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青灰の地より  作者: 不病真人
第一部 龍と男に焔 第三章 黎明が前の明け星

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第七十四話 大笑い

(そもそもあれはなんだ?神術はなんだ?俺はもっと形なき気配で、ただ転換して火になると思ったが!うわ!)


 轟ッ!

 「きやがれ!」



遠く、霧の彼方──いや、もはや霧など関係ない。地平を覆う黒い影が、すべてを飲み込むように広がっていた。


巨大な影が近づく、巨獣の行動だけでやつは大きく見えていく、その実態はあまりにも大きすぎる体のせいである。


 向かう先で全てが消失をする。

その先には村もあれば人もいる。



「おい!おいおいおい!あっしのことを聞けばいいことだ!ウガエンドルのものらでえ!」

 村の地はは、ウガエンドルが端の端と言わねばハルドは理解してくれない。

そうリドゥは誰にもそういう。


 (概ね八百年前の地名のはずだが...?)

知るものであれば誰もが疑問に思うだろう、なぜそれを知っている。お前たちは。


 「うわあああ!」


山裾に寄り添う小さな集落だ。

普段は穏やかな風が麦畑を撫で、子供たちの笑い声が響く場所。


 「そう聞きましたが....世の中ますます悪へと成り下がるとでもいうべきでしょうか嗚呼...」


だが今は違う。空が沈み、大地が唸る。雷鳴のような咆哮が、骨の髄まで響いてくる。

 「うわあっ! あれはなんだ! 山が……山が動いてる!あああ!」

 ある男の声だろうか。いやもっとたくさんいるが、共通するのはみな慌てて、声があちらこちらへと響いた。


「いつも通り、村の外れで探索を握っていたんだが、こんなの見たことねえ! 」


 「お前さんらは誰だ!ダマンゲル!よそのものがいるが今はいいだろう!おい!」


「あっしみたいな強者が、こんな化け物じみたもんに出くわすなんてよ! たりまえというべきじゃ!」


 「たわけはどいてろ!あっし、ヴォルクダルゲム・ヴァンがただ一人の大弟子、剣客がハルド名を乗れば今で!おんどれら黙れでぃ!」


 手が震えて、鍬が地面に落ちちまった。

(なんだこいつ、武器か?あっしなら...いやくわではない...)


あれは鍬にいろいろ妙な物が...うねうねして...生き物?


 轟ッ!


「ん!」

(なんて音だ...!?あれは旦那!!?エバンドルの旦那か!!!)


「くだばりやがれ!うーおおおおお!」

遠くの山脈──いや、あれはもう山じゃねえ。黒い巨体が、ゆっくりと立ち上がる姿が、霞む視界の向こうに見える。雷が走る音が、腹に響く。



「我が威名に恐れろぉ!ドゥラグ=ゴウグ=ダルグ=グラグル(赤帝轟拳)!」


 「...声は違いないがいくらなんでも...」



「怪物風情が!ドゥルガン=バルグド=ドゥラグ(炎のごとき勇猛突撃)」


(...なんだよ...なんか怪物の周りで系みたいのが回ってりゃ...絶対旦那じゃ)


「嗚呼嗚呼!我らが偉大なるガルシドュースよ!」


 隣で、リドゥが詩を紡ぐように話出す。


 「ふとしても〜彼の地にて!気高くあれ〜偉大なる人ガルシドュースよ〜」


 「赤帝轟拳!」



「しては〜これは、古の神話の再来か。黒き獣が天を覆い、大地を喰らう。影の咆哮、雷の息吹ぞ……小生の新作に、ぴったりでしょうね。偉大なるガルシドュースが叙事度に新編一つ。」


「だが、冗談抜きで、村は危ういですぞ。皆の者、急げ!」


「...あれ旦那が回ってる?!」


「ん...?」



 「いや旦那が!」


「はて?ハルド様?」


「旦那が戦ってる...多分!」


「もしや...我らが英雄の姿を見えて?」


「ああ、あっちを見ろ。」


 「小生にはただ光る..線が」


「あっしでもよく見えないが...確かに何か旦那の気配が...」


「ドゥラグ=ゴウグ!ダルグ=グラグルゥゥ――!!」



「...行きましょう...頼みますハルド様。」


「あっしに...いやなんでも...」


 詩人の声は、いつもの気取った口調でさらに歌ってるから少しは響くが、あたりがとてもうるさいせいでよく聞くにしても微妙だ。


「おい!あんたも見てるだけでやるな!ダマンゲル!」


 「...」


(考えていたところでしょうね。かわいそうではありますがその時ではないですぞ。)


