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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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コウとマナの関係8

ここまでのあらすじ


コウの危険性を伝えようとマナは必死に外へ情報を流す。だが反応はまったくなかった。

情報を受け取ったフラウーは動かないことを決める。

何の進展もないまま、マナを追い詰めるように時間だけが過ぎて行った。


定期報告から2週間経っても外からマナへ連絡が来ることはなかった。

ただマナはそうだろうなと受け止めており、すでに焦りはなく覚悟という炎で自分の揺らぐ気持ちを焼いている最中だった。


今までコウとの練習試合を重ねた結果から言って、マナがコウに勝てる可能性はほぼ無いと言っていい。

それはマナも十分に理解していたが、それでも動かないといけないと何度も自分に言い聞かせていた。


実際にコウは強いが、マナから見てでたらめに強いわけではない。

現在の実力ならば1隊隊長のアルディオスや2隊隊長のシュビリアスで十分に対処できる範囲だった。


しかし、これが1年,2年と経つとコウのさらなる成長により、隊長たちですらかなり厳しくなる可能性が高い。

そうなれば、フラウーがコウを危険と判断したところで、彼女の持ち駒で対処するにも多大な犠牲が出ることになる。


そして、このまま連絡を待ち続けたところで、外から指示が来る可能性は低いとマナは感じていた。

なんせ定期報告が途絶えたにもかかわらず外からは何の反応もないからだ。


黙って相手が強くなるのを観察するのはもはや愚策でしかない。

敵味方どちらに向かうかわからないコウという恐ろしい芽は今のうちに刈り取るしかない、それがマナの判断だった。


もちろん殺れなんて命令が下っていないことはマナ自身もわかっている。

でも時には現場で判断すべきこともある、それがマナのたどり着いた答えだった。


とはいえ先ほど言ったように、マナはコウに勝てる可能性は限りなくない。


なのでマナとしては、ここでコウを何とか負傷させて騒ぎを大きくし

その騒ぎを聞きつけた外のメンバーがマナの判断を察して目的を果たしてくれればいい、そんな考えに至っていたのだ。


もちろんコウが普通の実力者程度ならこんな考えはしなかった。

残念なことにコウは普通の実力者ではなかったのだ。


彼が将来、この連合の最強の3人である3つの光の柱になりえる才能を持った人物であり

さらに迷っている時間はあまりないという状況から考え抜いた結果だった。




その日夕食を終え、コウはいつものように大部屋で椅子に座り魔法書を見ては考え事をしていた。

シーラは図書室に向かい午前午後の修行での復習と、さらなる魔法の一連の流れを研究している。


特に昼間コウに披露した連続魔法の流れが厳しいダメ出しを食らったことが効いているのか、シーラは根本から修正するという作業に没頭してすぐに戻ってくる可能性が低い。

マナはこれこそがいい機会だと思い庭で修業することをコウに告げる。


「師匠、ちょっと庭に行ってきます」


「あぁ、あんまり根を詰めすぎるなよ。明日もあるんだから」


「はーい、師匠こそ頑張りすぎないでくださいね~」


「ふっ。ありがとう、そうするよ」


少しうれしそうにコウは背中でマナを見送った。

それから30分ほど経ち、エニメットが夕食の片づけを終えて出て行く。


「それではお先に失礼します。何かありましたらお呼びください」


いつもの挨拶をして、深く頭を下げるとエニメットが退出する。

彼女は時間がある場合は夕食後にコウの指導を受けることもあるが、今日の予定は今後の修行で使う魔道具の整理点検や発注があるので早々と退出した。



マナの考えていた通り、コウの周りから人がいなくなる。

そしてその数分後、マナは覚悟をもって剣を握りしめたまま庭から大部屋へ向かう通路へと入った。


これが本意ではないけど決心した道だから、何度もそう自分に言い聞かせ落ち着いてから建物へと入ったマナ。

狙うは最初の一撃でのコウの負傷だった。

その後のことは考えない。


最悪殺されるだろうが、それが師匠相手ならまぁ悪くない。

そう思いなぜか自分でもわからないまま薄ら笑いを浮かべ、短めの剣を持った右手を動かし刃の向きを変える。


決して狙われているコウが気がついていない愚かさを笑ったわけじゃない。

