表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
121/483

2人の弟子との生活開始

ここまでのあらすじ


コウはルーデンリア光国の占有地にある道場で師匠としての生活を始める。

決められた時間に弟子が2人来たので確認後、弟子たちに師弟関係の登録を任せた。


魔法協会に師弟関係登録書を提出し、マナは無事コウと師弟の関係となった。


その後、師弟関係の証明書を2通発行して貰い、コウ師匠のいる道場へと向かう。

証明書を見てマナはご機嫌だった。


「これで潜入は無事成功!しかも私が1番弟子だよ、嬉しいなぁ~」

ニヤニヤしながらマナは証明書を何度も見る。


マナにとってはこの1番というのが、なんだかとても特別な気分にさせてくれるのだ。

もちろん、1番目に弟子になったからといって資産の相続とか弟子内での立ち位置等で優位な事があるわけではないのだが。


「さて、早めに来すぎて時間もあるし、ほとんど何も持ってきていなかったから必要そうな物くらいは買いそろえておかないとまずいよね。買い物に寄ってから道場に行こうっと」


そう言いながらマナは嬉しそうに魔法協会を後にした。




その約30分後、今度はシーラが魔法協会に登録書を出しに来た。


「えっと、この書類はこちらでいいでしょうか?」


こういう場に慣れていないシーラは少し不安そうに受付に尋ね、問題ないと言われほっとして書類を手渡す。

そして師弟関係の証明書を2通発行してもらった。


「あっ、私2番目だ・・そっかぁ、少なくとも2人いるんだ・・。ボサツ姉様にはしっかりとコウ様の心を掴んで来いといわれたけど

 ライバルがいるんじゃかなり厳しくなりそう・・はぁ」


ため息つきながら証明書を収納し、魔法協会を出たところでシーラはその場で考えた。

すぐに道場へ向かうべきか、何か手土産でも持って印象を良くしておくべきか。


が、シーラはコウに関してボサツから何も聞いておらず、好みも全くわからないのでいい案は何も浮かばない。


「少しでも早く着いてまずは遅れを取り戻したほうがいいかな」

その場で軽く意気込んで、シーラは道場へと向かった。



◆◇◆◇



マナが道場に来て、魔法協会へ向かってから1時間経過した頃。



コウは瞑想を止め、簡単な魔法の型をすばやく組む練習をしながら近くに来たエニメットに尋ねる。


「ねぇ、もう1時間は経ったよね?」


「はい、先ほどマナさんが来られて1時間以上経っております」


「ここから魔法教会ってそんなに遠かったっけ?」


「徒歩ですと急いで片道10分程度だと思いますが」


「そんなもんだよね・・」


マナとシーラが協会に向かってから、コウはまず一度弟子用の部屋の確認をして、2人の部屋割りを考えた。

一応更に弟子が増える事も想定しながら待っていたが、その後は弟子の志願者は来ていない。


そして、後どれくらいで戻ってくるか魔法協会までの距離を確認し、<水の清浄>で自分自身をさっぱり綺麗にして待機していた。

それでも戻ってこないので、ただ待つのももったいないと瞑想をしてすごしていたのだが、1時間経っても戻ってこない。


「ふぅ、こんな感じなの?師弟関係の最初って」


「い、いえ、私には正確にはわかりませんが、もう少ししっかりした上下関係があるものだと・・認識していましたが」


コウは仕方なく、少し諦め気味に再び魔法の型を組む練習を再開した。

そこから更に1時間後、10時を過ぎた頃にシーラが戻ってきた。


「すみません、何か持っていくのに必要なものはないかと思って店に立ち寄ってしまい遅くなりました」

シーラは丁寧に謝罪をしてくる。



コウは特に問題ないよとなだめつつ、シーラを部屋へと案内した。

なんせ先に来たマナがいまだに戻ってないくらいだ、ここでシーラを問いただすのはなんか違うなとコウは思ったのだ。


シーラはシーラで結構遅くなったのに怒られないので不思議に思いつつも、助かったと胸をなでおろしていた。


「えっと、ここがシーラの部屋になるね」


