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キミのとなりの青春事情  作者: 乾 碧
Episode01~千都恋~
7/19

デート #2


 「あ……………………」


 見つけた。会長だ。|恋だ。


 ……制、服……?


 駅の方向からではなく、喫茶店から出てきた恋。ちょっとだけ期待をしていた(かず)は裏切られた気分だ。


 どうして制服なのだろうか。学校があるわけではない。日曜日だ。いくら生徒会長といえ、学園の顔といえども、休日に、わざわざ制服を着る必要はどこにもない。無意味だ。


 「遅れました」


 時間的に問題はない。だが、恋を待たせてしまった、先輩を待たせてしまったというそれは、謝らないといけないことだ。


 「大丈夫だ。まだ時間には早いからな」

 「いつからいたんですか? 」

 「九時だ」

 「………………………………はやく、ないですか? 」


 和の予想をはるかに超えていた。一時間前。


 「こんなにはやく着くつもりは、全くなかったんだがな」

 「さすがにびっくりですよ」


 和と恋の間に、笑いが生まれる。


 「一つ、質問いいですか? 」


 モヤモヤ。疑問は解消しておかないと。


 「どうしたんだ? 」

 「なんで、制服なんですか? 」

 「特に理由はないぞ」

 「………………………………」

 「まぁ、強いて一つ挙げるなら」


 ……なら……?


 「これが楽だからだ」

 「それはそうですけど」


 楽。それは正しい。どんな服を着ていこうか、という風に、頭を悩ませる必要がない。和はあんまり服装に気にしないが、女子ならば、そうはいかないだろう。ある程度の身なりをしたいと思うものではないだろうか。男子である和には分からないが。


 「もう行きますか? 」


 恋に任せる。


 「そうだな。そうしようか」


 出発だ。和は恋の隣へ。並んでみる。





 ……ふむ……。


 目的地に向かって足を前に。隣は和がいる。恋愛部の、同じメンバーである。後輩である。


 だが、知り合ったのは、数日前だ。それなのに、今、恋の隣に和がいる。一緒にこうして出掛けている。


 ……不思議だな……。


 他人と出掛ける。昔を思い出してみても、恋の記憶の中にはあまりない。一人か好きだったからだ。


 「なぁ、涼風(すすかぜ)

 「はい? 」

 「今日、キミの予定はこれだけか? 」

 「えぇ、まぁ……………………」

 「そうか」


 ……ならば……。


 ある程度、和を拘束することが可能だ。特に意味はない。時間があることにこしたことはない。だから、確認したのだ。それだけのことだ。


 「それだけですか? 」

 「あぁ」


 恋の予定も、今日はこれだけだ。時計を買いに行くだけ。おそらく、一時間か、二時間。それくらいの時間で終わってしまうだろう。


 ……今はいいか……。


 恋は考えることをやめる。今する必要はない。その時でいいだろう。

 




 (あい)は、携帯を取り出しコールする。画面に映し出されている電話相手の名前は、もちろん和だ。確認。確認。


 ワンコール。繋がった。起きている。寝てるわけではなかった。


 「もしもし、愛っす」

 「なんだ? 」

 「今、和お兄ちゃんの家の前にいるんすけど…………………………………………」

 「悪い、外だ」

 「そうっすか……」


 電話が繋がった時点で、うすうす気付いていた。残念。せっかく遊ぼうと思ったのに。


 「なんか用事か? 」

 「いや、いつも通りっすよ。暇つぶしっす」


 一人でいるより、和といたい。昔みたいに。そこに理由なんてない。いたい。それだけ。


 「悪いな」

 「全然大丈夫っすよ」


 そういう時だってある。一々落ち込んでいたらキリがない。


 「誰からの電話だ? 」


 ……あれ……?


 和とは違う声が聞こえてくる。


 「愛ですよ」

 「そうか」


 恋だ。


 ……なんで会長といるんっすか? 和お兄ちゃん……。


 不意だった。まさか、和と恋が一緒にいるとは思っていなかった。


 いつ? その約束がされたのはいつだ? 愛は分からない。記憶にない。


 ……自分が部室に行く前っすか……?


 「真李(まり)ちゃんは、そこにいるっすか? 」

 「いないぞ? どうしてだ? 」

 「いや、なんでもないっす。気にしないでほしいっす」


 ……ということは……。


 真李が来る前、になるだろうか。もし、真李がいる時に、自分がいる時にその話がされていたなら、気付かないわけがないのだ。同じ部屋にいたのだから。


 「それじゃ、戻ってきたら連絡してもらっていいっすか? 和お兄ちゃん」

 「あぁ、分かった」

 「お願いするっす」


 ……ふぅ、はぁ……。


 ちょっとショック。その場所に自分がいないことに。愛も行きたかった。どこに、何の用事ででかけたのかは知らないが、誘ってくれても良かったのではないか。


 ……後であたしとも遊んでもらうっすからね……。


 これは罰だ。愛ではなく恋を選んだ罰。幼馴染みをないがしろにした罰なのだ。拒否権はない。もう決めたこと。

 

 

 

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