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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
1章 魔法使いになります! (1~17話)
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クエスの妹への報告2

いつも読んでいただいている皆様ありがとうございます。

今話は前回の続き、妹への報告です。ちょっと先の仕事の話もあります。


しばらくして落ち着いた二人は向き合い、ミントの質問攻めが始まる。


「エリスお姉ちゃんは、とにかく無事なんだよ…ね?」

「ええ、ちゃんと話せるし、うーん…そうね、ほとんど昔のままだと思うわ」


話し方があまり変わっていなかったエリスを思い出し嬉しそうに返答するクエス。


「で、で、エリスお姉ちゃんの転生先って」

そこまで発言して急に言い淀むミント。


最初のプランでは転生先の肉体を強引に魔素体にして、その変換時にエリスにコントロールしてもらってエリスの体を再構築できないかと考えていた。

それが先ほどのクエスの報告ではエリスが拒否したという。

そのためミントは体の体積が人種とは大きく違うからその方法は無理だと言われた、と想像していた。


「エリスお姉ちゃんの転移先って・・何かの動物だったの?もしかして竜種とかのでかいやつとか・・」

クエスはミントのまさかの質問に少し苦笑いをしつつ、自分の先ほどの報告ではそう勘違いしても無理はないかと思い

思わず右手を頭に当ててそう来るとは思わなかったと、自分の考えが狭かったことを思い知った。


「違うわ、というか私にその想定がなかったわね。言われて少し自分の甘さを実感したわ。エリスは人種に転生してるし、転生体の男の子ともちゃんと意思疎通は出来るわよ」

「えっ、じゃあなんでエリスお姉ちゃんは止めたの?」


不思議そうにするミント。

転生体の肉体を乗っ取ればその肉体の人物は当然精神の行き場を亡くして消滅する可能性が高いが

そもそもそこをまったく気にしていなかったミントだったので

拒否される理由が想定できず、今回の結果が不思議でしょうがなかった。


「あー、ミントは男ってところは気にならないのね、まぁいいか。拒否したのはエリスがその彼を結構気に入ってて、その上魔法使いにすることを提案してきたからよ」

「え?え、えぇ?」


全くの想定外の展開に思わず固まって驚きの声を出すだけで、ミントからは追加の質問すら出ない。

クエスもだよねー、と力ない笑顔で驚くミントを見ている。


「どっちみち転生先の体を乗っ取るなんて方法は確実とは言い切れない上、エリス本人が協力する気がないなら成功は不可能に近い。だからその場ではどうしようもなくその彼を連れて来たってわけ」


クエスの発言に、今度はぽかんと口を開けたままただただ頷くミント。

ちょっとこの展開についていけてないようだった。


「で、エリスと相談したんだけど、今後は方針を変えて彼を魔法使いにして彼の体を魔素体に変え、精神体を入れ替えさせると同時に魔素体を変化させ何度もお互いに入れ替えられるような方法を模索中ってわけ」


