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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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魔物討伐戦2

ここまでのあらすじ


連合内のトップが集まる最高会議で、厄介な魔物を討伐する話が持ち上がる。

それに対応するために女王は連合最高の戦力であるクエスとボサツを呼んだ。


女王の合図に合わせ入ってきたクエスとボサツは、女王の斜め後ろに座り当主たちを見る。

ルルーはクエスが来たことで急に不機嫌そうになったが、他の当主たちは少し安心した様子を見せた。


魔物討伐で最高戦力である三光を2人も投入するというのは、それだけ女王側に、ひいては連合全体に余裕があるということの証左とも言える。

つまり闇の国との小競り合いもすぐには本格化しないという見立てを示している。


「2人にはすでに話をして、討伐隊に参加してもらうことを了承してもらっているわ」


女王の言葉に2人は黙って頷く。


「なるほど。で、討伐作戦はどんな感じだ、クエス」


先ほどから少し粗が見られる女王を置いておき、ボルティスはクエスに直接尋ねた。

女王は少しムッとするが、三光が参加するとなると現場の作戦の指揮を執るのは一光であるクエスになる可能性が高い。


クエスに指揮権を与えないとするなら、少なくとも当主か女王が同行しなければならなくなる。

だが、当然ながら魔物の討伐など当主や女王がする仕事ではないので、討伐隊の指揮官であるクエスに直接尋ねるのは失礼とまでは言えない。


指名されたクエスは立ち上がり、パネルを横に立て現場の地図を表示する。


「報告のあった狼タイプの魔物は主にこの森の中を根城としているようです。

 そこまで広くない森林地帯なので、我々の部隊が先に中央から突っ込んでぶつかり次第撃退します」


「へぇ、珍しくやる気じゃない」


同じ融和派でありボサツが所属する一門の当主リリス・レンディアートがクエスを嬉しそうに褒める。

普段のクエスは魔物討伐なんかに全然興味を示さないので、中立派に恩を売りたい融和派としてはうれしい誤算だった。


「ある程度数を削ると、一気にこっちへ向かってくるか散り散りになって逃走を図る可能性があります。

 後者の時のために森の周囲をカバーするように、他に4部隊、少なくても2部隊で我々の部隊の左右から追い込みをかければ2,3日で方が付くと考えます。

 漏れ出た少数の魔物は都市にいる兵士なり傭兵なりで処理できるでしょうから」


「なるほど。なら融和派から1部隊は出した方が良さそうね。その図だと作戦開始後は部隊ごとの単独行動なのでしょ?」


「はい。力のあるものを派遣するとなると色々と気にされる方がいるので、その方がいいと思って作戦を立てています」


「いやぁ、クエスにまで気を使われるとは・・参るねぇ」


シザーズが笑いながらクエスに声をかけ、少しだけ場が和む。

クエスの出した案にほとんど文句はなかったのか、各当主が相談役と優秀な少人数の部隊を出せるか話を始めた。


その状況を見てクエスとボサツはこれで何とかなりそうだと少しホッとする。


「ならば我々融和派から、十数名ほどの優秀なチームを作って派遣しよう」


話が早くまとまったのか、ボルティスがリリスとともに1部隊出すことを宣言する。


「ならうちからも出します」


続いたのは支配派のレディだった。

それを聞いた親分肌のバカスは黙っていられずにレディに続く。


「おいおい、さすがにこっちからも少しは出すぜ。任せっぱなしは性に合わん」


「バカス、あなたのところはこの間の闇との小競り合いで疲弊していたはずです。ここはうちで」


「んっ・・わかった。わりぃな」


支配派も話が付いたようで1部隊出すことが決まった。


「うーん、うちもバカス同様先日の小競り合いでちょっと休息が欲しいんだよね~」


「おいおい、お前のところの損害は軽微だったじゃねぇか」


「いやいや、数字上の損害は軽微だったけど腕のいいのが数名負傷しててさ」


のらりくらりとかわすシザーズにバカスは好きにしろとそれ以上は突っ込まない。

そこにルルーが割って入るようにアピールしてきた。


「だったらうちに任せてよね。腕のいいのを取り揃えてくるわ」


「助かります」


ルルーに対しそう答えるメルティアも当然自分のところから1部隊は出す事を決めている。

自分の一門の都市が被害に遭っているので当然の対応だ。


自分たちは部隊を出さず高みの見物となれば、一門の結束にひびが入りかねないので、そもそもメルティアが部隊を出さないという選択肢はない。


「だったらこれで4部隊になったわね。クエスの案で問題なく進めそうね」


話がまとまり女王がほっと一安心したところで、ルルーが突然クエスに話しかける。


「ちょっと、クエス。ひとついい?」


「何ですか、ルルー様」


「その最初に突っ込んで狼どもの巣を突く役、うちが引き受けるわよ。

 あんたのところのミントを連れ出すわけじゃないだろうし、どう見ても人数足らないでしょ?」


また余計なことをとその場の多くが思ったが、確かにルルーの主張も一理ある。


アイリーシア家に他の手練れがいるという話は聞かないし、ボサツのメルティアールル家は融和派の部隊に参加する可能性が高い。


まぁ、森をめちゃくちゃにしていい前提ならば一光と三光の2人でも何とかなりそうだが

狼どもが正面からぶつかってきてそのまま多数が通り抜ければ、人数の少ないクエスたちでは対処が追い付かず、都市側の防衛隊にかなりの損害が出る可能性も考えられるからだ。


