メ○ンテ的な最終奥義で豪傑系ハーレム勇者野郎の幼馴染が美少女になってしまった件
TSものってどうなのかなって手を出してみた結果がご覧の有様だよってことで喉のつかえが取れたようなそんな心地です
俺たちは何とか魔王の元に辿り着いていた。
「ハーッハッハッハ! 脆弱な人間どもよ。我をここまで追い詰めたのには誉めてやろう。だが、ここまでだ!」
派手な角を生え散らかした強面の魔王が勝ち誇った笑みを浮かべる。
「ハッ! うるせえやい。天井で角引っかかりそうな外見しやがって。その様子じゃ物食べるのも不便そうだな。歯磨きとかちゃんとできる? あ、牙に青のりついてない?」
「は……ハハハハハ! い、言うではないかこの遊び人風情が」
おっと、これは思いの外クリティカルヒットしたようだ。
けどな、戦場で笑うのは遊び人の専売特許なのだ。それを侵すのは魔王だって許しはしない。
「……俺が奴を引きつける。その間に回復と態勢の立て直しを。なーに、数分もたすくらいなら出来んだろ」
「ラグナ……」
勇者、アルフェンゼフィナ・クオリディア。
「頼んだぜ。親友」
そして俺の唯一無二の親友、アルフ。彼と、彼を支えるハーレムたちに、俺は別れを告げる。
魔法使いであり、流麗な美女サイフリード。
神官であり、神をも惑わすダイナマイトバディなマリアンヌ。
騎士であり、ラッキースケベ(アルフ限定)なオリーフィア。
一人くらいはデレてくれてもよかったんだけどねぇ、なんて。一人ごちる。
うん。いいパーティだった。だから、生き残れよ。お前ら。
「ラグナ! ラグナァアアアアアア!!!」
アルフ。お前さ、本当にいい奴だから。だから、生き残ってほしいんだよ。
「さあ来いよ! 魔王! 一対一だ! それとも遊び人が怖いですかーへいへい魔王ビビってるぅ」
軽快に動きながら、的を絞らせないよう。かといって、アルフたちに攻撃が向かわないように誘導する。が、それでも魔王の闇の波動は容赦なく俺の身体を切り裂く。
かまうな。身体を止めるな。それだけ、アルフが。勇者が何とかしてくれるんだ。だから耐えろ。持ってくれ、俺の身体!
「ぐぅ!」
足を貫かれ、どたっと倒れる。魔王はにたり、と笑いながら近づき、俺の首根っこを掴む。
「死ね」
ああ、俺死ぬんだな。って、覚悟した。
「ラグナ……」
アルフの声が聞こえる。
「これだけは……これだけは使わないでおこうと思ってたんだ」
魔王の手が、俺の首から離れ、アルフの方に向き合う。
「キ、貴様。何だその力は……まさか、その力……!」
「だって、これを使うと……もう二度と、戻れないから」
「アルフ、お前、何言ってんだよ!」
「でも、ラグナ。オレは、お前を死なせたくない」
「アルフ! お前、何をしようと」
「じゃあな、ラグナ。皆には、よろしくしてやってくれ」
「アルフゥウウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」
そこには光輝く翼を背に戴く親友の後姿だけがあった。
神々しい、命を燃やすその最後の姿は、ただ……美しかった。
「アルフ……」
「そんな……こんな結末だなんて」
「アルフ様……」
「くっ、あのバカ者め!」
光が収まり、そこには魔王の姿も……親友の姿も無く。
俺たちは、ただ膝をついて、虚しい勝利を……
「アルフぅうううウウウウウウウ!!!!」
「呼んだか?」
は? と俺たち全員の理解を越えた呆然とした呟きが響いた。
「ふむ、いやはや、身体全てが弾け飛ぶかと思った。上手く行くか半信半疑ではあったものの、どうにかなったようで何よりだ」
そこにいたのは、絶世の美女だった。
妙に見覚えのある鎧。欠けた鎧からまろびでる白い肌。そこからうかがえる女性らしい完璧なスタイル、すらりと伸びた手足。綺麗さと可憐さの両方取りをしたような、あどけない表情。大粒の瞳と整った目鼻立ち。ぷるんと濡れる唇。
しかし、俺たちは知っている。辺りを染め上げずにはいられない、温かな朱い髪。強い意志に由来する輝きを秘めた青い瞳。
「あのー」
「……ふむ、何だ。親友」
まるで、普段通りかのように親しげに俺の名を呼ぶ、高い声。
「どちら様で」
まさかなーまさかだよなーと思いながら、俺は確認する。
謎の美女は少し悲しそうに眉をへこませ口を尖らせる。
