転生したら教皇の孫だった
一人称視点の作品を書きたくなったので書きました。
出来は保証しません。
ーー僕は、死んだはずだ。
目が覚めた時、僕は自分が生きていることを疑問に思った。
今、僕は確かに生きている。だが、それはおかしいのだ。
何故なら、僕の……三波玲の最後の記憶は、自分の死を確信したところで終わっているからだ。
僕は確かに、大型トラックに跳ね飛ばされたはずだ。
『お兄ちゃん!!』
普段は無愛想な妹が必死に僕を呼ぶ声が、今でも耳に残っている。
奇跡的に生きていた可能性もあるが、もしそうなら、何故僕はなんの怪我もしてないんだ……?
僕は怪我が完治するまでずっと寝ていたとでも言うのか……?
僕が頭の中で状況を整理していると、自分が寝ていた部屋に鏡が置いてあることに気付いた。
僕はとりあえずその鏡に近づきーーそして、あることに気がついてしまった。
「……僕って、こんなに小さかったっけ?」
※ ※ ※
結論から言うと、僕はどうやら転生したらしい。
……というか、この状況を夢と転生以外で説明する術を僕は持っていない。
目の前には、共に食事をしている家族の姿。
彼らは僕の家族だけど、三波玲の家族ではない。
さっき、僕は自分が小さくなっていることに気付いた。小さくなったと言っても、若返ったわけではない。
黒だったはずの僕の髪は青色になっており、瞳の色は鮮やかな緑色だった。顔つきも以前とは全く違っている。
年齢は……あくまで自分で鏡を見ての感想だが、小学校に入っていてもおかしくないくらいだった。
そして、それらのことに気付いた後、僕はもう一つのことに気がついた。それは、記憶が二つあることだ。
僕には、三波玲として地球で暮らしていた記憶がある。これは当然だ。僕は地球人なのだから。
だが、僕にはもう一つの記憶があった。それはこの世界ーーランディアで生まれ、今目の前で食事をしている両親に育てられた記憶。
『お前は私の息子だ。そのことを誇りに思え』
『レイは優しい子ね。マリアにも見習わせたいわ』
『私の可愛い弟に触れることは、いくらお爺様でも許しません!』
そして、僕は確信した。
(そうか……。三波玲っていうのは、僕の前世なんだ……)
※ ※ ※
食事の後、僕はメイド服を着た女性に連れられて、自分の部屋に戻った。この女性の名前はメリダといい、僕が物心ついたときから、身の回りの世話をしてくれている人だ。
「メリダ、ありがとー」
礼を言うと、メリダは照れて「いえいえ」と返す。
こんな可愛いメイドがいるなんて、僕はかなり裕福な家庭に転生したんじゃないか? ……メイドが普通にいる時点で、裕福なのは確定か。
「それではレイ様。お勉強の時間になったらまた来ますから、それまで待っていてくださいね」
「はーい」
どうでもいいことだが、僕はまた《レイ》という名前らしい。喜ぶべきなのか? これは……。
※ ※ ※
それから暫く経って、僕は自分が転生した家のこと、そしてこの世界について色々と理解した。
まず、この世界についてだが、さっき語った通り、この世界はランディアという名前で、ランディアに存在する大陸の一つ、フォース大陸に僕たちは住んでいる。
フォース大陸には多くの国が存在するが、フォースの名の通り、大国と呼べる国は四つだけだ。
大国が四つの状態が何年も続いた結果、フォース大陸と呼ばれるようになったらしい。
そしてその四つの大国の内の一つ、アスタニア教皇国。この国に僕は住んでいる。
ここまではいいのだが……。
「僕の祖父が……教皇……?」
アスタニア教皇国はフォース大陸のたった四つの大国の一つであり、教皇はアスタニア教皇国のトップに立つ存在らしい。
そして、僕はその教皇の孫なのだという。
……出来れば平民が良かったと、心から思った。