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三、現実逃避からの現状確認

ここからロゼの奮闘が始まります!

たくさんの閲覧、お気に入りありがとうございます。感激しました!

 前回までのあらすじ~

 この世界は涙なしには語れない乙女ゲーム『ローゼス・ブルー』の世界みたい! 主人公は産まれたばかりでお昼寝中(ゼロ歳)よ、わたくしは主人公の叔母さんみたいなの! 十七年以内に祖国滅亡が決定しているわ!


 ――という妙にハイテンションでなければ直面できそうにない現実に直面してしまったロゼ(六歳)は数時間前のことを思い返しては書庫で項垂れていた。

 とんでもない状況に直面した時、人はまず信じたくないと防衛本能を働かせるものである。ロゼとて例に漏れず、アイリーシャという名の王女が他に存在していないか調べていたのだが。


(すぐに調べ終わりましたけどっ!)


 そもそも調べるまでもない状況である。なにしろ自分が奇跡の王女だった。

 けれどもう一つの希望を抱いていた。仮にアイリーシャが主人公であるとするならば、攻略対象たちも存在しているということ。彼らの中には当然身分ある家柄出身者も多く、産まれていればその名はエルレンテにも届いているはずだ。


 結果? 絶望具合に察してほしい。本格的にローゼス・ブルーの世界だと信じるしかなくなった。


(わたくしの脳内整理のためにもローゼス・ブルーについて復習しておく必要があるようね)


 ローゼス・ブルーことロゼブルは異世界ファンタジー系の乙女ゲーム。亡国の王女アイリーシャが主人公。彼女は愛する家族も国も失った。ゲームの始まりは敵国に囚われているか、売られようとしているか、あるいは決死の逃亡中か……


(ルートによって始まりが違うとはいえ初っ端から辛い!)


 ハンカチを握りしめる。思い出すだけで泣きそうだ。すべて本物のアイリーシャに変換されてしまうのでより辛い。

 そこから先は切なくも甘い乙女ゲーム的展開が繰り広げられるわけだが、遙か未来よりも問題は目先の未来。今後についてだ。


(エルレンテを亡ぼす国はわかっているのだから……)


 この大陸で『大国』という名に最も相応しい国――アルベリス帝国だ。軍事に力を入れており戦争で名と国土を広げた国である。


(けれど国家間には侵略禁止の条約が交わされている。かつてアルベリスが最盛期に大陸を蹂躙しまわったせいでね)


 それはロゼが産まれるより昔の出来事である。


(ほぼアルベリス牽制条約なのだから、これがある限りいくらアルベリスとはいえ他国を侵略することはできないはず……)


 けれどロゼブルでは、ロゼが知るゲームの世界では、エルレンテ王国はアルベリス帝国に亡ぼされていた。その事実だけが結果として描かれていた。


(条約なんて存在しなかった? ……いいえ、違うわね。正当な理由があればいい)


 それが嘘でも真実でも、正義がアルベリスにあればいい。たとえば単純な話、自国の王がエルレンテ関係者によって害されたとしよう。報復は正当性を持つのだから。

 現在アルベリスとは交流も盛んだ。アルベリスの産業は多岐にわたるので輸入品も多く仕入れている。市場で流通している商品の殆どをまかなっているといっても過言ではない。


(これから十七年のうちに何らかの事件が起こる……)


 歴史の授業のように考えてみれば戦争には理由が伴う。


(領土拡大のため進攻を? 今更エルレンテを領土に加えたところで、ちょっと面積が広くなる位なのに? エルレンテが怨みを買うのかもしれないし、逆もあり得る。……エルレンテが弱体化していたところを助けてくれて、後に吸収されたということもあるでしょう。これから財政破綻が起こらないとも言えないし……)


