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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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シーラとマナ お互いの立ち位置3

ここまでのあらすじ


コウがいない間、マナはシーラにコウを手に入れると宣戦布告した。

コウはクエスの実験から無事に戻って来る。


夕食を終えると3人で修業に入る。

まずは自主練で悩んだことや、いまいちだった部分を一緒になって考えた。



正直に言って、俺とマナやシーラの魔法の実力差はほとんどないと言っていい。

1対1の戦闘であれば近距離が苦手なシーラはやや劣るかもしれないが、あくまで第一属性のLVで言えばほぼ同じという事だ。


ただ魔法の型を考えたりする点では、ボサツ師匠が色々と考案した方法を教えられている俺の方が一日の長があると思う。

なんせ魔法学校でも、戦闘をやる部隊の現場でも、あまり型をいじったりして試すことはしないらしい。


とはいえこの国で最高峰の魔法学校を出ているシーラにも優れている点はある。


師匠のところで学べなかった基礎知識や、各魔法に対するセオリーの対策方法など、学校で学びそうな知識は俺がシーラから教わっている。

マナもその辺は欠けている部分らしく、シーラから教わっている場面も多い。


そしてマナは戦闘での臨機応変な対応においては、この中で群を抜いて優れている。

実際先日の戦いでも俺の剣さばきに素早く対応していたし、この手が通じないと分かれば次から次に別の手を使ってくる。


きっと戦いのパターンの引き出しが多いのだろう。

そういう点はマナから俺とシーラが教わっている。


このメンバーは三者三様で本当にいいメンバーに恵まれたと思っている。


まぁ、マナの場合センスはあるが、教えるのがあまりうまくないのは玉にきずだ。

とはいえ戦闘ってのは感覚の部分も多そうだし仕方ないのかもしれない。



「ここはこうやってみるのはどうだろう?」


「師匠、そこをいじると基本から大きくずれてしまいますよ」


「じゃ、感覚で調整しながらやってみようよ」


俺が提案し、シーラが微修正して、マナが最後は感覚で型をいじる。

そうこうやっているうちに1時間ほどが過ぎてしまった。



そんな時、ふと今日戻ってくる前に師匠に言われたことを思い出す。


「あっ、2人ともちょっといい?」

「はい」


俺の言葉に素早く二人が反応する。しかもほぼ同時だ。


なんか競い合っているようにも感じるが、これはやはり昼間に何かあったっぽいなぁ。

そう思いながらもクエス師匠から言われたことを2人に告げる。


「えっと、明日・・いや明後日にクエス師匠が来て新たな訓練をすることになったんだ」


「一光様がですか?それでどういった訓練になるのですか?」


「まぁ、簡単に言えば連携の訓練かな。3人でクエス師匠と戦って、俺たちがどれくらい動けるかを見たいって言ってたね」


「えぇーっ、無理無理無理。一光様相手に勝てるわけないよー」


マナが冗談じゃないといわんばかりにその練習を否定し、シーラもその横で緊張した表情でうなずく。

気持ちはわかるけど、初っ端からそんな態度をされると話し辛いんだが。


「いやいや、別に勝つ必要はないんだって。どこまでやれるかが重要なんであって、その練習を明日事前にやっておきたいと思う」


フォローしては見たが、2人の表情から不安が消えない。

なんせ最強といえる一光の座にいるクエス師匠が相手だ。文句を言いたくなるのもわからなくはない。


「そう不満を前面に押し出さないでくれよ。手を抜いたクエス師匠といい勝負ができるのなら、他のやつ相手ならもっと楽に対応できるってことなんだからさ」


「まぁ、そうですが」

「わかるけど」


「俺なんて1対2の練習とか言って、ボサツ師匠とクエス師匠2人を相手に練習していたこともあるんだから。

 それに比べればまだましなんだし、とりあえずやってみてから判断しようよ」


「それは・・ずいぶんと」


