魔法使いとの出会い
初書きになります。
拙いながらも最後まで頑張りたいと思いますので
読んでいただけると幸いです。
5月のある日の夕方、憂鬱な顔をした男が校舎から図書館へと歩いていた。
その男は風水 鋼 高校3年生
憂鬱な原因は先ほど職員室に呼ばれて担任に言われたことだった。
「風水、お前入学から少しずつ順位落ちているぞ。このままでは進路先が狭くなるからもっとしっかりしろよ」
「はい・・・」
なんともいえない気持ちで返事をする。
家では毎日2時間は勉強してる、授業も周りと同等くらいにはまじめに受けている。
それでもゆっくりとだが順位が下がっていった。
正直、劇的に変わる方法があるのなら教えて欲しいくらいだ。
先生なんだから勉強法も指導してよ、と思ったがそんな愚痴を口に出してもしょうがない。
そんなことを言っても小言が余計に一つ返って来るだけだろうから。
「頑張ります」
俺は先生の目を見ずにつぶやいた。
「入学時は今よりもよかったんだ。才能はあるんだからあとは努力だぞ」
雑な励ましを投げて先生は机の書類へと眼を向ける。
(才能ねぇ、あるわけないじゃん)
そう心の中でぼやきながらその場を後にした。
図書館は校舎とは離れて独立した建物にある。
2階建てで割かし大きく、中学にあったものとは比べ物にならないサイズだ。
「家に帰っても……アレだしな。宿題を半分は片付けて帰るか」
そうつぶやきながら1階の連絡通路を通り図書館へと向かう。
1階の連絡通路はコンクリートの四角の足場が飛び飛びにあって
2階と違ってきっちりした廊下ではなく側壁が肩程の高さしかない。
雨風の強い日は外から雨が入り込んでくるので、側壁があるがほとんど外のような場所だ。
しかも通路を通り抜けられるように側壁も所々空いている。
ちょうど風の通り道になっているせいか、涼しく心地よい風が元気付けるかのように優しく頬を撫でる。
「落ち込んでいるときに……はぁ」
とため息のような苦笑いのような一息をついて笑い一言感謝を告げる。
「風さん、ありがと」
ちょっと心にもやがかかった気分だったが、吹いてきた風に感謝をすると少しやる気も出てきた。
愚痴を言ったところで気は晴れなかったが、風は一緒に俺の心のもやを少し飛ばしてくれたみたいだった。
「さーて、宿題くらいちゃっちゃと片付けるか!」
そう声に出したとき横から女性の声が聞こえた。
「すみません、ちょっといいかしら?」
不意の声に一瞬体がビクッとなるがすぐに落ち着き声のしたほうを見る
最初に思ったのは「え、マジか」だった
目の前に居たのは淡い緑のブラウスに膝が隠れるくらいのスカートを身に着けた二十歳過ぎに見える女性。
結構、いやかなりきれいな女性だ。身長は165cm程だろうか。
おれの173cmと比べてちょっとだけ低い。
これなら別段驚くほどではないのだがその女性は普通の人とは違う部分があった
それは<髪だ>
髪型自体は普通のポニーテール
そこは問題ではない…問題はその色、エメラルドグリーンというべきか
煌めく薄い緑色のポニーテールの女性だった。
(おいおい学校に来るのにそんな髪色に染める出入り業者とかありえないだろ)
驚きと戸惑いの顔を見せながらぼけっと見つめていたのだろう、その女性は少し困った表情になった。
「ええっと、少し聞きたいことがあるのだけど今いいかな?」
少し強めに発せられた言葉に思わずわれに返りあわてて返事をする。
「あ、は、はい。なんですか?」
相手の女性は少し笑顔を浮かべて尋ねてきた。
「職員室というのはどこにあるのでしょうか?」
正門や受付を通り過ぎて校舎の半ばまで来ているんだし、何か特別な質問でも来るのだろうかと身構えていたが案外普通の質問だった。
職員室を聞いてきたということはやっぱり何かの業者?それとも誰かの親だろうか。
まぁ世の中色々な趣味趣向を持った人がいることだし、髪の色だけで相手を色眼鏡で見るのは失礼だろう。
そう考えながら案内しようとその女性に背を向けて
「こっちですよ、案内しま………」
と言いかけて俺は意識が途絶えた。
頭がぼーっとする。なんだかよくわからないが真っ暗な世界に浮いているみたいだ。
とりあえず体を動かそうと思ったが思うように動かせない。
そんな中、暗闇の中どこからともなく小さい声がするので思わず俺は耳を傾けた。
「ねぇ、せっかく○○○○使って○○○○のよ。ここまで来て○○○○よ」
「私に●●●●……彼が●●●●同意する●●●●」
