第6話 光が差す時
ランクインありがとうございました。
「妹の愛花さんが見つかったら――俺とお付き合いしてくれませんか?」
私と北澤さんが?付き合う?
「えっ…なんで?」
思わず本音が零れた。北澤さんは真っ直ぐにこちらを見つめている。
「分かってるよ、今じゃないことくらい。でも、どうしても伝えたかったんだ。初めてあの映画の顔合わせをした時、美しかった。君よりも綺麗な人なんて他にいないよ。もちろん清川さんが今大変なことは承知してる、妹さんが見つかったらで良い、俺が嫌いなら断ってくれて構わない。ただ本当に――君が好きなんだ。」
あまりにも突然の告白に言葉を失った。
段々と頬に熱を持つことが自分でも分かる。
「…ありがとう。でも――もし愛花が見つからなかったら、」
「俺が何としても見つけ出す。何日何年かかろうとね、万が一見つからなくても俺の気持ちは変わらない。だから――」
安心して。そういう北澤さんの目はどこまでも澄んでいた。
見つけ出す、か。北澤さんには愛花が見つかる希望が、光が、未来が、見えている。
家族の私がここで立ち止まってるだけで良いのだろうか。妹の安否を、いなくなった理由を、考えるだけで良いのだろうか。
愛花がもし生きていて、また会えたなら、北澤さんを紹介できるだろうか。
「私のことを想ってくれるとても大切な人だよ。」なんて、そんな日が来たら――。愛花は何て言うだろう。
私はずっと1人で戦ってきたつもりだった。女優になってからも、愛花が行方不明になってからも…いや両親が死んでから私の中で何かが変わった気がする。何かを共感して、苦楽を分かちあってくれる人なんていないと自分に言い聞かせていた。
「…なんで私なんかにそこまで…。」
ずっと疑問だった。皆から愛される人気俳優がなぜそこまで私に親身になってくれるのか、愛花のことについても考えてくれるのか。私である理由を知りたかった。
恋人が欲しいなら、私なんかよりももっと良い人がいくらでもいるはずだ。
「清川さんが…いや美花ちゃんが好きだからだよ。それに――俺も母親が行方不明になっていたから。」
母親が行方不明――私は息を飲んだ。
北澤さんはそんな私の様子をみて、話始めた。
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次回も近日公開予定です。