そう言ってコウが案内する。

シーラが見た感想は『思ったよりは広かった』くらいだった。


シーラはメルティアールル家ではあまり期待されていない人物とは言え、腐っても直系の貴族。

家にいた頃は自室が2部屋ありそれぞれがこれより広く、侍女と近侍が1人ずつ付けられあまり不自由の無い生活を送っていた。

なので、与えられた部屋を見ても咄嗟には大した感想が浮かばなかった。


とはいえ、数年前までは上級魔法学校で寮暮らしをしていたので、侍女がいなければ何もできないダメな貴族ではない。


「結構家具は揃っているんですね」

「あれ?ボサツ師匠からそういうのは詳しく聞いていなかったの?」


「えっと、学校の寮と同じ感じだとざっくりとしか聞いていなかったので」

「そ、そうなんだ」


そんな感じで会話が続き、2人とも互いにまだ慣れておらずぎこちない態度のまま説明が終わった。


ひとまずシーラはアイテムボックスから服やら小道具やらを取り出して備え付けの収納棚に入れていく。

その様子を見てコウは一旦大部屋に戻ることにした。


「それじゃ、もう一人が来て落ち着いたら顔合わせを兼ねて呼ぶので少し待っててもらえないかな?」


「はい、わかりました」

シーラはそう言って戸を閉めた。



部屋をもう一度見渡し、色々と確認してみる。

どうやら扉を閉めると、部屋に<沈音>の効果が発動して部屋内の音が外に漏れなくなっている。


魔法学校の寮では上位者の部屋にしか付いてない効果なので、弟子の部屋についているのはなかなか豪華だと思う。

他には大き目のベッドに服などを収納するクローゼット、冷蔵庫もあり中には魔力回復薬や普通の飲み物が数本入っている。


部屋の温度調節用の魔道具もベッドの近くについており、宿で言えば少し狭いが貴族街の高級部屋と比べてもさほど見劣りしない内容だ。


「うーん、さすがはアイリーシア家ね。新築な上に弟子の部屋にしてはかなり豪華だし。

 後はあのコウ師匠かぁ・・ぜんぜん偉そうじゃない師匠っているのね。仲良くはなれそうだけど・・」


「うまくやっていけるかな、っとこれはこっちか」

シーラはつぶやきながら持ってきた道具を黙々と片付けていく。


ふと見ると、机の上にメモと鍵が置いてあるのを見つけた。


『コウ様はこの部屋にいつでも立ち入れますので、予めご理解下さい。また、飲み物補充と部屋の清掃は私エニメットが行いますが

 不要な場合は事前に申し付け下さい。よろしくお願いいたします』


シーラは四角い金属でできた鍵を手に取るとそのままアイテムボックスへ収納し、メモ紙をそのまま机の端へと移動させた。


「まぁ、この辺は一般的かな。清掃も侍女に任せたほうがよさそう」


そう言って、再び持ってきたものを整理し始めた。




シーラが戻ってきてから40分後くらいにマナがようやく戻ってきた。

戻ってくるのがずいぶん遅くなったのに、マナは悪びれることなく笑顔で師弟関係が登録された証明書を渡してくる。


「師匠、これをどうぞ。証明書です。ばっちり登録してきましたよ」


まるで急いで帰ってきたかのような笑みで、遅くなったことに一言も触れないマナにコウはどうしたものかと思ったが

少なくとも本人に悪意は感じられなかったので、ひとまずこの件は置いといて部屋を案内することにした。


「ん、ありがとう、確認したよ。それじゃ部屋まで案内するからついてきて」

そう言ってコウはマナを部屋まで案内した。


マナの部屋はシーラの部屋の廊下を挟んで斜め前になる。

「こっちがマナの部屋になるから」


そう言ってコウが扉を開けるとマナはすぐに部屋に入って設備をきょろきょろと見回していた。

シーラの時は割とこんなものかと受け止めていたように見えたが、マナは結構喜んでいるようだった。


マナは家名がない貴族だからあまりいい生活ではなかったのかなと思いつつ、コウは話を進める。

せめて昼食前までには顔合わせをしておきたかったからだ。


じゃないと昼飯に誰だこいつ的な雰囲気のまま、食事をすることになってしまう。

さすがにそれだけは避けたいとコウは思っていた。


