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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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魔物討伐戦4

ここまでのあらすじ


最高会議でクエスやコウ、それに各一門からの優秀な人材少数で魔物討伐を行うことになった。

◆◇◆◇◆◇



魔物討伐の当日、朝からクエスが本家といわれる隣の建物からやってきて、コウとマナとシーラを一旦本家の方へと連れて行くことになった。


なんせ道場には隠れ家にしか飛べない1人用の転移門があるだけなので、本家の方に設置してある転移門を使ったほうが妥当だからだ。


それ以外だと占有地エリアから一旦出なければいけないので時間の無駄でしかない。

3人が出発となり気合いを入れなおし、それをエニメットが見送る。


「留守は任せたからね」


「はい。コウ様もどうかお気をつけ下さい」

「ああ」


エニメットの心配もよそにコウは気楽な返事をする。

そして本家のほうへと消えていくコウたちを見送った。


コウたちが見えなくなり壁が閉じてもエニメットはしばらくそこに立続けた。


コウがいない間、エニメットの仕事は大幅に減る。

それをいいチャンスと思い、魔法の練習に打ち込むことにしていたのだ。


次の機会があれば戦場でもコウ様の側にいて役に立つ存在になりたい、そんな思いを抱きながらエニメットはずっと閉じた壁を見つめていた。



本家側の建物に入るとクエスたちはそのまま転移門のある部屋へと向かう。

時間の余裕はあるのだが、クエスは今回総指揮をとる立場なのであまり遅く到着するとさすがにばつが悪い。


マナが本家の建物内の綺麗さに見とれながら歩いているとすぐに転移門のある部屋へと到着し

一度アイリーシア商会へと飛んでから、魔物討伐に参加すべく今回の目的の都市ボーキュトスへと飛んだ。




都市ボーキュトスのエリア3、いわゆる一番外側のエリアの外壁近くへと到着したクエスたち一行。

兵士たちはクエスの姿を確認するとその期待からか笑顔を見せ、簡単な確認の後すぐに転移門の外へと案内する。


明らかに好待遇の中、クエスたちはそのまま兵士の先導で城郭都市外へと移動した。

ちなみに全員各貴族家が出している身分証を提示したが、マナの身分はあの一件が解決してからアイリーシア家預かりとなっている。


城郭都市外に出るとすぐ目の前の平地には、簡易式の大きなテントがいくつも建てられていて、兵士たちが周囲を警戒して巡回をしていた。


魔物討伐とだけ聞いていたコウはその光景にとても驚く。

コウのイメージでは冒険者がいくつか集まって、各チームで野宿とかしつつ魔物を狩るのに近いものを想像していたので

小規模とはいえガチの軍事野営地を見せられるとは思っていなかったのだ。


コウは初めて見るこの軍事的な光景に、自分の実力を試せる機会が来たという期待感、本格的な兵として敵と戦うという恐怖感

さらにはせっかく与えられた機会を活かさないとという責任感が心の中で入り混じり軽く武者震いをする。


前日に頼んでいた物資をクエスが持ってきたときに、コウへ『この討伐戦が周囲への御披露目となるデビュー戦になるわ』と伝えていたので

コウはいやがおうでも成果を出さなきゃと気持ちが前のめりになっていた。


戦争でのデビュー戦といえば、コウの知っているアニメや小説ではとても大事な物になることが多かった。

そこで大活躍すれば二つ名が付くというのは定番であり、誰しも?憧れるシチュエーションである。


『〇い彗星』とかかっこいい二つ名に憧れるあたり、コウはまだ戦場の恐ろしさを知らないとも言えるのだが。


そんな浮足立ったコウの様子を見てクエスが少し意地悪そうな顔をして話しかける。


「コウ、もう少し気楽に行きなさい。もしかして私より活躍する気じゃないでしょうね?」


「えっ、いや。そんなことそもそもできませんよ」


無茶な話を振られたからか、さすがにコウは少し正気に戻り強く否定する。


「だったらもう少し楽にしておきなさい。今回は私のサポートなんだから大船に乗った気でいなさいよ」

「はい」


ちょっと偉そうに振舞うクエスにコウは緊張感が抜けたのか、いつもの笑顔を見せ体の不要な力が抜ける。

それを見てマナとシーラはコウの扱いが上手いなと感心していた。


コウは弟子たちから見ても明らかに浮足立っていたので、何とか平常心に戻ってもらえるよう2人ともどうすればいいか考えていたからだ。


そのままクエスたち一行は陣内を進み、ルーデンリア光国の国旗のあるテントへと向かう。


「えっ、師匠。これってルーデンリア光国の・・」


「そうよ?今回私は一光としてここにきているのだから当然でしょ。コウとシーラとマナはそんな私のサポート役。まぁ、他にもいるけどね」


そう言うと20人は入りそうな大きいテントの中へと入っていく。

周囲からは光の魔法で視覚が遮断されており、中では周囲の兵士を気にすることなくゆっくりくつろげるようになっていた。


テント内に入ると男が声をかけてくる。


「おっ、クエス殿はお早いご到着で。って、今日は子守りの対象が多くないですかい?」


「何言ってんのよ、子守りをするのはあんたの役目でしょ」


「はは、ですな」


軽装で30代に見える少し渋みのある男は、参ったなと軽く頭を掻きながら笑った。


「簡単に紹介するわね、この男はベルフォート。私と昔から付き合いのある傭兵よ。腕はまあまあだし信用も出来るわ」


