にかいめ #2
「………………………………………………………………」
……また……?
カタカタカタカタ……。カチッ。
カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ…………。カチッ、カチッ。
寮の一室。部屋の電気は消されているが、その部屋は全く暗くない。ちょっとだけ明るい。何故なら、パソコンのディスプレイが部屋を明るくさせているからだ。それは一つだけではない。何個も、何個も。
「…………………………………………」
カタカタカタ。そのパソコンを動かしているのは一人の少女、柊泉乃々夏である。
「…………………………………………?? 」
その画面に映し出されているのは、学園の下駄箱だ。丁度、乃々夏の場所が映し出されている。乃々夏がそういう風に操作しているのだけど。
その下駄箱に、乃々夏の下駄箱に、他人が何かを入れている。そんな様子が、監視カメラを通して乃々夏に伝わる。
また、と言ったのはこれだ。二回目なのだ。
「……………………………………っ」
面倒だけど、身体を動かす。一回目に来たそれを探すために。どこにしまっていただろうか。
「いたい……………………」
散らかってる部屋。片付けがされていない。無理矢理移動しようとしたからか、ちょっとだけ足を捻ってしまった。これだから、動きたくない。ずっと、パソコンの前に座っていたい。
「うー……………………………………」
見つからない。
……どこ……?
「………………………………………………ふぅ」
やめておく。さっきまでいた場所に戻る。
「恋愛部…………」
確か、そんな名前だったような気がする。
今回も、そこからの連絡だろう。下駄箱に入れられていた封筒に生徒会の判子が押されていたことも覚えている。
……どうして……?
どうして、部活の勧誘だと思われるこの封筒にそんな印が入っている?
どうして、二回も?
乃々夏には分からない。
一回でよかったのではないだろうか。無視をしている乃々夏が悪い可能性もあるけれども。
「気になる……………………」
〇
……なんか疲れたな……。
珍しく、帰りたいと思ってしまった。いけない、いけない。恋は気持ちを立て直す。
……後、三人だ……。
三人。
アリス・ハナン・フーリア。
柊泉乃々夏。
松原莉依渚
の、三人である。三人が来てくれれば、全員揃うことになる。
……今週中には……。
揃って欲しいと思う。そのための準備はした。もう一度、封筒をそれぞれに届けた。
集まってほしいとは思うが、集まらない理由も分かる。突然すぎるというか、意味不明すぎる。あの場で大体的に伝えたとしても、人選については何も触れてない。適当だからだ。そこに、理由なんてないからだ。だから、こうした今も、全員揃ってない。生徒会長という人望だけでは集まらなかったということになる。
……だが……。
来てくれる人は来た。だから、あと少し、あと少し頑張らないと。
部活として活動するには何も問題ない。
だが、やはり、全員が良い。面識がなくとも、こちらからの一方的な要望だったとしても、全員が良い。
部活としての付き合い、そして、それ以外でも。人数は多いほうがいいとは思う。多さは重要だ。
「ふぅ……………………」
教室を出、恋愛部の部室に向かう。考えることも続ける。
付き合い方は、本当に考えていかないといけない。ここで躓いてしまったら影響が出てしまう。第三者の恋愛相談に乗ることに。だから、喧嘩などをせず、仲良く、相談者を迎えいれないといけない。
……葛城のことは……。
始まりからダメだった。失敗してしまった。当然、関係を改善することが求められる。
……難しいな……。
こちらの問題ではない。詩愛の問題だ。あの態度、言動。あぁいう人物だと理解するしかないが、突っかかってくるのは詩愛だ。
「よし……っ! 」
今日も今日とて、部室に向かう。皆が待っている恋愛部の部室に向かう。生徒会の仕事はちょっと置いておこう。
〇
「お疲れ様ー、涼風君」
「今日もおわったなー」
「明日はちゃんと宿題やってきてよ? 涼風君」
「分かってる、分かってる」
授業も終わり、HRも終わる。そうすると、途端に、教室内は一気に喧騒に包まれる。あっちこっちで和と沙織がしているような会話が聞こえてくる。
「……………………んあ? 」
「涼風君? どうかしたの? 」
「いや、ちょっとな……」
……愛と真李ちゃん……?
伸びをして、座りっぱなしで、固まった腰を伸ばす。ふと、教室の後ろの方の入口に目をやると、何故かそこに愛と真李の姿があった。
キョロキョロ。誰を探しているのか、一目瞭然である。相手は当然、和である。




