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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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シーラとマナ お互いの立ち位置4

ここまでのあらすじ


クエスと1対3の練習をすることになり、当日を迎えすぐに訓練が始まった。


余裕を見せるクエスを相手に3人は緊張しつつもゆっくりと移動を始める。

コウが少し前、マナが横に離れて少し後ろの前衛2枚体制となりクエスと対峙した。


それを見てクエスは少し感心した様子を見せると、コウの方に向かって走り出す。

それを見たコウは後方に防御系の型を作り出しつつ剣を構える。


狙われなかったマナは横から挟撃しようと型を組み始めるが、クエスが先ほどまでいた位置の2m後方から遅延魔法が発動。

3発の<光一閃>が放たれたのに気づき、マナはとっさに1発を防御して防ぐがその分攻撃の準備が遅れてしまう。


残り2発はそれぞれシーラとコウに向かって放たれ、各々が魔法障壁で防御する。


出鼻をくじかれたがこれから反撃だと意気込むマナだったが、コウに向かっていくクエスからマナへ向けて<光一閃>が矢継ぎ早に放たれる。

防戦一方となり足止めされるマナを魔法障壁でサポートするシーラだが、コウとクエスの戦いの状況が気になり集中できない。


「くっ、早すぎー。全然近づけない」


マナが愚痴っている間にコウが<風刃>、クエスが<斬撃光>で魔法を飛ばし合いぶつけ合う。


マナが攻撃に転じれるようにコウはクエスに<加圧弾>で突っ込み状況を変えようと試みる。

マナへの攻撃の手が減れば、想定通り挟撃できるからだ。


だがクエスはその考えは甘いと言わんばかりに<光の壁>を作り出す。

コウはすぐに剣を突き出して壁を砕くが、勢いを殺されたところに踏み込んだクエスの横薙ぎが迫る。


後ろで状況を確認していたシーラがその攻撃を予見していて、準備済みの<光の集中盾>でクエスの一撃を受け止める。

一瞬受け止められるが、クエスはさらに魔力と力を込めて障壁を叩き割りコウの左腹を狙う。


だが少し時間を稼げたことからコウが<加圧弾>で自分の体を後ろへ飛ばし、不利な体勢から何とか危機を逃れた。



その隙を狙いマナが用意していた<烈火弾>をクエスに向けて放つが、クエスは即反応して巨大な火の玉のサイズに合わせた<光の集中盾>を張る。

それを見たコウがマナの放った火の玉の前に弱めの<螺旋風>を使い、火の玉を変形させクエスの張った魔法障壁より大きく広げた。


違う者が放った2つの魔法は基本的に相殺するが、一方が強力で一方が弱い場合は強い魔法が弱い方を飲み込むような現象が起きる。


もちろん威力とタイミングの調整が必要になるが、ある程度威力が落ちても構わないなら

今回のような付け焼刃でそういった現象を起すことも可能だ。


結果、魔法障壁よりも大きくなった炎がクエスを包み込む。

広がりすぎて威力は落ちているが、周囲が炎に包まれれば視界はおろか、外の状況も感知しにくくなる。


「わぉ、やるわね」


クエスは強引に周囲に魔力を放出しマナの炎を相殺しつつ炎の囲いから脱出し、コウやマナから距離を取るように移動した。

クエスが構えを解き、周囲の魔力を減らしたことにより、コウたちも構えを解き気を緩める。


ただ緩めると言ってもクエス相手の訓練中、いざという時はすぐ動けるよう最低限の警戒は解かない。


「いやぁ、これくらいのレベルならいい勝負になると思っていたけど、思った以上にやるじゃない」


「いえ、まだまだです」


コウの返答にここは褒められておこうよと思ったシーラとマナだったが、2人ともある程度の手ごたえを感じ内心では満足していた。


