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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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侍女付きの新生活

ここまでのあらすじ


1年間過ごした隠れ家を離れ、コウは新し場所で師として生活することとなった。

師匠達と別れ、新しい生活の場でコウは気合を入れる。


師匠と別れ、俺はまず色々と把握するためにエニメットにこの施設のすべてを教えてもらった。


大部屋には俺専用としてあるふかふかのソファーが置いてあったが、これはなんか王様っぽくて嫌な感じがするので即廃止。

せっかく2人が座れるサイズのソファーなので誰でも使用していいことに変更した。


いいんですか?とエニメットが目で訴えてくるが、隠れ家ではいつも床に座っていたんだ。

急に2人がけのソファーの真ん中に偉そうに座れるほど偉くなったつもりもないし、そもそも度胸もない。


道具置き場を確認すると隠れ家でよく使っていた訓練用の魔道具が数個ずつ置いてある。

ちなみにメモがあって『必要なもしくは不必要な魔道具があったら報告してください』と書いてあった。


本当に至れり尽くせりで色々と申し訳なくなる。

その分弟子の指導結果で恩返しをしろということだろうが、そっちはそっちで自信ないんだよなぁ。



次に図書室に行き、俺の持ってきた本を暫定的に本棚へと直しておく。


「とりあえず持ってきてくださった本を置いて頂ければ、整理は私がやっておきますので」

「そっか、じゃあお願いするね」


そう言って俺は貴重な<王者の風>の魔法書だけを俺だけが開けられる戸棚へと置き、戸を閉めた。


金細工が施されたこの戸棚は本を9冊だけ表紙が見えるように置けるようになっており、戸は手前両側に開く構造だ。

よく見るとこの戸棚の四隅には薄緑色、水色、黄色、青色の4色の小さな魔石が埋め込まれている。


「うん?ってこれ俺が使える属性じゃん・・これってもしかして特注なの?師匠金かけすぎじゃ・・」


金のかかり具合に驚く俺を、エニメットはそこは喜ぶべきところでは?と不思議そうに見ていた。



この後、弟子の部屋やメイドの部屋も含め一通り見て回ったが、一言で言って、ここは相当広い建物だ。

もはや指導するだけの場所としては、明らかに広すぎる。


考えてみたが、これはどう見てもエニメット1人でメンテナンスしていくには厳しいと思う。

彼女には清掃だけじゃなく料理や買出し、他にも色々とやる事があるだろうからどう考えても1人では仕事がパンクする。


「エニメット、さすがにこの広さを管理しつつ料理や雑用までやってもらっては仕事が追いつかなくならないか?」


「いえ、問題ありません。<光の清浄>で掃除は手早く済ませられますし、他も私一人で十分こなせることを実際に動いて確認しています」


どうやら彼女は俺が来る前に実地で試していたらしい。


まさに仕事の鬼と言ったところか、こんな優秀なメイドを俺なんかにつけてもいいのだろうか?

