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異世界からのスカウト ~光と闇の狭間に立つ英雄~  作者: 城下雪美
3章 日々是修行(49話~107話)
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追加試合 トマクvsコウ②

ここまでのあらすじ


コウは実力を測るテストとして行われたルトス王子との戦いに勝ったが、周囲の思惑により今度は当主の側近で腕の立つトマクと戦うことになる。

ことごとくコウの攻撃は受け流されるが、それでもコウは着々と攻撃を当てる計画を練っていた。


コウはトマクと話ながらも氷の心の効果で冷静に現在の状況を分析していた。


残念なことに目の前にいるトマクの動きは、そこそこ本気を出したクエス師匠と比べても遜色のないものだった。

しかもちゃんと警戒する余力を残しているらしく、ちょっと想定外と思われる攻撃をぶつけても上手く対応される。


どうやら油断したところに想定外の攻撃で驚かせた上で、更に想定外をぶつけないとまともに攻撃は通らない相手だとコウは判断した。

しかも決めの一撃は、高火力の魔法だと型にかかる時間や魔力量で気づかれやすいから、出来れば剣での一撃が望ましい。


ここまで想定してコウは残り5分くらいになって万策尽きた感を出した後に一撃を決める手順でいくと決定した。

最後の最後はさすがにトマクも気を引き締めるだろうから、やるべき時は今から数分後という判断だ。


「まだまだー」


コウは自分に言い聞かせるように大声を発すると、先ほどの戦いでルトスが見せた集中攻撃を真似した戦いに切り替えた。


風の百矢、風の槍、風刃を織り交ぜながらトマクをガードさせ続ける。

さらにその間も後ろで少しずつ型を組んではストックする。

だが、こういった魔法を浴びせ続ける戦い方に慣れていない為、時々コウの攻撃に隙間が出来る。


「おっと、この感じ。連続魔法攻撃はまだ慣れてないようだな」


コウの攻撃の隙間にトマクは<光一閃>でちょくちょくレーザーを放ち反撃する。

だがコウもトマクが作る型を見て攻撃方向に大体のあたりをつけつつ、上手く回避したり魔法障壁でガードする。


一向に崩せないトマクを見てやはり通用しないかと思いつつもコウは更に攻撃に水属性を混ぜる。

2色同時に使えない状態では、型を出した状態で属性を変更すると組んでいる途中の型も当然属性が変わる。


コウはそれを利用して相手にどの属性の魔法を組んでいるか一瞬迷わせながら、さっきまでの攻撃に、水刃や強力な水を噴射して相手を吹き飛ばす<水圧砲>を混ぜてみる。

属性変更で少しの間ができるが、発動済みの魔法は止まらないのでその魔法で足止めしつつ、属性を変えては攻撃を繰り返す。


「いいね、拙いがここまで出来るとはルトス様とは大違いだ。俺がもっと上手く指導してやるから、俺の下に来いって」


「遠慮しておきます。素晴らしい師匠がいますから」

2人は会話しながらも放たれた魔法に防御や回避で対応し続けた。


コウの継ぎ接ぎなラッシュ攻撃は3分ほど続いたが、コウは全くトマクにダメージを与えられなかった。

結局すべてトマクに対処されてしまっていた。


「はぁ、はぁ、やっぱり格上のトマク様は余裕ですね」

周囲の魔力をなんとか安定させながら、コウは息を切らしていた。


「いやいや、なかなか緊張感のある戦いになっていたぜ。さっきのラッシュも粗は目立つが油断できないほどだ」


「お褒めいただいてありがたいですが、どうせなら当たってもらえるともっと嬉しいんですけどね」

「ははは、そりゃ無理な相談だな」


トマクはコウがほぼ万策尽きたと見て、余裕の笑みを浮かべながら会話を続ける。

その間もコウはこれからの一連の流れを頭の中でシュミレーションしつつ甘いところはないか再確認していた。



コウが再び剣に魔力を込めるのを見て、やや呆れつつトマクは助言をする。


「おいおい、一呼吸おいて魔力も体力も落ち着かせた方がいいぜ。息が切れたまま俺に攻撃を当てるとか無理だって」

そんなトマクの話を聞くことなく、コウはゆっくりとトマクへ向かって歩く。


このときコウは既に体力も魔力も全力が出せるくらい回復していたが、あえて激しく息をして、魔力展開の範囲をぶれさせていた。

もちろん、コウが疲れ果ててやけくそになっているように見せ、トマクを油断させるためだ。


トマクの忠告を聞かずにコウがゆっくりと近づいてくるので、仕方なくトマクは攻撃する。