「心外だな親友。アルフェンゼフィナ・クオリディア。この世界における勇者であり、お前の唯一無二の親友だぞ」
「「「「は…………はぁああああああ!!!!???」」」」
※※※
事後処理もそこそこに、王都へと帰還する馬車の中。俺たちは事後処理もそこそこに、一体どういうことだと詰問することにした。
「で、何だ。どうしてこんなことになってんだ」
「おや、話したことが無かったか」
「何を?」
「オレの家系が元々、女神とその女神に祝福を受けた勇者による子供の子孫……半神の一族であることは確かに話したよな」
「まあそうだな」
正直与太話の類ではと思わんでもないが真実はどうでもいいことだ。
「つまり、オレの持つ勇者の力というのは元を辿ると女神の力であり、その力を行使するにはどうしても女性に適性が偏る」
ああそうだな。それも聞いたことがあった。ていうか、まあそうだな。そのせいでこいつが苦労してきたってのも幼い頃からこいつの親友だった俺は知ってる。
その逆境を跳ね返してきたからこそ、コイツが勇者なんだってことも。
「で、だ。旅の途中のことなんだが女神さまから夢の中で訓示を受けたのだ」
『あなたが今まで鍛錬を重ね、ここまで女神の力をその身に宿したのは驚嘆すべきことです。そんなあなたであるからこそ、女神の力を一体とする最終奥義を授けましょう。もし最後、どうしても必要になった時には、その力に委ねなさい。そうすれば、あなたは誰にも負けない力を得る。ただし……』
「それを使うと二度と男には戻れない、と」
たく、こいつは……。
「何だ? オレとしてはだな。お前にこそ言いたいことがあるんだぞ。ラグナ。お前が死んでしまうと思ったからこそ、オレも覚悟をだな」
「ああそうかい? そいつは悪かったね」
それを言われちゃ立つ瀬がないってのも事実だ。
俺としては戦略的にああするしかなかったと言いたいが、コイツがそれをよしとするわけがないのも分かりきってたことだ。
ただなぁ……
「お前、彼女たちのことどうする気なんだよ」
「うーむ……」
英雄色を好む。コイツは旅をする中でコイツ自身の魅力で以て口説き落としてきたのが勇者パーティの実態なのだ(幼馴染の腐れ縁の俺は例外だが)。戦いについていくわけにはいかず泣く泣く見送った女たちもごまんといる。
これから向かう王都の王女さまなんかもその一人だな。
「うーむ、そうだな……」
「わ、わたしはアルフ様が女性でも構いませんよ! ええ!」
と、神官のマリアンヌが叫ぶ。元々彼女はアルフの中に流れる女神の血脈に惹かれ、そこからアレフに恋い焦がれるようになった経緯があった。
「うむ、そうだな。私としても別に大した興味はないよアルフが男だの女だのと。要はその者の持つ魂の波長だからね問題なのは」
と魔法使いのサイフリード。不老の魔女であり齢数千とも言われる彼女にとって、男女の垣根とかもはやどうでもいいらしい。
「あ、アルフが望むのであれば、そのワタシも……」
騎士のオリーフィア。元々、彼女は潔癖な性質の持ち主で男嫌いだった。それをアルフが突き崩していったという経緯がある。
「三人の気持ちは嬉しいと思う」
しかしここで首を横に振るのはアルフ本人だった。
「ど、どうしてですか」
「うむ……非常に言いにくいんだがこう……勃たないんだ」
「……はい?」
「こう、あれだ。男であった時にはオレも人並みの男子としておっぱいだひゃっほう! と飛びついていたのだろうがどうにもそういう性欲というものが薄くなっている。決戦前夜はこの戦いが終わったら皆に対してどんなエロいことをしようと確かに考えていたはずなんだが」
「お前勇者だな!」
「褒めるな」
「褒めてねえわ!」
この状況でよくそんなこと告白できたな……いや、元々こういう奴だったか。
「どうだい? 皆さまがた、こんなやつ放っておいて俺といいことしないかい?」
「はい? 何か仰いましたかラグナさん」
「はっはっは面白い冗談だ」
「ゲスが」
はいはい分かってましたよっと。
やれやれだ。こんなことになってもお前を慕ってくれるんだぜちゃんと応えてやれよ切実に。
「ふむ、ところで気になっていたんだがな。ラグナ」
「何だ?」
「……どうにもこの姿になってから距離を感じるんだが」
距離?
