第10話 桜色の部屋で
お久しぶりです、ご覧いただきありがとうございます。最近インフル流行ってますね。皆様もお身体にはお気をつけください。
「ごめんね、汚いとこだけどどうぞ入って。」
そう話すのは私と愛花の幼なじみ、矢口桜子だ。彼女は私と愛花と同じ幼稚園で育ち、中学生まで一緒だった。母親同士もPTAなどで仲が良く、お互いの家でよく3人で遊んだことはとても懐かしい。
街で偶然声をかけられ、立ち話もなんだしという誘いを受けて桜子の家にお邪魔することになった。木でできたアパートの1室は、淡いピンク色で配色された家具たちに、ほこり一つなく掃除されている。昔からピンク色が好きで、几帳面な桜子らしい部屋だった。部屋の隅に飾られていた沢山の子供達と笑う保育士としての桜子の写真に、思わず声をかける。
「なったんだね、保育園の先生に。」
そういうと桜子は少し照れたように笑った。
「そうなの、もうみんな元気いっぱいで、すごく大変だよ。昨日お泊まり保育でさ、今日たまたまお休み貰ってたところで美花に会って、すごくびっくりした。多分高校生の卒業式ぶりだよね?同じ高校だったのに全然話せなかったもんね。」
そう、私と桜子は同じ高校に進学したのだ。ただ3年間1度も同じクラスにはならず、お互いあまり関わることが少なくなった。桜子は保育士の専門学校への進学が決まった頃、父親が転勤になってしまい、1人でこの街に残ったらしい。
どうぞ、と言って桜子は珈琲を出してくれた。お礼を伝えて、軽く世間話をすると桜子から本題に切り出した。
「そういえば、何でこっちにいたの?ロケ…とかではなさそうだもんね。」
私は一呼吸置いて、愛花が行方不明になってる今までの経緯を伝えた。桜子の喉から息を飲む音が聞こえる。桜子は終始信じられないといった様子で話を聞いていた。
「…それで実家の方とかにくれば、何か…手がかりが掴めるんじゃないかって、思ったの。」
何か知らない?そう話終えると、桜子の目にはうっすら涙が浮かんでいた。
「…あぁ、ごめんね。泣くつもりなかったんだけど、でも、そんな…」
私は悲しむ桜子の様子に、とても申し訳なく思った。行方不明というワードと、愛花の職場近辺での目撃情報、行方不明になってから約2週間は経過してる。絶望するにはまだ早いと思いたい頃だ。
「本当にごめんね、私何も役に立てそうなこと分からない。けれど…愛花は理由もなく周りを困らせることはしないよ、絶対。愛花…なんで、どうしたんだろう。」
2人の間に重たい空気が流れる。この場合、桜子になんと声をかければ正解なのか。出そうとする言葉が喉でつかえる。しかし、その沈黙を破ったのは桜子だった。桜子は思い出したように立ち上がると、どこかへ電話をかけに外に出た。ひとり取り残された室内で、私は心を落ち着かせるために、桜子が入れてくれた珈琲に口をつける。
暫くして、桜子が戻ってきた。その表情で先程の電話が悪いものではなかったのだと、表情だけで分かった。
「美花、あのもしかしたら――
愛花の手がかり、掴めるかもしれない!」
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