エピローグ
翌日、一行がギルドに顔を出すと、受付嬢は一瞬だけ表情を強張らせた。
あまりにも早い帰還に、さすがの一級冒険者でも討伐を断念して逃げ帰ってきたのかと思ったからだ。
「討伐完了です。ワイバーンは全部で七体。持ち帰りが不可能だったので、岩場の影に魔獣よけを施して保存してあります。回収をお願いできますか?」
「えっ? 討伐……完了ですか?」
「はい」
数秒の空白のあと、受付嬢はハッと我に返り、慌てて魔道具を操作した。
「討伐、完了ですね! ありがとうございます! ワイバーンの回収は早急に手配いたします。素材は売却でよろしいでしょうか?」
「うむ、私は売却で結構だ」
即座に、ダリウスが答える。
「僕は、ワイバーンの革で装備を揃えたいので、二体分回してください」
「おいおい、ユリィ。今更ワイバーンで装備を誂えるのか?」
ユーリイの身につけている装備は、ワイバーン革より上等な素材で作られた、耐久性抜群のものだ。
「僕のじゃありません。ランスのです」
「へあ?」
「だってランス、コカトリスの時の報酬で買い替えるかと思ったら、ずっとそのままじゃないですか。防具もそうですけど、異次元鞄と騎竜の鞍も作りましょう」
「いや、いらんって」
「いやいや、いらなくはないぞ! 戦闘スキルが低いなら、防御を固めるのは当然だ! よし、それならば我がアルジャンティス家御用達の職人を紹介してやろう!」
「いりませんっ! なんですか、もう討伐終わったんだから、さっさとどっか行ってくださいよ!」
「いや、私は決めたのだよ、ユーリイ。きみを私のパーティーに誘うのは諦める。代わりに私がきみのパーティーに参加しよう」
「必要ありません! 僕のパーティーは僕とランスでベストバランスです!」
「はっはっはっ、言ったところで、私はきみと行動を共にするよ。なあ、ランス」
「ランスに触らないで! ってゆーか、あなたはランスロット様と呼びなさいと言ったでしょう! 本当に話のわからない人ですね!」
「やめろっ! 一級冒険者の腕力で、左右から引っ張るなっ!」
ランスの叫びは、やっぱり誰にも聞き入れてはもらえなかった。
終わり。