「じゃあどうするのよ、まさか○○○○よね?」
「もちろん私も●●●●。でも●●●●気に入ってるの」
「はぁぁ?本気?…もう、○○○○よ」
途切れ途切れながら会話が聞こえる
たぶん女性2人の会話だが、言い争っているみたいだ。
今まで女性に大して縁のない生活を送っていたのは間違いないが
それでもこの会話には参加しないほうが良いということくらいはわかる。
いわゆる女性同士の口喧嘩というヤツだろう、たぶん。
嫌でも耳に入って来るので止めに入りたいところだが、そんなものを仲裁できるのはモテモテになる漫画の主人公くらいだ。
しかし夢にしては、なんか違う感じがする。
2人の声が妙に頭の中に響く。何だろうこれは。
「あのねぇ、○○○○と思ってるのよ。それなのに○○○○」
「いや、それは●●●●けど。●●●●困る。●●●●犠牲にする●●●●」
「はぁ、○○○○なの?」
ふと言い争いらしきらしき会話が止まったかと思うと
先ほどよりも大きな声が聞こえた。
「もーいい!こうなったら○○○○」
「ちょっと●●●●……」
「○○○○待ってるの。このまま○○○○ありえない、ありえないわ」
だんたんと状況が悪くなっているようだが
言葉がはっきりとは聞き取れないのに頭の中でガンガン響くような言い争い。正直勘弁願いたい。
まるでチャンネル変えたらいきなりドラマの文句を言い合うシーンを見せられた気分だ。
夢の中で女性の口喧嘩をじっくり聞かされるとか俺はどんな心の病だよ。
「だったら彼を説得して。でなきゃ●●●●しない」
「説得!?えぇ~、○○○○説得しろというのよ……」
「彼は特別な才能あるから、大丈夫。きっと連れて行かない方が後悔する」
「特別な才能?はぁ、まぁそこまで言うならやってはみるわ。でもダメな時は遠慮しない。本気よ」
大きなため息が聞こえたが、言い争いにようやく結論が出たらしい。
途切れ途切れだからよくわからないが、騒がしくなくなったのでほっとした。
しかし…何なんだろうこの状況は。夢ならとっとと終わって目が覚めてくれないかな。
そう思っていると次第に周囲が明るくなってくる
「あ…待って。姉さんちょっと……しまった、これ聞こえてるかも」
「えっ、何?普通は起こさないとこんなに早く起きないはずなのに。あんたのせいで耐性付いてるとか?」
「ごめん、もう潜る。絶対、絶対説得して」
徐々に世界が明るくなり
気がつくと俺は先ほどと同じ図書館に続く渡り廊下の側壁にもたれかかった状態座り込んでいた。
「えっと…大丈夫?」
近くで心配そうな声が聞こえたので振り返ると、先ほど職員室の場所を聞いてきた女性がこちらを見つめている。
「急に力無く倒れ掛かったので楽な姿勢に置かせてもらったの」
そういわれて自分の状態を確認してみると、さっきまでいた連絡通路の側壁にもたれかかって座っていた。
その女性は心配そうにこちらを間近でのぞきこんでいる。
「ええ、大丈夫です。疲れていたのかもしれないです」
状況がはっきりしないのであいまいな返事を返す。なんか変な夢を見ていたはずだったが、なぜだか上手く思い出せない。
とりあえず体は動くようだ。不安げながらも側壁の留め具部分を掴みながら立ち上がり
自分でも問題なさそうな状態なのを確認して愛想笑いを返す。
こんな場所で急に気を失ったっぽい事を驚きつつも少し自分の体が心配になった。
余程疲れているのだろうか、と。
とりあえずさっき出会った女性はまだ目の前にいる。
そういえば、さっき俺に訪ねて来たんだった。
それなのに気絶して倒れ込むとか、俺ってマジであり得ないわ。
そう思いながらさっきの質問に対応しようと体を動かす。
「すみませんでした。確か職員室への案内でしたよね」
「あぁ、えっとね、ちょっとまって。案内はもういいの」
え?別の人が案内してくれたのか?ちょっと安心したが同時に申し訳なくなった。
とにかく心配をかけたようだったので謝ろうと振り返った時その女性が俺の目を見て話しかけてきた。
「ねぇあなた、魔法使いにならない?貴方には才能があるわ」
突拍子も無いことを、真剣な目で突然言われた。
意味不明なことを言われ頭の整理が追いつかず、俺は立ったまま固まってしばらく何も言えなかった。
最初の方は早めに上げていきたいと思います。
(少しだけ書き溜め分があるので)
修正履歴
19/01/28 改行を追加
19/06/30 一部表現を修正
20/07/18 一部修正