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青灰の地より  作者: 不病真人
第二部 海が父

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第八十七話 同盟成立

(しかし、二人だけになった...罠?様子を見ているな)


 「うむ、君、随分と興奮しているな」


「ええ...いい方達に出逢いましてこれがまだ幸多く、小生!!」

 (この話し方明らかに正常ではない、おそらくは緊張、それを隠すためにやるか。わざとだとすると...この傭兵らを、警戒...いいやあいつらの警戒を解くためか、この無数の話も)


 「ほう、随分と辛い経験をしたものだな、言葉が多いのは元からか?」


 「ええ、しかし」


「..違うか?」


 「え..?何を」


(はったりにもならんか...いいや唐突な言葉だ、あとは顔を顰めて脅すか...本音が少し欲しい。俺たちが同じ戦線かどうかの)


「それは君本来の言葉か?と聞いている」

 「な、何をおっしゃって」


「言うさ、この人らに監禁されているのだろうと、これが俺の本音だ。だから俺と共に彼らと会談しないか。」


 「え?..?え!!?」


「なっ何を!聞こえますよ!」


 「安心しろ、そうなさい、正直すんだ時の方がいいとこもあるのがこの世」


(そうだ、あの下手な演技がバレないわけもない、ならば俺に求めるものがあるはずだ。故にそれを見つけて、活用しなくちゃ。)



 男は一瞬、目を大きく見開いた。

 それから、ゆっくりと息を吐き、肩の力が抜けるのが分かった。

 演技の仮面が、ぽろりと落ちた瞬間だった。

「……あんた、鋭いね、正直か」

 声が変わった。

 先ほどまでの作られた、わざとらしい古風な喋り方が消え、代わりに掠れた、疲れ切った若い男の声が響く。

「あぁ、これは試練だ。」


 「ではなぜそうした。」



「最初から、と言いたいところだが……半分くらいだな。もちろんしっかり真似てたというのにね」

(うん、全く答えにはなっていないが、推測だと、この傭兵団は俺の身分として使った連盟に頼みたいことがあるんだろう。え?あれで真似てたと?変な喋りだな)


 「簡単な話さ、あのものたち、君を道具として使うなら一人で置かないからね、君は彼らの仲間ではない、少なくとも最近までは」

 男——いや、少年に近い年齢の捕虜は、苦笑した。

「バレバレだったか……。でも、あんたがそうやって切り込んでくるってことは、あんたもこの状況をただの...こいつらが守ってくれるだけのいい奴らだなんて思ってないってことだよね?」

「当たり前だ。大勢ここまで、この島までこの数を連れてきた傭兵団が、辺鄙な場所でいい人になれるとは思いにくい。」

 彼は小さく頷いた。

「正解。やつらは……ただの“傭兵“じゃない。あいつらは“雇い主”だよ。」


 俺は目を細める。

(雇い主....?つまりは...どういいことだろうか。」

「俺をここに閉じ込めて、毎日少しずつ血を抜いて、薬を飲ませて……を待ってたんだ、あんたを」

「まつ、とは...まさか」

(もちろん俺は何も知らないが、今までのからすると自分から深読みして教えてくれるようだ。)

「……知らない。でも、多分俺の血だ。血筋だ

 俺の家系には、変化する力がある...お前も見ただろうあのリドゥとか言うやつに俺がなったのを...あいつらにはそれが必要だった。」

 俺は眉を寄せた。

「血を抜いて薬を飲ませる……君の変化には薬が必要なのか。」


 「多分ね。最初は毎日少しだったのが、こいつらがどこで手に入れたものか....体が熱くなって、意識が朦朧として……でも...あんたがなかなか...連盟は来ない。あいつらは苛立ってる。俺を殺すか殺さないかで、毎日揉めてるよ」

