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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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チャンス、見逃し、そして手詰まり

ここまでのあらすじ


師匠としてコウは初日の修行を無事に終える。

シーラに相談したいことがあると言われ、後で相談を聞くことにした。


玄関から大部屋へと向かうとエニメットがまだ食事の準備をしている。

1時間ほどはかかると言われたので、自室に戻って1つ奥の部屋の寝室のベッドへとダイブした。


指導時は慣れない話し方で、何とか師匠っぽくあろうとしつつ努力したつもりだが、発言するたびに自分のセリフがむず痒かった。


ほんとね、「すごい結果だね」とか「~してみよう」とかさ、俺キャラ変しすぎだろ・・。

俺は頭を抱えてベッドの上で悶絶した。


やっぱこんなのを続けていくのは無理だ、もっと素でいかないと落ち着かない。

色々と思い出しながら悶絶した挙句、今日の夕飯にでもこのままじゃやりにくいことを伝えて、素で楽にいかせてもらえないか話してみようと決めた。



「それにしても・・2人共可愛いよなぁ」


俺は<沈音>の効果が部屋に効いていることをいいことに、声を出しながら考える。

マナは黒髪のロングで明るくわかりやすい感じなのがいい。


火属性らしいと言っていいのか、あんなに周りを明るくするような子は素敵だと思う。

見た目も俺より若い感じに見えるし、ノリで軽く触れあう分には許してくれ・・そうな気がする。



一方のシーラはマナに比べれば落ち着いているが、少し品があるくらいの近づきやすいお嬢様って感じだ。

少し遠慮がちなところと背が低いのがさらに可愛らしさを増幅させていて素晴らしい。


銀髪でボサツ師匠とは髪色は違うけど、髪が細めでさらさらした感じは似ている。

ちゃんと俺のことを弟子の立場から慕っている雰囲気を出しているし、その辺りはかなり俺的ツボに入っている。


「うーん、どっちでもいいからもっと仲良くなれれば、付き合ってる雰囲気で・・って、それはダメか。俺は師匠だし、片方だけひいきするのは師として失格だよな。

 でも2人とも弟子だし、俺の指示には従うんだよなぁ、、ってこれ既にハーレムなのか!・・な訳ないか。よし、落ち着こう、俺」


俺はアホな妄想をしながらベッドの上をごろごろと転がる。


ちなみに俺の寝室にあるベッドはやたらでかい。

地球で使っていた1人用のベッドの2倍は確実にあると思う。


こんなお嬢様が寝てるような大きさのベッドなんて不要じゃね?となんとなく思っていたが、この時は師匠たちの意図には全く気がつかなかった。


その後も俺は

「マナは可愛いよなぁ」「シーラも可愛いよなぁ」

そんなことをつぶやきながら


「いかんいかん、しっかりしなきゃ、俺は師匠になったんだから」

と自分を戒める流れを何回も続けて、エニメットが呼びに来るまで俺は非常に無駄な時間を過ごしてしまった。




夕食も4人集まっての楽しい食事となった。

食事の前に俺の話し方のことを切り出してみたが、弟子の2人はほとんど気にしていなかったらしく


「んー、どっちでもいいですよ」

「私もどちらでも構いません。コウ様が師匠であることは変わりませんから」


と軽く流された。

何か悩んだことが悲しくなったが、弟子から見るとそういうものなのかもしれないな。


食事はみんな満足していたのでエニメットも嬉しそうだった。

直系の子でいい生活をしていたはずのシーラが満足しているので、エニメットの料理の腕はかなりのものなんだろう。


これはクエス師匠とエニメットにどんなに感謝しても足りないかもしれない。

食事は毎日の事だからなぁ、それがおいしいというだけでも日々の充実感が全然違ってくる。


食事を終えシーラを見ると目線が合い、シーラが軽く頷いた。

どんな話なのか知らないが、あまり人に聞かれたくない話だとここでは出来ないだろう。


そんなことを思っていると、マナが俺の両肩をつかみ揺らしてくる。


「師匠、今時間ありますか~。暇だったら1戦練習試合やりましょうよ、昼間みたいには簡単に負けませんから~」


「ごめん、マナ。ちょっと用事があるんだよ。それにシーラとは手合わせしてないのにマナばかり贔屓するわけにはいかないって」


「うーん、だったらいつ練習試合やれますか?もっと手合わせしてみたいんです」


「そうだなぁ、少なくとも週1でそういう機会を作るからそれまでは我慢してくれない?その代わり基礎を鍛えて前回とは違う成長したマナを見せつけてもらえないかな?」


そう言ってマナをけん制しつつやる気を持たせると、マナは俺の意図を理解してくれたようだった。


「いいですよ、基礎練習をちゃんとこなして次は師匠に勝って見せますから」

そう言ってマナは大部屋を出て行く。


「いや、マナと俺の属性相性は・・」

と指摘するが既にマナはいなくなっていた。




「はぁ、まったく・・」

俺が軽く頭を抱えているとシーラが横にやってきて小声で話しかけてくる。


「師匠、今から約束していた相談いいですか?」


「うん、いいよ。もし周りに聞かれたくない話だったら俺の部屋でどう?」

俺も小声で提案してみたが、シーラはそれを聞きびっくりして恥ずかしそうにする。


「あれ、俺何かまずいこと言った?」

「い、いえ、そんなことはないです。ただ、その、ちょっと心の準備が出来てなくて」


ん?相談すると言っていたのに、相談する心の準備ができてないとは?