だが、クエスは冷静にその提案を断った。


「大丈夫です、こちらで何とかなります。ルルー様が派遣される部隊は予定通り周囲からの追い込みでお願いします」


「どう考えたって、あんたのところの戦闘要員は2,3人でしょ。他は補給要員なんだし。討ち漏らしたら他が迷惑するから言ってるのよ」


これ以上は絡みたくないなと不愉快な顔をするクエス。

それを見てルルーがより頭に来たところをとっさに相談役のエリオスが立ち上がり割って入った。


「発言失礼致します。指揮を執るクエス様が問題ないと判断したのなら大丈夫だとは思います。

 ですが、不安要素があると他のメンバーはどうしても気を割いてしまいかねません」


「わかるけど、そこは信じてもらいたいわ。他だって部隊の詳細はどうせ明かさないでしょう?」


「おっしゃる通りです。ですが、負傷者や犠牲者を減らすためにも安心できる策をいただければ

 われわれの派遣部隊も安心して候補を募ることができます。どうかお願いできないでしょうか?」


エリオスの腰の低い対応にクエスも困った表情を見せる。

全体の指揮を執る立場であるクエスが周りを不安にさせているのではと暗に言われては、秘密と言い続けるのも少し苦くなるのは確かだ。


「つっ、わかったわよ。うちのメンバーは連携の取れる私とボサツ、それに私の弟子コウとその弟子2人に、さらに古くから親交のある傭兵を1人連れていく予定よ。

 あとは補給や連絡関連の人員だけね。腕のいい戦闘メンバーが6人もいれば大きな討ち漏らしもないでしょ」


クエスの言葉を聞き黙って頭を深く下げ着席するエリオス。

だがこの場にいる当主たちはそれでどころではなかった。


クエスとボサツがひた隠しにしていた弟子をこの戦いで使うというのだ。

これはコウという人物を見極めるまたとないチャンスである。


現地での作戦会議にも顔を出すとなれば会話をする機会もあるだろうし、ある程度人間性や実力も判明する。

これがクエスの気まぐれかもしれないとなれば、このチャンスを見逃すわけにはいかない。


だがクエスの言葉を聞いて焦った者もいる。それはボルティスだ。

さっきまでクエスからそんなことは一切聞かされていなかったし、彼と接触する人物が増えてしまえばライバルが増える可能性も出てくる。


「ちょっと待てクエス。彼は魔物討伐の経験はあるのか?重要な役目を負うクエスの部隊に足を引っ張る存在があれば逆に不安が増すのではないか?」


「問題ありません。彼には魔物討伐の経験はあるし、それに女王様の許可も事前に話して取り付けております。狼相手なら私のフォローも不要でしょう。

 まぁ、本来は部隊が集まらないときのための客寄せにでも使おうと思っていたんですけど」


素直に自分の意見に乗っかってコウを引っ込めろよ思いつつも、そこまで言われればボルティスも反論はできない。

それにクエスの言うように客寄せ効果は十分にあったようだ。


クエスがコウのことを出してから、ボルティス以外の当主が全員相談役と話し始めている。

ボルティスもルルーが余計なことを言わなければと思いつつ、こうなれば自分の娘も討伐隊に加えようかと考え始めていた。


「ふん、それなら俺のところも部隊を出そうじゃないか」


さっそくバカスが前のめりになって部隊の派遣を宣言する。