驚きからなかなか脱出できなかったミントだったが、しばらくして少し落ち着いたのか考え込む。

魔素体はそもそも精神体を安定させるために元の肉体と変わらない状態を維持している。

確かに精神体の表と中を入れ替える時に何らかの方法で魔素体をエリスの精神体が安定する形

つまり元の姿に変えることは出来そうな気がする…気がするんだけど。


「なんか……課題増えちゃったね。でもでも、やっとエリスお姉ちゃんを取り戻せたね」

一抹の不安を抱きながらも、ミントはすごく嬉しそうな表情をクエスに見せた。


「だね、そしてもうひと頑張りしなきゃね」

そうクエスも笑って返すと、ミントが急に眼前まで迫ってきた。


「で、もちろんエリスお姉ちゃんと話が出来るんだよね?」

ミントは目を輝かせながらクエスに訴える。

「も、もちろん。ただその彼が寝てる時くらいだけど。あと、外と会話するのも相当疲れるみたいな雰囲気だったから、長時間とか何度もって訳にはいかないかもよ」


正確に本人から聞いたわけではないのだが、あの魔力を消費しながら青白い光になって話しているエリスは

とても長い時間話が出来る状態じゃないのは明白だった。


「そ、そうなんだ……でも、一度は話がしたいな、いっぱい謝らなきゃいけないから、本当に、エリスお姉ちゃんには…いっぱい」

「うん、わかってるわミント。事前に連絡をくれれば、ちゃんとエリスに言っておくから」

クエスの答えに今すぐ会って話をしたいという気持ちをミントは飲み込んだ。


もちろんすぐにでも話がしたかったが、その様子だと話をするだけでエリスに負担がかかる状態だとわかったからだ。

あの時、全てをかけて自分を守ってくれた姉のエリス。

自分がやるべき負担を全て押し付けてしまった大きな罪悪感。


それなのに、なんとか戻って来れたエリスに自分のわがままで更に負担をかけるのだけはどうしても出来なかった。

全力で今までの恩を返したい、すべてを投げ出してでもエリスのために尽くしたい、だからこそミントはすぐに会うことを必死になって思いとどまった。



ミントが拳を握りしめ肩を震わせ必死に我慢している様子を見て、ミントの気持ちを察したのかクエスが優しく語りかける。


「今度ミントが会いたがっていること話してみるから。エリスだってミントと話たいだろうし。私たちは姉妹よ。私たち3人の間に遠慮は不要。

 そもそもミントが我慢していたらエリスはむしろ心配するわよ」

「う、うん」


ミントはちょっと期待したのか少し不安な表情ながらも嬉しそうな顔をする。

クエスもこれはエリスに協力してもらわなきゃと思い、戻ったら早いうちにエリスに相談しようと思った。



「あ、そうそうもう一つミントにお願いしたいことがあったんだけど」

そういうとクエスは小さな銀色の金属を取り出してミントに見せる


「クエスお姉ちゃん、これ・・リピターだよね?確か翻訳とかいろいろな機能のある魔法道具の」


「そうそう、忘れてたけどそんな名前だったわね。それで、これの一般用イヤリングとの同調タイプが欲しいんだけどここに在庫ない?」

翻訳と聞きエリスが転生した男の子に必要なものだと気がつく。


「そっか、その男の為に必要なのね。魔法使いになるなら埋め込み式の物が必要だよね」

クエスはあまり詳しく話さなくても理解して話を進めるミントにちょっと驚いた。


ミントはなかなか頭が回る。妹を国の運営を取り仕切る国王に据えたのは本当に正解だった。

改めてクエスはそう思った。



「ちょっと在庫探してみるから貴賓室の方で待っててくれない?イヤリングとリンクできるタイプは普通使わないから、変に勘ぐられないように極秘で探させるから」

「忙しいのにごめんね、ミント」

軽く頭を下げるクエスを見てミントは笑う。


「エリスお姉ちゃん関連のことならどんなことでも、すぐに仕事を放り出して手伝うから気にしないでよ~」

そう言って謁見の間のロックなどを全て解除し、走って部屋を出て行った。


元気なミントの後姿を見てクエスは肩の荷が下りた気分だった。


「やっと、やっとここまで来れたか。後はコウを強くしてエリスとの精神体の入れ替えに耐えられるようにして・・

 強くなったらコウは私とミントの側近にでもして・・万が一いい仲にでもなって才能のある子ができれば・・この家も安泰。コウもハーレム希望だし上手くいけば完璧なプランね。