「あー、師匠が2年目の割には強い訳なんとなくわかった気がする」


なんか納得させたというより同情された気もするが、やる気が出てきただけでもいいとしておこう。


明日はまずどれくらい動けるかをか確認しておかないといけないな。ならばどのプログラムで行こうか。

そう思いどういう形でやろうか考えていると、マナが後ろから声をかけてきた。


「師匠、一光様との訓練はどんな感じなんですか?」


「どんなって、普通に戦って一息入れてを繰り返す感じだけど」


「いや、ある程度流す程度に続けていくとか、結構一光様がガチにやってくるとか、そういう傾向ってどんなのかなと思って」


「あぁ、そういうことか」


実際俺はクエス師匠とボサツ師匠からしか教わっていないので、他がどうやっているかなんて知らない。


ただ俺がマナとシーラを指導する場合は、強弱付けながら2人のペースに合わせてやっている。

師匠たちのやり方を俺がやろうとすると、シーラとマナを相手し終える前に俺が先にばててしまうからだ。


タイプが違うとはいえ、そもそも実力はお互い似たようなものだから師匠たちと同じやり方が出来るはずがない。

そう考えると、マナとシーラはクエス師匠たちのやり方は初体験になるのかもしれない。


事前情報はあった方がいいだろうから、俺は2人に詳しく話すことにした。


「クエス師匠はだんだん強度を高めていって、これはギリ耐えられるかどうかってとこを見極めてそれのちょい上を続けていく感じかな」


「逆にボサツ師匠緩めたり、無理ってレベルに高めたりしながら相手の変動にどう合わせるかをよく見てくれるね。気合いの入れ過ぎは逆に注意される感じ」


俺が説明すると2人は露骨に嫌な顔をしていた。


「だ、大丈夫だって。俺も一緒にやるんだから」

その大丈夫は当てにしてはいけないとマナとシーラは心で思った。




翌日は連携訓練用のシステムを起動して3人で相手の攻撃をかわす、手が空けば味方をフォローし相手を攻撃するという流れをやってみた。

こういうのは経験のあるマナの方がよく理解しているようで、俺も最初はほとんどマナの指示に従っている状態だった。


しばらくすると、俺やシーラも提案できるようになり20分ほどやっては20分ほど相談を繰り返しているうちに数時間経ってしまう。


最初のころは配置もいろいろと試してみたが、結局は俺とマナがやや前衛で後ろもフォローできる立ち位置。

正確に言えば、前衛と中衛を交互にやる感じで、シーラは基本後衛で支援と防御を重視。


後衛と言ってもシーラが自由に動けるときは攻撃もするし、ある程度近づかれても近接戦の対応ができるので前衛が挟み撃ちも狙える。


俺とマナの前衛と中衛を交互にやるというのは立ち位置や状況でコロコロ役割が変わるということだ。

この辺はマナの方が明らかに優れていたので、俺が完全に足を引っ張っていた。


どうやったらそんなにうまく動けるのかを聞いてみたが、感覚派のマナには聞いても無駄な答えしか返ってこないので

これは今の俺の緊急課題として重点的にやっていかなければならない。


師匠なのにチームでは足を引っ張るとか、マジで恥ずかしいったらありゃしない。

特にクエス師匠に見られるとガチでからかわれそうだからなぁ。


そうやって必死に練習しているうちに昼が過ぎ、夕食の時間になった。


「よし、ここまでにしよう」


そう言って俺たちは道場へと戻る。


1日中ずっと練習を重ねていたからか、3人とも疲労と魔力消耗で話す気力もわかない。

だが、その状況に合わせたのかエニメットが食べやすくあっさりとした夕食を準備していてくれたので、皆疲れている割には食が進んだ。


さすがエニメット。もうサポート役として彼女は手放せないくらいだ。


夕食後、俺もマナも大部屋から動こうとしなかった。

後衛をやっていたシーラはもう少し動きを研究したいと言って、さっきまでの映像を見て難しい顔をしている。


そんなシーラを俺はソファーに横になりながら見つめていた。


「熱心だな、シーラは。俺はむしろ目を閉じるとさっきまでの動きを思い出せるけど同時に疲労感が湧いてくる」


「師匠も頑張っていましたから。あまり無理をしないでください」