警告の一撃<収束砲>だった。


複雑な型が作られ高魔力の収束した光が放たれるが、コウは型を組んだ時点で魔法の予想がついていたので、即座に<水泡の盾>を着弾点に斜めに受けるように作り上げる。

直撃した水泡の盾は一旦受け止めるものの耐え切れなくなって瓦解するが、その間にコウは右斜め前に体をかがめて移動しトマクの一撃を回避していた。


そのままコウは背中に仕込んでいた<加圧弾>を発動させ、押されるように一気に加速する。

「また突撃かよ」


そう言いながらもトマクは一気に警戒LVを上げる。

ある程度余裕のあるトマクだったが、コウが持つ剣だけはかなり危険なもので、接近戦で直接切られると無傷では済まないと考えていたからだ。


コウはトマクの左側を切りながら通り抜けようとするが、当然その剣はトマクの槍に受け止められる。

受け止めたと同時にトマクの右側から<風の槍>が3本飛んでくるが、トマクはそれを見ることなく大き目の<光の強化盾>を張り風の槍を防いだ。


「まだまだ甘いな」


トマクがそう言って槍に力を加えて剣ごとコウを押し出そうとしたときだった。

コウの剣の根元近く、鍔の部分に小さい<加圧弾>を作り発動させる。


コウが先ほどまで押していたのとは逆方向に力がかかり、同時に疾風の力も利用しつつ回転切りのように3/4回転して、槍の防御をかわしつつトマクの左脇辺りを剣で狙う。

一瞬槍と剣で押し合う力が抜け体制を崩しそうになるが、トマクは即座に槍を手前に引きコウの一撃を防ぐ。


が、更にコウはここでトマクとの間に<風爆弾>を発動。

間近で爆風のような風が起こり、体制を崩していたトマクは右側へ少し飛ばされるが、右側にさっき風の槍を防ぐためトマクが作った魔法障壁にぶつかる形で止まった。


一方のコウはその爆風で剣がぎりぎり届かない位置にまで離れる。

その距離感を見てふっと安心した事がトマクにとって致命的なミスになった。


コウは飛ばされながら突然属性を光に変えると、トマクの目の前でストックから<収束砲>の型を取り出し至近距離でぶっ放す。


「げっ、光いけるのかよ」


トマクはコウが光属性をLV30という高LVで使えることに驚きつつ慌ててストックから<光のオーラ>の型を取り出し発動させる。

トマクの体を高濃度の魔力が取り囲み、コウの収束砲を何とか受け止めた。


が、コウはここぞとばかりに収束砲を放った直後には水属性に切り替え、収束砲が消える頃には<水牢>を発動させ、トマクを立方体の水の中へと閉じ込める。

この状態で水切りを食らうとまずいと思ったトマクは急いで周囲に残っていた魔力を使い、周囲の水を自分の光の魔力で消そうとする。


だが、後手後手に回ったトマクに畳みかけるようにコウは属性を氷に切り替えるとストックから型を取り出し<凍結牢>を発動させた。

周囲の水を消そうとトマクが大量に放出した魔力は水と打ち消しあって相殺したところに、今度は水が凍りだし水を打ち消して何もなくなった部分にまで氷が出来上がり、トマクは完全に氷の中に閉じ込められた。


何とかこの状況を打破したいトマクだったが、全力で水を消そうとした為に周囲に展開していた魔力を消費していたので、この氷からすぐに脱出することができなかった。


トマクはこれは詰んだと思い、コウの一撃を食らう事を覚悟して体内の魔力濃度を上げる。

せめてダメージは最小限にといった対応だ。


とは言えコウも周辺に展開している魔力を連続魔法発動で消費していた為余力は少なかったが、それでもチャンスは今しかないとありったけの魔力を剣につぎ込みつつトマクには届かないまでも<氷切り>を使って目の前の氷を横一線に切り裂いた。


トマクは突きで来ると考えていたのか、トマクの体内の魔力を前に突き出した左腕とコウに近い右腹部辺りに濃い目にしていたので

コウは氷切りによる威力を伝達するの対象をトマクの左腹部にする。


コウが氷を切ったと同時に氷切りの効果でトマクの左腹部が1cm半ほどの深さでバッサリと横一線に切り裂かれた。

それと同時にコウの体にも痛みが走る。


その痛みで一瞬剣を持つ手に力が入らなくなるが、直ぐにしっかりと握り締めるとコウは後ろに飛んで距離をとった。

本当は追撃で氷を砕きながらトマクにダメージを追加する予定だったが、魔法発動時に使うコウの周囲の魔力がほぼ枯渇していたので追撃は諦めざるを得なかった。


さらに言うと、先ほどの氷切りの時に既に周囲の魔力では魔法発動に必要な魔力が不足していた為、コウの体を構成している魔素体の魔力が、一部強引に魔法発動に奪われていた。


