彼氏
今日は久しぶりのサラリーマンで同学年の彼氏とデートだ。
軽くブラインドショッピングをした後、大衆向けレストランに入った。
ずわいガニのホワイトソースパスタを注文した。
「なぁ晴香、昨日テレビ見たよ。また写ってたなお前。」
「うん、また写っちゃった。」
「そのさぁ、何ていうかやめられないの・・・今作ろうとしている道路計画?俺さ、何かああいうの見るたび辛いんだけど。」
「何で辛いの?」
「だってさ、道路必要ないじゃん明らかにさ。誰も使わないんだろ折角作ってもさ。」
「使わなくてもいいの。」
ずわいガニパスタはまだ来ない・・。早くこの話を終わらせたいと晴香は強く思っている。
「てか晴香さ、はっきりしようよ。道路を作れば確かに地元の土木関係者は嬉しいけどさ、折角作っても誰も使わないなら、それかもっと別なところに作った方がいいんじゃないの?てか早くどこでもいいから作って楽になったら。」
彼氏の名前は博。私が国会議員になる前から付き合っている高校の同級生だ。だから基本的に私の仕事を基本的に応援してくれている。ただ最近友達から私の政策について結構文句を言われているようで、よく道路の話をしてくるようになってしまっている。
「もっと別のところって例えばどこ?」
私の本当の支援者は博しかいない。それ以外の支援者はみんな利害関係でガチガチだからだ。お父さんもそうだ。だから私は博のこういうやさしい言い回しが出来て、さらに素直に何でも話せるところが好きだというのもあって、博の言うことは聞くようにしている。
「だからさ、晴香と土木の人の関係ってのは切れないんでしょ。それは良く分かってるつもりだよ。だから別のもっと人のいるようなところに作れないのかってことさ。」
「私達の地元は基本土木でその他農業、んでそれ以外に仕事がないの知ってるでしょ?だから絶えず何かを作っていないと、働き口がないの。けどもう今議論している場所しかないいんだ。作るべきところは全部作っちゃったから。」
「うーん、それはなんとなく分かるけどさ。」
「しかも町や市には作るお金も無いの。仕事が無いから税収もないでしょ。だから国家予算を使うしかないんだ。」
「それはさ、晴香のお父さんの考えだろ、晴香はさ、今は実際どう思ってんの?お父さんの役割を受け継いだってのはわかってるけどさ。」
「私は町の人に仕事があって、明るく生活出来ればって思ってるの。これは本当だよ。ただ・・・」
「ただ何?。どうしたの?」
「道路はあんまり作りたくないの。」
確か1ヶ月前にも、さらにはその前も、博と道路の話をしたのを覚えている。ただ博は私にこの一言が言わせたいだけなのかもと考えてしまうが、最後にこう言ってくれる。
「晴香は明るいから、きっといつか町の人も明るくしてくれるって思ってるよ。それが国会議員の仕事じゃなくてもね。けど晴香が選んだ仕事だから、俺は応援するよ。この際早く別の場所に道路を作って楽になるでもいいからさ。」
ようやくカニパスタが運ばれて来た。二人無言でカニの身を必至に食べ始めた。600円でさらに「ずわい」ともなるととっても小さい。沢蟹みたいだ。




