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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
1章 魔法使いになります! (1~17話)
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クエスの妹への報告1

クエスが自分の家に帰り妹へ報告する回です。幕間に近い感じです。

結果はちゃんと報告しなければなりません。ホウレンソウは大事!


ここまでのあらすじ

コウは魔法使いになる儀式が完了して勉強中。


ボサツがコウに魔法の基礎を教えている頃、クエスは朝から隠れ家を離れ自分の一家、アイリーシア家の首都アイリーを訪れていた。


転移門のチェックを通過するとそのまま都市の中心になる城に向かう。

クエスはこの国の国王である妹のミントに報告しに来たのだ。


正門前に来るとクエスは左手を軽く上げる。

「私はクエス・アイリーシア、妹に会いに来たんだけど今いるかな?」

クエスの顔を見て兵士は慌てて駆け寄り右手を握り左腕の上腕側に当てる。

そして門兵に向かってすぐに開けるように指示した。


「おかえりなさいませ、クエス様。ミント様は今城内におられます」


少し離れた位置から城門の責任者と思しき兵士は国王であるクエスの妹が城内にいることを伝えた。


「それならミントは今どこにいるのかわかる?とにかく私が訪ねてきたとすぐに伝えてほしいんだけど」

「はっ、すぐにお伝えいたします」


すぐに兵士は城内に連絡を取る為、門の横の監視棟に行く。

この監視塔は二階建ての構造で、城門城壁の警備情報が常に集められている。

さらに城内の各所に伝える連絡網も構築している場所だ。


クエスは妹に話す内容があまり人がいる場所ではできない内容であることを思い出し、妹がここにきてはまずいと思った。

ならばここで大人しく待つのは意味のない行為だと思い、兵士に告げる。


「私は先に謁見の間に行ってるから。ミントにそう伝えて。あと、何かあったらそこに連絡をよこしてね」

そう言うとさっさと門を抜け城に入っていた。



この城は下級貴族としては複雑で豪華な作りだ。

他の国とは少し毛色が違い、民から集めた税金だけで作られたわけではない。


アイリーシア家は珍しい「宙」の属性が使えるものが多く、その属性を使い各国にある転移門の修理や新規作成の多くを請け負っている。

転移門に関わる仕事は、アイリーシア家ともう一つ他の家だけの2家独占状態に近い仕事なのでなかなか実入りがいい。


そのため財源が豊かで様々な部分にお金をかける余裕があった。

ただそれが原因で他の貴族からは、やや妬まれる存在にもなっているのだが。


クエスは国王が他の貴族の使者などと会う謁見の間に向かう広い通路を歩いている。

ここの通路は全体的に柱が銀色であること以外は白色基調で統一されており、綺麗ですっきりした雰囲気を醸し出している。


「ちょっと報告するのが怖いな…ミント怒らなきゃいいけど」

そうつぶやきながらクエスは扉を開け謁見の間に着いた。



「国王様ー」


兵士が慌てて執務室へ駆け込む。そこには2人の行政官と資料を受け取りそれを読みながら承認・再検討・破棄を検討する国王でありアイリーシア家の三女、ミント・アイリーシアの姿があった。


