第七十七話 赤道:神崩龍滅(エスファウ=ラン=グシェ:ガルム=リュガス=トゥルナウ)
「くどいぞ!これで全てを終わらせてくれる!」
雷が空を裂いた。世界が裏返る音がした。
だがそれは、終わりではなかった。未だに始まりに過ぎなかった。
巨獣の体内——神の亡骊が蠢く深淵から、ガルシドュースは押し出された。
圧縮される。変形する。
醜い肉塊の獣は彼の肉体を押し出して、かつての形を捨てるようにして、連なる山脈を越えるほどに大きな体を縮こめた。
それは山ほどの大きさで、首のない、より生き物の形に近しい、そんな四足獣へと凝縮された。
皮膚は鋼よりも硬く、神術を膜のように体に纏えば皮ごとそれが張り詰め、雷鳴さえ弾く守りを纏う。
そんなものでもガルシドュースの攻めを前にしては無意味である。
エバンドルのいう域の中であれば、感じることがある。
獣にもその域ならばわかることがある。
それは概念による上書きではないかと。
ならば信仰で対抗するべきとガルシドュースはなんとなく本能的に思考で、己が記憶にある対策を掴んでいた。己が神術を上書きして、得意な魔法の領域での作戦をやめさせては、神術の純度の作戦になってしまう。質こそガルシドュースの純潔と言っていい神力に劣るものの、やつはすでに長く貯めていたと思わせるほど膨大な力を感じさせる。
ならばガルシドュースは対抗だけでは上にはいけない。
さすれば、己が意思を邪魔して、対極する強引な域に対抗するには、こちらも量を増やすべきとし、人々に祈りを求めた。故に。
「おおおお!このまま押し通してお前を贄に変える!感じたこともないぞ!」
ガルシドュースは今までに感じたことがないものを、使った。魔法を使う時でも祈りを捧げる儀式は知らなかったからだ。
だが魔法の儀式の内容を考えれば至極当然であり、様々手立てで魔法を強めるのも、一種の暗示や表現などに近ければ、当然祈りもそうである。
もっとも強くもなく爵銀すらもない存在は祈りをしても何も残らないのも道理なため、傲慢なほどの魔法使いは誰しもこれには気づけない。
贄以外として人々の大切さを。
ならばガルシドュースはなぜ祈りを駆使できる。
答えは、彼を媒介にして、いわば儀式の贄にすれば良いことであり、彼が力を持ってして異なる意思を変貌させては、今や、確実にそれを力へと変えていく。
「うぉおおおお!」
だが獣は未だに倒れない。
その四肢は大地を抉り、尾は空を薙ぐ。
それはガルシドュースも同じであった。
まるで共鳴するかのように彼はすでに体が変化していた。
頭部には後ろにほぐしていや髪も変形して、垂らしていた髪はちぎれては。角のようなものを伸ばせそうにあったその角からは大きく、鹿のような角を生やしていた。
「ぐんん!」
巨獣もまたガルシドュースに反応する。
その目なき頭部から、ただ鼓動だけが漏れ出る。
それは生命への渇望の体現であり、彼のその意思を咆哮へと変えるのでもあった。
「まだか……まだ終わらぬか!」
声は雷より低く、血潮より熱く、体内で渦巻く。
巨獣は咆哮し、神術の膜を震わせては風にする。
殴れど殴れど、拳は滑り、雷は散る。
守りは完璧なる円環。
神の残滓が、なおも彼を護り、縛り、嘲笑う。
その時、風を裂いて駆けた。
セオリク——忠なる騎士、愛馬セルバーブを駆り、嵐の如く参戦せり。
「ガルシドュース! 我が命、尽くさん!」
「セオリク!!!なぜ!」
馬蹄は雷鳴を蹴散らし、神術の渦中へ突入す。
「大丈夫である!!!すでに村の方はなぜか貴公の雷が飛んでは今や異形の襲撃も圧力が減っている!!!」
(な、まさかッ!」)
彼にはわかった。
彼、ガルシドュースへの祈りが時に力は常に変換されているから、セオリクが援護をしていた村の方も、今や今や、走る雷鳴で今はもう少し余裕ができた。
(ここまで来たのか!!俺の力は!ならば勝てる!俺とセオリクで!アスフィンゼで!リドゥで!ハルドで!勝てるぞ!)
