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乙女心は難しい。

作者: 飛鳥りん

~乙女心は難しい。~


登場人物

・昼空舞鳥(ひるそら-まいちょう)

 今回のメイン。くノ一の少女。

 鉄壁のツン。だが今回は少しデレる。

 胸が断崖絶壁なのを気にしている乙女である。

・朝海風美(あさうみ-かざみ)

 今回のサブメイン。舞鳥の相棒なチート少女。

 ハイテンションがデフォルト(笑)。実は空気読めるという大人な一面も。

・雪照堂撫子(ゆきしょうどう-なでしこ)

 今回の被害者。

 胸が欲しいお方に胸を下さいとせがまれる。


太陽の日差しが強い・・・夏のある日。

舞鳥は一人悩んでいた。自分の・・・胸の大きさに・・・!

年下である風美より小さいのはさすがに悔しい。

年上としてのプライドがへし折れる。

と言う訳で、舞鳥は撫子の部屋の前に来ていた。あることを頼むためだ。

ガラッ!!と勢いよくふすまを開け、叫んだ。

 「撫子様ッ!!胸分けてくださいッ!!!」

 「ええーーーーーーーーっ!!?」



 「い、一体どうしたんですの、舞鳥ちゃん・・・!」

撫子は、状況が飲み込めない、という風に問いかける。

いや、飲み込めなくて当たり前だ。

 「・・・長くなりますが、聴いていただけますか・・・?」

 「え、ええ・・・いいですわよ??」

何時になく真剣な様子の舞鳥のペースにうっかり飲み込まれる撫子。

舞鳥は撫子がぬくぬくしているこたつ(なぜか涼しい。)に

足を突っ込み、語り始めた。

 「・・・私、胸が無いんですよ。

  貧しいというレベルを通り越して無いんですよ。本当に。」

今の舞鳥の様子を例えるならば、

不景気でリストラされ居酒屋で愚痴るサラリーマンというのがぴったりだろう。

 「・・・そ、そうかしら・・・?

  でも、まだまだこれから成長期だし・・・。」

舞鳥を何とか励まそうと撫子がフォローする。

が、舞鳥は切なげな必死な眼差しで見つめ、言った。

 「何を仰りますか、撫子様。私達に今後なんてないじゃないですか・・・!」

 「え・・・?」

舞鳥が突然立ち上がり熱弁し始めた。

 「この世界は生まれた生き物は一生同じ見た目なのですよ!?

  さらにサ〇エさん形式ですし未来も何もありません!!!」

 「そういえばそうでしたわっ!!すっかり忘れてましたわ!!」

きゃーびっくり!な感じで驚く撫子。

 「おわかり頂けましたか・・・!

  つまり、私の胸が今後成長する可能性はゼロということです。

  しかし・・・それでも私は・・・勝ちたいのです。」

 「な、何にですの??」

 「風美、です。正しくは風美の胸のサイズに勝ちたいです。」

真剣そのものな様子の舞鳥。

撫子は困ったなぁ・・・みたいな感じで苦笑いを浮かべて言った。

 「そう言われても・・・力になってあげたいですけれど、

  さすがに胸を分けるのは無理ですわ・・・。」

 「・・・ですよね・・・。すみません、無理を言って・・・。」

しゅんとする舞鳥の様子におろおろする撫子。

そんな彼女らの前に現れた。現れてしまった。

悩みのタネの原因が・・・。

 「いえええええええぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!

  お困りのようですね、舞鳥ちゃーん!ですっ!!」

 「出たあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

珍しく大絶叫する舞鳥。そりゃそうだ。

 「嫌だなぁ~もうっ!です!

  お悩みなら、この風美工房工房長朝海風美にお任せなのにぃ~です!!」

 「・・・工房長も何も、あなたしか居ないでしょうその工房。

  あとウザイので早く消えてください。」

さっきの取り乱しもつかの間。

一瞬でいつものペースを取り戻した舞鳥。さすがである。

 「えーーーっ!?ひどいですー!

  あたしの腕が信用ならないっていうんですか!?」

 「信用とかそれ以前に、消えてくれという要求が聞こえてなかったんですか?

