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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
4章 コウ、師匠になる(112話~183話)
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麻薬撲滅の仕事が終わって・・


今回は1ヶ月ほど前のブクマ50超えのお祝いとして絵師様に依頼した挿絵を挟んでいます。

ただ、挿絵の背景が昨今の状況から不適切なこともあり、背景無しでupすることにいたしました。

予めご了承ください。(背景ありに差し替えました)




ここまでのあらすじ


マナが工場内にいた盗賊どもを焼き尽くし、殲滅完了の合図を送った。



「終わりましたー」

マナが嬉しそうに周囲にいるメンバーに向かって手を上げる。



挿絵(By みてみん)

(※イラスト:グリコーゲン様)



遠くからそれを見たメリシアは少し困った感じで笑い、アルディオスはよくやったと右手こぶしを軽く上げてマナを労った。


「マナ、とりあえず工場内を鎮火しろ、これでは捜索どころか近づくのもままならん。それに炎のワームがまだ残っているだろう?」


「あっ、そうだった。ちょっと待ってて~、<鎮火>、<鎮火>」


マナの広範囲を対象にした複数回の魔法により徐々に工場内の炎が消えていく。

1匹工場内に残っていた炎のワームも外に出たかと思うと徐々に小さくなって消えていく。


まだまだかなり焦げ臭い匂いが充満するが、とりあえず工場内の炎は全て治まったようだった。


ほぼ鎮火したことを受けて、ボルティスは工場中を捜索するよう指示を飛ばす。

指示を受けたフィルフィーとドンギュオは<光の保護膜>を使い異臭や残熱から自分たちを守りつつ

マナが焼き尽くした工場内を魔石とか証拠品が残っていないか念のため捜索に向かった。


「マナ、先ほどはずいぶん派手に吹っ飛ばしていたようだが、そいつの魔石はちゃんと回収出来たか?」

「もちろん」


マナはそう言って先ほど倒した盗賊頭の魔石をアルディオスに見せた。

アルディオスがメリシアを見ると、メリシアも補助として担当した物見塔の分の魔石を数個見せる。


「そうか、なら後は内部の調査と回収待ちだな。あとマナにはこれを渡しておく」


そう言ってアルディオスは畑に生えていた赤黒い身のついた植物をマナに渡す。


「これが今回の薬物の材料?」

「あぁ、それは確定している。他にも必要な材料はあるが多分マナが全部焼いてしまっただろう」


そう言いながらアルディオスはあちこちが焦げてボロボロになった工場を見上げた。


マナは受け取った植物を手に取って回しながらいろんな角度で確認する。

その後、その植物を魔力で覆いつつ早速型を作り始めた。


「ちゃんと対象だけを焼き払えよ。周辺の森まで火が付くと大騒ぎになって手に負えんからな」


「大丈夫だって、目標の植物だけを焼いて消えるようにするから。もぅ、隊長まで私を信じてくれないの?」


「信じているが念のためだ。森に火がついて広がったら撤退するどころではなくなるだろう?」

「はーい」


ちょっと不満なのかマナは不貞腐れて黙ってしまう。

そのまま精霊からの魔力充填を待ち、魔法を発動直前までにして待機した。



一方工場内の状態を確認しているフィルフィーとドンギュオは焼け焦げた臭いに文句を言いながら捜索していた。

魔法によりある程度は異臭を抑えているが、強力な匂いや熱を完全には防ぎきれていなかった。


燃えにくい一部の壁や骨組みは黒く焦げついてはいるが、強度だけは維持できているようで捜索するには問題なさそうだった。

だがほとんどの物体は炭化しているか一度溶けた後固まっているかで、元の形を残している物はほぼ通路と壁だけになっていた。


「あ、魔石発見。ふぅ、あといくつあるのやら」


「確かに。せめて数を特定してくれてりゃなぁ」


「そういやマナの熱感知で魔法使いの数はわからなかったの?」


「どうやら2階にかなりの数が居たみたいで素体と魔素体の区別がつけられなかったってさ」


「えぇ~、肝心なところは本当におおざっぱよね、あの子」


フィルフィーは思いっきり文句を言いたかったが、マナ本人がここに居ないので文句言っても仕方がなく、我慢しつつ各部屋の捜索を続ける。


焦げ付いた通路を歩きながら空気が悪い中捜索を続けて、2人は2階で10個の魔石を、3階では1個も見つからず