 少年の声は淡々としていたが、指先が微かに震えているのが分かった。


 「確かにそうだな、敵は多く、ただでさえ辺鄙な島、食料もそう大くはないと思う。」

「で、あんたは?あんたがここに来た本当の目的はなんだ?布教だけじゃないだろう」

 俺は少し間を置いて、静かに答えた。


 「それは...言えない」

少年は少し不機嫌そうにする。

「俺は……それが何なのか、知りたい、死ぬ前に...」

 少年が最後を言えば息を呑む。緊張しているだろうか。

「安心しろ、君は死なない。ただ言えるのは俺にもわからないことが多い。上からの指示だ。」

(もちろんそなんの書いていないが、落ち着かせないわけにもいかない。ここは様子を見てなぜ彼らが雇い主かも見なくては。)

「上から……?あんたこんなかなりの数がいたって聞いたが...」

「全部は知らない。ただ、ラアンドリウス・ン・ヴェリオンズとして数多くを率いるのもたしが...だから利用する。やつらはこれを...君と同じに思うだろう。」

 少年の瞳が揺れた。

「まさか……取引を」

「起きる...取引できる可能が高い。だから俺は、それを止めるか、せめて彼らを制御する方法を....」


「無理だ!俺はあんたに乗らないぞ!あんたは今は死なないかもしれないがバラした俺には!」


 「落ち着きたまえ、リドゥはどこだ?」


「は?何を今更!今は」


 「それよりリドゥはどこだ。俺の死ぬさ、奴らを君が一番に知っているはずだ。価値がなければ捨てるだろう。」


 「...」

彼は沈黙する。静けさが増す。

鳥や動物などの声がよく聞こえてくる。


 静寂さを先に破ったのは俺だった。

俺は声を低くしていった。


 「若い人を連れ出す...君をここから連れ出すつもりだ」

 少年はしばらく黙っていた。

 やがて、乾いた笑い声を漏らした。

「はは……カッコいいこと言うね。でもさ、あんた一人でどうやって?あいつら大勢いるよ。しかも全員、相当やり手だ」

「そうだ、俺は一人か。今はそうだ。」

 俺は手を軽く叩いた。

「君を入れてそれは変わる」

 

「何を...まさか呼ぶのか?」


 「落ち着け、君、あれだけ騒いだんた...それに監視もいるはずだ、手を叩いてどう変わるわけでもない」

(それにお前が本当に...本当の事を言っているかもわからない、なら数を読んでも俺は不利益にならない。」

「……本気?」

「本気だ。ただし、条件がある」

「条件?」

「俺を信じるってことだ。

 これから俺が何をしても、黙ってついてくる。」

 (必要なのは信頼だ、こいつらには俺は隠し玉がある、あるいは度胸がある事を思わせる。手札をできる限り増やす。)


「どんなに無茶なことをしても、俺を疑わない。それが出来るなら、約束する。ここから必ず連れ出す」

 少年は深く息を吸い、ゆっくりと吐いた。

「……分かった。信じるよ。あんたを」

(それでいい、あの傭兵たちはどうも相手しにくくて、扱いにくいのは確実、だが別にやつらだけではない、俺もなってやるよ、扱いにくく。)


「ははは! なんじゃと? 面白い男じゃのう、わしゃあ、そんなおたくのような方々をそうそう好むぞ。だが、まずはこのリドゥの件じゃ。そち、連盟の司鐸じゃと言うたが、ほんにリドゥを知っておるのかのう?」


ジョン・フォンの言葉は、相変わらず奇妙な訛りと古風な響きを帯びていた...かもしれない

なんとなくまるで古い書物から飛び出してきたような口調だ。

どこに地域かは知らない

そう知らない、俺はいろいろと。

俺は内心で冷や汗をかいていた。

(バレたら死ぬだろうな)


 「君たちの...目的をもう知っている。雇い主だろう。」


 「ほうほう?また脅しに騙しですか?そこの方。」


 「またとは随分と」


 「いやいや、わしゃなぁ....正...じき」


「ならば教えてもらう、代わりに俺も教える。雇い主のなんたるかを代償に俺たちの...連盟の目的をな」


 「嘘をしゃい...どうせ知らんだろう。まぁ...そちの方が偽物でも問題ないのが...わしゃ嘘でも情報が入れば変わるんと思うんじゃあ。」


(そうか、まさか...俺が偽物だとしても...俺への...俺を見たことで、本物を見つけるために判断材料が....できるからいいと言うのか...だが...いや本当の感情が読めない)