  人の話を聞きなさいアホ。」

 「あほおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?です!!?」

頭を抱えてじたばたする風美。撫子はやれやれと息を吐くと、言った。

 「とりあえず、続きは他の部屋でお願いしますわ!」

さりげなく邪魔よ☆と言われた気がして、しょんぼりしぶしぶ二人は居間へ出た。

撫子を怒らせたら最後だし。


居間には華月と凛花が談笑していて、居間近くの縁側では灯と、

久しぶりに帰ってきた玲瓏が遊んでいる。

舞鳥は、はぁ・・・と溜息をし、自分の部屋へ戻った。

皆聴こえていなかったようでホッとした。

部屋のドアを閉める。なぜか風美がついてきていた。

 「帰れ。」

何でいるんだよ・・・と険悪感露わに言う舞鳥。

しかし風美はタフだった。

 「えーーーーーー!?やーですよぉーです!暇なんで構ってほしいです!!」

 「ふざけないでください。あなたのせいで私は悩んでいるのに・・・!」

言った直後、やば口を滑らせた・・・!と舞鳥がフリーズする。

 「え?舞鳥ちゃん、あたしのせいで悩んでるんですか?です!?

  いやんっ!あたしってば罪な女です!」

うふふです!とくねくねしている風美。

ウザかったのでとりあえず頭にチョップを食らわせた。

 「何勘違いしてるんですか馬鹿なんですかてかとにかく出てけって

 言ってんでしょう日本語分かんないんですか?」

 「だーかーらぁー!暇なんですって~です!

  なんか悩みあるんなら、喜んで聴くですっ!!」

それで?その悩みって?あたしのせいなんですよね??うふっ!

とか言ってる風美が心底ウザかったので

舞鳥は舞風で吹き飛ばしてやろうかと考えた。

が、昔屋敷内をめちゃくちゃにして注意されたのを思い出し、静かに仕舞った。

 「・・・聴いたら帰りますか?」

 「そりゃあもちろん!!帰りませんです!!!」

 「帰れ。」

ドヤァァァ・・・!!とキラキラ輝く最高のスマイルを浮かべる風美に

容赦なく言い放つ。

 「あーあー冗談ですよぉ~!!です!