だが巨獣が一閃。
「ハッ!」
愛馬ごと吹き飛ばされる。
「セオリク!!!!!!!」
彼が愛馬のセルバーブの体ごと彼が回転し、血煙を上げては、足の一部が引きづりを持ちながら、時には大地に叩きつけられ、足を折られるなどして骨もぼろぼろへと変わる。
セオリクは鞍から転落しないように必死で、もはや絶命の寸前。
——だが、愛馬セルバーブは最後の力を振り絞った。
瀕死の体で立ち上がり、いや、体制を直しては、足を無理矢理にも曲げて、折った!
そして勢いよく折れたそれは飛んで、セオリクは彼が愛馬セルバーブの後蹄にて蹴り飛ばされる。
相棒の意志を察知したセオリクは、空中で身を捩り、懐より石を掴む。
それは神器——名はまだ理解していない。
今だに心音すらも身につけていないからだ。
だが神器の性質であれば例え遠くからでも、今はあの獣には一矢を報える。
それを知ってか、いや、セオリクならば知らなくてもそうするであろう。
彼は神器を自身に当てがい、己が身を矢と化す。
風を切り、雷を裂き、巨獣の守りへと突進。
「全て……全てを全てを!!」
セオリクの神器が輝き、力の総てを転写す。
飛石、雷槌、血河の環——三つの転写からくるその奔流が、ガルシドュースへと注がれる。
「なっ!」
(距離は遠いが、まさかここまで!伝導できるなんて!)
彼は驚かずにはいられなかった。
自身の体に触れずに物質転換の産物に触れるだけでここまでのことは起こる。
今や、手製の武器、喧騒に対しても、その構造から素早く、かつより正確にガルシドュースが神器の力を入れていくのに役立つ。
「うぉおおおお!」
彼の体が震え、鼓動が加速する。
力が満ち、筋肉が膨張し、守りの膜が軋む。
ガルシドュースは飛んだ。
山ほどの巨躯が、雷の如く跳躍。
連打が始まる。
拳、拳、拳。
一撃ごとに穴が空き、神術の場所が露わになる。
だが暴風が来る。
緩みきったようなその体は空で伸び、まるで風に呼ばされる布のようであり、変形しては風を飛ばしていく。
顔が弛けるほど、解けるほどに。
風は刃となり、肉を削ぎ、骨を鳴らす。
何度も落ちそうになる。
爪が滑り、尾が千切れ、血が雨と化す。
——それでも、掴む。
力強く。
怒り狂うように。
やれ! やれ! やれぇぇぇ!
咆哮が、体内で渦巻く。
それは古の詩人の如く、韻を踏み、節を刻む。
「破れよ、裂けよ、開けよ——我が拳の前に!」
「終わりはしないぞ!」
エバンドルの声が突如鳴り響く。
雷鳴のように、否、ガルシドュースや獣の雷の音すら超える大きな声。
雷鳴は止まぬのにやつはきた。
空は焼け焦げ、大地は物質転換での血の筋を走らせ、巨獣の咆哮が生きるものたちの骨を軋ませる。
ガルシドュースは、人の形をかろうじてあるようなその体で、なおも巨獣と対峙していた。
尾を振ればまた雷鳴が鳴り響き、戦いはより一層熾烈を増す。
故に傷はより深く、血は雨のごとく降り、しかしなおも鼓動だけは衰えを知らぬ。
それは彼の意志であり、祈りの残響であり、いわば赤帝の道となり得る。
「は....終わらない...?誰がっ決めた」
巨獣は、裂けた。
砕かれたはずの体が、まるで嘲笑うかのように裂けた。
だがそれは破壊ではなかった。
圧縮。
獣は自身の肉体を、鋼のごとき密度へと凝縮し、伸ばす。
裂けた傷口から、肉が蛇のごとく這い出し、骨が槍のごとく伸び、皮膚が膜のごとく広がる。
一瞬にして、巨獣は天を覆う雲のごとき姿へと変貌した。
薄く、軽く、だが無限に広がる。
気体を一点に集中し、吹く。
それは風ではない。
神術の奔流。
雷を孕み、血を纏い、祈りを呪いに変える暴風。
ガルシドュースは吹き飛ばされた。
裂けた神術の守りを、彼に集中して。
獣は守るつもりだった。
自身を護り、ガルシドュースを遠ざける。殺傷ではなく遠ざけるだけ。
まるで何かを目指しているように。
風は刃となり、肉を削ぎ、骨を鳴らし、息さえも乱す。
彼の体は空を舞い、雲を裂き、大地へと叩きつけられる。
血が霧となり、雷が悲鳴を上げる。
「まだ……まだだ!」
(まだ聞こえる...俺への...声が。)
村人たちは祈る。
都の民は跪く。
だが祈りだけでは届かぬ。
巨獣の暴風は、世界を隔てる壁となる。
風は声を呑み、雷は祈りを散らすからだ。
ガルシドュースは、己が道を決めるところまで来てしまった。
自身に足りないもの。
それは認識だ。
彼は自分が誰かも知らない。
故に祈りの声で意思を固めねば、これ以上に神術を高められなかった。
だが所詮寄せ集め。
「お前は終わったんだ!腐敗にして...腐敗の母の産物を壊した!私ですらこれはやらない!だから止めたんだ!この地を!全ての時間を!」
赤帝の道。
成道を得るため。
彼は察知した。
この戦いは、ただの争いではない。
意味がある戦いだ。
(俺にとっての。)
ここまで戦ってきた、もう決めるなんて必要はない。
最初から終わらせるのを目指したのではないか。
道を知る?