そのせいでコウは体のあちこちに痛みが走って魔法を使うどころではなかった。

ちなみにこの周囲の魔力不足による魔法使用での痛みは、<痛覚鈍化>でも軽減されない。


コウが距離を開けて2,3秒後にはトマクが氷の一部を魔力で消し去って氷の塊から脱出していた。

脱出後トマクは綺麗に切られていた腹部を見ると、即<光の保護布>で止血を止めつつ槍を収納した。


「くっそー、まいった。まさか切られるとは思わなかったぜ。ルールどおり俺の負けだわ」


コウはまだ度々全身にくる突発的な痛みを抑えつつ剣を収納してぎこちなく礼をする。


「ありがとうございました。とても勉強になりました」

「あー、こっちも勉強になったぜ。授業料は高すぎたけどな」


傷を負いながらもちゃんと相手をたたえるトマクを見て、コウは実はこの人かなりいい人では?と思っていた。


「しかし、コウ。君はやばいね。収束砲ぶっ放されただけでもびっくりしたのに、俺の魔力が水を打ち消すのにある程度使われたタイミングで凍らせてくるなんてな」


「いえ、正直あそこまで上手くいくと思いませんでした」


話しながらもコウがなにやら痛みをこらえているのにトマクは気づく。

トマクは一瞬考えたが、自分はダメージを与えていない以上、原因は1つしかなかった。


「おいおい、まさかだと思うが過剰使用の症状か、それ?」


「あっ、そうみたいです。どうも思った以上に氷切りに魔力を持っていかれたみたいで・・」


「はぁ~、無茶しすぎだろ。実戦なら氷から出てきた俺に一撃食らって終わりじゃないか」


「ですね。でも今回はトマク様に傷を負わせればその時点で勝ちでしたから」


そういわれて再び悔しさがよみがえったのか、少し後ろに背を伸ばして天井を見上げながらトマクは顔をしかめた。

話しているうちにコウの魔力の過剰使用による全身の痛みも少し治まったので、報告の為トマクとコウはクエスやボルティスのいる観覧席へ向かい階段を上った。



◆◇



コウの勝ちを観覧席から見届けたボルティスとクエス。

ボルティスはただ驚いていてクエスはコウの動きに感心していた。


「いやぁ~、さすが私の弟子ね。さすがに勝ちにまで繋げられるとは思わなかったけど」


コウの勝利をクエスは心から喜んで、まるで自分のことのように満面の笑みを浮かべていた。

だがそこへボルティスの厳しい質問が飛んでくる。


「おい、クエス」

ボルティスの低い声にクエスは勝利の喜びを邪魔されたように感じて、少し不機嫌そうに答える。


「何?配下が負けたからってイライラしないでよね」


「違う、あれは一体なんだ」

「私の弟子よ?」


ボルティスに指摘されたことで、全力を見せちゃったのはかなりやばかったなと思ったが

今更手遅れなこともあってクエスは開き直るつもりでいた。


「あれは本当に1年目なのか?まさかお前年数まで偽造してはいないか?」


「いやいや、そこは偽造していないわよ。そもそもそんなものどうやって偽造できるかも知らないし」


「となれば、今年誕生したといわれる精霊の御子よりも実力・才能共に上かも知れんぞ」


へぇ、そんなのいたんだとクエスは対して興味なさそうに聞き流す。

だがボルティスは続ける。


「今年の精霊の御子はここ10年で見ても圧倒的な才能を持っているらしいが、彼がそれ以上となると大ニュースだぞ」


「ちょ、ちょっと待ってよ、ボルティス様。公表はしないって方針だったでしょ」


「だがな、ここまでの才能ともなれば、絶対的な保護の下で彼を育て上げるべきだろう。将来の連合の希望の星になりうるほどの実力だからな」

まずいと思ったクエスは頭の固めなボルティスの考えを変えさせるべく、様々な理由を考える。


「ま、待って。そんな事をしたら、コウが多くの者の目に触れてしまうわよ。そうなれば今は後ろ盾の薄いコウは取り合いになってしまうじゃない。

 うちの一門やうちの派閥内に留めておく事もはっきり言って難しくなるわ」


「うーん、だがしかし・・」

「特にあのバカスが知ったら黙っておくはずないわよ」


バカスの名を出されてボルティスは再びクエスの隠していく案に乗らざるを得なかった。

ボルティスの認識ではバカスはかなり警戒すべき人物だった。

なんせクエス達の家を滅ぼしてまでも力を集めようとした過去を持つ危険人物だからだ。


「わかった、仕方あるまい。この事は公表はしない。だが、早めにアイリーシア家の貴族にする算段はつけておけよ。公表する頃には貴族になっていないと争いの元にすらなりかねん」


「もちろんよ。今回の師匠にする件が片付けば直ぐにでもそっちに取り掛かる予定なんだから」

何とか公表を防げたクエスは胸をなでおろした。


これだとわかりにくいかな、と思いつつ何度も修正を重ねるが

結局分かりにくい戦闘パートが出来上がる・・(´Д`)ハァ

そんな今話を読んでいただきありがとうございます。

ここから先は戦闘パートないから、安心して書けます。土日のどちらかに更新予定です。では


魔法紹介

<水圧砲>水:物理的な威力も兼ね備えた一撃。標準は直径10㎝ほどの強力な放水。消防車の放水をイメージてくれれば・・

<水牢>水:相手の周りに多量の水を作り出し、四角の水の中へと閉じ込める。

<凍結牢>氷:水とその中にある対象を凍らせる。対象が水に囲まれていれば水がない部分も氷が発生し相手を固定化する。



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