その他使えそうな証拠品も見つからなかったので、2人はアルディオスの元へ戻ることにした。



「戻ってきましたね」


メリシアが、焼けた工場から出てくるフィルフィーとドンギュオを見つけほっとした表情になる。

その声に気付き、アルディオスは2人の元へと近づく。


「どうだった?」

「とりあえず魔石10個は見つけてきました」


「他はやっぱり絶望的っすよ。みんな丸焦げでした」


フィルフィーはとりあえずの成果を、ドンギュオは肩をすくめながら状況を報告する。

フィルフィーの持つ魔石を簡単に確認した後、軽く周囲を警戒しながらボルティスは撤退の指示を出す。


「さぁ、マナ以外はすぐにこのエリアを出るぞ。ついて来い」

「はっ」


3人が了解すると、マナは慌ててちょっと待ってと言わんばかりに手を伸ばす。


「えっ、みんな先に行くの?工場の近くは、ほら、畑もなくて燃えるものないし、ここにいても大丈夫なんだけど・・」


「火に囲まれた中心にいるのはあまり気分のいいものじゃないからな。マナは自分の炎を無効化できるからいいが俺たちはそうはいかん」


「うぅー、はぁい。でも置いて行かないでよね」


「当たり前だ。全ての畑を焼き尽くすめどがついたら我々が向かった方へ来い。少し離れた場所で周囲をうかがいながらちゃんと待っている」


それだけを言うとアルディオスを先頭に、一隊全員はこの麻薬製造エリアから脱出した。


残されたマナはアルディオスたちがこのエリアをおおよそ脱したタイミングを計って、<橙の炎>の魔法を発動させる。

橙色の炎がマナの手のひらの上に生まれ、その炎でマナは先ほどもらった植物を焼いた。


その後、手のひらの橙色の炎を畑の方へと飛ばす。

橙色の炎が徐々に畑に植えられた植物全体へと広がり、目の前の畑にある目標の全てを焼き尽くしていく。


更に隣の畑、隣の畑と橙色の炎は広がっていき、1分ほど経った頃には目標の植物が植えられている畑全てに広がっていった。

マナはジャンプすると足元に<小爆発>を起こし焼け焦げた工場の2階、3階の窓枠へと飛び移る。


そしてそのまま屋上まで到達すると、マナは工場の周辺全ての畑が燃えている様子を確認しながら紙を取り出す。


「ん~、この地図で示されているところは全部燃えているみたいだし・・よし、今回も仕事は完璧」


マナは嬉しそうにそう言うと、工場の屋上から一気に飛び降り、着地寸前に魔力を展開しつつ<小爆破>を使い着地の衝撃を和らげる。

その後すぐに<炎纏い>を使うとアルディオスたちが向かった方向へ橙色に燃える畑と畑の間の道を一気に駆け抜けていく。


そのまま鉄柵に覆われた麻薬製造のエリアを抜け駆け、小高い崖を一気に飛んで昇ると、直ぐにアルディオスが置いた小さな明かりを見つけて後をたどり皆と合流した。




その後、今回のチームと素体の捕虜の計6名は何事もなく、襲撃前に集合した1人用転移門がある秘密の地下エリアへと戻ってきた。


先にメリシア、フィルフィー、ドンギュオが各々転移門で飛び、次に捕虜にした女性も同じ場所に飛ぶよう設定して移動させた。

捕虜は先に飛んだメリシアたちが向こうで情報をすぐに聞き出す予定だ。


「さて、あと一人分しか使えないが・・」

「隊長がアレを連れて行くと言ったんだから、私はこの転移門で戻らせてよ」


「ああ、そうだな。それよりマナは地下の待機エリアではなく上階に戻れ。18時には報告会があるから報告書まとめておけよ」

「うん、分かった」


マナはそう言うとさっきまでの行き先を変更して、転移門を使い先に飛んだメンバーとは別の場所へと飛んだ。

回数分を全て使い切って魔力となり霧散しながら自壊する転移門を確認すると、アルディオスは別の転移門がある場所へと向かい走り出した。




4時間ほど遅れて、とある場所の地下、一隊の待機場所に戻ったアルディオスはメリシアを見つけ状況を確認する。

捕虜は素直に知っている情報を全て話したようだったが、結局重要な欲しい情報は手に入らずじまいだった。


どうやら城郭都市内へ入るときは目隠しをされ箱の中に入れられていたらしく、侵入方法についてはわからずじまいだった。

しかも侵入時は止まったり動いたりを繰り返していたらしく、魔法に対して感知能力のない素体の平民では転移門を使ったかどうかも判別できなかったらしい。


とりあえず麻薬の原料は撲滅できたものの、得られた情報だけでは都市への侵入口となる穴をふさぐことは出来そうにない。


いまいちな結果に落胆しつつも、アルディオスはメリシアから聞き出した情報をまとめたデータの入った黒い四角の石を受け取ると

