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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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コウとマナの関係11

ここまでのあらすじ


マナはついにコウを殺すと決め、その意思を伝える。

屋外での戦闘になる中、マナの仕事仲間がその様子を観察していた。


◆◇



少しだけ時間を巻き戻す。

距離を取った状態で互いに剣を取り出したコウとマナ。


すぐに示し合わせたかのように剣先を相手に向けると、周囲に魔力を展開し背後で魔核を数十個作り始める。

そして剣先を向けてから5秒経ったとき、2人は一斉に動き始めた。


この行動はいつも道場でやっている練習試合と同じ動きだった。

最初はあまり乗り気じゃなかったマナも、ここまでくるとすっかり練習試合という名目に乗っかっていた。


距離があるため初めは互いにけん制で<火の槍><風の槍>を2発ずつずらして放つ。

と同時にお互い型を組み上げてストックし、また魔力を放出しながら魔核で型を作る。


(今は風属性か)


マナはコウの属性を判断し<小爆発>を自分の背中に使って一気に距離を詰めようとする。

が、それはマナがよく使う手でコウも予期しており、向かってくるマナに合わせるように<風刃>・<風の槍>を放つ。


対してマナは奥にある風の槍の弾道を判断し、姿勢を崩しつつ風の槍をかわしながら風刃を受け流そうと試みる。

そのまま斜め後ろに押されるようにずらされたが、再び背中に<小爆発>を起こしマナが突っ込む。


だがコウは<豪風>で強力な逆風を起こし続け、突進の威力を殺されたマナは空中で宙返りするとしゃがみ姿勢で地面に着地しその風をやり過ごした。


「やっぱり簡単には近づけないかぁ」


「簡単な突撃で風使いに近づけるんだったら苦労しないだろ」


と言いつつコウは背中に<加圧弾>を使って一気にマナとの距離を詰める。


だがマナも相手を自由に動かせるつもりはない。

向かってくるコウにストックから取り出した<大火弾>を放つ。


大きな炎の塊が飛んでいくが、コウは<豪風>で飛んでくる炎の塊押し返そうとしつつ、その間に<加圧弾>を使って自分を横へと飛ばして回避した。



さすがに本気のマナはやるな、とコウが感心しているとその隙にマナがすぐ傍まで吹っ飛んできていて、その勢い任せに剣を振り下ろす。

慌ててコウはそれを受けるが勢いのついたマナの一撃に押し込まれる。


そのまま力押しのつばぜり合いが続く中、互いに次の魔法の準備を始めマナが先に動いた。

マナが魔法を発動させると、2人の周囲を取り囲むように炎が燃え広がる。


その周囲の炎が勢いを増し、さらに2人を呑み込むかのように内側へと渦を描くように燃え広がって来る。


「げっ、自分ごと焼く気か」


コウが<加圧弾>を腹部に使って後方に吹っ飛び逃れようとしたが、マナはそれを予見しておりコウの後方2か所を<小爆発>を使い爆発させる。


後方に飛んだと思いきや爆発で逆にマナの方へと飛ばされ、自分に向かって飛ばされるコウに合わせてマナが剣を振りぶった切ろうとする。


コウも剣を構え互いの剣同士がぶつかり合い今度は勢いのあるコウがマナを押すが

マナが着実に時間を稼ぐことに成功し、炎が2人を包み込む寸前だった。


「くっ、<水生成>、<水牢>」


矢継ぎ早にコウは自分を水槽に閉じ込めるように周囲に水を作り出す。

最初の水生成はマナの周囲の魔力と相殺されほとんど消滅したが、2重で水の塊を作ったことからコウの全身が四角い水の塊の中に入る。


これでは焼けないと判断したマナは目の前に<小爆発>を使い、その水の塊の一部を弾け飛ばしつつ自分は炎の渦の中から脱出する。

コウは周りの炎に加熱され一気に高温になりつつある水を動かし、自分を外へと射出させて何とか炎の渦から脱出した。



燃え上がった炎は4mほどの高さにもなり、内側にあった水は全て蒸発し水煙を上げていた。


「あと少し遅れていたらやばかったな」


炎の様子を見てこちらに向かってこないことを確認すると、コウはすぐにマナの位置をサーチする。


風の属性が使える者は<風のサーチ>を使うことで60m~100mを探知できるが

魔法を使わずとも魔力の放出により数m程度の範囲の魔力反応はすぐに位置を把握できる。


ただ風属性の場合はさらに十数mまで把握でき、コウはマナの位置を把握して次の攻撃の準備へと取り掛かった。

一方のマナは燃え上がる炎のせいで目視ではコウの位置を確認できず、熱によるサーチも困難で周辺の魔力と魔核だけを準備しつつ少し下がりながら受けの体制を取った。


まだ燃え上がっている大きな炎から少し距離を取りつつ、外周を回るようにしてコウは一気にマナとの距離を詰める。

これは近接戦を挑みたいマナにとっても好都合で、魔法を準備しつつコウの一撃を受け止めようと構える。



コウが間近まで接近し斜めから剣を振り下ろす。

マナにとって左上から切り込まれる一撃を右手の剣で受け止めようとしたとき、コウが空中で剣の振りを引っ込めマナの受けを空ぶらせる。


その動きは引っ込めたというより剣先が何かに当たって押し戻されたように見えた。

受けるはずだった一撃が空を切るのでマナは次の動きが予想できず対応に戸惑う。


そのままコウは左回転し、剣筋を平行にするとマナの左側を水平に切りつけた。

反応が遅れたマナはとっさに下がるが左の二の腕を軽く切りつけられ出血する。


さらにコウは容赦なく追い打ちをかける。

回転して振りぬいたと思ったコウの剣はマナの正面で空気の壁にぶつかるように止まり、明らかに無理な体勢のまま足元を狙った突きに変わる。


初弾の空振りから異様な動きを見せるコウの剣筋にかなりの危機感を持ったマナは接近戦を諦め、ストックから<中爆発>を取り出すと同時に一気に魔力を突っ込み

近距離で対峙するコウと自分の間に、自爆ダメージなどお構いなしに大きな爆発を起こす。


コウはマナの右太ももに軽く剣が届いたかと思うと、そのまま爆発に巻き込まれて大きく後方へ吹っ飛ばされる。


周囲の魔力障壁でダメージは抑えたとはいえ、突き刺しに動いていた右手は多数の擦り傷と軽いやけど状態になり、攻撃に集中していたことから受け身の余裕もほとんどなく背中から地面に衝突する。


一方のマナも自分の魔法でダメージは抑えられたとはいえ、大した抵抗も出来ずに後ろへ吹っ飛ばされ背中を地面にこすり、さらに左腕と太ももにコウの一撃がかすった切り傷もある。