「それじゃ、あまり時間がないから30分である程度道具を整理して大部屋の方へ来てもらえない?」


それを聞いて一瞬マナは不思議そうな顔をしたがすぐに笑顔に戻って頷いた。

コウは安心したのか扉を閉め、30分後に大部屋に来るようにシーラにも伝えると弟子用の部屋があるエリアから去っていった。




30分後、マナとシーラはほぼ一緒に大部屋に来ると、師であるコウは既に椅子に座って魔法書を読んでいた。


コウがあらかじめ座っていたので、マナとシーラはコウの正面に座る。


ちなみにここには机1つと椅子が4つしかないが、これはもうこれ以上弟子は来ないだろうということでエニメットが片付けたからだ。

その為、椅子に対して机がやや広く少しバランスが悪くなっている。


2人が来たのでコウが魔法書をアイテムボックスに収納しようとするとマナが声をかけてきた。


「師匠、その本何の魔法書ですか?」

「ん、これ?風の魔法書だけど・・マナが読んでも使えないよ?」


そう言いながらコウは魔法書をアイテムボックスに放り込んでしまった。


「えぇー、だからって見せてくれたっていいじゃないですかー」

「いや、ちょっと、とにかく後でね。まずは自己紹介からしようって」


マナのペースにコウは押され気味になりつつも、何とか場を落ち着かせる。

その様子を見てシーラは少し不満そうな表情になる。


マナの積極性と良い意味で相手の壁を気にしない強引性は、シーラには持ちえないものだったので

コウと親しくなるという勝負では真っ当な方法ではマナに勝てないと悟り、シーラにとってマナはこの先明確な障害になると感じていた。


その様子にコウが少し気づきつつも、今はとりあえず触れないで話を進める。


「とにかくここには4人しかいないんだから、まずは最低限のことは互いに知っておかないとね」


コウは少し師としての立場を意識しつつ話す。

エニメットはそれを背中で聞きつつも、なんだかおかしくて少しにやけ顔になっていた。


「で、エニメット。今ちょっと中断できる?」


3人が座っている机から少し離れた場所で昼食の準備をしていたエニメットは、急に呼ばれたので一瞬びくっとなりつつコウの方を見る。


「わ、私もでしょうか?」


「そりゃそうでしょ。さっき4人といったのもちゃんと聞こえていたよね?」


「は、はい・・」


そう言うとエニメットは昼食の準備をしている手を止め、コウの斜め後ろに立とうとしたが

コウが空いている椅子を動かし指をさすと、少し困った顔をしつつ椅子に座った。


よし始めようかとコウが思った矢先、シーラが軽く手を挙げた。


「すみません、侍女も参加するのですか?」

それを聞いてコウは少し考えたが、はっきりと答えた。


「もちろん。エニメットがいることで修業に専念できるんだから彼女だって大事な存在でしょ。それに彼女に頼むことが出てくる可能性もある。

 お互い最低限のことは知っておいた方がいいと思うよ」


その言葉を聞いてシーラは少し納得できたのか、師の言葉として肯定せざるを得なかったのか、ただ黙ってうなずいた。

ちなみにマナは横でそうなんだといった大して興味のない表情をしていた。


読んでいただきありがとうございます。

感想もいただいて本当に嬉しいです。頑張っていきますね。


ブクマも少しずつ増えてやる気も満たされております。

100人友達・・じゃない、ブクマにはまだ遠いのでもう少し後のシーンを想定しておこうかな。

次の更新は、水曜日に。2日に1回は正直結構厳しかったり。


魔法紹介

<水の清浄>水:風や光にもある綺麗にする魔法。水は汚れに強い。汚れと共に水も消え濡れたままになったりはしない。

<沈音>音:特定のエリア以外には音が伝わらなくなる。だが外の音は良く聞こえる。この魔法の説明は3度目くらい?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=977438531&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