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キミのとなりの青春事情  作者: 乾 碧
Prologue〜恋愛部〜
4/19

テンション上げていきましょー!

 助けを求めたが、断られてしまった。


 ……はぁ……。


 真李(まり)と知り合ったのは、当然のことながら、一年生が入学してくるその日。隣の部屋だからということで挨拶に来てくれたことを、(かず)は覚えている。


 ここまで懐かれる、とは思っていなかった。別に、何も特別なことはしていない。というか、何もしていない。普通に、挨拶を交わした記憶しかない。それなのに、次の日になってみれば、こうなっていた。


 それだけなら問題ないのだけど、色々、和には厄介事がある。


 ……残りのメンバー……。


 適当に決めたメンバー。(れん)の気まぐれによって選ばれた部員。知り合いがいることはいいことだ。関係性を一から築かなくてもいいから。


 「気にしなくていい…………、か? 」

 「どうしたのですか? 和先輩」

 「なんでもない。お前は、そろそろ俺から離れろ」

 「むぅー、人のことを、お前、なんて呼びつけるのはいけないことなんですよぅ? 分かってますか? 和先輩」

 「分かったから、分かったから離れてくれ」


 可愛く頬を膨らませながら、和に身体を預けてくる真李。いけない。とてもいけない。色々いけない。


 「まぁ、御神楽(みかぐら)。見てるこっちも楽しいが、それくらいにしておけ」

 「……………………分かりました。会長さんに言われたら仕方ないです……」


 ……おいこら……。


 仲の良さでいえば、恋より和の方が上だ。それなのに、恋の言う事を聞く。会長だから。いってしまえばそうなってしまうが。


 ……これはこれは……。


 やはり、そんなものである。まだまだ付き合いは短いのだ。





 

 「ところで……………………」


 寂しそうな表情を全面に表しながら、真李は、部室をキョロキョロと見渡してみる。


 「会長と」


 視線を恋に。


 「和先輩は」


 そして、和に。


 「何をしていたのですか? 」

 「読書だ」

 「特になにも」


 ……ふむふむ……。


 「ということは、暇だった、ということですね? 」


 部室前に立った時、中から声が聞こえてはこなかった。それぞれが、何かをしていた。二人の言葉から、暇であったということが簡単に分かる。


 「うーん……………………」


 何をすればいいのだろう。帰ってもいいのかな。収穫はあった。和がいた。真李にとってみれば、それは、とても大きいことだ。いるいないで、真李のモチベーションが変化する。当然、いるほうがいい。いるほうが楽しむことができる。間違いなく。


 「会長さん、会長さん」

 「どうしたんだ? 」

 「全員で、この恋愛部のメンバーは何人ですか? 」

 「七人だ」


 ……ふむふむ……。


 「いや。涼風(すずかぜ)がいるから、八人だな」

 「ありがとうございますっ」


 奇数より、偶数。


 「人数がどうかしたのか? 」

 「いえいえ」


 確認したかっただけである。





 「とっとっとっ……………………っしょっと……」


 跳ねるように、階段を登っていく。それは、気分が高揚していることの表れ。期待の表れ。


 「れんあいぶー、れんあいぶーっ! んもー、もうちょっと分かりやすいところに置いといてもらわないと困っちゃう」


 自分の名前。大神(おおがみ)(あい)と書かれている封筒を持ち、愛は三階にむかう。


 「到着だーーーー! 」


 次はどっちだ? 左? 右? どっちにいけば、恋愛部の部室があるのだろう。部活棟に足を運んだことがないから分からない。


 「気にしない、気にしない」


 外からこの建物を見た時、それほど大きい建物だとは思わなかった。迷うことはないだろう。すぐに部室を見つけられると思う。


 「うふふ」


 ……テンション上がってきた……。




 「たのもぉぉぉぉぉぉ」


 ドォン!


 ……危ない……。


 恋は聞こえていた。その来客の足音を。だから、扉を開けようと腰を上げた。その動作は必要がなかった。恋が思っていたよりもはやく、そして勢いよく、部室の扉が開かれたからだ。


 どう考えても、相談者ではない。相談者であるものが、このように扉を叩くわけがない。それなりの態度というものがあるだろう。


 「名前は? 」

 「大神愛っす! 」


 ……なんというか……。


 賑やかなのが来た。恋は、頭を抱えたくなってしまう。


 ……はぁ……。


 心の中だけにしておく。表には出さない。

 自分と違うもの。そういうのも必要であろう。


 「んー、みなさん、静かっすねぇ…………………………………………って、あれ? あれあれ? 」


 愛が何かに気付く。


 ……今度はなんだ……?


 「和お兄ちゃんじゃないっすかー! 」

 「お前は昔からうるさい。もっと静かにだなぁ…………」


 ……また友達か……。


 「それは元気ってことすねー。お褒めの言葉として、受け取っておくっすよー」

 「……………………はぁ」

 「はぁ……………………」


 和の後、無意識の内に、恋もためいきをついてしまった。


 「会長さん? 」

 「いや、なんでもない」


 真李とは違う感覚。同じ後輩で、同じ知り合い。だが、ここまでも違う。


 元気で活発、という点では同じだろう。


 ……御神楽は……。


 巨乳だ。


 ……大神は……。


 貧乳だ。


 胸囲の格差社会。当然だが、恋は真李に負けている。二つも学年が下の真李に負けている。

 視線を下に。自分のものに。


 ……ふむ……。


 やめておこう。悲しくなってしまう。


 

 


 

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