「やばっ、あの剣筋。たぶん風の板とか使っててよく見ていればわかるけど・・まいるなぁ」


マナは素早く起き上がりコウの剣による傷が深くないことを確認すると、魔力を放出し周辺を警戒する。


「ぐっ、マジかよ。普通ストックは防御魔法だろうに。もう少し剣に魔力を集中させてたら魔力の障壁が薄くなり右手は骨折か最悪吹っ飛んでいたな」


コウは起き上がりながらマナの位置を確認しつつ、水属性に変えて右手をとりあえず程度に癒す。

少なくとも握力は問題なさそうで、近接戦はまだまだいけることを確認した。


それを見たマナは<光の保護布>の効果のある小さいシップのような黄色い布を取り出して、切り傷を受けた2か所に張り付けた。


ちょっと剣筋をずらすような動きは何度か見せてもらったことはあったが、さっきのようなコウの剣さばきは普段の練習試合でも見たことのないものだった。


何回か見続ければ慣れそうな感じはあったが、この戦いの中で見極めるとなると、良くて傷だらけになるリスクを負わないといけない。

さらにコウが別の小細工を織り交ぜることができれば、浅い傷では済まない可能性もある。


「近接戦は厳しいかぁ」

マナは嬉しそうな表情でコウの方を見ながらつぶやいた。


嬉しいという感覚はほぼ未自覚だったが、尊敬する師が見せる高い技術にマナは気分が高揚していた。

とはいえ近接戦が厳しいというのは、マナにとってかなり厳しい状況に追い込まれたことになる。


遠距離からの火属性による熱や炎や爆発はコウの水や風の魔法によって大方無力化されてしまう。

その為、当初の目的であるコウにそれなりの傷を負わせるには剣による近接攻撃こそが最適だった。


だが先ほどのやり取りでそれもかなり厳しいと見せつけられてしまったのだ。


「師匠!やっぱり師匠はすごいですね」


「いや、さっきもう一歩踏み込んでいたら俺の右手は使い物にならなくなっていたかもしれない。マナも大したものだよ」


「えへへ、そうですか?師匠に褒められるとやっぱり嬉しいな」


そう言いながらマナは魔力をより多く放出し、魔核を多数作り始める。

それを見たコウはストックを入れ替え、2個とも防御魔法に切り替えた。


「でも負けてはくれないんだろ?」


「当然ですよ。私の目的は師匠を殺すことですから。それに師匠のところで磨いた技術をまだまだ披露できていませんし」


少しマナの目的意識が変わりつつあるのか?と思いながらコウは注意深く観察する。

が、マナはだらだらと立ち話をするつもりはないと言わんばかりに魔法を発動し、中距離での攻撃ラッシュに出た。


<火の槍>がタイミングをずらしながら何発も発射され、コウはある程度回避しつつも<水の強化盾>を正面に張って数発受け止める。

いくら有利属性でいるとはいえ、直撃すれば貫かれることは無くてもやけどくらいは負う攻撃だ。


一方、マナはテンポが速く隙の少ない攻撃を連発し追い詰めたいところだったが、水属性に対してはいまいちその威力を発揮できないでいた。


「とりあえず防ぐのは何とかなるが、風が使えないと距離を詰めるのは厳しいな・・」


マナの攻撃を防ぎやすい水属性に固定せざるを得ないコウも、マナとの距離を詰められず中距離戦に付き合わざるを得なくなった。

無理して歩み寄ったところで、爆発系を使われればすぐに距離を空けられるので意味がない。


「この程度じゃないから」


さらにマナは<100の火矢>を放ちコウの周辺に降り注ぐように飛ばす。

地面に落ちた魔法の矢が火種になっているのか、あまり草木もない荒れ地にあちこちと小さな種火が残り始める。


その様子をコウが警戒していると、マナはさらに魔法を重ねる。

マナの前方から2つの炎が跡を残しながら突き進んでくる。


「発火土竜?珍しい魔法を。となるとそっち狙いか」


コウはつぶやくと型を組み始め、突き進んでくる2つの炎を避けるように左へと動いた。

だがコウの位置を追うように2つの炎は進路を曲げて近づいてくる。


「<水生成>、これでどうだ」