「そうは言っても、どうも俺が足を引っ張っている気がしてなぁ。特にマナと上手く動きが合わせられなくてさ」


マナの名前を出したからか、彼女が床に寝転がったまま話しかけてくる。


「そんなこと感じなかったよ?」


「いや、どうも違和感がある」


「確かに今見ていて少しずれはありますが、まだ初日ですし」


シーラの言うことももっともだったが、クエス師匠相手では初日だからという言い訳は通じない。

少なくとも師である俺のヘマで弟子の評価まで下がることだけは避けたい。


「ふぅ、もう少し体を動かしてくるか」


そう言って俺は立ち上がったが、すぐにエニメットが声をかける。


「コウ様、今日の訓練で道場の魔力ストックをかなり消費していますので、できれば訓練システムの起動は避けていただければ」


「うへぇ、そんなに使ってた?」


「はい。回復はしていますが、まだ・・」


この道場全体に供給される魔力のストックが減れば、安全性に影響があるので

よほどの必要性がない限り、昼間のような練習を夕食後もするのは避けた方がいいらしい。


仕方がないので俺はソファーに座りなおすと、目を閉じて昼間の全員の動きを思い出す。

この時はどうしたら良かったか、別の動きをしたら周囲はどう動くかを考えながら頭の中でシミュレートとする。


「ししょー?」

いきなりマナが声をかけてきたので俺は目を開けた。


「ん?」

「あっ、邪魔しちゃった?」


マナがすぐに申し訳なさそうにする。


「いや大丈夫だよ」

俺はマナに笑顔を向けて答えると、すぐにエニメットの方を見て話しかける。


「庭で映像だけだったら出せる?」


「まぁ、映像だけでしたら光属性の単純な魔力だけですし、大丈夫だとは思いますが」


「じゃぁ、ちょっと行ってくるか。もう少し動きを確認したいしな」


そういって俺はふらふらと庭へと向かう。


「私も行く」

「私も」


すぐにマナが後を追い、シーラもその後を追っていった。

エニメットはそれを困った顔をしながら見送った。



◆◇◆◇



翌朝、コウたちが朝食後に庭で軽く魔力の調整をしていると、約束通りクエスがやってきた。

コウたちが朝から軽く流しているのをみて、クエスはそのやる気の度合いを把握する。


「へへぇ、思った以上にやる気じゃない。これは腕が鳴るわ」


やりがいを感じたのか、ニヤニヤしながらクエスは庭に入りつつ声をかける。


「さて、話はコウから伝わっているようね。やる気があってうれしいわ」


その声を聴いてコウはその場に姿勢を正して立ち、シーラとマナがコウの左右に一歩引いた位置に立つ。


「今日はよろしくお願いします」

「ええ」


コウの声にクエスは笑顔で答えた。


見た感じ既に準備はできていそうだったので、全員庭の奥の方の広いエリアに移動してすぐに1対多の訓練へと移る。


クエスが練習用の白銀の剣を取り出すと、それを見たコウとそれに続いてマナとシーラも武器を取り出して

事前に相談していたフォーメーションへと移動する。


「さすがコウが指導しているだけはあるわね。前日に準備した割にはなかなか様になっているじゃない」


クエスは右手の剣を回してうれしそうに言うが、弟子の2人は何の説明もなく始めるのかと武器を構えつつも戸惑っていた。

そんな中、さすがにコウは慣れているので完全にスイッチが入っていた。


「さて、さっそく見させてもらうわよ、そのチームの実力をね。気合いが入り損ねていたらすぐにカプセル送りにしてあげる」


すぐにクエスが魔力を展開し始め、それに反応するかのようにコウとマナが魔力を展開する。


シーラは反応が少し遅れたものの、魔力を展開し後方からクエスの動きを観察し集中する。

そしてすぐに訓練は始まった。


今話はほのぼの回に近い感じなりました。

いつも読んでいただきありがとうございます。


時間があれば、感想や質問など頂けると嬉しいです。

良かったらブクマや評価、誤字脱字の指摘もお願いいたします。


次話は11/29(金)更新予定です。では。

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