「ああもう、どれなの! どうして滅亡理由まで詳しく書いていなかったのかしら!?」


 書庫にはロゼの叫びが木霊する。けれど最も叫びたい心の内は――


「わたくしに出来ることはあるの?」


 いくら前世の記憶を所持していようが優れた特技があるわけでもない。特別なんて誇れるものは何もない人生だった。

 新しい人生では王女という身分にこそ産まれたけれど、それで亡びゆく国を救えるのならロゼブルなんてゲームは始まらないだろう。

 運命という不確かな言葉を信じるのは不安だとしても、あの瞬間に記憶を取り戻したことには理由があると信じたい。まだ手遅れにはなっていない。お前になら出来る、今ならまだ間に合うと、信じてもいいのだろうか。


(アルベリスの動向には常に気を配らなければ……いざという時に力を貸してもらえるよう、国内や国外にも友人を作っておくべきかしら。貴族だけではなくて――そう、お兄様たちにもアルベリスへの対応を進言しておかないと)


 ただの王女よりアルベリスと接する機会が圧倒的に多いのは兄たちだ。


 幸いにもその日の夜は兄妹そろっての晩餐会が催されていた。

 ロゼには二人の兄がいる。それぞれ多忙な日々を送っているが、月に一度は必ず兄妹の時間を設けることが義務付けられていた。それが開国からの習わしらしい。


「お前、私の娘にプロポーズしてくれたらしいですね」


 席に着くなり言われたのがこれだ。耳が早いのは次期国王として大切なことではあるが、どんな曲がった真実だとロゼは向かいの席に座る長兄レオナールに呆れた視線を送る。


「え、何々、何の話?」


 興味深そうに食いついたのは第二王子にして外交官を務めているレイナスだ。その明るい態度はまさに外交官向きと定評を集めている。


「ローゼリア様が泣いて娘を守ると宣言してくださったと、ミラが感激していましたよ」


「ああ、リーシャちゃんね。俺も会いに行ったけどかっわいーよなー」


「嫁にはやりません」


「はいはい、お父さんは将来が大変そうですねー」


 見慣れた兄たちの戯れも『ローゼス・ブルー』が開幕すれば全てが過去の出来事となってしまう。主人公はこんなに深い父の愛情も、家族の温もりも知らずにいた。


「――ゼ、ロゼ?」


 俯いていたせいでレオナールに心配をかけてしまったようだ。


「顔色が悪いようですが、具合でも? からかい過ぎたかな」


 優しい言葉も気遣うような視線も全部が涙の材料となる。泣いたところで失う時間を止められるわけもないのに。


(泣いたところで運命は待ってくれない。泣くな――泣くな!)


 膝の上で握りしめた掌は力を込める。それがロゼの決意だ。


「いいえ、ご心配をおかけしました。どこも問題ありませんわ!」


「……お前、本当にロゼか?」


 いぶかしんだのはレイナスだ。


「その通りですけれど、どこかおかしくて?」


「なんか、急に大人っぽくなったというか……」


 それはそうだ。こっちは前世の記憶を思い出したばかり、いつまでも子どもでいられるわけがない。


「女性というものはある日突然大人になるものなのです。今後のためにもご記憶ください」


「えっと、本当に六歳児とは思えませんよ」


 レオナールも素直に騙されてはくれなかった。


「お兄様ったら、わたくし正真正銘ローゼリア・エルレンテですけれど……お二人の恥ずかしい過去でも暴露してみせましょうか?」


 いくら不審がられてもそう主張するしかないのだ。ちょっと大人の自覚を持ったくらいで納得してもらおう。


「ところでお兄様方、最近何か――その、不穏な動きは見られまして?」


 何でもいい、国家滅亡に繋がる手がかりはないのか。

 しかし子どもらしくない質問に不審がられている気配がひしひしと伝わっている。


「わたくしも国勢については将来のために勉強しておくべきだと考えているのです」


 多少不審がられようと言い訳が苦しかろうと情報収集は早い方がいい。この身体にはまだまだ知識も情報も足りないのだから。

ロゼはまだ六歳、主人公にいたっては産まれたてゼロ歳。早く大きくなった彼らの姿を見ていただきたいです!

というわけで、出来る限りどんどん更新できるように頑張りますね。

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