自分の意にそぐわないことを平然とやろうとしている自分が、滑稽で愚かだと思い自然と出てしまった笑いだった。


もう数歩進めば大部屋へと向かう直線の通路に入る、そう思った時だった。


「マナ~、もう戻ってきたのか?」

「んひぇっ」


まさかのタイミングで声をかけられ、緊張の糸が切れおかしな声が出てしまう。

と同時に、椅子が動く音がしたのでコウが来ると思い慌てて剣をアイテムボックスへと収納した。


想定外の状況に荒々しい呼吸が抑えられず、立ったまま硬直しているマナの元にコウがやって来る。

まさかすべてばれていた?と思ったマナはどうしていいかわからず、動けないまま向かってくるコウの足音を聞くしかなかった。


「マナ、大丈夫か?」


おかしなポーズで立っているマナを不思議そうに見つめるコウ。

マナは慌てて普通に立とうとしたがバランスを崩して転倒しそうになる。


「おっっと」


コウが左手でマナの腕をつかんで倒れるのを防ぐと、マナは何とか転ばずに体勢を立て直すことができた。

だが、何て言っていいのかわからずに口を半開きにしたまま声を出すことができない。


目の前のコウは「おーぃ」と言いながら目の前で右手を振る。

やっとのことで落ち着いたマナは苦笑いをしながら、転ぶのを防いでくれたコウに感謝を述べた。


明らかに態度がおかしいマナを見たコウだったが、怪しんでいる様子はなくどちらかというと呆れていた。


「本当に大丈夫か・・って、大丈夫じゃないな。今日は早く寝ておいた方がいいぞ。昼間張り切り過ぎてたから大して魔力も残ってないんじゃないか?

 休むのだって大事なことなんだから」


コウの言っていることは事実だった。

マナは昼の内から今日決行すると予定して行動していたが、コウと本格的な戦闘をするつもりはなかった。


とにかく隠せないほどの大きな騒ぎにして外部に知らせるのが目的だったので、修行は今日が最後になるなと思い昼間に全力を尽くしていた。

そもそも直接戦ったところで勝てる見込みがないことから、十分な魔力を残しておく意味なんてないのだから。


「あ、あはは。そうかもしれない。ちょーっと昼間頑張りすぎちゃったから・・。はい、早く寝ますね、師匠」


「ああ。疲れ切っていたら動こうと思っていても、思ったように動けないものだからな」


そう言ってコウはマナに背を向けるとそのまま自室へと戻っていった。

マナはがっくり肩を落とすと、今日はもうどうしようもないかと諦め自分の部屋へと戻って休むことにした。


『大丈夫、まだ気づかれていないはず。次があるんだから今は休もう・・』


とにかくこれ以上考えたところで迷いが生じるだけだと思い、ふらふらとベッドへ倒れ込んでそのまま眠りについた。




それから1週間ほどの間に3度、マナはコウへの不意打ちを試みたがすべてが失敗に終わった。

全てにおいてマナが攻撃に移る前にコウが先に声をかけ、動揺しているうちにコウが丸く言いくるめてその場を収めてしまった。


これだけ失敗が続けばコウには不意打ちが通用しないとさすがに気づく。

そうなるとコウを負傷させ騒ぎにする為には、真正面からコウと戦うしかなくなっていた。


不意打ちで負傷させて騒ぎにし、後から『師匠が不意打ちに対処できるか試しただけ』なんて無理筋で誤魔化す手すら使えなくなったという事だった。

ほとんどあり得ないとはいえ最後の希望が消え、完全に追いつめられたと感じたマナは覚悟を決める。


自室の机に普通の紙を1枚置き、その紙に書かれた文字をつぶやくように読み上げる。

「師匠 ありがとうございます ごめんなさい」


そして壁を正面にして真剣な目で何かを見つめたマナは、後戻りできない道を進むことを決意した。


これは私にとって、フラウー様にとって、実行する必要があること。

だから私は揺るがない。

だから私は師匠と戦う。


静かで揺らぐことのない炎がマナの心の中にあった。


すみません、最小級に短い1話になってしまいました。

切りどころが難しかったことと・・この先のお話がなかなかかけていないのが最大の原因です。

申し訳ありません。

次回からはまたいつものように5k文字/1話 ぐらいでやっていきますのでお許しください。


評価や感想、レビューや、誤字脱字指摘など頂けると嬉しいです。

もちろん誤字脱字の無いように頑張ってはいますが・・(汗

次話は10/9(水)更新予定です。

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