第17話「森のクマさんハンド」
遅くなってしまい申し訳ありません。
色々ありまして更新できませんでしたが、ようやく復活出来ました。
長期間更新が無いにも関わらず、ブクマ登録を継続して頂いた方ありがとうございます。
えっ?消し忘れてただけ?
これからも気長にお付き合い頂ければ幸いです。
「アルバさん、本当にいいんですね?」
「はい。初めてがフムスさんなら怖くないですから。でもやさしくして下さいね。」
二人の手が自然と重なる。
「ではっ!」
「あぁ~意外と痛くな・・くなくなくない!
痛いっす!ちょっ、フムスさん、
あぎゃ、ま、まだ終わりませんか?
おふぅ、あ、なんだか気持よくなっ・・・てないよ!
あっ、あっ・・・アメージング!!」
落ち着くんだ、俺。
世界中の俺を待っている女性達よ、これはアーッではないので安
心して欲しい。
えっ?別にそっちでも問題ない?
むしろそっちがいい?!
砕けてしまった長年連れ添った恋人(右手)を治療してもらうために、精霊達にお願いして体の中からわっさぁ~ってしてもらってるだけだから。
魔法についても少し教えてもらったけど、大きく分けて【精霊魔法】と【神魔法】の二つがあるらしい。
フムスさんのは当然【精霊魔法】で土の精霊達にお願いして魔法を行使している。土の精霊は大抵どこにでも居るようで、使用を制限されることは少ないらしい。
水の精霊は穏やかな性格で川や湖に、火の精霊は喧嘩っ早い性格で火山に、風の精霊は気まぐれな性格で風の吹く場所に、光と闇の精霊はその名の通り光と闇と共に。
あくまでそういった場所に多いというだけで、精霊魔法の使い手に付いていく精霊もいるらしい。
フムスさんも仲のいい土精霊と小さいころから一緒に暮らしているそうだ。
「ふぅ・・・これで大丈夫だと思います。動かしてみて下さい。」
「う~む、治ってますね!バッキバキだったのにすごいですね~魔法って。俺も使いたいなぁ~フムスさんの才能ちょこっと分けてほしいですよ~」
「分けれるならいいんですけどね。アルバさんには名前を貰ってますから、何かお返ししないと。」
『【魂の友】の効果により、精霊魔法(土)が使用可能になりました。』
何気なく言った一言だったんだけどね~あざっす。
オ○モダチに同意が得られれば、そのスキルが使えるようになるっぽいな。
「アルバさん、少し眠らなくても大丈夫ですか?かなり辛そうですけど。」
そういえばアライブの世界に来てから、ゆっくり寝れてないな。
早いとこシェーネスさん達と合流したい所だけど、このままでは倒れてしまうな。
「そうですね、確かに少し眠ったほうがよさそうなので、場所をお借りしてもいいですか?」
「もちろんですよ、すぐに準備しますね。」
そう言ってフムスさんは奥の部屋へ。
『なんとか切り抜けたみたいだな。まぁ面白かったからいいか!俺からの餞別だ、受け取れっ!』
そう言ってクマナベさんが毛深いものを投げてきましたよ。
・・・熊の手ですね。
「・・・クッ、クマナベさん!何で手を切り落としてるんですか!?ってかこの手をどうしろと!?鍋の具ですか?!食べていいんすか!?」
『落ち付け、そりゃ俺の手じゃないわ!俺が使ってた装備品の一つで【森のクマさんハンド】だ。とりあえず右手にはめてみろ。』
確かにクマナベさんの手は無事だわ。
ってか【森のクマさんハンド】って、名前はどうかと思うよ。
まぁ言われた通りに右手に付けますけどね。
すると毛深い熊の手は縮んでいき、先ほど治療された潤いばっちしの恋人の手に戻っていた。
「あれっ?なんか消えちゃいましたよ??」
『おーし、無事認証出来たな。ダメだったら右手吹き飛んでたけど、成功してよかったな!』
ちょっ!吹き飛ぶってどういう事だよ!
せっかく治療してもらった恋人に別れを告げるとこだったじゃねーか!
「そ、そういう事は先に・・・」
『んじゃ次に、【開けクマ】って言ってみろ。』
いや、いいんですけどね。
どうせ俺の訴えなんて聞いてもらえませんよ。
「・・・失敗したらどうなるんですか?」
『・・・安心しろ。もう危険はない・・・はず。』
いや、その反応絶対なんかあるだろ!
もういいよ、どうせ拒否権なんて俺には無いのさ。
「・・・【開けクマ】!」
すると目の前に1メートルほどの熊の頭部が現れ、大きく口を開けた。
口の中には幻想的な森が広がっており、中央には綺麗な泉が見える。そのほとりには、様々な武具や物資が積んであるようだ。
『よかった、よかった。無事に開いたな。』
アホみたいに口を開けて眺めていたが、クマナベさんの声で現実に戻る。
「クマナベさん、結局これ何なんですか?」
『これはな、別次元にある森に繋がる門だ。』
クマナベさんによる【森のクマさんハンド】についての説明が始まった。
『簡単に言えば倉庫みたいなもんだ。俺達パーティの装備品やら食糧、回復薬やらが泉のとこに置いてあるから好きに使えや。熊の口に手を突っ込んで取りだすことが出来る。試しに何か取ってみろ。』
「・・・噛まれたりしません?」
『門を閉じる言葉を言わない限り大丈夫だ。ビビってないでさっさとやれ!』
そんな怒らなくてもいいじゃないのよ。
わかりましたよ、やりますよ、やればいいんでしょ。
途中で閉じて右腕無くなったらどうしよう・・・
でも泉まで結構距離あるけど、取れるんですかい?
「それじゃ試しにあの巻物を取ってみます。」
ビビりながら熊の口に手を突っ込んだ。
『うぉぇぇ』
「うおっ!クマが喋った!?」
慌てて手を引っ込める。
『あーそういえば時々声を上げるが、害は無いから気にすんな。』
「なんか苦しそうな声だったんですけど、本当に大丈夫なんですか?」
『気・に・す・ん・な!』
「・・・イエッサー!」
気を取り直して、再度手を突っ込む。
すると取り出したい巻物へ自然と距離が近づき掴む事が出来た。
取り出す時に、オエッと聞こえたがもう気にしないでおこう。
『よーし、無事に出来たな。最後に門を閉じる言葉は【アディオス・クマ門】だ!』
気にしちゃダメだ!気にしちゃダメだ!
「・・・【アディオス・クマ門】」
熊の顔が消える時、涙目だったのは気のせいだ・・・
「アルバさん、寝床の準備が出来ました。こちらへどうぞ。」
丁度フムスさんが戻って来たので、ここまでにしておこう。
『俺の転生は起きてからでいいぞ。ゆっくり休んでこいや。』
クマナベさんからも優しい言葉を頂けたので、ひとまず寝よう。
きっと可愛い女神様が夢の中で癒してくれるはずだから。




