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キミのとなりの青春事情  作者: 乾 碧
Episode01~千都恋~
13/19

幼馴染み


 「はぁ……………………」


 何分待っても誰もこない。つまらない。生徒会長が、(れん)がいないのであれば、わざわざ詩愛(しいな)がこの恋愛部の部室に足を運んだ意味がない。


 無駄なことをしてしまった。時間がもったいない。


 「あたし、帰る」

 「え……………………? 帰るのかよ」

 「なんか文句ある? あっても言わせないけど」

 「ないが……………………」


 ここまで。鞄を持ち、外に向かう。さっさと帰ろう。


 「じゃぁ、また」


 明日。明日ここに来るかどうかは分からないが。一回は、恋と話をしておきたい。詩愛を指名した理由。恋愛部のメンバーにしようと思った理由を聞いておきたい。


 「あぁ。また明日」


 ……はぁ……。


 変な繋がりが出来てしまったような気がする。あまり作りたくはない。自分のためになる、そういう人間関係なら作りたいと思うが、それを、この高校で作れるとは思わない。


 親が学園長をしているというだけで、この学園に通っていることに、自分の意思はない。それが問題なのかもしれないが。





 たったったー。


 いつも通り、軽快に、元気よく階段を駆け上がる。向かう先は、当然、恋愛部。(かず)がいる、幼馴染みがいる部室である。


 「あれ……………………? 」


 一人の生徒とすれ違う。見たことのない生徒。一つ年上の女の子。


 (あい)が向かっているのは恋愛部。今すれ違った女の子は、その恋愛部がある方向から来た。少し頬を膨らませていた。イライラしていた。愛はそんなイメージを受けた。


 「…………いっか」


 そんなことを気にしてる場合ではない。和だ。和お兄ちゃんだ。知らない人のことはどうでもいい。


 「おはよーっす。和お兄ちゃん!! 」

 「あれ? 愛? 」


 思っていたのとは違う反応が返ってきた。


 「むー、その反応はなにかなー。和お兄ちゃん」


 突撃。座っている和の元に突撃する。やー、やー。


 「やめろ。今日バイトじゃなかったのか? 」

 「今日ではないっすね。あたしは明日。今日なのは真李(まり)じゃないっすか? 」

 「あぁ、真李か……。来るの遅いから、どっちもそうだと思ってたわ……………………」


 そう。遅かった。すぐに来ようと思っていたのに。出来なかった。引き止められてしまったから。


 「用事があったんすよー」


 断ることは出来なかった。あまり、そういうことはしたくない。それが自分に出来ることであるなら、尚更、その気持ちは強くなってしまう。仕方ない。身体がそういう風に動いてしまう。


 「そうか」

 「そうっす」


 和から離れる。自分の椅子をもってくる。座る場所は和の隣。当然である。二人きり。二人きりじゃなくても、和の隣は愛のものだ。幼馴染みの特権。慣れた距離感。昔を思い出せる距離感。


 「あ……………………」

 「どうしたんだ? 」

 「誰か来てたっすか? 今日」

 「あぁ、うちのクラスのやつ」

 「やっぱり……………………。相談しに来た、ってわけではないっすよね? 」


 想像はつく。


 「そうだな」


 ……ということは……。


 さっきすれ違った人は、恋愛部のメンバー。お仲間、ということになる。


 「何で帰っていったんすか? 少しお話したかった……」

 「分からない……………………」

 「え……………………」

 「言ってくれなかったんだよ」

 「あぁ……………………」


 あの表情の意味を知る。


 「多分っすけど、会長さんがいなかったから、じゃないんすかねぇ……………………」

 「あー、それあるかもな」


 恋と話をしておきたかったのだろう。無理矢理といえば無理矢理、恋愛部に誘われているのである。愛的には和がいるから良かったものの。いなかったら、なんてことは考えたくもない。


 「そういえば、今日いないんすね」

 「珍しくな。毎日来てたのに」

 「会長さん」

 「仕事かな。葛城(かつらぎ)さんも言ってけど」


 知らない名前が出てきた。聞かないと。


 「さっきの娘の名前? 」

 「うん。葛城詩愛」

 「覚えておくっす」


 次は挨拶をしないと。やりやすくなった。次にいつ来てくれるかはちょっと分からないけれど。


 「何するっすかー? 和お兄ちゃん」

 「どうする? 」

 「質問に質問で返さないで欲しいっすよ。和お兄ちゃん」

 「すまんすまん」


 特に、することは何も無い。別にそれは、恋がいてもいなくても変わらない。相談する人がいなければ、基本的には暇だ。そういう部活だ。恋が作ったからこそ続けることができる部活なのだろう。そう思う。


 「おうちに、帰るっすか? 」


 最終下校時間まで、ここでゆっくりとしている必要もない。どうせ、今は、和と愛しかいない。それなら、和の部屋に戻っても同じことである。なんら、変わりはない。なら、後者の方がいい。その方が邪魔は入らない。

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