癒着
今日は雨、議員宿舎から国会議事堂まではタクシーを利用している。
朝9時からまたまた道路関係の会議が始まった。
「吉岡議員、過去のあなたの選挙区の高速道路建設の受注先について調べましたが、あなたのお父さんは何か言っていませんでした?」
「質問の意図が良く分かりません。」
「ですから、毎回同じ業者を使用しているんです。建設の公募には毎回10何社も応募があるのに、毎回同じ、しかも予算比99.9%での受注です。」
「質問の意図が良く分かりませんが、父が談合に参加していたとおっしゃりたいのでしょうか?」
「そうは言ってませんが、ただ吉岡議員はこの事実を把握されていましたか?」
・・・・私は知っていた・・。
請負先の業者の社長が博のお父さんだってことは知っていた。
ただ受け入れられていなかった。
私の父の任期中にはこのことが明るみ出ることはなかった。今思えば父の引退はこれを恐れてのものだったのかも知れない。
その疑念が確信へと変わり、目の前が真っ暗になった。
「高速道路は不要です。以上」
私はこの一言を発し、会議室から飛び出した。
溢れる涙が止まらない。どこに向かえばいいのかも分からない。
故郷には帰れない。実家にも帰りたくない。誰も信用できない。