行きついた先
今私は行く宛てもなく、博の家に身を寄せている。
私が泣いたあの日は、私が地元と決別をしてしまったとても重要な日。
そんな日ではあるが、この会議の存在自体は記録からもみ消されたらしい。誰が工作したのかは今更どうでも良いのだが、おそらく道路族の議員やOBがやったことと思う。
だから世の中の誰も私が意見を翻し、議員を辞めた本当の理由を知らないことになっている。しばらくして家に議員辞職届けが送られてきて、サインをしただけ。
要らないと分かればあっさり消される。いずれ暴力団とかそういった人が家に来て、私に嫌がらせをしてくるだろう。海に沈められるかもしれない。
博に迷惑がかかってしまうかもしれないと考えると、彼の笑顔が脳裏に浮かび、辛くてやりきれない。
リビングのテーブルの上に、一通の手紙を置いて私は立ち去ることにした。
「あの事件があってから、私達はあまり深い話が出来てないよね。ある時はひょっとしたら博が私に気を使ってくれているのかなとか、良い方向に考えたり。ある時は博が、自分に身に危険が及ぶような浅はかな私の行動を怒ってあきれているのかななんて考えてるよ。
けどどっちにしても余計なことをしたばっかりにって思ってる。本当にごめんなさい。けど、謝ってすむような問題でもないだけに、どうしたらいいのかも分かりません。
私はしばらく旅に出ます。どこに行くか決めてないけど、帰ることがあれば連絡します。博の優しいところが好きでした。けど博がよく言ってくれた明るい私ってものには、きっとずっと一生戻れないと思います。いままでありがとう。勝手にお別れごめんなさい。けど、もうこれしか今の私には出来ません。さようなら。」