「じゃぁもう一段階レベルを上げようかしら」


そう言ってクエスは魔力を展開しつつ剣を構える。

落ち着ける時間など与えられることもなく、マナとシーラは慌てて魔力を展開し型を組み、クエスの動きに集中し始めた。



クエスがニコッと笑顔を見せると、一瞬でマナとコウの目の前から消える。

マナは驚いてすぐには状況が理解が出来ず動作が遅れるが、コウはすぐにシーラの右側、自分の真後ろに飛んだのを察知した。


クエスは宙属性、空間に関わる魔法を使うことができる。

相手の近くは周囲に濃い魔力を展開しているので難しいが、近くの対象から少し離れた位置になら瞬間移動することくらい造作もないことだ。


コウは組んでいた<加圧弾>をシーラに向かうクエスの目の前に発動させるが、クエスは<光の強化盾>を加圧弾に当て回避する。


クエスが障壁で受け止め体勢を崩して大きく回避したことから、シーラも対応するのに十分な猶予が出来、マナも攻撃を完成させる時間がもらえた。


クエスが一撃をシーラに向かって振るう直前、マナが<烈火弾>を使い巨大な火の玉を放つ。


「巻きこむ気?」


そう言いながらクエスは攻撃するのを止め<光のオーラ>を発動しマナの魔法を防御する。


「オーラ?いつ型を組んだんだ・・まさか」


コウは驚くとともにある可能性を想定したが、さすがにそれを伝える余裕もなくシーラに向かって走りながら手を伸ばし<水牢>を発動。


シーラは火の玉にのまれる前にコウの作り出した水の塊の中に閉じ込められる。

そしてコウが水を操作し、シーラをマナの方へと吹き飛ばすことで火の玉から脱出させた。



「まだまだ行くわよ」


クエスは炎に包まれながらもその上空から2つの<光一閃>を放つ。

だがシーラとマナはそれを<光の強化盾>・<火の強化盾>を使って受け止める。


その攻撃を足止めと位置確認だと判断したコウはすぐに次の防御魔法の型を組む。

するとすぐに炎の中からクエスの<収束砲>がマナへと放たれた。


「えっ、嘘」


マナが驚くのも無理はない。通常の収束砲は型を組むのに時間がかかるし、チャージ時間も結構ある。

だがまるでお手軽な光一閃のレーザーのように、炎の中から直径15cmにもなる太い光線がマナへと飛んできた。


「間に合えー」


コウが手を伸ばし<水泡の盾>を発動しクエスの放った一撃を食い止めるが2秒ほどで貫通される。

だがその時間を使ってマナは体を動かし、危機一髪で回避した。


当たった感触がなかったクエスは火の玉から出てくるが、そこにシーラが待ってましたと<百の光矢>をクエスに放つ。

さすがに大ダメージは期待できないが、クエスを足止めさせつつ攻撃をさせない牽制のための一撃だ。


シーラの目論見通り足を止め百の矢を受けるクエスに、コウが横から<風刃>・<風針>と続けて放つ。


「なかなかやるわね」


うれしそうにクエスがつぶやくと、クエスがストックから型を取り出した。


「やばい、マナ」


一瞬で魔力の大きさを感知したコウが叫ぶが、マナが反応する前にマナの周囲に魔力が発生し魔法が発動する。

マナの体が浮き上がりながら光の球体の中に閉じ込められる。


「まずは1人<封球光滅>」


閉じ込められたマナの球体の外に10個の光の球が現れる。

シーラはすぐに閉じ込められたマナの魔力を感知して<光のドーム>を使い、球体内のマナの周囲に魔法障壁を張った。


だがそれでも大きなダメージを避けられないと悟ったコウは、すぐに型を組みなおし魔力をぶっこむとマナへ向かって<空気砲>を発動させた。


球体の周囲にあった光が一斉に球体の中のマナへレーザーとなって放たれる。

一方内部にいたマナも準備していた攻撃魔法を自爆ダメージ覚悟で目の前で発動させる。


「これでいって<中爆発>」


シーラが張った魔法障壁が球体の外から飛んでくる光線を受け止める中、マナの魔法により球体の中で大きな爆発が起きひびが入る。