なんだかちょっとありがた過ぎて不安になってきた。


「でも、さすがに弟子が多いとエニメットだって手が回らなくなるだろう?」


決して意地悪のつもりではなく、様々な想定でエニメットの仕事が回らなくなることがないように聞いてみると

エニメットはかなり悩んだ表情で暫く考え


「もし、御弟子様が4人以上でしたら・・厳しいかもしれません」

と正直に話してくれた。


どうやらこの様子からいって、彼女は他の侍女をここへ呼びたくないようだった。


そもそも俺に決定権があるって師匠が言っていたので、メイドを2人にするので賃金も半分にするなんてつもりはないし

一体何をかたくなに拒否しているのか疑問だったが、まさか妾狙い?と思いつつもなんか嫌な予感がして触れない事にした。


大体弟子を指導しながらメイドに手を出して毎晩よろしくやっているようじゃ

あからさまに堕落した師になってしまうし、やっている事がほとんど悪役の小物みたいじゃないか。


師匠から大金使って箱を用意してもらい、ここの師として任された以上、そんな失態だけは絶対に見せられない。

色々とよろしくない妄想を自分で戒めていると、エニメットが不安そうにこっちを見ていた。


「あぁ、ごめん。だったらとりあえず弟子が4人以上だったら、その時の状況を見て、必要な時は師匠たちにお願いしてみることにしよう。

 とりあえず今はこのままでいくことにするから」


俺の言葉に安心したのか、エニメットは再び真剣な表情になった。


「わかりました。ちゃんとこなして見せますのでご安心下さい」


俺はあまり忙しくならないようにと思って気を使ったつもりだったが・・とりあえずはメイド1人体制でやっていく方が良さそうだ。


道具や設備の在庫数チェックは既にエニメットが行っていたので、俺は内容だけ確認して

あとは、各部屋周りとその導線を確認するように行ったり来たりしていた。

そして気がつくと、すっかり昼も過ぎて2時になっていた。


「おぉ、気がつくともうこんな時間か。昼食どうしようか」


当然俺がエニメットを付き添わせていたので、昼食の準備など全く行われていない。


「急ぎで簡単なものを用意いたしましょうか?」


「うーん、いやいいよ。ここでの最初の食事だし、エニメットも気合を入れたいでしょ?だからもう少し見回った後夕食の準備をお願いするよ」


その言葉を聞いて彼女は嬉しそうに了解してくれた。

それを見て俺は内心で『俺ってちゃんと部下の意思を汲めてるっぽい?ひょっとしてなかなかいい師になれるんじゃ』とちょっと自画自賛していた。



その後は各設備の魔道具を重点的に確認して15時半ごろにはエニメットを解放し、俺は1人で広い庭を使って肩慣らし程度に魔法の軽い訓練を始めた。


エニメットに教えてもらったパネルを操作し、100m先に魔法障壁を発生させそれに向けて横に走りながら<風刃>を飛ばす。

カン、カン、カン、3発全段障壁に命中し隠れ家の時と変わりない自分を確かめる。


「ん~、本当にこれはすごい施設だよなぁ。週1とは言え、ぶっちゃけ師匠にこの環境で指導を受けられることの方が嬉しいかも」


その後も色々な設備と魔法を試素のに夢中になり、気が付くと1時間以上経っていた。



大広間に戻ってしばらくのんびりして用意してもらった夕食を食べる。

もちろん、エニメットと2人で一緒に食事を食べている。


今回は一瞬戸惑っていたが、すぐに席についてくれたのは嬉しかった。


弟子が来たとしてもエニメットとは一緒に食事をしていきたいが、その弟子がバリバリの貴族肌で猛反対されると、一緒に食事も上手くいかないかもしれない。


師の威厳で押し切ることはできるかもしれないが、わだかまりは残っちゃうだろうし。

俺的には結構重大な問題だ。


「何か悩み事ですか?」

「いや弟子の事でちょっとね・・」


急な質問に俺はちょっと言葉を濁した。


「コウ様でしたら魔法使いの腕も一流ですし、師として十分な実力を持っていると思いますので大丈夫です」


エニメットが話を掘り下げてきたので、ここは仕方なく話すことにする。

彼女がどう反応するかはわかってはいるが。


「あぁ~、まぁ、そっちも不安でいっぱいなんだけど・・そうじゃなくて食事の事なんだよね」

「?」


やんわりした言い方だとやはり伝わらなかったらしく、エニメットは首をかしげていた。

気は進まないが、仕方なくちゃんと説明することにする。


今気にしていたのは弟子が何人来るかかはともかくとして、その弟子たちの身分だった。


大方、貴族か準貴族が来るとは思っているが、そうなるとエニメットとの食事は拒否される可能性がある。

そのことを俺は少し伝えにくそうに彼女に話した。


俺の言ったことを即理解し、エニメットは自分が退席すればという発言をしようとしたので、俺はそれをすぐに遮る。


「待って。エニメットがそうすることはわかっていたし、それが簡単な解決方法なのはわかってる。

 でも俺はそれが嫌なんだよね。エニメットだってここで俺や弟子を支える大事な人材だ。除け者にはしたくないんだ」


「ですが・・」