  ・・・ほらほら、この風美さんにいってごらんなっさーい!です!!」

 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いっぺん爆ぜろ。」

 「??聴こえないですねぇ~!!です!はっはっは!!です!!」

とにかくウザいので、ぶーぶー言っている風美を部屋から無理やり追い出し

(物凄く抵抗されてイラついた。)、舞鳥は読書を始めた。

眼鏡をかけ、ブックカバーを付けてある本を開く。

舞鳥の愛読書である・・・胸を大きくするための方法が書かれた本だ。

以前、この本の中身を風美に見られそうになったときは、それはもう焦った。

見られる前に取り返したが。

嬉々としながら、期待に胸を躍らせページを捲る。

それから数十分が経ち・・・舞鳥は眠気に襲われたため、

読書を止め寝ることにした。

昼寝大事。律儀に布団を敷き、もぞもぞと潜り込む。

 「(寝る子は育つ・・・っと。)」

それからものの数秒で舞鳥は夢の中へ・・・。

舞鳥は気がつかなかった。本を机に置きっぱなしにしていることを。

・・・ずっと様子をうかがっていた者がいたことを・・・。


すーっとドアが開かれる。入って来たのはもちろん・・・。

 「あーもう!やっと寝てくれたです~!」

そのまま突入したら完全に二の舞だと考えた風美は

ずっと中の様子をうかがっていたのだ。

 「さってさて!なんか悪戯でもして帰りますかね~です!」

やっぱりここは定番の、額に肉ですかね・・・!と風美がマジック

(風美工房作、一応水で落ちます!落書き用まじっく☆)の

蓋を取ろうとした・・・が。

 「あれ・・・?です。これ・・・です。」

机の上の本に目を向ける。

 「(前舞鳥ちゃんが読んでた本ですよね?です。

  そういえばあの時は妨害されちゃったんでしたっけ、です。)」

そっと本に手を伸ばす。だが・・・風美は手を戻した。

 「(あれだけ嫌がっていたんですものね、です。

  勝手に見るのは無粋です。

  舞鳥ちゃんがいつか自分から見せてくれるのを待ちましょう・・・です。)」

と思い、なんだか悪戯する気も失せたので、帰ろうとした。ら。

 「風美・・・?なぜ部屋の中に入っているのですか・・・??」

ゆらり・・・と立ち上がる舞鳥に肩を鷲掴みされた。

 「まさか・・・!!あの本の中を見たとか・・・!!?」

舞鳥がひどく掠れた声で呟く。

風美はぶんぶんっ!!と首を振って必死に否定した。

 「み、見てないですっ!!本当見てないですっ!!!」

 「そのわざとらしい反応・・・!やっぱり見たんですね!!つまり・・・!」


 「私があなたより胸が小さいこと気にしてるのを知ってしまった

  ということですよね!!?」


舞鳥が叫び、風美が、えええ!!??です!?と

驚きの事実を聞いて目を丸くする。

 「そそそそうだったんですか!!?舞鳥ちゃん!?です!!」

 「え?知らなかったんですか!!?うそでしょう・・・!?

  ではつまり私は自ら地雷を踏んだということ・・・!!?」

舞鳥の顔がみるみる真っ赤に染まっていく。

たぶん、寝起きだったため頭の回転があれだったのかもしれない。

 「あ、あのっ!です!

  舞鳥ちゃん、そういうのは気にしたら負けだと思いますです!!」

 「うるさいですよ!!だって、負けるなんて悔しいじゃないですか!

  風美は年下なのにッ!!」

 「えー!!?いや、だってそんなの言われても仕方ないじゃないですか!!?」

 「いいですよね風美は・・・!私なんて無いんですよ!!?」

完全パニックな舞鳥。珍しすぎる彼女の様子に、風美は戸惑った。

 「(ど、どどどどうすればいいんですか、これ!!?です!!

  ・・・そうだです!)」

はっ!と閃いた風美は、睡眠ガス

(風美工房作、直前の事も綺麗さっぱり忘れちゃう!超安眠ガスw)を作り出した。

こてん、と舞鳥が眠りについたので、慌てて抱きとめる。

ホッと息を吐き、風美はぽそりと呟いた。

 「あたしは、そのままの舞鳥ちゃんがいいと思いますよ・・・です。」

きっと、この言葉は届いていないと思うけれど。そう言わずにはいられなかった。

舞鳥は、大事な親友だから。

 「おやすみなさい、舞鳥ちゃん、です。」

風美は舞鳥を布団に運び、彼女の頭を優しく撫でてから静かに部屋を出た。


晩御飯の時間になり、皆で夕飯を食べてわいわいした後、

風美は食器の片付けをしに台所へ行った。

 「(よかった・・・舞鳥ちゃん、さっきのこと覚えてなさそうでしたです。)」

安堵の溜息を吐き、洗い物に取り掛かる。すると、舞鳥がてくてくと歩いてきた。

 「風美。」

急に声をかけられ、ビクッとなる。

 「ああ、舞鳥ちゃん!どうしましたか?です!」

 「いえ・・・。特になんでもないのですが・・・。」

少しうーん、と考えてから舞鳥は口を開いた。

 「風美に・・・さっき、なんだか

  嬉しくなるような事を言われた気がしたんです」

あれ!?ガスの出来が不十分だったのかな、です!?

咄嗟だったからか・・・!?です!?と風美は内心焦る。

 「夢だったのかもさだかではないのですが・・・。

  まぁ、この際現実でも夢でもどちらでもいいですよね。」

舞鳥はにこっ、といつもは見せないような、年相応の可愛らしい笑顔で言った。

 「ありがとう、風美。」

 「!!?」

これは夢ですかなんなんですか!!?です!!と風美はあわあわしたが、

すっ・・・と落ち着いて、笑顔で返した。

 「いいえ、こちらこそ!いつもありがとうですっ!!」

そして、二人で顔を見合わせて笑うのだった。

温かな雰囲気が、二人を包んでいた。

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