 ジョン・フォンはずっと笑みを浮かべていた。口角を上げたままの顔であった。


 「この島の数おか」


「おお、おかしいなぁ、そちの方」


俺は慎重に言葉を選んだ。だが大胆さを主とした。

そう、本題といこうじゃないか。


曖昧もなしに、探りを入れる。

フォンは目を細め、顎髭を撫でながら笑った。


 「たくさん人を見たかのう?お前さんの(かた)


 「ああ、それで?」


「ぬぬん、そちも知らぬごとくか。わしゃあ、噂で聞いたぞ。この島に、連盟の者が潜んでおるとな。貴族どもから逃げてな。わしゃあ、傭兵団の分隊長じゃが、実は連盟に肩入れしておるんじゃよ。ふふふ、秘密じゃのう。」


 「そ」

「待て、この島、人ならざる存在もいるんじゃ。」

(...話を持ちやがった、主導権を奪われてしまった...)

 「そうそう、おんし...こんつち...たくさんたくさんじゃ。いろんなの勢力があるんじゃ...」


 「わしらが雇った囮...」

「目的を隠すためにやったのか。」


 「するどうのう」

(しかし、人が多いとかえって...)


「もとより有名なここじゃ、ならもっと人が多い方がバレにくい、目的...もな」


 「...なぜ話し方を変えた。」


 「そろそろ本題といこうじゃ...ないか、偽物さん」


「空じゃ神のような存在が飛んでは、龍に似たいくるもの多く...わしはそろそろ、わしらにはそろそろ限界やもしれん。」


 「頼むぞ、おんし」


「その話には乗る...だが所々言葉が変わるそれじゃ...君、無理して言わなくてもいいぞ。俺はお前たちと同盟を組もう。」


 「ぬ、いいねぇ!いい!」


 「いいか!同盟だ!手下、人質そのどれでもない。俺は俺を支配する!」


 「お前たちが情報を散布したり何かを読んでこようが、お前たちは俺が必要だろう。少なくとも強引にはできない。」


 「そうじゃ、しかし条件を」


「言わん、人間なんてそんなものだろう...どうだ、えげつない事を予想して、これときた。お前が恐れるよりもうんと小さくある条件だけだった。」



 「同盟...」


「同盟と...俺はそう言ったはずだ。」


 「うぬぬ、乗っていんじゃな!わしゃ君らの方と同盟となろうじゃないか!!」


「そうだ、ではこちらから盟友への...くれてやる。あのリドゥという...かの少年の正体を俺はもう知った」


 「まぁ、そうじゃ、でもそれじゃまだわしらに条件は大きくのう」


 「違う、言ったはずだ、お前にくれてやる。」


「...そうきたかい...んじゃわしも言ってやんさ、この島...数が限り無し、目指すは古き神の...ゆうところじゃのう」


 (か、神...?さっきから何を...この世に神はいないはずだ。神が...違うか、こいつらは強ければ、強くあれば神と思っているか...)


 「あ、ならばそれに協力しよう....」


「待たんのう、待つんじゃ、この島...貴族の親衛隊に、ならず者、挙句には恐ろしゅうこと多くじゃ。」


 「恐ろし...い?」


「悪魔狩り、それがどこの禁足地からか...知らんが如し、しっきゃしのう、相当ものがいるんじゃ。あくまでうわんさんがじゃ」


 「その話し方...なんなんだ」


「ごせんさま、こ、譲りんじゃ」


 (悪魔狩り...神に悪魔...俺の...少なくとも今の俺にある記憶とはえらく違う言葉たちだな)