その爆発によりもちろんシーラの張った魔法障壁も破壊寸前となる。

さらにコウが放った空気砲が光の球体を貫いてマナの周囲にある魔法障壁へと当たる。


その結果、マナは強引に外へと飛ばされ、さらにコウの空気砲の追加効果で道場の庭の端の障壁に激突した。

結構なダメージを負ったマナを心配するコウだったが、その隙をついてすぐそばにまでクエスが迫っていた。


「自分にも集中しなさい」


「しまっ。<百の風矢>」


コウの上空から真下に降り注ぐようにコウとクエスに風の矢が降り注ぐ。

が、クエスは周辺の魔力を障壁として削り合いながらコウに向かって剣を振りぬく。


何とかコウがその一撃を受け止めるものの、<光の強化>で威力を増したクエスの追撃の左拳がコウの腹に直撃した。

シーラは防御魔法が間に合わず立ちすくみ、対応できなかった自分の力の無さを悔やむ。


コウは飛ばされるものの<受け壁>で空気のクッションを作り、庭の外側に到達する前に腹を押さえながらも着地した。



「よし、なかなかいい感じね」


満足そうにクエスは構えを解き周囲の魔力も霧散させる。

飛ばされたコウとマナはよろよろと歩きながら、シーラの近くへと集まった。


「今のはコウ、油断しすぎよ」

「は、はい」


答えながらもコウは警戒を解かないが、マナとシーラは攻撃が止んだので警戒を解き一息をつく。

だがクエスとコウのやり取りが始まると、2人は気を休める余裕などないことを思い知らされることになる。


「どう?もう一段階レベルを上げた方がいいかしら?」


「微妙なところなので、判断は師匠にお任せします」


「そう。それじゃもう一段階上げてみようかしら。ついて来なさいよ」

「はいっ」


コウの力強い返事に2人は思わず息をのんだが、コウがそういうのであれば弟子である2人には選択権はない。

腹をくくって立ち上がり、先ほどと同じ配置につき魔法の型を準備し始めた。




結局中断を4回挟み、計5回行われた実戦訓練でコウたちはクエスに一方的にぼこぼこにされた。

途中クエスが褒めるような攻撃もあったが、当の本人はいくつかのかすり傷を負った程度だった。


3回目の戦闘ではコウたちのクエスへの対応が追い付かなくなっていたが、それでもクエスはレベルを下げることなく戦い続けた。


コウたちが攻撃をくらう場合はある程度威力を落としてくれていたものの、ダメージは着実に積み重なり

5回目の戦闘ではダメージと疲労が蓄積し、後方のシーラを含めて全員の動きが落ちていた。


「よし、ひとまずここで大きめの休憩を入れるわ。魔力と体力を回復させておきなさい。

 それじゃ・・まずはコウ、注意点があるからこっちに来なさい」


そう言われてコウは自分を回復しながらクエスの元へと向かう。


回復と言っても瞬時に傷が回復することなどない為、短時間では気休め程度の効果だったがそれでもやらないよりはましである。

残された2人はシーラが回復役となり自分とマナを回復させていた。


「すみません師匠、まだまだ対応が甘かったです」


顔を合わせてすぐにコウはクエスに謝罪する。

コウが想定していたクエスの期待値には達していたにとコウ自身は感じていた。

だがクエスは笑顔で答える。


「そんなことないわよ。思った以上にやれててびっくりしたくらい」


「あ、ありがとうございます」


褒められるとは思っていなかったので、戸惑いながらコウが答える。


「サポートもしっかりしていたし、なにより可愛い弟子に対してずいぶん愛着がわいているようじゃない」


「えっ、いや、師匠ですから当然のことです」


「でも、少し過保護なサポートになっているわ。コウの攻撃力はマナと並ぶほどよ。

 それを削って防御に回れば必然的に全体の攻撃力が落ちる。強敵相手だと一方的に削られてじり貧にしかならないわ」


「うーん、言われてみるとそうなんですが・・」