「まぁ、最悪師として強権発動も考えているんだけど、いきなりやれば印象悪いよなぁ」


俺が困っている様子を見て、エニメットも困っていた。

俺が反対している以上、エニメットとしてはこれ以上辞退を強く主張できないのだろう。


身分差って色々と厄介なんだなと思わされる。

俺が慣れていないだけなんだろうけど。



「そういえば、明日弟子が来る予定なんだよね?何か詳細は聞いていないの?」


悩むのを止め、食事を再び摘まみだしたところで、俺は明日のことを思い出し尋ねた。


「詳細は全く聞いていませんが、明日午前中にやってくる御方がコウ様の弟子になられる方だそうです」


随分あやふやな答えに俺は適当過ぎるだろうと思いつつため息が出る。

ここまで秘密にするってのは何か意味があるのだろうか。

情報漏洩を防ぐにしてもいささかやりすぎな気がする。


「そっか人数も不明かぁ。明日は朝から待機しておくしかないね」


「そう・・ですね。コウ様の対応は師弟関係の申請書と魔法ステータス表を確認して、申請書の方にサインしていただくのみになりますが」


「まぁ、それでも俺が顔を出さなきゃいけないだろうし、すぐに行けるよう午前中は軽い練習に留めておくよ」


「分かりました。ですが最初は必ず私が対応致します。どんな来客にも最初は私が対応するよう言われていますから」


一瞬何でと思ったが、貴族社会の基本マナーだったっけ?と思って俺は聞き流した。


これは俺を世間から隠すための処置だったのだが、まさかルーデンリアに来てまで姿を隠すことになると思っていなかったので

俺はそのことに全く気が付かなかった。



そして夜が過ぎ、翌日の朝が来た。

今日から俺は正式に師匠となる。



◆◇◆◇



メルティアールル家 メルティー城、城内


アイリーシア家のクエスの部屋と同様に、開かずの間になりつつあるボサツの仕事部屋で女性が2人話し合っていた。


1人はここの部屋の主、ボサツ・メルティアールル。

もう一人はボサツの妹に当たる第9王女、シーラ・メルティアールルだ。


シーラは肩までかかる銀髪の髪を少しも動かすことなく、緊張気味にボサツからの指示を受けていた。



「いよいよ明日は貴方に弟子になってもらう日になります。

 朝9時にはルーデンリアにあるアイリーシア家の占有地へお願いします。

 この映像の門が道場への入り口になります。持ち込む物は着替えと専用武器くらいで大丈夫です」


「はい、お姉さま。だけど・・その、不安、なのですけど」


「コウのことがですか?」


「その、会ったこともない人だから・・」


そう言いながらも、シーラはその先が言えなかった。

シーラは一月ほど前からボサツからコウの弟子になることを命じられ、ずっと戸惑っていた。


なんせ全く知らない男の弟子になれと急に言われたのだ、普通に考えれば当然の反応だ。


シーラは5年前上級魔法学校を真ん中ぐらいの成績で卒業し、それからはメルティアールル家へ戻り内政を手伝いつつ魔法の訓練を続けていた。


ボサツに比べれば魔法の実力は格段に劣るが、決して話にならないほどではないので

なぜ自分が弟子として姉の弟子である男の元に行かなきゃいけないのだと思ってはいたが、ボサツには逆らえず仕方なく了承していた。


「前も話しましたが、可能なら師であるコウをシーラの魅力で引きつけられれば助かります。

 ただ彼はハーレム願望がありますので、難しいならそのまま弟子として修業を続けて構いません。

 ですが、どんな状況でも彼のことは命がけで守ってほしいのです」


反論が許されない状況に、観念したかのようにシーラは頷く。


「それと、礼節に関してはコウへの指導、お任せします。私の指示だと言えば素直にコウは受け入れます」

「はい・・わかりました」


以前一度言われて、なんで?となったが改めて姉にお願いされたので、シーラはひとまず了承する。


現状のメルティアールル家ではボサツは次期家長に内定している状態なので

ボサツのお願いはほとんど家長のお願いに近く、ほとんど拒否権はないと言ってよい。


更に抜かりなく家中に手をまわされていたので、シーラが気が付いた時は反論するにも味方がほぼいなかったのだ。


ボサツと別れ、1人部屋に戻ってコウに弟子入りする時にもっていく道具を整理する。

愛用の武器防具、着替え数種に下着類、一応個室がもらえると聞いていたので小物類も持っていく候補に入っていた。


「はぁ、まさか私が準貴族の弟子だなんて・・しかもボサツ姉さんの弟子で、しかもその相手を魅了しろかぁ、人選間違ってないかなぁ」

ぶつぶつと独り言をつぶやきながら、シーラは明日に向けて準備を続けた。


今話も読んでいただきありがとうございます。

最近少し書くペースが落ちていて、ご迷惑をお掛けしますが

次は土曜日更新とさせてください。


ブクマ・感想・評価、時間がありましたらよろしくです。

ブクマ100はまだまだ遠そうだな・・。

お盆には書く時間があれば・・書き溜めておきたい。。

そしたら2日1回のペースに戻せる、かも?

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