 「ちょいと!ちょっと!神妙そうな顔で黙るなぁ!言葉舐めてんじゃねぇぞ!」

ジョン・フォンは思いっきりと机を両の手のひらで叩いた。立っているままに、手を下に強く。


「何もない」


木製の机がわずかに揺れ、置かれていた燈の炎が一瞬揺らめく。

俺はゆっくりと顔を上げ、彼の視線を正面から受け止めた。


「言葉を舐めてるって? いや、君の言葉を真剣に聞いているさ。ただ、君のその…独特な話し方が気になってね。俺をあまり困らせるなぁ!」

俺は顔を顰めて言った。

(怪奇な相手にはおかしく振る舞うべしだろうか、唐突にキレてみたが悪手だろうか。)


「ははは! えげつないじゃのう! だが、わしゃあ、気に入ったぞ。おんしのような男じゃ。よし、同盟じゃ! 解放する、同盟じゃ。」


 「待てこのリドゥもだ。」

リドゥの目が輝いた。信じられないという表情で俺を見る。

「あんた…本当に? いいのか?俺を助けてくれるのか?」

俺は静かに頷いた。

「約束したろ。信じろ、と言ったはずだ。」

 ジョン・フォンが手を差し伸べてきた。握手だ。俺は迷わず握り返した。

掌は固く、旨そうな血肉のそれだった。

「では、早速じゃ。わしらのキャンプを案内するぞ。合流させるんじゃ。島の奥へ向かう前に、準備じゃのう、大隊がまだいる、わしゃ分隊長じゃから。」


 出ると、外は夕暮れ時だった。

島の空は赤く染まり、遠くの森から奇妙な鳴き声が聞こえてくる。

(夕暮れか。)

傭兵団の兵たちが、俺たちを囲むように立っていた。皆、武装はしっかりしているが、疲労の色が見える。食料が少ないと言っていた通りか、または敵が多すぎるか。

 「おい!」

ジョンが兵たちに声を掛けた。

「皆の衆! 連盟の司鐸殿と同盟じゃ! 団長からの令でわしが出す、行くぞ先遣隊ぃ!」

兵たちから歓声が上がったが、中には疑いの目を向ける者もいた。

 「なっ、何を見ていや」

俺はリドゥをそっと引き寄せ、耳元で囁いた。

「今は従え。時を待つんだ。」

(思っていたより激昂しやすいのか、または、やつらへ憎しみが抑え切れないのか...どっちか、それによってこれから俺の行動を考えないと。)

歩きながら、ジョンが島の状況を説明し始めた。

「この島じゃ、おそらくならず者どもは南じゃ。悪魔狩りは、北の森に潜んどる。いわゆるなんだぁ...えええ、うぬうぬぬぬぬ、神聖部か、なんかのやつらか、はたまたその雇われじゃ、それでわしらはじゃが、いつ襲われてもおかしくないんじゃよ。ここいらには龍のような獣がおるという噂もじゃ。」

龍…さっきも言っていたな。俺の記憶に、そんなものがいる...逸話にはあるはずだったか? いや、俺の記憶自体が曖昧だ。



俺は手を挙げ、声を張り上げた。

「ならば連盟の名において、神の加護をを与えてやろう」

 そう言うとジョンの顔はますます笑顔を増す、この反応からすると彼はすでに連盟ではない事を知って、それをわざと見せつけているようにある。

(にしても顔を見れば見るほどたまらぬものだ...これほどの人数、忘れかけていた...いいや忘れるものか、慣れとはあれど、なんだ、この堪らぬ疼き...血が欲しい)


 「そうさ。それでいいさ、この島には多くがいる...私もさ、偉大なる“灰の王子、真の太陽である、かの子爵...聞くといい、“奪権者” アグノダス=ゴッダラ の化身がきたぞ。」