 「まぁまぁ、ハルド様、ダマンゲルさん、今は早くみなさんをまとめましょう。」


「ああ...リドゥ...」


「しゃっベッあ?!! 」


 誰の目にも焦りが宿ってる。


ハルドの反応、ダマンゲルの反応。

今やただ書くにしても、必要として当時にこのことを聞いたのを思い出しては...きっと恐ろしいなと伝わってくる。

 “虚空の帝皇..ガルシドュース....”


彼が赤帝と命名してかのその初陣の終わりは決して完璧ではない。



 「いいから!お前も逃げろ!」

言われるがままに小生は村で拾った楽器たちを背負ったまま、村の広場へ駆けつけた。

(吟遊詩人として何かできそうな気はします!)


 村人たちが、慌てて集まってくる。老婆が子供を抱え、若者が槍を握り、農夫が鍬を武器に変える。

みんなの顔が青ざめてる。

 ダマンゲルは、無口のまま、ただ立っていた。巨漢の戦士。

 ゆっくりと、村の門へ向かい、槍を肩に担ぐ。視線は遠くの巨獣へ。


 村の老人が、声を張り上げた。

 「皆、聞け! あれはただの嵐でない! 古い言い伝えだ……雷を纏う黒き山。目覚めれば、世界を踏み潰すという!この方らが最後の命綱じゃ!ハルド様の言うことを聞くんじゃ!」


「...?」

(このご老人この前までは何も存じないと...?)

 「聞いたかお前さんら!」


「このダニマドからも言わせていただきます、この人ら、ハルドさんにリドゥさんを..どうか...信じて...」


そう言って老婆はふかふかと頭を下げた。


 「...逃げた方が..」


「無理だ、もっと間近にくるのがいる。」


「見ろ!この手にあるものを!」



「ひぃ!ククくくく!くびぃ!」



 「あ?バカにしてんのか?」

手に持つは人の頭が形にして、見た目は異形なる存在で、頭だけというのになお生きては口を開いて、剣客のハルドに噛みつこうとする。


「こいつらはうじゃうじゃいる!どうだ!」


「ヒィ!」


 爵銀をこめた声に誰もが驚きの声を上げた。

 


しばらくしては村人たちが動き出す。木の柵を強化し、弓を構え、火を灯す。

だが、それであの異形えあが止まるかよハルドは思う。

(あっしは、...農夫らが...爺さん婆さんらが...こんな化け物相手に、何ができるんだ? でも、逃げらんで、行先も知らない...)


ブーン!

「おっ?」


 リドゥが、笛やらいろいろを鳴らしては歌い始めた。勇気を奮い立たせるための、即興の詩か。


 「器用だな。」

(同時にいくつも鳴らしている..?すげぇ...けど今それじゃ!)

 「聞けよ、里の民よ! 黒き影が咆哮すとも、小生らの心は折れぬ! 雷鳴を歌に変え、風を味方につけよ! 友よ、貴公らを友としよう!今や偉大にして敬愛すべし我らの友が!かのガルシドュースが戦うなら、我らも戦うべきだ!そうしかない!」

 声が、村に響く。遠くにいるものにも聞こえるであろう。


少し遠くにいるダマンゲルが、斧を握りしめ、門の前に立つ。無言で、ただ頷くだけ。


(....そうか、なるほどな...聞いたことがある..戦場では楽器で...伝言を....うちのヴァンの旦那が言ってたなぁ...)


 遠くで、また咆哮が響いた。


ボオオオオオ!


「ウルセェ!バカ!」



 赤帝轟拳はただ大地を震わせて、村の家々が軋む。霧が渦を巻き、雷光が空を裂く。

あの巨獣は、まだ全貌を見せていない。だが、確実に近づいている。息遣いが、風となって村を撫でる。鉄の匂い、焦げた土の臭い。

決してガルシドュースの攻撃に怯まない。


 ハルドは、剣を出しては握りしめた。

 「来いよ、化け物! あっしが、ぶっ飛ばしてやる!」

ガルシドュースの旦那、旦那よ……お前さんが上空で戦うなら、下では俺たちが持ち堪えるから。頼んます、勝ってくんさい。


ボオオオオオ

 だが、巨獣の影は、声は、ますます大きくなり……。


体からは無数の何かが...