そんなものは必要ない。
俺が向かう先全てが道だ。
通れないことはない、止められることも意思を保てないこともない。
赤帝の道だ。
赤道と呼ぶ。
血の道。
雷の道。
炎の道。
どれも苦しい。
彼は立ち上がる。
傷だらけの体で、拳を握る。
「赤帝轟拳——」
技。
「何をする!それでどこまで持つか!!!お前ごときに!」
炎が血を熱し、雷が感覚を高めてそれらを纏い、神速で敵を粉砕する拳。
だがそれだけでは足りぬ。
巨獣は神のを目指す寄せ集め亡骸。
神術を模倣した残滓。
ならば、さらなる技を。
「絶牙龍滅——」
己が意思を無理矢理相手に流し込んでただ力を比べて大きくある方が勝つ。
二つを合わさる。
赤帝轟拳神速を利用して一瞬で到達する最大限!
瞬時に全ての力を流し込む。
絶牙龍滅のように時間がかかり、振り落とされることや、外れる危険もない。
故に膨大な破壊を生む。
故に全てを投げ捨て、相手か、自分が死ぬまでの技。
「赤道:神崩龍滅!」
拳が輝く。
光となり、刃となる。
一撃。
巨獣の雲のごとき体を、貫く。
圧縮された肉が裂け、気体の奔流が散る。
獣は咆哮する。
「無駄だ!すでに終わっている!あれは蛹だ!不完全だろうが無駄だ!」
だがその勢いに乗る。
正確に言えば勢いのせいで不完全ながらとった手段だ。
殴られた衝撃を、利用する。
体を圧縮。
雲から人形へ。
山ほどの巨躯が、一瞬にして人の大きさへと凝縮。
だがそれは、ただの縮小ではない。
包み込む。
ガルシドュースを、まるで母の胎のごとく。
「——っ!」
彼は包まれた。
巨獣の人形が、腕を広げ、抱きしめる。
圧力。
熱。
神術の残滓が、彼の体を締め上げる。
骨が軋み、肉が裂け、抱擁だ。
「技が模倣されただと!」
(やはり一緒か!こいつらどれだけ模倣が好きか!)