俺は訳が分からなかったが、気にしても仕方ないと思い、とりあえずシーラを連れて自分の部屋へと入った。


俺の部屋は全部で5つあるが、入ってすぐの部屋はテーブルと椅子が2つ、壁側には数人が座れるソファも設置してある。


客人がほとんど入ってこないことになっているこの道場のことを考えると、この設備は弟子たちと接するための部屋だと俺は思っている。



シーラを入口側に座らせつつ対面に座り、シーラの顔を見つめた。


「それで、相談事って何?」

「えっと、まずは聞いていただきありがとうございます」


シーラは先に丁寧に挨拶してくれる。

いや、まだ何もしてないから・・そう思いつつ、そうかしこまらないでと少しは頼れそうな感をアピールした。


「その、本日の修行の事なんですが、あれは直接戦闘をする人向けの修行だと思うんです。

 私は遠距離での攻撃や支援が得意なので、合わないかなって思って。もちろんそう言うことを教える場所だとはボサツ姉様から聞いてはいたんですが」


「あぁ、まあ・・そうだね。確かにシーラが言う通りだと思うよ。一般的には。

 ただボサツ師匠から言われたんだけど、こういった技術は遠距離でも効率よく攻撃することが出来るようになるから決して無駄じゃないと思うよ。

 例えば周囲に保持できる魔力が多ければそれだけ魔法を連発出来るし、型を素早く作るには緻密な魔力コントロールが必要でしょ」


「そう・・ですね。効率を極めればその通りだと思います」


「あとは俺もシーラに何か合う修行があれば考えてみるよ。シーラも今までやってきた修行とかで良さそうなのがあったら是非教えてよ」


「はい、ありがとうございます」

シーラは笑顔で頷いた。


飲み込みが早いのか、簡単な説明にもかかわらずシーラはすぐに納得したようだ。

この様子から言ってある程度理解していた気もするが。


そうなると俺が試されたのかもしれない。

こういう所でも評価されてるんじゃないかと思うと、案外油断ならないな。


「ボサツ師匠も近接戦はあまりやらないけど、こういった訓練は大事だと言っていたし信じていいと思うよ」


情けない話だが、今の俺が説得力を持った話をするには師匠の話を持ち出すしかない。

シーラは少し驚きながらも、姉のボサツがそうしているならといった感じでさらに納得してくれたようだった。



「その、もう一ついいですか?」

「いいよ、何?」


「その、私は・・あまり実力がないのでしょうか?」

「え、どういうこと?」


俺はシーラの急な発言に訳がわからず体の力が抜ける。


「いえ、私は師匠やマナさんと同じLVなのに・・お二人が戦っているのを見て、とてもかなわないなと思って」


「いやいや、それはシーラが支援や遠距離を得意としているからじゃないかな。その分野じゃ俺やマナもかなわないかもよ。

 それに今は不得意でも、これからさらに磨いていけばいいじゃない」


マナより魔力の展開範囲や魔力操作は上手だったのに、妙に自信がないんだなと思いつつ俺はシーラを励ました。

少しだけ納得したのかシーラは小さく頷く。


「ありがとうございます。師匠は優しい方なのですね」

そんなことを言われて俺は動揺しつつ返事した。


「えっ、いやいや。じゃなくて、やる気を持ってもらうのも、まぁ、師匠の仕事の内だと思うから、ね?

 それに魔力展開や操作はマナよりシーラが上手いんだから自信持ってよ」


「そ、そうですか、ありがとうございます」