「オレが男であった時はもう少し、こう……近かっただろう。距離が。しきりに肩を組んで、そのままオレの胸ぐらに手をツッコんで乳首をつねってきたり」
「そこまではしてねえわ!」
ちょっとお前のハーレムの方たちの目線が冷たいから止めろ。
「んだよ。俺はレディには紳士にがモットーな遊び人だよ。お前がいくら親友だっつってもな。適度な距離感でノータッチが原則なんだよ」
「そうなのか? オレの場合はむしろそうやって距離を取ろうとするとむしろ怒られたぞ何度も」
「それはテメエが勇者だからだよ」
「だからそう褒めるな」
「褒めてねえわ!」
あーったく。外見だけなら気後れするくらいの美女なのに話してると完全に気の置けない親友だから困る。
「とにかくだ。こういう時にはきちんと女の寂しさを埋めるのが男の役割だとオレは学んだんだぞ?」
くそう。俺よりモテてる男の言うことだから無駄に説得力がありやがる。
「そ、そいじゃあ凱旋パーティの話でもするかー親友!」
なに緊張してんだ俺は! アルフだぞ! 男だぞ元だけど! いい匂いするぞ何か柔らかいぞってちがああああああああああああう!
「ふふ、そうだな」
アルフも何か嬉しそうにもぞもぞってこっちに近づいてくるし。
何なんだよぉ可愛さの暴力ってやつかこんちくしょうおっぱいに手が当たっちゃうからちょっと離れた方がいいだろうがよう! 何で近づいてくんだよォ!
そしてハーレムの方々もそんな睨まないでくれ! お願いだから!
※※※
「あ~……」
疲れた。ホントに疲れた。俺のメンタルを大幅に削られた。
回避特化で紙装甲な俺は雑魚戦でも気の抜けない戦いを強いられるわけだが、その何倍何十倍も来た。
しかしここからなんだよな~。
「勇者アルフェンゼフィナ・クオリディア。ただいま帰還しました」
「おぉ勇者…………よ?」
国王様。固まる。
「あの……この女性は、アルフ様の新たなパーティのお方ですか? アルフ様はどこに?」
隣に列席していた王女殿下が声を上げる。
さて、どう誤魔化そうか……。パーティメンバーと密かに目配せする。
「オレがそのアルフ。アルフェンゼフィナです」
アルフウウウウウウウウウウウ!!!
「アルフ様が……女性で……アルフ様が、ワタシ……ケッコン……アハハ……アハハハハハハ!」
いかん! このままでは王女が男性不審になるぅ! ひいては王家の血統が途絶えちゃうう!!
「お、王様。今日はこの辺で。アルフも疲れてるからさ、ね?」
「お、おう。それでは下がってよいぞ」
※※※
それからいろいろあいさつ回りを終えて、王室内に用意された部屋に身を投げ出す。
「疲れた……」
もういやだ。アイツ豪傑過ぎてフォローがいくらあっても足りねえ。何でアイツああも怖いもの知らずなんだあのバカ。
「でも、別に要らねえのかもな……」
そりゃあ戸惑うことが無いとは言わんが。アイツが女になったとしても、アイツの周りの女性たちがアイツを諦めたりすることなんて無かった。
だから、これは多分、ただの俺のお節介だ。
アイツには俺がいなくっちゃダメなんじゃないかって。そう思って無理して、道化を演じて、遊び人なんかにまでなって着いてきたけど……それも元々要らなかったのかもしれない。
『……なあ、ラグナ。なんでおれはおとこになんてうまれてきちゃったんだろう。おれのせいで、みんなが……おとうさまもおかあさまも、みんな……』
アイツは昔からああだったわけじゃなかった。むしろ誰よりも気弱で、でも優しくて、だから放っておけなかった。
アルフは、子供の頃から自分が男として生を受けたことを悔いていた。そのせいで両親が不仲になったり、誰からも期待されもしなかった。
『アルフはアルフだよ。どうしてもってんなら、みかえしてやりゃいいだろ? おとこでもゆうしゃになれんだってさ』
ああガキだわ。今の俺なら口が裂けたってこんなこた言えないだろう。