巨獣の人形は両腕を大きく広げ、ガルシドュースをまるで胎内に引き戻すように抱き締めた。
圧力は静かで、残酷だった。音もなく、骨が軋み、肉が潰れ、血が内側から滲み出す。殴らない。ただ、抱き殺す。
「貫かれてッ!」
両手を前に伸ばし、相手の胸——掌を重ねている。
指の先がそれを貫きなお力を流し込んでいる。
ただ、押し込む。
両者の力が、掌と胸の一点でぶつかり合う。
獣の掌がガルシドュースの背中から胸まで力を流しては、ガルシドュースも獣の胸を背中まで破っては力を流し込む。
彼の掌から迸るのは、熱く、脈打つ。
巨獣の胸に触れた瞬間、波動は血管のように広がり、神術の膜を内側から押し広げては壊す。
対する巨獣の力は、冷たい。
無数の亡骸が紡いだように嫌なもの。
とても重く感じる、死の密度というべきもの。
抱擁の腕は、鋼鉄の輪より硬く、溶岩より熱く、虚空であり、空虚だ。
抱擁という行為の印象を覆すほどにある。
まるで愛情を感じないのに親密なる距離。
兄弟のような姿をした両者。
両者の体は、一点で繋がる。
なのに感じるのは殺戮か。
ガルシドュースの両掌が、巨獣の胸の中心に重ねられたまま、動かない。
巨獣の両腕が、彼の背と腰を包み、ゆっくり、確実に、締め上げる。圧力は音を失う。音すらもなくガルシドュースの体はぼろぼろに崩れていく。
骨が内側から軋み、肉が潰れ、血が皮膚の下で滲む。
だが声は出ない。あまりにも大きくある力が対抗するからだ。
力のせめぎ合い。
後に彼が言葉を元に書けれた詩にはこうある。
我 掌と胸の狭間で
奔走し、掌を押し込む。
血潮が胸と顔に飛び散る温もりは、母の口づけのようだ。
「この腐れ野郎……!」
「俺の掌で、てめえの胸ん中を抉り抜いて、膿汁を絞り出してやる……!」
俺はもう、誰かの恐怖に見えやしない。
お前が眼前に出てきた。奔走し、笑う。
天を仰げば、かつてない自由が満ちる。
道はある。
「馬鹿野郎、臭え獣が……!」
「てめえのぬるい熱で、永遠の残りを焼き払えると思ってんのか……!」
お前は何も通じねえ。何も教えてこない謎の言葉ばかり投げつけて俺をくりしむ。
それに、話して感じたことがあった。
俺は誰かと話してわかったことがある。
話さなきゃ通じねえことがある。
お前たちにはわからない。 何も言わないから。
表情もなければ言葉もない。なら残るのは今これだけだ。
掌が肉を抉る感触、骨を踏みしめる柔らかな沈み込みが告げる──
もはや私は誰かの落とし子でも、孤児でも、龍神の信者でもない。
「黙れよ、古い腐敗した屍……!」
「胸の奥から漏れる腐った息、俺は嗅ぎながらここまで来たんだ……!」
詩はまたこうある。
自分を善と思ってんだろう。
力が奔流し、掌が先を押し込む。
血潮が胸と顔に飛び散る温もりは、母の口づけのようだ。
「笑わせるな、塵みてえな命……!」
「血と涙の濁った汁で、永遠を穢そうってのか……!」
お前が善意を見せなきゃ、善良な奴は寄りつかねえ。
中立の奴はついてこねえ。
邪悪な奴は抑えられねえ。
望むことはなんだ。
勝手に人を斬る奴が威嚇でどうにかなると思ってんじゃねえ。
力を見せびらかすのは自信のなさだ。
計画に不安があるにしても失敗したら最初から協力者を探せ。
俺に負けてんだろ、今も。ならお前と同格のやつはいるだろう。
お前のやり方じゃ群れの不安を煽るだけ。
知らないから、理解できないから。
群れは散り、悪は頭を持ち上げ、善意は去る。
「永遠? 呪われちまえ……!」
「てめえの朽ちた歴史、俺の掌の下でクソみてえに崩れてくれりゃいい……!」
まぁ俺には関係ねえ。
俺はただ、自分の先を目指すだけだ。
だからお前の善悪はもう俺にやるな。
俺は自由も正義も欲しくねえ。
ただ未知を消し去りたいだけだ。
「命を守っているんだ私は!」
俺はすべて森を伐り倒すべく、またすべての山を掘り平らにしたい。
でもなんだか、何かが隠れている感覚は消えない。
そう思える。
見える限りの生き物を殺したら、その感覚は強まるばかりだった。
「俺には何かいやなことがある。お前もそうだ!守るも何も。もっとわかるべきことがあるだろう!」
掌が肉を抉る感触、骨を踏みしめる柔らかな沈み込みが告げる──