シーラは少し照れながらも嬉しそうにしていた。


正直、何が「ね?」だよと自分にツッコミ入れつつも、シーラが喜んでいるのを見てひとまずこの場をしのげたと思いほっとした。

さてこれで終わりかなと思って俺が席を立つと、シーラは緊張した面持ちで席を立つ。


あら、まだなにかあるのか?と思いつつ俺はシーラに気楽にしてもらおうと声をかけた。


「シーラ、そんなに緊張しなくていいから気楽にいこうよ。まだまだこれからなんだから」

そう言うと少し落ち着いたのか彼女はぎこちなく笑顔を見せた。


それじゃ、出口までエスコートしようかと移動しようとした時だった。

シーラが緊張した、恥ずかしそうな表情で俺を見る。


「は、はい。わかりました、師匠。でも・・その、せめて、ここじゃなくて、あの・・出来れば寝室の方で・・」


シーラが言っている意味が分からず俺は首を傾げる。

相談がまだあるのか、帰らないのはとりあえずわかったが、としても寝室に行きたがるのは訳が分からない。

ここでは話が出来ないことなのだろうか?


この部屋は確かに廊下に繋がっている入り口の部屋になるだが、ちゃんと<沈音>は効いてて外に音が漏れることはないはずだ。

もちろん鍵もかけているので、いきなり人が入ってくることはない。


「そう?急に人が入ってくることもないし、沈音もかかっているから声が漏れることはないので大丈夫だよ?」

俺は安心させるようにそう言ったが、シーラは俺の発言にかなり緊張したのか息をのんだ。


「わ、わかり、ました。趣味はそれぞれ、ですよね。わ、私は理解がある方ですから、はい、大丈夫です、はい」

「ん?趣味??」


シーラが少し引きつりつつも笑顔を見せながら、俺から視線を少し外す。

なんか話がかみ合わないなと俺が混乱していると、シーラは着ていた白のドレスシャツを首のボタンから1つずつ外し始めた。


俺は驚きつつも思わず見とれてしまう。

首から胸にかけての綺麗な白に近い肌の色に赤らめた顔のコントラストがとても綺麗で、俺の心を大きく揺さぶる。


が、すぐに師匠との特訓を思い出して俺は我に返る。

これは罠なのか?いや、さすがにそんな雰囲気ではないはず・・そう迷いながらわずかに笑みを隠しきれないままシーラに話しかける。


「ちょっ、ちょっちょっと待って。シーラ、まずちょっと手を止めよう。何?これは一体・・何?」

俺のうろたえながらの質問に、シーラは恥ずかしそうに答える。


「師匠がご自身の部屋に呼ぶということは、その、そういうこと、ですよね?私は、そんなに嫌では・・ありません。

 コウ師匠は実力も確かですし、そのような方に、あ、愛、いや、気に入られるのは・・光栄ですから」


かなり恥ずかしくて言いにくそうにしているシーラを目の前に、俺は理解が追い付かず口を開けたままただ突っ立っていた。


一応言っておくが、俺にはそんな意図はもちろんない。

部屋に呼んだのも2人きりでゆっくりと話を聞ける場所が他に思いつかなかったからだし、さすがにシーラの部屋ってわけにはいかないと思ったからだ。


シーラの部屋は1部屋しかないので、良からぬものが俺の目に入ってはいけないと思って避けたんだ。

代わりに俺の部屋なら、入口のこの部屋は机と向かい合った椅子が1つずつあり、相談場所として最適だと思っただけの事だ。


ん、まてまて。・・ということは、俺が寝室に行かなかったのは、誰かがノックするかもしれないこの部屋でスリルを楽しもうと思われたということか?