共同で部隊を出そうと言われていたレディは少し不満そうな顔だったが、止めても無駄だと分かっているのか突っ込みを入れることはしない。


「ありがとうございます、バカス様。ですがこれ以上の部隊は必要ないので自国の兵への休息を優先された方がいいかと」


にこやかな顔で露骨に来るなと跳ね除けるクエス。

そんな中もう一人の男が声を上げる。


「僕のところからも数人出そうかと思うんだよね。なんせ部隊が多い方が漏らさず殲滅できるじゃないか。

 ついでに私も現場に向かわせてもらうよ。クエスには遥かに劣るけどその辺の奴よりは僕の方が戦えるからね」


クエスはシザーズの言葉にイラっとして彼を睨むが、シザーズ本人は気にするつもりもないようでニコニコしている。


「それはいいな、俺だって国の中じゃ3番目の強さだ。魔物討伐の経験は十分にあるし、たまには体を動かすのもよさそうだ」


さらにバカスまで現地に来る宣言をし始めこの場の収拾がつかなくなる。

女王はまとまりかけていた場が混乱するのを目の当たりにし大声を上げた。


「いい加減にしなさい。もう必要な部隊は決まったわ。それに当主が何人も現場に来れば大騒ぎになる。

 この作戦は大騒ぎにすることなくさっさと魔物を討伐するのが目的よ」


女王の発言で取り合えずこれ以上の混乱はなくなり、クエスは女王に頭を下げる。

この案は元はと言えば、女王がクエスの作戦を聞いた時に部隊が集まらないのでは、と疑問を投げかけたのかきっかけだった。


どこだって自分の優秀な駒を無駄に相手に晒した挙句、疲労や負傷までさせたくはないはずという女王の危惧に

クエスとボサツが話し合って、万が一の時は客寄せパンダにコウを使うことを明かそうと提案した。


クエスの初弟子ということもありコウは注目されているので、人物を見極めるために人を出してくるだろうという作戦だ。


情報収集となればコウと話の出来る地位ではないその辺の兵士を出しても意味がないので、コウとちゃんと話せる腕のいい上の人間が集まるだろうと考えた上での案だった。


だが十分な部隊が集まったにもかかわらず、ルルーのいちゃもんによりクエスはこの話をせざるを得なくなった。


本当は女王がルルーの発言を止めクエスの部隊に問題がないことを保証すればこうならなかったのだが

クエスが追い込まれてちょっといい気味だと思った女王が、あの場をクエスに任せてフォローしなかったのが問題だった。


ただ、当のクエスは元々コウを連れていくつもりで、当日現地でどうせわかることなので、今知られてもいいかという程度の認識だった。

そして魔物討伐の件はクエスがコウのことを話す前に決まった部隊で実行することとなった。



次の議題の財政状況は最近闇との小競り合いが起きていることから、今後少し厳しくなる恐れがあることを女王が告げる。

具体的な数字が上げられ、最終的には税率を上げるなどしてケアしていく事で一致した。



次に光の連合内でぽつぽつと発見される中毒性の高い薬物への対策が議題に上がる。

次期女王と目されているフラウーからの報告書が提示され、つい先日また薬物を作っている組織を壊滅させた結果が発表される。


「うーん、これで今年で3つ目の壊滅報告だねぇ。ちょっと多すぎないかなぁ」


「多いに越したことはありません」


シザーズの疑問にレディがスパッと言い放つ。

だがシザーズはそうじゃないと言葉を続ける。