「騒々しいですよ、何か急ぎの要件ですか?」

自分を呼ぶ兵士の方を見て、仕事を邪魔された事を少し不快そうにしながらミントは口を開いた。


兵士は一拍置いて息を整え、国王に向かって頭を下げクエスが来たと事を伝える。

「失礼します、国王様。クエス様が先ほどこちらに見えられて国王様に会いたいとおっしっておりまして」


その言葉を聞いたミントは承認の判子をその辺に転がして、両手を机に突きすぐに椅子から前かがみに立ち上がった。

「えっ!本当?すぐ、すぐに行く。で、クエス姉さんはどこ?まだ城門?来賓室?」


さっきまでの雰囲気とは全く違い、慌てて聞いてくる国王の様子に周囲の者たちも思わず戸惑う。

ミント国王は普段落ち着いていることが多いので、よくここへ連絡に来るこの兵士にもミント国王の態度は意外だった。

周囲で資料をまとめて確認している行政官も、急に仕事を放棄し普段見せない国王の急かしぶりに驚いた表情を見せている。


姉のクエスは普段から1月に数度は会いに来ているが、普段はこんな慌てて急かす様子は誰も見たことがなかったからだ。


「謁見の間に・・向かうと聞いております」

その言葉を聞くとミントは椅子を机に戻すことなく走って執務室を出ていく。


「ごめん、急ぎの報告を聞きたいので仕事はまた後にしといてー」

ミントは兵士や政務官の方を振り向くことなく一方的にそう告げるとすぐにいなくなってしまった。


「どのような急ぎの話だったのでしょうか?」

「さぁ・・聞いてませんが。今回は3月ぶりの訪問だったのでうれしかったのかもしれませんな」

残された政務官と連絡役の兵士はただポカンとして立ったままミントを見送った。



姉が待っているだろう謁見の間。

音声の外部遮断ができる謁見の間ということはきっとあの時に失った次女エリス

ミントにとって大切な、いつも自分を気にかけてくれていた姉エリスの件の報告に違いない。


1月前くらいにミントにもひょっとしたらエリスを見つけられたかもしれないと、クエスから報告書で一報だけは聞かされていたので期待が膨らむ。

そう思うと居ても立っても居られないミントは、仕事も完全に放りだして謁見の間に急いだのだった。


普段は国王であるミントは立場上謁見の間には兵士や側近にゆっくりと扉を開けてもらい、ある程度尊厳をもってゆったりと現れるものだが

今日のミントは連れている兵士もおらず、急いでいたので扉にショルダータックルをかまして謁見の間に突撃した。



謁見の間に先に着いたクエスはどう報告するか悩んで、王座の正面を右回りに円を描いて歩きながら時々天井を見て考えていた。


妹であり国王であるミントは次女エリスを自分以上に慕っているのはクエスにもよくわかっていた。

とにかくどれだけお金と時間を使ってでも、なんとしてでも見つけ出す。

そう誓い合ったあの時から30年以上、捜索に専念できてからも10年ほどしてやっとたどり着いた結果だった。


「心配だなぁ・・エリスが転生したコウを発見したまでは良かったけど、分離できてないどころか今は自由に会話もできるとは限らないし

 けどミントはすぐにでも話したいって言うよね。はぁぁ、気が重いなぁ」


一人悩んではいたが、妹のエリスの転生先は見つけて確保した。これは明らかに朗報だった。

今の心配事は妹ミントの暴走の方だ。

これはクエスとミントの姉妹にとってこの国の運営よりももっと大事なこととして位置付けていたので、さすがに報告先延ばしにするわけにはいかない。


うーん、うーん、と頭を悩ませている所に大きな音を立てて扉が開かれて思わずビクッとなるクエス。

よく見ると肩から扉に突進して戸を開けたようで、国王であり妹でもあるミントが前のめりに倒れていた。

それを見て呆れると同時に、報告がますます不安になるクエスだった。



起き上がると即、扉を魔法で閉め、部屋全体に防音効果をもたらし入口全てをロックする魔道具を作動させて姉のクエスを嬉しそうに見つめる。

ミントは早く早くと報告を急かしていた。


「クエスお姉ちゃん、ね、どうだったの?ねぇ?」

少し困った顔をするもクエスは妹のその表情に笑顔で答えた。


「ちゃんと報告するから。それより姉さん、でしょ?そんなんじゃ国王の威厳が台無しよ」

「いいの、いいの、今はクエスお姉ちゃんとエリスお姉ちゃんの事を話すんだから」

もうそんなことはどうでもいいじゃん、と少しふくれっ面を見せるミント。


「まず順を追って報告するね、質問は最後に聞くわ」

クエスは人差し指を立て、スムーズに報告できるようにミントに前置きをした。

ミントは何度も頭を縦に振り目を輝かせる。


この国に戻れる前、隠れて2人で生活をしている日々だった頃を思い出し一瞬だけクエスは懐かしそうに微笑んだ。


「まずエリスの魔力の痕跡を探してヒットしたところが別次元だったのよ。その別次元の世界にエリスの魔力をたどることによって何とかゲートをつないで、ついに無事にエリスの転生先を見つけたわ」

その一言にミントは両手を握りしめすごくうれしそうな表情を浮かべると、そのまま目が潤んでいく。


「で本来はエリスの転生先の肉体を基にして何とか魔素体を作り出し、その魔素体となる魔力とエリスの精神体をなじませ元のエリス単体にする予定だったんだけど、それは失敗」


ミントは失敗という言葉を聞いて「えっ!?なんで??」と泣きそうな表情になりクエスを問い詰めようとするも

クエスは落ち着いてと右手を開いてミントの行動を優しく制止する。


「待ってね、ミント。最後まで聞いて。失敗したのはその方法をエリスに止められたから。それで今はその転生先の肉体ごとこちらに連れてきているわ」


それを聞いてミントは再び笑顔に戻る。

さっきまで必死に我慢していた涙は、既に頬を伝い数滴は絨毯に落ちていた。

自分たちを守るために犠牲となり離れ離れになったエリス。

ミントだってこの約30年間片時も姉のエリスの事を思わない日はなかったのだ。



「今は何とか会話だけならできる。その転生先の本人が寝ている間だけだけどね。現状の報告はここまで。さぁ、私のミントわかる範囲の疑問はすべて答えるわよ」

クエスは大仕事を成し遂げた笑顔でミントに報告を終えた。


姉のクエスもずっとずっとこの日を待ち望んでいた。そして必死の捜索の結果ようやくここまでたどり着いたのだった。

「えと、えと、えと……」

色んな聞きたいこと、話したいこと、昔の思い出が浮かび上がっているのだろうか、ミントは何を質問していいのかわからず泣きながらも笑顔で迷っていた。


「落ち着いて、ミント。ね。もうエリスは私たちの近くに……いるんだがら゛」


クエスも今までの悲劇と苦労がどんどん思い浮かび涙が溢れ出て止められない。

あの悪夢のような日々を経てやっと3人がそろった。その思いが心の底から涙をどんどんと押し上げてくる。

気が付くとクエスとミントは泣きながら抱き合っていた。


日々読んでくれている皆様、ブックマークや評価をしていただいた皆様ありがとうございます。

皆様の行動を励みにこれからも頑張ります。いや、頑張れます!


身の回りが昨日今日とプチ忙しいので予約投稿時間がちょっとずれてます。


修正履歴

19/01/30 改行追加

19/06/30 表現を一部修正

20/07/15 誤字修正など

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