プロローグ
「このキャラクターを消去しますか?」Yes/No
もう何度目になるか覚えていない。ただひたすら同じ作業を繰り返している。
最近サービスが開始されたばかりのオンラインゲーム、【アライブ】のキャラクターメイキング画面だ。
剣と魔法のファンタジー世界を舞台に、全世界でサービス開始されたこのゲームは、各国の言葉を自動で翻訳してくれる。日本語すらきちんと使えていない俺に優しいシステムだ。
ゲーム内には無数の職業があり、キャラクター作成時に回答するアンケートによって決まってしまう。
ありふれた〈剣士〉や〈魔法使い〉はあって当然なのだが、〈あれを作る人〉などよくわらかない職業もあった。
もちろん後から転職は可能らしいが、まだ情報が少ない為ほとんどのプレイヤーは何度もキャラクターを作成しては、良さそうな職業になるまで《消去》しているようだ。
俺もここ1時間ほど《消去》し続けているのだが、出た職業としては〈結婚詐欺師〉〈焼き鳥の串〉〈ハムスター係〉〈パソコンのネジ〉などなど…まともな職業が一向に出ない。
というか〈パソコンのネジ〉ってなんだよ!確かに大事なパーツだけどさ、剣と魔法はどこいったんだよ!
普通に〈剣士〉とかでいいからさ…
そんな感じで《消去》するために〈Yes〉を選択したのだか、ゲーム画面に美しい女神様と変な文字が…温度感高めな声で、
「あなたはキャラクターの命をなんだと思っているのですか?」
…はいっ?
バグかな〜と思いながら、再起動させようとしても反応がない。コンセントを抜いても画面消えないんですけど、どこに問い合わせしたらいいですかね?って思っていたら、画面の女神様が鬼の形相でこっちを見ているではありませんか!
「ちょっとコッチにいらっしゃい」
と声が聞こえたら、ディスプレイから白く細っそりとした女性の腕らしきものが出てきて、ガシッと俺の頭を鷲掴み。そのままディスプレイの中に引きずり込まれる!っと思った瞬間、何故か普段からPCの上に置いてある某冒険家モデルのサバイバルナイフを抜き放ち、怪しい腕に突き刺した。
「ギィヤャャャィヤー!」
女性の悲痛な叫び声が、脳内に響き渡る。
え?かわいそう?
だって貞○みたいで怖かったし、正当防衛だと思います、はい。
ディスプレイの女神様は涙目でこっちを見ている。
本当に《消去》しますか?Yes/No
という問い掛けに、少し迷ったフリをしつつYesを選択。
その瞬間ディスプレイから眩い光が…
視界が少しずつ戻ってきたかと思ったら、再度アイアンクローされちゃったので、右手に持ったままだったナイフでグサリ。
「マッダァァァー!」
変な叫び声がして完全に視界が戻ってきた時には、目の前に涙目で包帯巻いてる女神様が居ましたよっと。