いやいやいや、待ってくれ、それはどう考えても上級者の嗜みだ。


俺は初心者なんだ、そんな勘違いはマジで勘弁、というか早く誤解を解かないとやばい。

すっかり考え込んでしまったが、とにかく1秒でも早く誤解を解こうと俺は焦る。


「違う、いや、そうじゃなくて、そう、シーラはとても綺麗だし、初日からなんてそんな、とても・・じゃなくて、というかそういうつもりで呼んだんじゃなくてさ。

 ね、シーラの話を落ち着いた場所で聞ければと思って・・でさ、ほら、この部屋とかそれっぽくていいかなとー思っただけで」


素のヘタレぶりをいかんなく発揮しつつ、必死になって必要のない言い訳まで並べ立てて、シーラの誤解を解こうとする。


なんせシーラはボサツ師匠の妹なんだ。

初日から師匠の妹に手を出すとか、もはや師の威厳が崩壊するどころか、人間・・いや魔法使いとして理性はないのかと疑われても仕方のない行為だ。



そんなヘタレた態度が功を奏したのか、シーラは俺の話を聞いて少しの間固まっていたが

状況を理解したようで、恥ずかしそうに慌ててシャツのボタンを留めなおすと、少しぎこちなく笑いつつ頭を下げる。


「す、すみません、私も誤解してしまって・・。今日は、その、相談に乗っていただきありがとうございます。その、明日もよろしくお願いします」

そう早口で言うと顔を赤らめたまま逃げるように部屋を出て行った。



シーラが出て行った後、俺は少しぼーっと突っ立っていたがすぐに鍵をかけて寝室へと駆け込むと、ベッドへとダイブした。


一瞬俺の部屋に<沈音>がかかっていることを念のため確認すると

「やばいやばいやばい、やっちまったー」

と枕に顔をうずめて大声で叫んだ。


しばらくは「あー!あぁー!」とあまりにひどい誤解をさせた事を悔やんでいたが、少し落ち着ついてくると、俺ってひょっとして最高のチャンスを逃したのでは?と思えてきた。


さっきまでは師として下劣なことをやってしまったと頭を抱えていたが

よくよく考えるとシーラはあまり拒否感を見せていなかったどころか、勘違いしたとはいえ自分から脱ぎだした・・んだったよな。


これってひょっとして・・彼女に対する俺の印象は、かなりいい感じじゃないかと俺は勝手な解釈をし始める。

そして俺の夢見たハーレムの第一歩になるんじゃないかと期待してしまう。


が、だとしても、大きな問題があった。

そう、さっき俺は自ら拒否したのだ。

そういうつもりはない、と。


なのにやっぱりそういうつもりはあるのでどうかな?と言いに行けば、もはや師の威厳崩壊とかいうレベルではなく社会的信用も失いかねない。


俺自身が断っておきながら急に欲が溢れてきたのでお願いします見たいなガチクズ野郎か、まるで二重人格のように性格が入れ替わったりでもしない限り

やっぱりさっきの続きをとか、まともな神経で言えるわけがない。


そう考えると、現状は完全に手詰まりだ。

それどころか、これから起こるかもしれないシーラとの急接近イベントを全潰ししたと言っても過言じゃない。


「俺は馬鹿か!アホか!マジで何やってんだー!ああああー!!」

結局俺は最悪の一手を後悔しながらベッドでじたばたするしかなかった。


こういう内容は書くの苦手ですが、とりあえず入れ込んでみました。

いきなり好感度Maxも悪くないのですが、こういうのもいいのでは?駄目か?


今話も読んでいただきありがとうございます。

次話は土曜更新予定です。可能なら金曜に・・


ブクマや感想、誤字等も遠慮なくいただければ幸いです。では。

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