コウが魔力を込め広範囲に地面から数cmの厚みの水を作り出す。

マナが作り出した追尾する2つの炎は進みながらも弱くなり、100矢の落ちた跡に燃えていた小さな火も一瞬にして消えてしまった。


火が消えるとすぐに維持するのをやめ、水が周囲に流れ出しながら地面に吸われ消えていく。


「やっぱり読まれてるかぁ」


「焔の集いだろ、ずいぶん珍しい魔法を使うんだな」


「まぁね、だって普通の威力の魔法じゃ師匠に当たらないしダメージもなそうだもん」


そう言いながら<火の槍><火刃>を飛ばす。

コウは火の槍をかわし、火刃を<水の強化盾>で受け止める。


火刃は魔法障壁に触れた瞬間大きく炎が広がるが、水の盾で受け止めていることもあってすぐに火は消えてしまう。

コウの視界が一瞬炎で遮られた時にマナは少しだけ距離を詰めるが、コウもそれを察知し少しだけ下がったためあまり意味をなさなかった。


対抗してコウも<水圧砲>で応戦し、マナは回避や盾を取り出して対応しつつ大きなダメージは避ける。


状況はあくまでもコウに有利なまま進むが、修行で水属性の魔法に慣れつつあったマナに対しては決め手に欠ける状況だった。


(変だな、ストックを入れ替えないという事は切り札は焔の集いじゃないのか・・)

魔法を撃ち合いながらもコウは警戒を緩めない。


対して時々ストックから型を取り出しては追加して戻すを繰り返すマナ。

その核の数からかなりの威力が想定されることもあり、たとえ有利な水属性を使っていても大きな隙は見せるわけにはいかなかった。


一方のマナも、必殺の一撃を決めようと型を組み始めると的確に妨害してくるコウにイライラし始める。


「師匠と一緒にもっと型の作り方を練習しておけば・・」

そうぼやくが、一緒に練習していたら隠し玉にはならないのでこればかりは仕方がない。


「らちが明かない、こうなったら誤魔化してでも時間を作らなきゃ」


マナはコウが放った<水圧砲>を魔道具で発動させた<光の強化盾>で防ぎ、型を取り出して完成を急ぎながら同時に自分に<燃える魂>を使う。


この魔法は火属性の魔法の威力を上げ、火属性状態での魔力放出量が1.5倍になる。

ただしコントロール力が落ち、魔法発動時の消費は1.8倍になるのでロスが大きい。


リスクを承知したうえで威力に極振りする、実に火属性らしい魔法だ。


「ちっ、無理やり決めに来たか」


1発を止められて、発動寸前だった2発目の<水圧砲>も仕方なく放つが3つもばらまいた光の強化盾を貫くことはできなかった。

とはいえ火属性の強力な魔法が来るのがわかっている以上、今更水属性から他の属性へ変更することはできない。


「くそっ、こんな時複数の属性を同時に使えるようになっていれば・・」


とぼやいた瞬間、ふと遠くに魔法の反応を感じ一瞬意識を割くものの、その後の反応はなくこちらへの攻撃ではないと判断して再びマナへと集中する。


本日もご覧いただきありがとうございます。

やはり戦闘シーンは書くのが辛い・・なんて言ってられないか。


誤字・脱字の指摘、いつもありがとうございます。本当に助かっております。

また、感想や評価なんかもいただければ嬉しいです。

ブクマもよろしくお願いします。


では次話は10/18(金)更新予定です。時間が無いとか言ってると、予告日すぐにがやって来る・・


魔法紹介

<豪風>風:突風の強化版。突風と違って強い風を出し続けることが出来る。

<大火弾>火:1m程の高温の火の固まりをぶつける。簡単に言うとメラミ

<風のサーチ>風:空気に薄く自分の魔力を馴染ませて周辺の様子を探る探知魔法。全属性の中で最も距離が長く優秀。

<中爆発>火:高威力の爆発魔法。ちなみに大爆発という名前の魔法はない。

<焔の集い>火:周囲の火や火種を巻き込みつつ大きく燃えがある炎。周囲に火があるほど威力が増す。

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