来るか、その影は遠くの山の峰が上でみる、林のさらなる上の崖でつぶやく。


帝国が貴族、神術を持ちしや、告死階級、死の天使が一人が来たれる。


 「これ龍にしてはおかしくないか...?まぁいいか、出すわ」

同刻ガルシドュースも遠くで己が血肉を生くる何かにしていよう。

それがなんたるかを、この孤島の者らがよく知ることになる。


 「エバンドルもバカだな、虫なんかより...って龍を知らないか。記憶じゃそうだし。」

(さぁ、セオリクは俺たちの中で俺を除けば、一番に力が大きくある...すぐには見つかるはずだ、そう簡単にやつの力を超えるものはいない。例え、まだ秘めたる力がある神器としてもだ。)


 「行くぞ!」

各々がそう決めて、紛争が起ころうとしている。


数多くいる存在がそう決めて、争うのに十分。


 広い島だった

実に


 だが平和を求めるのにそれは小さすぎた。


島は、灰色の服にでも包まれた巨大な獣の背のように...その獣は横たわっていた。


この島にいるものが狩人と暗示するように、運命か。

または彼らも獣であるか。

 南北に長く伸びたその姿は、まるで古い傷跡のように歪み、荒々しい海岸線が海を拒む黒い爪のように突き出している。南の崖は切り立った荒い岩たちの壁が波を砕き、白い飛沫が絶え間なく舞い上がる。

崖の上には風に削られた岩柱が立ち並び、寂しく傾いている。


 そこまで知れずにして、連盟を名乗る彼、ラアンドリウスと名乗るものは動いていた。


彼を囲うように隊列はゆるやかに動き出していた。

 彼とリドゥを名乗る少年は傭兵団の中央に置かれ、周囲を半ば護衛、半ば監視するように兵たちが囲んでいる。


彼は最初に思う。

地面は黒ずんだ土だった。

この場所は大きく違っていた。


いきなり、場所が違うというのはおかしく聞こえることもあるかも知れない。

しかしそれは最初に浮かんだ言葉だった。


正確に言えば、彼はこの島はあまりにも地形が多すぎないかと思っていた。


 (あの弓矢の彼ら...場所をよく知っている、ならば地形について...いや交渉は少しは難しいか。)


 ギシ


「しぃいたあぁ、気をつけなさいじゃ。」


ジョンの言う通り、踏みしめるたびに乾いた音がする。ところどころ岩が露出しており、草はまばらだ。だが完全な荒地ではない。低木が群れ、遠くには背の高い木々の影が見える。


 空は広い。海風が強く、塩の匂いがかすかに漂ってくる。

ここが島であることを否応なく思い出させる匂いと言うべきものだ。

しかしラアンドリウスには血が欲しいのは変わらない。

潮風があったとしてもまだ欲しくある。


 彼は抑えようと頭をブルブルと振っては後ろを見た。


 振り返ると、後方には砦のようなものが見えた。木と石で作られた粗末な防塁だ。丸太を縦に並べた柵がぐるりと囲んでおり、その内側にいくつもの天幕が立っている。


 「随分と広く野営地を建てたんだな」


「じゃじゃじゃ」

(...なんなんだ今のは?)


 傭兵団の拠点なのだろう。


 だが整然とはしていない。

 長く籠っている軍のそれではない。

急ごしらえだ。


 補給も整備も足りていない表れか。


 思ったからに歩きながらに彼、ラアンドリウスはくまなくと兵たちの様子を観察する。


 鎧はばらばらだ。

 革鎧の者もいれば、古い鉄の胸当てを付けている者もいる。中には農具に近い武器を持つ者までいる。


 剣も槍も、どれも手入れが十分とは言えない。


 


 髭面の中年、まだ若いもの、片目に傷を持つ男、腕に包帯を巻いた者。

細かく観察できないことが多く、ラアンドリウスには確認は難しかった。

しかしそんな彼でもわかることがある。

全員、そう誰しも、どれも、彼らは疲れ切っている。

 だがそれでも完全に崩れてはいない。

体を起こして警戒の体勢をとっている


 傭兵としての経験か、それとも隊長の統率のおかげか。


 少なくとも、今を見て、これは烏合の衆ではないと思えるだろう。


 「おい、司鐸の方!」


 ジョンが、ジョン・フォンは振り返り、にやりと笑った。


 「見ての通りじゃろう? これがわしら傭兵団じゃ。しいて、わしも知るんじゃが、立派とは言えんが、腕は確かじゃぞ!」


(湿っているな、遠くからでもある...海の味とは違う。嗅覚がすごいとかじゃない、海をいってきたから知ってくる。これは違う。)


