プロローグ
ランスとユーリイは、ワイバーン討伐の終了を報告して、帰国の途についた。
「街道を騎竜で走るだけの旅は、楽で良いが。宿を利用していると、ランスの飯が食えぬのが、ちと残念よの」
「ちょっと、あなたいつまでくっついてくるつもりですか。ワイバーンの件が片付いたんだから、自分の家に帰ってください」
「うはは! ユーリイ。つれないのう。私は頼りになる魔法使いなるぞ?」
「僕のパーティーは僕とランスのデュオユニットです。魔法使いは必要ありません」
騎竜の足取りは軽く、天候も穏やか。
耳に聞こえるユーリイとダリウスの〝軽妙な会話〟もいっそ楽しい。
「なんだかんだ、仲いいよな」
「ちょっ! ランス、なに変なこと言ってるんですっ?!」
「ふははははっ! さすがランスは年の功、これで私も晴れてパーティーメンバーであるな」
「でも、テントは別ですし。宿の部屋も別ですからね」
ユーリイは子供のように頬を膨らませる。
その様子に笑顔をこぼしていたランスは、不意に言いしれぬ悪寒を背筋に感じて騎竜の足を止めた。
「……なんだ?」
止まったランスに気付き、ダリウスとユーリイも立ち止まる。
「おお、ランス。この瘴気を走る騎竜の上で気付くとは……。やはり貴殿はただ者ではないな」
「なんなんです?」
ユーリイもまた一級冒険者として、場に立ち込める〝嫌な空気〟は感じとっている。
が、ランスと同じく、その不穏な空気の正体を掴みかねているようだ。
「少々、厄介だぞ。これは……ダンジョンが暴走する予兆であろう」
言うが早いか、ダリウスは騎竜の腹に蹴りを入れた。
スタンピードの一言に、ランスもハッとなって騎竜を走らせる。
二人に続いて、ユーリイもあとを追った。
「スタンピードって、なんですか?!」
一級とはいえ、ユーリイはまだ年若い。
さらに言うと、昇級を狙う冒険者は、討伐クエストに重きを置く傾向がある。
ダンジョンの経験は、さほどないのだろう。
「魔獣がダンジョンから溢れ出す……それがスタンピードだ! ダリウス、経験あるか?!」
矢のように駆ける騎竜の上から、ランスは叫んだ。
叫ばねば、声が届かない。
「ある! アルジャンティス領内のダンジョンにスタンピードが起こり、呼び戻されたのでな」
──ああ、だからすぐに説明出来たのか……。
ランスは腹の中で、感心していた。
ダンジョンのスタンピードの理由は、解明されていない。
そもそも、ダンジョンがなぜ発生するのかの理由も、未だ分かっていない。
冒険者として、稼ぎを重要視する者は、ダンジョンへ通う。
ランスもまた、若い頃はダンジョンへ通い、そしてスタンピードに巻き込まれたこともある。
ゆえに、それがどれほど厄介で恐ろしいものか知っていた。
「それで、どうするんですか?」
「ギルドに報告する! 指示があるまで、冒険者は待機になるだろう!」
三人は、騎竜を急かし続けた。




