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肥満勇者の欲望は  作者: 海国 遊泳
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三話 チェンジで



「~と言っても、具体的には俺はこれからどうすりゃいいの?」


 外へ連れ出された俺は隣を歩いているライゼルに聞いた。

 というかライゼルといるせいでさっきから周りの視線がすごい。半分は俺だろうけど。

なんせ今は牢屋の中での服からライゼルの持ってきてた服に着替えている。できるだけ目立たないためらしい。

 しかし待っていたのは予想をはるかに凌駕するサイズの俺。結果服が悲鳴を上げている。

 そんなはち切れんばかりのデブと教皇様。そりゃあ目立つわ。


「さっき言った勇者証や、旅の資金を渡したり、妹さんを交えてこれからのことを話し合ったり。あと、神器登録ですね」

「神器登録?」


 聞いたことない単語が出てきた。登録ってなんだろ。神器っていうと聖剣を授かる的なイメージがあったんだけど。


「神器というのは、もともと存在するのではなく、勇者自身が選んだものを神器として登録するんです。勇者はそれを通してはじめて神様と話したり、勇者としての力を持つことができます。何か得意な武器とかないですか?」

「…武器っぽくないけど、平気だと思う?」

「中には工具箱を神器登録する勇者もいるらしいです。おすすめはしませんが、大体のものは平気なはずです」


工具箱が神器なのかよ!でもまあそれなら平気そうだな。


「家にある。それでいいや」

「では取りに行きましょうか。妹さんもそちらに?」

「いないと思うよ?取り調べの人の話だと、女性職員の人が保護してくれてるっぽい」


 記憶力には自信があるから間違いない。するとライゼルは保護ってところに引っかかったらしい。


「保護が必要な状態なのですか?失礼なことをお聞きしますが、保護者の方は?」


 ああそういうことか、そこまで詳しくは聞いてないんだな。



「母も父もだいぶ前にどっかいった。妹は今は十五歳で、そこそこ前に災害で両足をなくしてる。だから俺が稼がなくちゃいけないんだよ」

「…すみません」

「気にすんなって。おっ!あれがいいや!ライゼルさんお金ある?」


 重い雰囲気になりそうなので明るめの声で無理やり話を変える。まぁいいものを見つけたのは本当だ。

というか、ここで見つけたから家に行くのはいいや。めんどくさくなった。


「大体のものは買えると思いますけど、何を買うつもりですか?」

「神器」

「じ…はい?」


 戸惑うライゼルからお金を受け取って入ったのはただの日用雑貨店。お目当てのものをすぐ買ってホクホク顔で店を出る。


「これで神様と話ができるんだよな?」

「はい…え!?神器ってまさかそれ、本気ですか!?」

「そりゃまあ」



ーーー俺が神器として選んだもの。

ーーー貧乏なうちにもあり。

ーーーまともな武器がなくそれを使って狩りをしてた。

ーーー主に木を切り倒したり薪を割るのに使うもの。



ーーー人はそれを『斧』と呼ぶ。



「これが俺の相棒です」

「いいんですね!?勇者の武器が雑貨店の斧で本当にいいんですね!?」

「いいよ」


斧を担いだら変態度が増した。視線がきつくなった。


自然と二人とも歩くのが捗るようになった。


* * *


「じゃ、登録お願い」

「…まだやめれますよ?ほら、あの鍛冶屋をのぞいてみませんか?これよりもいいものがあるかもしれませんよ?」


 歩きながらでも神器登録はできるらしいので、目的地に向かうまでに済ませようと思って買った斧を渡した。しかし納得してくれず。まだ渋ってくる。


「それが武器としては一番なじむんだよ。悔いはないからやっちゃって」


 それを聞いて、しぶしぶといった感じでライゼルが斧に手をかざす。


「…はい。できましたよ。これで神様と話せるはずなので、試してみてください」


 そう言うと斧を返してきた。

 見た目は何も変わらないけど、気持ち丈夫になってる気がする。


『あー、あー、テステス。聞こえるぅ?』


 …まさかこれが神の声なの?この軽いのが?


「聞こえるけど、まさか神様?」

『おー聞こえてるね。いえすいえす。あいむ女神!ラウニ様です!存分に崇め奉るといいよ!』


…まじかよ。思ってたのと違う。


「ライゼルさん、これマジ?」

「…信じたくはないでしょうが、そのリアクションなら間違いないでしょう。これがばれると国民から神様への信仰がガタ落ちでしょうから、国家機密の一つです」


『まあまかせとけって!今回はいけそうな気がするから!ボア君のこと信じてっから!』


 それを聞いてつい本音が出た。


「チェンジで」

「できたらとっくにしてます」

『あんたらまとめて天罰落とすからな!?』


 それからもぎゃーぎゃー言うラウニの言葉を聞き流しながらも黙々と歩き続け、俺達は妹がいるはずの職員さんの家の前に着いた。

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