「攻撃で相手を削らないと徐々に追い詰められるだけよ。それに弟子を信じて防御を本人たちに任せるのも師の役目じゃない?」


クエスに言われてコウはさっきまでの自分の行動を見つめなおす。


確かにサポートに回ることが多かったが、そうしなかったら弟子たちが戦線離脱になっていた可能性もある。

そうなれば力量が負けているうえに人数の有利すら失ってしまうだけだ。


コウはクエスのアドバイスに納得しかねていた。

コウが悩み続けているのを見て、クエスは更に話しかける。


「私がコウの指導方針に口出ししすぎるのは良くないと思うけど、一つだけ言わせて。

 今やっているのは危険性はあるけど所詮は練習。決して死ぬことはないというのはわかるわよね」


「もちろんです。近くに回復カプセルもあるのでよほどの致命傷でない限り大丈夫なのはわかってます」


「だったらコウは必要以上にはサポートせず攻撃に回り、弟子たちには死線のぎりぎりを見極めさせるのも大事だとは思わない?」


それが大事なのはコウもわかっている。

自分もそうされてきた自覚はあるし、それが役に立った経験もあるので、ぎりぎりの攻防がいかに大事な物かは理解していた。


だがそれを自分の大事な人に平気で経験させられるかと言えばそれはまた別問題だ。

ぎりぎりの恐怖感を与えられた後は精神面も含め色々とサポートが必要になる。

それがコウ自身にはできると思っていなかった。


その為コウはそこまで踏み込めずにいたのだ。


「分かってはいるんですけど、俺もかなりの恐怖感にまいってしまうこともあったし、そうなったとき彼女たちを俺が支えられるかどうか」


「なるほどね。でも死線を見極める力が無かったら、コウは遠からずあの子たちを失ってしまうかもよ?

 私たちはそれを避けるためにも、心を鬼にして、コウにその経験をさせたのだから」


「っん、わかって、いる、つもりです」


コウは言葉に詰まりながらなんとか肯定するが、実行はできないという雰囲気を見せる。

クエスはコウのそういうところは良くないと思いながらも、それだけ大切に思っているからこそマナがなびいたのかなとも思う。


これ以上強く言うべきではないかもと思い悩みながら、コウに優しく話しかけた。


「うーん、そうね。大事にするってのは色々な形があるわ。これ以上の判断はコウに任せる。止める気なら言いなさい。

 ただコウがあの子たちを死線ぎりぎりまで追い詰めるのは実力的にも感情的にも難しいでしょ?だからそういう役は私たちがやってあげる」


そこまで言ってクエスはコウの肩を叩いた。


「あの子たちはコウの大切なハーレム要員だからね。何かあったら私たちもサポートするから相談しなさい」


そしてクエスはコウのから離れてシーラとマナの方へと向かっていく。

色々と言いたいことがあったが、気持ちがまとまらずコウは軽く右手を伸ばすものの結局手を引っ込めてしまう。


「俺はマナとシーラを守りたい、だから・・くそっ」


今の自分では何もできないと悟らされたコウは、ただ悔しくてこぶしを握り締め地面にたたきつけるしかなかった。


今話も読んでいただきありがとうございます。

複数名のバトルは文章で書くのが難しい。。


ブクマや誤字脱字報告、感想等いただければ光栄です。時間があればよろしくお願いしたいかな。

自分で書いた文章は内容がわかっているので、読み直しても誤字に気づきにくいんですよねぇ。うーん。


次話は12/2(月)更新予定です。


魔法紹介

<風針>風;尖った針状の魔法を数十発相手へと一斉に放つ、面で攻撃する魔法。

<封球光滅>光:光の球体に閉じ込め光線が球体内へと放たれる。その後光の魔力で満たされ相手の魔力と体を削り取る。今のマナがもろにくらえば一発でカプセル行き。

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