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第15話「熊鍋」

 『おい、小僧。』


 「は、はいっ!何でしょうかクマさん?!」


 急に声をかけられてビビってしまったぜ。


 『クマさんだぁ?俺はクマナベって名前があるんだ。間違えんなよ!』


 「はいっ!クマナベさんですね!美味しそうな名前ですね!」


 あ、余計なこと言ってしまった・・・


 『なにぃ!』


 「ひぃっ、ご、ごめんなさい!」


 『照れるじゃねぇか!』


 あ、デレた。

 別に可愛くもなんともないし、むしろ怖いけど。

 美味しそうって言われて照れるのもどうかと思うけど、機嫌が良くなるならいいか。


 「そ、それでクマナベさん。何かご用でしょうか?」


 『ん~まぁあれだ、ゼルバの奴は満足して逝ったのか?』


 「えっ?」


 予想外の質問に一瞬戸惑ったが、俺の命の恩人の事だ。

 そのゼルバさんを気にかけるってことは、仲間だったんだろうなと思う。


 「・・・はい。俺をこの世界に導けた事で満足だと言ってくれました。最後に『また会おう』と・・・」


 思い出したらちょっと寂しい気持ちになったよ。


 『そうか、あいつらしいな・・・』


 少し寂しそうな表情をしながらクマナベさんはそう呟いた。


 「クマナべさんはゼルバさんの仲間だったんですか?」


 『ん?あ~仲間といえば仲間だな。』


 筋肉とクマがどういう関係なのか気になるし、フムスさんは相変わらずだから色々と聞いてみようかね。


 「よかったらお二人のこと教えて頂けませんか?」


 『そうだな・・・ゼルバの奴は【筋肉鍋】ってパーティーのリーダーだったんだよ。俺はそのパーティーの料理番だった。俺はよぉ、見た目通りひ弱で戦闘はからっきしだったから、よく守ってもらってたぜ。』


 見た感じバリバリの戦闘狂なんですが。

 ってか【筋肉鍋】って名前はゼルバさんとクマナベさんから採ってるだろ。

 他のメンバーもやっぱり筋肉なんだろうか・・・


 『俺以外の4人が戦闘、俺は料理やら荷物持ちやら雑用をやってたなぁ。俺達【筋肉鍋】のメンバー全員、憑代志願者だからな。そのうち他の奴らとも会えるだろう。皆いい奴ばかりだ・・・今回の件は女神様からある程度は聞いている。負い目を感じる必要なんてないぞ。』


 「ありがとう・・・ございます。皆さんの、憑代志願者となった志に応えられるように頑張ります!」


 見た目はあれだけど、優しいクマさんだ。

 もし森の中で会ったら、間違いなく逃げるけど。


 『それにしてもこの【ステータス】だっけか?便利なもんだな。女神様に教えてもらって見てみたら、自身の情報やらスキルやら色々表示されて、皆で盛り上がっちまったぜ!』


 「えと、この世界ではステータス表示とか無いんですか?自分のスキルとか熟練度どうやって確認してたんですか?」


 『そんなもん、日々の積み重ねで自分で判断するしかねーだろ。スキルってのも、要は自分が出来るかどうかだろうが。』


 まぁそうだよね。

 クマナベさんと話してこの世界の常識?も多少は分かってきたかな。


 俺が初めて使った【蛮勇】のスキルも、勇気を振り絞れなかったからゼルバさんがスキルとして魂に刻んで、奮い立たせてくれたようだ。


 分かりやすく言うと、小学生の頃に女の子のスカートめくりをしようとして、勇気を振り絞っただろう?

 俺も初陣の時に、その頃の事を思い出して挑んでいれば自然と【蛮勇】のスキルを使った状態になっていたってことさ。


 無意識で出来ない場合は、俺はスキルとして発動することも出来る。だがこの世界の人々はステータスやスキルといった概念が無いので、自分と向き合うしかない。


 他の【遠視】【短剣術】【弓術】とかのスキルも別に意識しなくても戦えたし、履歴書に書く資格みたいな感じで思っておこう。


 また、残念ながらゼルバさんから引き継いだスキルの中にも必殺技的なスキル無かった。熟練度を上げれば覚えるのか、自身の技を昇華させていくのかはそのうち分かるだろう。


 『ゼルバの奴はこのステータスの理解が早かったからな。だから一番最初にお前の力になりたいと言っていた。希望通りになったし、お前も生きているから奴も満足だろうな。』


 脳筋かと思ってました。ごめんないさい。

 そして、本当にありがとうございました。


 「クマナベさん、俺に何か力になれる事はありませんか?」


 『あ~【転生】させる前に憂いをってやつか。さっき鍋も食ったし、別に無いぞ!』


 「な、鍋ですか?確かに美味しそうに食べてましたけど・・・」


 俺ってば何も役に立てないな・・・


 『そんな顔するな。俺達、憑代志願者は女神様から報酬を貰っているからな。俺の場合は、神界の鍋を食わせてもらったから満足だぞ。どうしてもってんなら、精一杯生きて、美味い鍋食って人生楽しめ。それが一番だ!』


 「・・・わかりました。必ずハーレム作って精一杯出しきります!」


 『・・・まぁ、それでいいや。そのハーレムの一人目があのゴブリンか?しかもデュークとなるとあっちも手強そうだな。俺にはその気は無いからわからんが、人それぞれだし・・・頑張れや!』


 「いえ、俺はきっとノーマルだと思うんですが、最近わからなくって・・・ってか、クマナベさんはゴブリンデューク知ってるんですか?さっき名前付けてあげたら急に光りだして、進化しちゃったみたいなんですけど、反応無くって困ってるんですよ。どうしたらいいですかね?」


 『ばっ!ばかやろう!名前付けるってことは、眷族にするって事だぞ!』


 この場合の眷属って~従者的な感じ?なら問題なくね?


 「え?それなら襲われる心配もないですよね?」


 『いや、普通眷属にしようとした際には、主人としての力量を示すため戦う事になるぞ・・・あ、ゴブリンデューク動き出したな。まぁ気張って逝ってこいや。終わったら【転生】してくれ~観戦しとるから。』


 うぉい!

 【魂の友】って何だったんだよ!

 あれか強敵と書いて友と呼ぶってやつか!


 「・・・アルバさん、ヤりましょうか?」


 フムスさんの声が妙に殺気立ってる気がするんですけど。

 何をヤルんでしょうか?


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