 うーん・・もしコウと私が結婚とかなると、コウの中にはエリスがいるんだし・・あれ?これってちょっとやばい?」


クエスもミントもいないところで勝手なことを想像し

ぶつぶつとつぶやきながら貴賓室に向かって歩き出した。



貴賓室で侍女にもらった飲み物を飲みながらくつろいでいると誰かが扉を叩いてきた。

ミントにしては早いな、と思っていると侍女に通されたのは、クエスの母方のいとこに当たるルバール・アイリーシアだった。


彼はこの国直轄の転移門などを製作・修理する「アイリーシア商会」の現場統括責任者だ。

なお、その商会のトップはクエスが務めている。ただここ最近はエリス探索が佳境に入りほとんどの仕事をルバールに任せっきりにしていたのだった。



開口一番ルバールはクエスに頭を下げる。


「お久しぶりですクエス様、そして不躾ですがお願いですから一度仕事に戻って頂けませんか?大型の転移門はクエス様がいらっしゃらないと仕事がほぼ進まないのです」

「あ、うん、そうね。後数日したら半日くらいは手伝う形で戻れると思うから」


そういやすっかり忘れていてまずいな、そんな表情でクエスは何とか仕事に戻るといいながらその場をやり過ごそうとする。

だがルバールはクエスの態度から考えていることを読み切って食い下がる。


「お願いです、明日とは言いません明後日には一度お願いします。上級貴族から突き上げられて・・クエス様はどこに行ってるのかと問い詰められて」

「えっ、まさかどこにいるとか想像でも言ってないわよね?」


コウのことを早い段階では知られたくないと思っていたクエスはルバールを問い詰める。

だがルバールはもちろんご安心ください、っといった態度だった。


「もちろんです、そもそも私もクエス様の居場所など知らないのですから。適当なことを言うと上級貴族たちが勝手に調査隊を送り込みかねません。

 それでクエス様が見つからなければ私もただでは済みませんから」


どうやらこれは思ったより切迫している状態だと思い、クエスは嫌々ながらも明後日から少しは仕事に復帰しようと思った。

そのことを伝えると何度も頭を下げながら「お願いします」を繰り返すので

クエスも「悪かったわね」と謝ってその場を立ち去らせた。



その後5分ほどしてミントがやってきた。

侍女を下がらせて広い貴賓室のドアのロックと防音を魔道具で行い、リピターの入った小さな箱をクエスに手渡す。


「はい、クエスお姉ちゃん。ちゃんとイヤリングから変換パターンをコピーできるタイプを持ってきたよ」

「中は空っぽの新品?」

「もちろん。イヤリングの変換パターンを全部読み取れるよ」


確認を終えるとクエスは立ち上がる。

「ありがとね、ミント」

そう言って出発しようとしたら、ちょっと待ってとミントに服を掴まれた。


「そうそう、クエスお姉ちゃん。ルバールが私にも念を押しておいてくれって頼んでたよ。大変なのは分かるけど変な探りを入れられると不味いからお願いね」

そうミントにお願いされて、クエスは申し訳なさそうに謝る。


「ごめん、ミントにまで迷惑かけちゃったね。明日は必要な道具を揃えに行って、必ず明後日には向かうわ。転移門の仕事はこの国の大事な収入源でもあるからね」

そう言ってクエスは少し笑った。と同時にクエスはミントに伝えなきゃいけないことを思い出す。


「あ、それとさっき言った精神体を入れ替える方法は私の方で裏で調べるから。目立つとリスクが大きくなるのでミントは今のところ動かなくていいからね」

ミントはその言葉に元気よくうなずくと

「大丈夫、わかってる。じゃあね、クエスお姉ちゃん。エリスお姉ちゃんにも私の様子伝えててね~」

といいながら手を振り、魔法を解除して来賓室を出て行った。


クエスはミントの忙しさを感じ、国王の役目を押し付けたことを申し訳なく思いながらもアイリーシア家の王城を後にした。


ひとまず毎日更新は1章が終わるまでは止めることなく続けます。

ストックとしては問題なさそうなので。

2章の最初辺りか中盤辺りまで毎日更新が出来るといいけど・・難しいかな。


ブックマーク、感想、ご指摘、もちろん読んでくれるだけでも大歓迎です。

本当にありがとうございます。


修正履歴

19/01/30 改行追加

19/06/30 表現を一部修正

20/07/15 表現や会話の一部を修正

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