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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
1章 魔法使いになります! (1~17話)
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夜の魔法レッスン~風~

早く寝てしまうと当然早く目が覚めてしまします。

そんな状況で師匠と二人っきりの(いつもだけど)夜の秘密レッスン。

でもね、おいしい展開は無しです。Dに足りないものは積極性なのです。


ここまでのあらすじ

魔法使いになったコウは魔力を使って型を作る魔法発動の前段階の練習でダウンする。


「んー、、あれ…ここはいつもの隠れ家の中か」

そう言ってコウは起き上がる。光が入る天井部分は半分閉められていてが、外が薄暗くなっているのはわかる。多分今は夜中~早朝だと思う。


「光の魔法が使えれば、こういう時便利なんだろうな。今日練習していたのが明るくする魔法かなぁ…だとしたら基礎の基礎でつまずいていることになるかぁ」

自分でぶつぶつ言いながら昼間の練習を思い出し、凹む。


言葉ではそういうものの、心の中のどこかでは「1日で結構うまくなったよな、俺」とも思っていた。

「ちょっと外の空気でも吸ってこようかな、外の出方もわかったし」


そう言うと立ち上がって外へ向かう戸に手をかける。

鍵がかかって開かない可能性も考えていたが、何の抵抗もなく戸を開き玄関まで行って外へ出た。


「外に行くまで全部鍵がかかってなかったな。不用心なのか、それともここはよっぽど安全な隠れ家なのかな」

少し困惑しながらも外へ出る。


部屋の中もそうだったのだが、外は昼間よりは暗かったが地球での深夜の真っ暗闇ではなかった。

朝の薄暗さが近い感じだ。隠れ家を囲む塀も見えるし、鮮やかな緑とは言えないものの、薄暗い色だったが芝生もはっきりと見える。


「……夜明け寸前まで寝ていたのか。ここは1日24時間だっけ?なんにしても寝過ぎだよなぁ。魔法の修行は疲れやすいのかもしれないし、一応聞いておいた方がいいか」


涼しい風を全身で感じながら、十分に寝てさっぱりしている俺はまだまだ足りないこの世界の常識を1つ1つ埋めるべく、聞くべきことを整理した。



「コウだとは思っていましたが、こんな夜中にどうしたんですか?」


後ろから声がしたので振り向くと、そこには昼間とは違ってシンプルながら高級そうな寝間着を着たボサツ師匠が立っていた。

いうほど扇情的な格好ではないが、思わず見とれてしまう。が、見とれている自分に気付き慌てて心を落ち着かせた。


「いえ、目が覚めたのでちょっと外の空気を吸いたいと思って…」

「そうでしたか。あ、伝えていませんでしたが、あの塀から外には出てはいけませんよ?魔物に出くわす可能性があります。それは今後の練習のお楽しみに取っておきます」


今後のお楽しみ…いや練習か。どちらにしてもずいぶん嫌な単語が聞こえた気がしたが、魔物…そんなものもいるのか。

まぁ、異世界で魔物は定番だけど今後戦うことになると聞くだけでちょっと恐怖感が湧く。


そもそも知らないところへ行っても大丈夫と思い込むほど俺は考えなしじゃない。

異世界に来たのだからどこまでが安全か危険かの情報がない今は、慎重に行動すべきだと思っている。


そう考えていてふとボサツ師匠を見ると、師匠もこちらの目を覗き込むように見ていることに気付いた。

薄暗いこの中でもはっきりと見える師匠の黄色の瞳に吸い込まれそうになる。


っと、こっちもじっと見返していることに自分で気がつき少し照れるとすぐにに視線をそらした。

俺の一連の行動に気付いたのだろう、師匠は笑っている。

こういう雰囲気で女性とまともに二人っきりなんて今まで経験ないんだから、正直笑わないで欲しい…。


「コウはもう気力十分のようですね。せっかくこうやって外にいるので魔法の練習でもします?」


変な雰囲気を避けてくれたのだろうか、それとも純粋に魔法の師匠としてだろうか

ボサツ師匠が練習するか聞いてきたので昼間の雪辱を晴らさんべく修行に賛成した。



師匠に連れられて昼間の芝生の方と逆の、玄関から出て左側の土がむき出しのエリアに移動する。

ここは芝生の庭っぽいところと違って奥の塀まで200mはありそうなほど広いエリアだった。

確かに魔法の練習には良さそうだ、壊すものもないし。


「それでは、意地悪なくーちゃんと違って私は風の魔法を実際使ってみるところから教えるとしますね」


クエス師匠の指導は意地悪だっけな?と一瞬思うが、ここはスルーしておく。うん、スルースキルは大事だ。

そんな別のことを考えているうちに、ボサツ師匠の周りに魔力が展開される。足元に薄緑色の光が現れ師匠の魔力の雰囲気が変わった。


「これは風属性……ですよね?」

明確な自信はなかったが、多分風だろうと思い師匠に聞いてみる。


「ええ、その通り風の魔力ですよ。やはりコウの第一属性だからでしょうか、わかりやすかったようです」

そう言うと師匠はその魔力を操り、さほど高さのない円錐のような形の魔法核を3つ作り縦に並べたように見えた。


「風よ私の元へ、<突風>」

師匠がそう言うと先ほど魔力を配置した場所からより大きな魔力を感じ、すぐに正面に向かって強い風が吹いた。


「おぉぉ、すげぇ」

思わず感動して両手を握りしめて興奮する。

近くで見ていただけなので飛ばされることはないが、そこにいれば立っているのがやっとかのような強い風が師匠の前で発生したのだ。


魔物を倒せるほど強力とまでは言えないが、明らかに魔法だとわかるものだった。

しかもどうやら反動もなさそう。作用反作用の物理的な法則もあまり気にしない方がよさそうだ。



「俺にもそれ、使えるんですか?」

恐る恐る聞いてみる。強力とは言えないにしてもかなりの突風を吹かせる魔法だ。

初心者の俺には厳しいかもしれないがとにかくやってみたい気持ちが高まっていた。


「ええ、コウなら間違いなくできますよ」

そう言って師匠はにっこり微笑んだ。


出来る?マジで俺にできる?あれが?

