匹目の時にシーラが強化盾でぎりぎりだったことから彼女に任せるのはリスクがある。

シーラ本人もそれを理解したうえで俺に声をかけたのだろう。


盾を張ったすぐ後に狼から多数の石が発射されるが、今度は俺だけに向かってではなく広範囲に石が飛んでく。

シーラは慌てて自分の前に<光の強化盾>を張るが、数発受けるとひび割れ砕けてしまい、最後に飛んできた2発を腕と体でもろに食らった。


俺はシーラを狙われたこと、自分しか狙われないだろうと甘い考えを持っていたことに頭にきて、すぐに狼の足元に<沼化>をかける。

それと同時にストックしていた型を取り出した。


「お前はここで確実に殺る」


魔法を放つため動かず踏ん張っていた岩角の狼は、地面が急に柔らかくなり足が沈んでいくので慌てて脱出しようともがく。

俺は即座に属性を氷へと変化させると、前足の片方を上げている状態で沼を凍結させた。


後ろ足を踏み出そうとするも地面の中に埋まっている状態で凍結させられたため簡単には動かせず、狼はその巨体で転びそうになる。

それを見て今度は属性を風に変更し、一番の決め技を放つ。


「食らえ、<貫通槍(ランス)>」


貫通槍は多量の魔力を使って作り上げた槍状の魔力にさらに貫通力を全力で付与した魔法だ。


ちなみに俺がボサツ師匠に相談して作り上げた魔法で、俺は貫く槍『ランス』と呼んでいるがボサツ師匠からはそれだと風の槍と被らないかと突っ込まれ貫通槍という名称にしている。


これは俺が精霊契約時から持つ上級精霊を組み込んで作ってあるため、風の槍とは威力が比較にならないし、今のところ他に使える者はいないと思う専用技だ。


勢いよく発射された魔力の槍が、動けなくて戸惑っている岩角の狼の前足の付け根を貫き体の向こうまで貫通した。


「ぐぉおおおおおん」


予想以上のダメージをくらい、命の危機を悟ってからか絶叫する岩角の狼。

だが戦意は衰えていないようで、魔力を放出しながら頭上で型を組み始める。


形から見て再び<岩弾連打>を作ろうとしているようだ。

この距離だとこれ以上近づくのは危険だし、再びシーラを狙われるかもと考えるとそちらのサポートに行かないとまずい。


「これでも食らってろ」


そんな時、最高のタイミングでマナの叫び声と共に狼の目の間で爆発が起こり、組んでいた型が破壊される。

これはチャンスだと思い、とどめを刺すために狼の首めがけて突撃した。


狼は我を取り戻すと何とかこの場から脱出すべく、必死になり何とか後ろ足の右側を凍った地面から取り出したが

右前足が俺の一撃でわずかに体に繋がった宙ぶらりん状態になっており上手く踏ん張ることができない。


向かってくる俺を見てにらみつけるが、俺はシーラを傷つけられた自分のふがいなさに対する怒りで恐怖を感じるどころではなかった。


<加圧弾>を使って一気に加速し首元を切りつけようとするが、狼はそれに対して体全体で勢いをつけ頭で俺を殴りつけようとする。

歯で受け止めるつもりなのかわからないが、こっちだってただやみくもに突っ込んでいるわけじゃない。


「そんな攻撃食らうかよ」


俺は狼の顔に2発の<加圧弾>を当てる。

体をひねりながら俺に顔をぶつけようとしていた狼だが、急に顔が反対側へと吹き飛ばされ首が丸見えになる。


「これで・・終わらせる」


魔力のこもった剣で首元をざっくりと切りつけて反対側の地面へと着地する。

振り返ると狼は大量の血を吹き出しながらも俺を睨んでいた。


最後の力を込めてか<岩弾>を2発俺に向けて飛ばしてきたが、小さい<風の盾>で的確に防ぐと<百の風矢>を首から左前脚に向かって放った。

声も発しなくなり緩やかに崩れ落ちる岩角の狼。


凍った地面に突き刺さったままの左側の足が思ったより深くて抜けないのか、右側に倒れる際に折れていた。

俺は再び<加圧弾>を使って突っ込むと、確実にとどめを刺すために首の左横側をかなり深く切りつけた。


今話も読んでいただきありがとうございます。

久々誤字脱字も指摘いただき、感謝です。


感想やブクマ、その他もろもろ頂けると嬉しいです。

また誤字脱字、誤用など発見されましたら、ご指摘いただけるとすごく助かります。


では次話は1/22(水)更新予定です。 頑張るぞー

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