でもまあ、そうだな。それで、アルフがどんどん元気になっていって、誰かを救えたような気になって、それで……こいつには俺がいてやんなきゃなって自惚れた。
でも、もういいのかもな。アイツには、アイツが自分で掴んだ幸せがある。後はもう……
「ラグナ!」
「どわっ!?」
いつから部屋に入ったのか、意識を手放そうとした俺に思いっきりのしかかってきた柔らかな肢体。
「アルフ!? 何でここに」
「うん? 何を言ってるんだ。いつもこうして寝ていただろう」
「いつもって……そりゃ宿代の節約で同じ部屋に泊まったりしたことはあったが」
そんなことだってもう出来ないだろ……て、続ける言葉をそっと俺の唇に人差し指を添えて止めてきた。
「……なあ、ラグナ。オレは、この身体になってから、思い出したことがあったんだ」
「思い出したこと?」
「うむ……覚えているか? ラグナ。オレは子供の頃、いつも膝を抱えて泣いていたことを」
「そこまで酷かったわけでもないけどな」
内心動揺した。
俺がついさっきまで思い出してたことを、同じようにこいつが思い出してたなんて。そりゃ、出来過ぎってもんだろう。
「まずは、そうだな。ありがとう。ラグナ。お前がいたからこそ、オレは勇者になれた。まあ、結局はこのザマなんだが……」
「……」
『アルフはアルフだよ。どうしてもってんなら、みかえしてやりゃいいだろ? おとこでもゆうしゃになれんだってさ』
どこまで覚えているのか。これがコイツの終着点だっていうんなら、何とも皮肉なもんだなと思う。
「うむ、それでだな、思い出したことというのは、他でもない。お前に勇気づけられた日、オレは何故かはわからないが、涙を流したんだ。何でそんなにこみ上げるものがあったのか、オレがオレとして世界に初めて認められた……嬉し涙だと思っていた」
「よせってば」
「だが、それもどうやら違っていた様なんだ」
違う? いや、他に原因があるってんなら、まあ照れくさくなり過ぎないで済むんだが。
「何というかだな。その時、初めて後悔したんだ。オレが、女でなく男として生を受けたことに……世界で初めて好きになった存在と結ばれることは無いんだろうなとそう悟った時に」
「……待て。お前、何言おうとしてんだ」
「なあリュート。一つ提案があるんだが」
「提案なのかそれは!? 脅迫と人が呼んだりはしないか!」
いつの間にかマウントポジションとられてるし。
「イヤなのか?」
ここでうるうると瞳を滲ませないでほしい。
「勇者というのは因果なモノでな。どういう事情があるにせよ、子供は残さなくてはならない。かといっ
て、お前以外を受け入れるというのはどうにも」
「俺に抵抗は無いと申すか」
「リュート……」
クソ! コイツ筋力つええ!
※※※
そうして、流されるままに……犯されました。アルフの方は無駄に艶々してんのが腹立つ。
そして翌日。勇者の凱旋を祝うダンスパーティが開かれる。アルフがどうなったか知らない淑女方がアルフを探し求める姿は中々に不憫だ。なお、誘ってみたら「あぁ!?」と殺気立ったリアクションを返されること請け合いだ。ソースは俺。
「やあ麗しきレディ。どうか私とダンスを」
おっと、気が付けば一人の貴族のボンボンがアルフにダンスの申し込みと来た。
後ろにもずらずらと。こりゃ面倒そうだな……ま、アイツなら上手くやるだろうさ。
あんまり見ていて気分のいいものでもないので背中を向けて、会場を後にしようとする。
「申し訳ありません」
ところを腕を掴まれる。
「わたくし、このラグナ様の婚約者ですの」
「「「は……はぁああああああ!?!??!?」」」
おっとぉ事情を知っている勇者パーティの方々に気付かれたぁ。
「そ、そうでしたかそれはとんだ失礼を」
「おいぼっちゃん、もうちっと粘れよ。そんなんだからモテねえんだよおい!」
「さあラグナ……一緒に踊りましょう」
ああもう。どうなることやら。自棄になりながら、俺は親友とダンスを踊った。