フラウー様への報告をまとめるべく隊長室へと戻っていった。



仕事が終わったので軽く何か食べてから休憩するかと、メリシアは食堂へと向かう。

メリシアが食堂へと入ると、偶然なのか待っていたのか、フィルフィーとドンギュオが空になった皿を目の前に置いたままだべっていた。


ちなみにこの食堂は両側に一隊と二隊の入り口があるが、隊長以外は相手の隊のエリアに行くことは禁止されている。

なので別の隊と話したくて待機しているメンバーがいるのは、ここでは時々見られる光景だ。


「あら、2人共休まなくていいの?」


「いや~、今回は危ない場面が少なかったのでなんか元気が有り余ったんすよ」


「そうね、なんだかんだマナちゃんに全部丸投げしちゃった挙句、あの子今回ミスしなかったから。

 一応フォローする余力は残しておいたんだけど」


「たしかにそうよね。マナちゃんも気がつけばやるようになってきたし」

そう言ってフラウーはお酒の入ったグラスを3つテーブルの上に持ってきた。


「おっ、頂いていいんですか?」


「ええ、奢りじゃないのはちょっと盛り上がりに欠けるけど」


「しょうがないですよ副隊長、だってここタダだし」

そう言うと3人はグラスに口をつけた。


「隊長は今から報告用の資料まとめなのよね~、大変だよなぁ」


そう言ってつまみと2杯目を注文して取りに行くと、席に着くなりフィルフィーはテーブルに頬をつける。

テーブルが少し冷たかったのが気持ちよかったのか、お酒が入って気持ちよかったのか顔が緩んでニヤニヤし始めた。


「そういやマナちゃんどこ行ったんすかね」


ドンギュオは一隊へと続く方の扉を見ながら酒を口に付けつつ誰にというわけでもなく質問した。


「ん?なに?もしかしてちょっと気になってるとか?」

フィルフィーは起き上がるとドンギュオの耳元でニヤニヤしながらささやいた。


「いやいや、そもそもマナちゃんは上の住人だから。ただ仕事終わった後はよくここにアイス食いに来てるから、いないの珍しいと思ったんだって。それに・・」

「それにぃ?」


「茶化すなって。それに今回大活躍だったから誉めておこうと思ってさ」

「えぇ、そりゃ活躍はしてたけどそもそも役割通りやれてただけじゃない」


そう言うとフィルフィーはもう飲み干したのか、3杯目を注文していた。

とは言え、ここは注文しても持ってきてくれないので、仕方なくメリシアが代わりに取りに行ったのだが。


「そうだけどきっちりやった時はちゃんと褒めておくことで、人は伸びるっていうじゃん」

「じゃあ、私も褒めてよ~」


グラスを受け取ったフィルフィーはすぐに3杯目を半分まで飲み干すと、ドンギュオに少し絡み気味になる。


「はいはい、フィルフィーもあまり深酒しないようにね。ちなみにマナちゃんは隊長と同じで今日は報告書を書いているはずよ」

「えっ、嘘!?」


思わずフィルフィーはびっくりしてドンギュオから離れ、そのドンギュオも少し驚いた様子だった。


2人が驚くのも無理はなかった。

時々一緒に一隊と仕事をするマナだったが、仕事終わりはここへきてアイスを食べながら反省会をやっていることが多いので

2人共ここにマナが来ないのは、すぐに別の仕事の準備でもやっているのだと思っていたのだ。


「なーんか、気が付かないうちに追い越されて俺たちの上官になったりしないっすよねぇ」

「さすがにそれは・・ちょっと勘弁してほしいわよ」


そんな楽しそうに話す2人を見て、メリシアはグラスに残った酒を一気に飲み干すと、簡単な食事を注文して2人と今日の仕事のことを話し続けた。


冒頭の挿絵は グリコーゲン様(twitter ID:guri_coooogen)に依頼して書いていただきました。

もちろん、有料です(汗

素晴らしい絵を完成していただき、本当に嬉しかったです。


今話も読んでいただきありがとうございました。

挿絵が好評なら、またいつかやりたいと思います。

次話は火曜日更新予定です。


魔法紹介

<鎮火>火:火の勢いを弱らせて消す。ちなみに匂いや熱は消せず残る。範囲指定魔法。

<橙の炎>火:特定の物だけを焼くことができる炎。魔力も焼けるが効率は悪い。

<小爆発>火:爆発系の基本魔法。威力を弱めで自分を吹っ飛ばすように動かしたり、高く飛ぶことにも応用可能。


更新履歴

19/09/08 火災事件に関する注意書き部分を削除しました。挿絵を背景ありに差し替えました。

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