「歴史だの腐敗だの……!」
「てめえの残りを、俺の掌で絞り潰して、汁を地面にぶちまけてやる……!」
力がます。
押さえられて、後ろに倒れる。
天を仰げば、かつてない自由が満ちる。
「無駄だ、もう塵みてえな……!」
「てめえの熱も波も、腐った肉に呑まれて、跡形も残らねえ……!」
「終わりにしよう!」
「赤道:神崩龍滅!(エスファウ=ラン=グシェ:ガルム=リュガス=トゥルナウ!)」
まず地面が沈む。
ガルシドュースを中心に。
力が加わるからだ。この技のせいで。
沈んだ部分に向かって、周囲の土が吸い寄せられる。
砂が滑り込み、石が砕けながら落ちる。
溝のような凹みが、地表にひとつ走る。
凹みの中心から、色の分からない火が噴き上がる。
赤でも青でもなく、光と影が混ざったような火。
熱いのか冷たいのか判断できないが、見たものが判断を邪魔するのか、違う。
振れたものは色を失って崩れ落ちる。
炎は広がらず、上へ伸びてゆく。
空気が押され、周囲に風が走る。
風は一方向ではなく、四方八方へ跳ね返る。
流れがおかしいことを見れば理解できる。
草が逆立ち、地面の砂が舞い、視界が濁る。
地割れが広がる。
鋭い線が地面を切り、土が左右に裂ける。
裂け目の奥は暗く、深さが見えない。
そこへ石や破片が崩れ落ちる前に、粉のように砕ける。
空が震える。明らかに何か揺れているようのが見える。
おかしいな光景の寄せ集めだ。
雲が引き延ばされ、光が揺らぎ、薄膜のような層が空一面に走る。
その層が破れ、白い閃光が流れる。
光の筋に触れた雲は裂け、欠片が散って消える。
ズズズ
今度は地面が盛り上がる。
ふくらんだ土が破れ、破れた土塊が砕けて灰色の粒になる。
粒は風に乗り、高く舞い上がり、空へ吸い込まれていく。
舞い上がった粒のすべてが、しばらくすると光に溶けるように見えなくなる。
火柱が細く伸び、空へ向かって線を描く。
その線が揺れ、波打ち、周囲の景色を巻き込む。
近くの岩が浮き上がったかと思えば、揺れに触れた瞬間に崩れる。
崩れ方は速く、形を保てない。
空の層が一枚、まるで地面へ落ちるように沈むか。
地面が青くなり始める。いや、これは凍結か。氷か。
その沈んだ空のような部分には音がする。というよりも音が集まり、重い衝撃が響く。
響いたあとには、地面が押し平られたような跡が残る。
しかし凍結しても火は消えない。
高さを変えながら、地面と空のあいだを貫く。
焼けた跡は黒くならず、白く乾いたように色をなくす。
硬い岩でも、柔らかい土でも、触れた部分は同じ質感になる。
広がった地割れはゆっくり閉じる。
閉じるとき、土が擦れて火花が散る。
火花は地面に触れる前に消える。
地面には新しい裂け目が生まれている。
その一連の流れは止まらず、
沈み、燃え、裂け、砕け、舞い上がり、
すべてを同じように変えていく。
「バカな!バカな!こんな終わりなど!お前は負けないというのか!なぜお前は勝てる!なぜだああああああ!」
「こんな終わり方!もっとだ!もっと抗って!最強の姿ではないというのか!!!!」
「終わりだ...お前はとっくに終わったんだ。」
「ッ!....お前もいつかこうなる、その時だ!お前もだ!ガルシドュース!」
「そうか、腐敗の母とかだろう。もうここは飽きた、俺相手ならちょうどいい。こいつらには報復しないんだろう?あいつ。ならここを出て旅の続きだ。アスフィンゼを助けたいし。よくわからないし。」
「ああ!なんで!なんでなんで!」
「そうか、この村どもは襲わないってことにしておく。
「なんで!!!なんで!」
「知るか、興味もない、力もそろそろない、轟拳すらもう打てないほどこの技は疲れるんだよ。お前も俺の中でいい加減執念とか持つな。まぁこいつさえ殺せば外と反映できないだろう。」
「だから止めだ!「赤道:神崩龍滅!(エスファウ=ラン=グシェ:ガルム=リュガス=トゥルナウ!)」」
轟ッ!
「....?は?」
「おうどうした?」
「いやあにさん...なんすかこれ?」
「そうか、いい加減お前もバカな話に飽きる歳か。そうだ、ガルシドュースは全部うそ」
「違う!違いますよ!」
「...ん?」
「これみてください!凍結!空!あの場所ですよ!」
「ッ!!!」




