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キミのとなりの青春事情  作者: 乾 碧
Episode01~千都恋~
6/19

デート #1


 「おっと……」


 そろそろ時間。ゆっくりとしている場合ではない。


 生徒会長を、(れん)を待たせるわけにはいかない。寝ていただけで部活に入れさせられてしまったのだ。もし、遅刻なんてしてしまったら。どんな罰が待っているのだろう。怖い。


 「もしかして……ただ時間に間に合わせるだけじゃダメか? 」


 ふと、そんなことを思ってしまった。


 恋が遅れてくることは、まず考えられない。時間を決めたのは恋だ。その本人が遅れるなんてことがあってはならない。


 早めに着くことが予想される。ということは、(かず)はそれよりも早く、集合場所に着いておく必要がある。


 「仕方ない……」


 何せ、相手は生徒会長である。恋である。





 「ふむ……………………」


 予定していた時刻。それは、十時。だがしかし、集合場所とした駅前、その駅の正面に設置されている大時計、そして、恋が身につけている腕時計の針は、丁度九時を指したところである。


 どう考えてもはやい。はやすぎる。


 「思いのほか、はやく着いてしまった」


 どうしようか。することがない。当然、和はまだ来ていない。話し相手もいない。一時間待ちぼうけ。和を待つことしかすることがない。


 週末。日曜日。指定したのは恋だ。だが、提案をしたのは和。いい感じ。平等さがある。


 ……とりあえず……。


 時間を潰すことを考えないと。外で待っているのも、少し辛い。春になってもう四月の半ばといえ、風が吹けばまだ寒さが残っている。もうちょっと、暖かくなってほしい。寒いのはあまり好きではない。


 「連絡しておくか……………………」


 もう着いてしまったということを。そうすれば、早めに来てくれる可能性がある。遠回しに言えば。和なら、あるかもしれない。


 「あ………………………………………………」


 ……なんてこった……。


 知らない。和の電話番号を。メールアドレスを。


 これでは連絡する手段がない。


 「困った……………………」





 一段飛ばし、二弾飛ばしで、階段を駆け上がる。その先には、和の部屋がある。


 同じ寮が良かった。もっと近くにいたかった。でも、無理だった。だから、こうして、時間をみて和の部屋に。


 「ついたぁっ! 」


 最後の一段。(あい)は跳躍する。


 今日は日曜日。休みの日。和の部屋に行くしかない。自分の部屋にいても暇だ。それではいけない。


 「和お兄ちゃん、まだ寝てるんすかねぇ」


 どうだろう。基本的に、早起きではない。幼馴染みなのだから、それくらいのことは分かっている。が、一年のブランクがあった。その差。この一年で、和は変わっているかもしれない。


 「昔みたいにしたいっす」


 追いかけた意味。何のために和と同じ、この思蓮(しれん)学園にやってきたのか。忘れてはいけない。


 「あれ……? 本当に寝てるっすか? 」


 チャイムを鳴らして見た。反応が帰ってこない。いつもなら、すぐに出てきてくれる。一向に、和は姿を現さない。物音一つ聞こえない。


 「んー………………………………」


 困った。寝ているのならそれでいい。起きるまで待てばいい話だ。


 もし、違ったら? 部屋にいなかったら?


 ……確認するっす……。


 電話をかけよう。



 「ついた……………………」


 予定より十五分は早い到着。乗り換えに、少々時間を使ってしまった。だが、和は、はやく着くことが出来た。


 「会長どこだ? 」


 この辺の地理に詳しくはない。この場所に決めたのは恋だ。和はそれに従ったまで。恋がいないとどうにもならない。


 「メアド知らないしなぁ……………………」


 ……失態だった……。


 電話番号も知らない。これでは、恋と連絡を取ることができない。聞いておくのをすっかり忘れてしまっていた。


 「時計の前っていってもいないし……………………」


 まだ来てない。その確率はかなり低いと、和は思う。恋のことを何も知らないに等しいが。


 どこかで時間を潰しているのかもしれない。


 ……どうしようか……。


 特段、慌てるようなことでもないだろう。もう少しだけ待ってみようと思う。





 「あったまる……」


 コーヒーを一杯。甘くはなく苦い。恋はブラックを好む。


 「そろそろか」


 十時前。コーヒーも飲み終わった。喫茶店で時間を潰す理由がなくなった。集合場所に戻ろう。そろそろ和も来ている頃だろう。連絡先を知っていれば逐一聞くことが出来るが、知らないので、そういうことも出来ない。


 ……遅れたりはしないだろうな……。


 そういう性格には見えない。あの無茶振りにほとんど文句を言っていないのだ。ルーズではないだろう。


 窓際の席。丁度、集合場所の大時計を見ることができる位置。そこに視線を向ける。


 もう到着しているかな?


 「見つけた」


 いた。和だ。十五分前だ。何も問題ない。ばっちりだ。


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