「クエス殿に言われちゃ、どんな奴でもせいぜいまあまあ止まりですな」


そう言ってベルフォートはうれしそうに笑う。

クエスがコウに視線を向けたので、コウも自己紹介をする。


「クエス師匠の弟子、コウ・アイリーシアです。今回はよろしくお願いします」


コウが頭を下げるのを見てクエスは苦笑いしていたが、ベルフォートは感心した様子を見せた。

続いてマナとシーラもコウに続き自己紹介をする。


2人とも頭を下げることはしなかったが、ベルフォートが自分たちより強いと感じたのか姿勢を正してあいさつを済ませる。


「なるほどね。こりゃ、クエス殿よりもこの子たちをサポートするのが仕事になりそうだ」


「当たり前でしょ、というか私をサポートするつもりだったの?」


「いやいや、今のは言葉の綾ってもんでして・・クエス殿も言葉のままに受けとらないでくださいよ」


「まぁいいわ。ヤバイの出たらサポートお願いするけど、その子たちだって普段は放っておいても大丈夫なくらいの実力はあるわよ」


「まっ、でしょうな」


少し余裕を見せるベルフォートだが、クエスを強く信頼しておりクエスと壁のない応対ができる数少ない魔法使いでもある。


クエスはベルフォートをあまり公的な場で使うことは少ないが、表に出してまずいことをさせているわけでもない。


彼はあくまでクエスと個人契約をしているのであって、アイリーシア家とは契約していない。

クエスが自由に動かせ信頼できる駒のような存在だ。


普通なら家もしくは国として契約した方がベルフォートにとってもアイリーシア家にとっても得なのだが

国に縛られたくないベルフォートと、一光とアイリーシア家の国王という2面性を持つクエスにとって

今の状態のような縛りの少ない契約の方がお互いとって楽なので、ずっと個人契約が続いている。


「さぁて、ボサツもまだだし少しゆっくりしておきましょ」


そう言ってクエスは腰かけるとそのまま机に伏す。


さすがにクエスと同様自分たちも机に伏してだらけるわけにはいかず、コウたちは少し困惑しながら椅子に座ることにした。

そんなコウたちの様子を見てベルフォートが笑う。


「クエス殿はいつもこんな調子なんだから、早く慣れておくことをお勧めしとくぜ」


「そうなんですか・・」


コウは隠れ家にいたときクエスが時々だらけているのを見ていたが、よもやこんな戦場の最前線でもこの調子だとは思わなかった。


「いいじゃない。親しい連中の前でまで偉そうにするのは性に合わないのよ」


「いや、弟子の前じゃまずいんじゃないんかね?」


「じきに慣れるでしょ」


「はぁ、相変らずぶれませんな」


緊張感のない光景にコウも肩の力抜けて、時間があるからと、シーラとマナと3人でランドウルフの動きなどを再度確認し始めた。

その状況にベルフォートは、この師でこの弟子が育つとかどうなっているんだと思いつつ、密かに笑いをこらえていた。



しばらくすると今回のメンバーの最後の1人、ボサツがテントの中に入ってきた。

疲れた様子で入ってきたボサツがテントの中を見渡すと皆がボサツに注目していた。


「ふぅ、やはり私が一番最後でしたか」


「それはいつものことでしょ」


別に咎めるわけでもなく、クエスは笑いながらボサツに言う。


「色々と準備をしていたのです。今回はメンバーが多いので大変でした」


「ありがと。で、もうほとんどが集まっているでしょうし、すぐに本部のテントに顔を出しに行くわよ」


「もうですか。ゆっくりする暇がないです」


ボサツは少しぼやきながらもクエスの後に付いて行く。

コウたちはここで待機だろうと思いそのまま椅子に座っていると、クエスが振り向いてコウに声をかけた。


「何してるの?コウも一緒に本部に行くのよ」


「えっ?お、俺もですか?」

「そうよ」


さも当然でしょうと言わんばかりにクエスは不思議そうに答える。

が、コウにとって寝耳に水の話だった。


集まったこの精鋭の中での準貴族であるコウの立ち位置は隣にいる傭兵のベルフォートと同じくらい低く、周囲を護衛している兵士を除けば最下層ともいえる。

それくらいはコウも理解していたので、まさか自分がクエスと同行して作戦本部に顔を出すなど想像していもいなかった。


渋々了解するコウを見て、クエスは嬉しそうに手をつかむのそのまま引きずるようにしてテントから出て行った。

ボサツは軽く手を振るとクエスの後を追いかけていく。


残されたメンバーはその光景をただ見ているしかなかった。


「クエス殿は、本当に強引だな。彼は・・大変そうだ」


ベルフォートの一言にマナとシーラは複雑な顔をしてただ頷くしかなかった。



テントの外まで連れられるとさすがにコウも観念したのか、黙ってクエスとボサツの後を付いて行く。

周囲に一際兵士の多いテントの前に近づくとクエスは足を止めた。


「コウ、あまり緊張しすぎないようにね。話すのは簡単な自己紹介くらいでいいわ」


「そうですね。それ以外は無駄な質問として私たちが排除します」


「あ、ありがとうございます。自己紹介くらいなら・・いけます」


「じゃ、行くわよ」


クエスの一声で3人はテントに入っていく。

コウにとっては魔物討伐前の前哨戦が始まった。


今話も読んでいただきありがとうございます。

今回は私的な用事で予約投稿となりました。昼頃に投稿しても良かったんですけどね。


ブクマや感想など頂けると嬉しいです。

誤字脱字も気を付けてはいますが、発見された方は指摘していただけると助かります。

次話投稿は1/1の元旦ですね。では、皆様良いお年を。

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