師匠に出来ると言われて、正直俺は喜びよりも戸惑いの方が大きかった。


一応魔法使いになったと言われた俺だったが、体に特に変化は見られないし感じない。

肉体年齢を固定されたらしいが、それも数日で実感がわくはずもない。


魔法使いになれて変わったことと言えば、魔力を見えたり感じることが出来て、自分の魔力なら動かす事もできるようになったくらいだ。

(実際、某作品の気とかオーラみたいな感じだったし思っていた以上にわかりやすかったからなぁ)


だが、今目の前で使われた魔法を使えると言われても、突風を起こしたことが凄すぎてとても自分が扱えるなんて思えなかった。


固まっている俺を見て師匠は不思議そうな顔をする。

「まだ魔法が使えるという実感がわきませんか?」

師匠の言葉に俺は何度もうなづいてしまった。


「ふふふっ、その才能を持ち合わせておいて魔法が使える気がしないと言ったら、普通の人は呆れてしまいます」

そう言うとボサツ師匠は先ほどと同じ小さな風の魔力の塊を3つ空中に出した。



「よく見てください。突風の魔法は風を起こす風属性の基本的な魔法です。使用するにはまず3つの魔力の塊、いわゆる魔法核を直線に並べます」

そう言いながら師匠は3つの魔力を縦に直線に並べる。


「この時真ん中の魔力だけを大きくして他の二つの1.5倍になるように調整します。それを魔力でつなぎ、これで準備は完了です」

そう言いながら真ん中の魔力を大きくしていく。そういえば昼の魔力は丸型だったが、今回の魔核は円錐型になっている


「師匠、その、形は球体ではなくその円錐…なんですよね?」

恐る恐る質問をすると師匠が嬉しそうに答える。


「ええ、ちゃんと気付くとはさすがです。この形の尖った方向に風が出るのでもちろん形は重要です」

気づいてよかった…ひょっとして試されていたのだろうか。



さて俺もやってみようと意気込み、自分の体から20㎝程離れた所に3点直線状に円錐型の魔力を作り出し直線でつなげた。

ちゃんと比率も大丈夫なはず。真ん中が1.5倍のはずだ。

どうでしょうか?とやや不安ながらも師匠をみると、師匠は少し感心しているようにも見えた。


「ええ、問題ないです。きれいな形が出来ているのは昼間の特訓の成果です。それではその状態を維持したまま詠唱、または祝詞を唱えると

 精霊様からの魔力がその型へ流れ込み、型に魔力が満たされると魔法が発動します」


「祝詞、、ですか?」

「そうです、詠唱とも祝詞ともいいますが、精霊様に捧げる言葉です。分かりやすい言葉で言いますと魔法の発動の手助けをお願いする、と言ったところです」

つまり魔力で一定の型を作って精霊にお願いするといった感じなのだろう。


精霊とはいったいどんな存在なのだろうか?こんなあり得ない現象を引き起こすのだから

あまり論理的に考えても仕方ないはずなのだがどうも気になってしまう。


「その、この状態で精霊様にお願いすると発動するんですよね?」

「そうです。もちろん風を起こすタイミングはコウが調整できますし、コウも私がやった突風のイメージを持ってお願いしないといけません」


イメージと魔力の型(発動の位置となる枠)で魔法が発動できるのはわかった。

こうなるとますます精霊という存在がどういうものなのか気になって仕方がない。おれは師匠にズバリ聞いてみた。


「精霊様とはどういう存在なのでしょうか?」

師匠は少し考えるように俺から視線を外したが、すぐにこちらを向きなおして答えてくれる。


「簡単に言えば契約することで魔法の発動を手助けしてくれる存在です。後で座学の時に教えようと思っていましたがせっかくなので今話しておきます。

 魔法の発動は型を作り精霊に呼びかけることで、精霊がそこに多量の魔力を注ぎ込んでくれます。ちなみに契約さえしていれば精霊に対して敬意を持っていなくても問題ありません。

 あと余談ですが、精霊が注ぎ込む分の魔力を自分で行うと詠唱がほとんど不要となります。質問の答えとしては、精霊の存在は契約出来て魔法を補助してくれる・・以外のことは詳しくはわかっていません。そういう分野を研究する者もほとんどいませんので」



とにかく精霊の存在は色々と謎のある存在だということはわかった。

話の流れからすると契約しないと手助けしてくれない。つまりその属性の魔法が使えないということは確かなのだろう。


ついでのように言われたが自分の魔力だけを使った魔法についても何となくわかったのは良かったかな。

ただ、滅茶苦茶効率悪そうな話だったが。

しかも何のメリットあるのかさっぱりわからなかったし。


1章も後1話になります。

いつも読んでくれる皆様ありがとうございます。

これからも頑張っていきます。物語の完成まで、1歩また1歩と。


修正履歴

19/01/30 改行追加・あらすじ

19/06/30 誤字修正

20/07/15 表現を一部修正。ボサツの口調を変更。

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