 そうであった。

これは川、そこを繋がるもの。

湖だ。

中央を貫く細長く大きな湖は、鉛を溶かしたような水面を静かに湛えていた。

陽が差しても光を飲み込み、ただ鈍く輝くだけだ。周囲の湿地は毒々しい緑の葦と水草に覆われ、足を踏み入れれば沈み込む泥が、甘い腐臭を放つ。

湖の北東に、黒い影のように佇むのはさらなる遺跡の廃墟。

尖塔は半ば折れ、壁は蔦と苔に食われ、窓はすべて空洞の眼窩のようにぽっかりと口を開けている。

そこから漏れ出る風は、人によれば祈りの残響のように聞こえて、低く唸るそれに想像力が働いて驚くはずだ。


 


 「面白い島じゃろう?」


 ……確かに。


 面白い。


 あまりにも、血の匂いが濃すぎる。


 俺はゆっくりと舌で歯の裏をなぞった。


 喉の奥が熱い。


 視界の端で、兵の首筋が揺れる。


 汗が流れ、脈が打っている。


 その動きが、妙にはっきり見える。


 ……ああ。


 懐かしい。


 こんなにも人間がいる。


 こんなにも血がある。


 忘れていた感覚だ。


 拳を軽く握った。


 骨が軋む。


 ゆっくりと熱が広がる。


冷たい体に熱い血液を感じるようだ。


そうだな、血が流れる体は冷えていればその奥に流れる血の熱がよく伝わる。


 (落ち着け)


 (まだだ)


 (今じゃない)

ラアンドリウスを偽る彼は死人ではない存在らへ興奮する。

理由もわからない乾きを、いつまでも抑えながら。

島の真実を知ろうと興奮するわけでもない。

その命を、なぜ生きる屍となったかを知るために彼はいつまでも抑えようとする。

例え、島を多く知らずとしても、信じるしかない。


 (嗚呼、知らないことが多い島だが、それがどれくらい俺を助けるだろうか...この島に来る前にはこの疼きはあったのか...知るにもそれを...今を越えねばならない)


 禁足地、魔女のこともこの地も繋がるだろうか

決して終わりはしない。


「...俺も鉄...魔女のそれらもわかってきたぜぇ....赤帝をよく知れ。」


数多く

感じるものもいる。

多く存在する。


 「来なさい、偽りの皇帝、愚かなる獣よ。頭もない鳥のように帰ってくるといい、お前は運んできた。邪教を始めとする古の産物を。」


島は静かにそんな彼らを見下ろし、霧の奥で何かが息を潜めているかのようにある。

この場所は、きっと訪れる者を試し、飲み込み、きっと、決して、絶対に、吐き出しはしない。


 「グロハー!(ロアー的な発音)やるぞ!テメェら!」


 「グロハー!!!」


そうも知らずに、まだ、まだ、まだ。


多くのものは来る。


 帝国も

帝国に反するものも

布教者

賊。

ならず者

さらに来れる。


 太陽の眩しさの元で、大勢の生き物たちから熱気が起これば、朝日を見間違えるほどのそれだ。


 「日はまた登る....か」


「何を感傷してるんだ、あんた」

 

 「君、名前は?」


「....今は言いたくねぇ。」


 「そうか、俺はラアンドリウス、ラアンドリウスだ」

自分に言い聞かすような言葉。

ラアンドリウス、決して強くもないはずの存在は、強くもなかった存在に出くわす。


 「それで近づいてきたんじゃ、そろそろラアンドリウスの方が必要な理由を教えるぞ」


 「それは...?」


「それは簡単、贄じゃ」


 「は?」

ラアンドリウスの口から、彼もが思わずに、その声が出ていた。

下書き消えたことある

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