「そうなんだけど、数が多いってことはそれだけ分散化している可能性もあるよね」


「なるほど。そういう観点から見ると、壊滅の報告をただ楽観視するのは危険かもしれんな」


「そうね」


ボルティスもシザーズの意見に関心を持ち、リリスもそれに賛同した。


前回の最高会議ではリリス一門の下級貴族が運営する都市に薬物が出回っているのを報告していた。

それはすぐに解決されたのだが、薬物を作っていた賊をあまりにあっさり殲滅できたのでリリスは何か引っかかっていた。


そういった危険なブツを作り売りさばくとなると、小さな組織では困難なのにすぐに壊滅させたと言われれば引っかかるのも無理はない。


その何か足りなと思いつつもそれがわからないもやもやした疑問が、シザーズの意見で必要なピースがピタリとはまる。

シンプルに同意したリリスだったが、裏ではもっと深刻な事態が展開しているのではと考え始めていた。


「それで、前回持ち帰りだった薬物の蔓延状況の確認なんだが・・」


珍しく歯切れの悪い切り出しをするバカス。


「どうしたのよ、バカスらしくないじゃない」


普段はバカスにやられっぱなしのルルーだが、無駄に鋭い嗅覚でバカスの腰が引けてるのに気づくとニヤニヤしながらツッコミを入れる。


「くっ、まぁしゃーないか。うちの国は特に問題ないんだが、配下の国民への当たりが強い国がな・・なかなか情報がつかめずにまとまらん」


「バカスもですか。うちのところもそういう国がちらほら見られます」


支配派の国々は国民への対応が厳しい場合が多く、守ってもらうため仕方なく国民が従っている雰囲気がある。

そういう国々では住民からの情報がなかなか集まりにくく、治安維持のための兵士が聞き込みをしても真実が出てきにくい。


「困ったものね。それで他の国々は・・そうね、融和派は全て集まっているけど中立派メルティアのところがまだ不完全ね」


「うちは魔物対応への協力を募っていたから、一門内で兵士足りていない国が少しあるのよ」


「うちは皆が優秀なので、薬物が出回った様子もないわ。一門内でルールも強化しているし」


誰もルルーには意見を求めていないのに自らアピールし始め、周囲のひんしゅくを買う。

それを聞きボルティスが場をなだらかにするためか、自分下げの発言を行った。


「我々一門は国民からの報告は早いが、初期段階で蔓延するスピードも速い。緩すぎるのもきつすぎるのも一長一短があるということだ」


おかげで少し話しやすくなったと見たのか、ボルティスに続きバカスがややこしくなる前に話を閉めようと動く。


「まぁ、どっちにしろうちはうちでしっかり調査させとくぜ。何かあれば全員にすぐに情報は回すから心配すんな」


「頼むわ。それに、どうやらすぐに解決できるほど簡単な問題でないようね。裏に大きな組織がある可能性もあるし、焦らずじっくりと行きましょう」


バカスの意図を読んだ女王のその一言でこの議題は締められ次へと移った。


今話も読んでいただきありがとうございます。

ブクマや感想、誤字脱字のご指摘など、色々頂けるとうれしいです。


次話は12/26(木)更新予定です。年末で忙しいですが、多分大丈夫。

では。

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