表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

4.見て見ぬふり

レオン・オーフェルヴェルク

この国の第一王子で、ヒロインと同い年。

3歳の頃に母である王妃が亡くなり、側室だった女性が王妃となった。これが現王妃、マリア様だ。

マリア様は王様のことをとても愛していたが、レオンのことは忌み嫌っていた。始めは無視をするだけだったが、王様とうまくいかないことが増えていき、レオンに対して手を上げるようになる。それはゲームの始まる14歳の頃まで続いた。

外に出ることの多い王子に、バレないようにと見えない場所に大きな傷をつけていった。

見て見ぬふりをする使用人、全く気づいてくれない王様。

こんな生活を11年間続けた結果、レオンは心のない人形のようになっていた。

表面上では作った笑顔の仮面を貼り付けて、マリア様のいない学園で無感情で過ごした。

そんな頃ヒロインと出会う。

ヒロインは心のないレオンを心配に思い、しつこく関わりを持とうとした。レオンはそれを鬱陶しく思い、避けていたが、いつまでも自分に優しくしてくれるヒロインに気を許し始める。

ヒロインにすべてを打ち明けると、人形のように凍りついた心が溶けていくのが分かった。





レオンは3歳の頃から虐待を受けている………なら5歳になった今はもう、酷いことになっているんじゃないかな…………

王様の横にいるレオンは微笑んでいる、傍から見たら、普通に幸せそうだよ。

こんなの、誰も気づかないわけだ……………

私とレオンはひとつの言葉も交わすことなく、王様への挨拶は終わった。


「どうしたんだいシャーリー、暗い顔をして」

「……………なんでもないです。」

帰りの馬車の中、私はレオンのことばかり考えていた。

私のすぐ近くで5歳の男の子が虐待を受けている事実がある。

初めてレオンに会って分かったことは、なんの感情もない目をしているということだけ。

たった5歳の男の子が……………

本当に最低最悪なゲーム…………なんていう設定作ってるんだ!前世に戻れるならこのゲームを作った会社を訴えてやりたい!

でも、今起こっていることはゲームの話じゃなくて、私の現実なんだ。

どうにか助けてあげたい…………私になにかできることはないだろか…………

そんなことを考えながら窓の外を眺めている私をお父様が不安そうに見ていたことに、全く気づかなかった。


「ただいま………」

「おかえりなさいませ、旦那様、お嬢様。初めてのお城はいかがでした………か………?」

アンナが優しく出迎えてくれてるというのに笑顔になれない…………

「ごめんね、アンナ………ちょっとお部屋で休みたいな」

「…………わかりました、すぐに準備いたしますね」

何も聞かずに微笑んでくれるアンナは、本当に出来た人だよ………


「あの、旦那様…………お嬢様は一体………」

「んー、私にも分からないんだよ、帰りの馬車の中でもずっと黙って外を眺めていてね………」

「そう、なんですか…………」



「はぁ………」

お姫様のような天蓋付きのベッドで、私は大きなため息をついた。

生まれた時からゲームの内容はしっかり覚えている………攻略対象の辛い過去も知ってる。でも、それはゲームの中での話だったから現実味が全くなかった………

今日、初めてレオンに会って、ゲームの中じゃない、この世界で生きているレオンを見て………すごく、ゾッとした。

虐待を受けているのに笑顔でいるレオンに…………

なんで誰にも言わないの?なんで笑顔でいられるの?なんで、11年間も耐えていたの??

ゲームの中じゃ分からなかった………思わなかったそんな疑問が、頭の中でぐるぐると回った。


コンッコンッ

優しく扉をノックする音が聞こえた。

「お嬢様、アンナです。入ってもよろしいでしょうか」

「は、はい」

「失礼致します」

そう言って入ってきたアンナは少し困った顔をしていた。

「お嬢様、元気がないようでしたのでホットミルクをお持ちいたしました。」

「ありがとう、アンナ」

いつもアンナは、私が怒られたりして落ち込んでいる時にホットミルクをいれて持ってきてくれる。

何も言わず、ただ優しく微笑んでくれるアンナが今の私には心地よかった。

「ねぇ、アンナ、誰かが辛い思いをしていたら、どうする?」

「…………私は…………本当にその人をどうにかして助けたいと思ったら、自分ができることならばその人のためになんだってします。」

真剣に答えてくれたアンナは真っ直ぐに私を見てくれた。

「そっか………うん………そうだよね!ありがとう!アンナ!」

そうだよ、どうにかしてでも助けよう!


まずは、レオンと話してみないとなにも始まらない!

お城にってどうやっていけばいいんだろう、やっぱり相当の理由がいる………よね……………まずお父様に聞いてみよう!

私はお父様の部屋へ向かった。

「お父様、今よろしいですか?」

「ん?シャーリー?どうしたんだい」

お父様は書類の整理の手を止めて、私を抱き上げてソファに座った。

「その、お父様、お城にはどうやったら行けますか?」

「え、シャーリー、お城に行きたいのかい?」

「はい」

なんか、お父様の顔が怖い、ような…………

「な、なんでかな………?」

「え、えっと…………」

王太子が虐待を受けているから助けたい!なんて言えるわけないし…………………そ、そうだ…………!

「お父様のお仕事をしてる姿が見たいのです!」

上目遣いのぶりっ子ポーズ!

「なるほど!!!そうかそうか!!いいぞー!いつでもおいで!!!」

そう言うと私にぎゅーーっとハグをしてくるお父様、すごく嬉しそう。

「てっきり、王太子殿下に会いたいという理由と思ってしまったよ」

「へ、なんで?、」

え、お父様、まさか、知ってる…………?

「ほら、馬車の中でもずっと上の空だったろ?殿下のことを好きになってしまったと思って、私は悲しかったよ」

な、なんだぁ…………びっくりした

「ふふふ、違いますよお父様!私はお父様が一番大好きです!」

イケメンお父様は世界一ですよ!私もお父様にぎゅーっとした。

「お城にはいつでもおいで、ほかのご令嬢やご子息もよく来ているからね」

え、そうなの……………そんな気軽に行っていいものなの??

いろいろとどうかと思うところはあるけれど、まあ、お城に行けるならいっか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