「あ、あれは!」

(怪物が落ちてくる!!?動くたびに!!)


巨獣の脚が、再び持ち上がった。

激しく動き、体からは無数の異形たちが蚤のように跳ね落ちる。


轟ッ!

 今度は、こっちか!

 空が、黒く塗り潰される。  

視界のすべてが、蹄の影に飲み込まれる。  

山脈のような、天を支えているのかと言いたくなるような脚が、ゆっくりと振り上げられ、振り下ろされる。  

その軌道は、まるで空そのものを踏みつけるかのように、俺の頭上を狙っていた。

(来る! 跳躍か!? いや、行進だ!行軍だ!)

 ボオオオオオオオオ!

 咆哮が、音波となって空気を裂く。  

風圧だけで雲が引き裂かれ、霧の海が渦を巻く。  

(くっ、まるでこいつが世界を置き換えてるみたいだ!)

巨獣の体が、地面を蹴った。  踏んだ。


大地が、爆ぜた。

 ゴゴゴゴゴゴゴ!

 地殻が砕ける音。  

平原の端から、岩盤が粉々に飛び散る。  

その反動で、巨体が浮き上がる。  

四足の獣が、跳躍したのだ。  

山脈が、宙を舞う。  

尾の先が雲を薙ぎ払い、前脚が空を掴むように振り下ろされる。

 落下。

 影が、俺を覆う。  

熱風が先陣を切り、

雷の粒子が雨のように降り注ぐ。

 (熱い! 雷か!? 触れるだけで焼かれる!なんてやつだ!)

 巨脚の爪先が、視界を埋め尽くす。  

蹄の先だ。先端にある一つ一つの爪が、俺の体躯の数百倍に見える。黒鉄の色にある表面に刻まれた無数の亀裂から、青白い電流が迸り、触れるものを焦がす。  

 「くそっ!」

 俺は全速力で横へ飛ぶ。  

ドゥラグナ・ニリマ・スラグド(勇敢なる突進で加速を限界まで絞り出す。  

風が裂け、空気が悲鳴を上げる。  

だが、遅い。  

影の速度が、俺を遥かに超えていやがる。。

 

ドガアアアアアアア!

 衝撃。  

巨脚が、俺のすぐ横に着地した。

 ――いや、着地ではない。  

空に。

 脚が、俺のいた空間を突き抜ける。  

爪の先端が、霧の海を割り、雷の奔流を撒き散らす。  

その一撃の余波で、空気が爆発した。  

衝撃波が俺の体を叩き、鱗の鎧が軋む。  (ぐっ……! 空が、砕けた!?いやこれは神術で無理矢理その場を占領した!固形物...いやこの粘り気は!粘液状の神術の力だ!)

 無属性にある、変化もしていない神術そのもので視界が白く染まる。  

巨脚の周囲で、雷が連鎖爆発を起こす。  

結果にして青白い閃光が網目状に広がり、空間そのものが溶ける。  

熱風が俺を煽り、平衡感覚が狂う。  

落下の軌道が、俺のすぐ下を掠めたのだ。

 ━だが、それで終わりではない。

 巨獣は、着地していない。  

跳躍の頂点で、体を捻り、次の脚を振り上げる。  行進だ。  

一歩ごとに、世界が崩れる行進。  

後脚が地面を蹴り、巨体が前進する。  

(この体を空で軌道まで!?)

その勢いで、前脚が再び振り下ろされる。  


(次は当たる! 距離が縮まってる!)

 ボオオオオオ!

 咆哮が、俺の骨を震わせる。  

巨獣の目が、ようやく見えた。  

瞼が、開いていた。  

山脈の中央、裂け目のような巨大な瞳。  

赤く、青く、光を宿した二つの深淵。  

そこに、俺の姿が映る。小さく見える。


 熱風が、俺を包む。  

落下する脚の爪から、無数の破片が剥がれ落ちる。  一つ一つが、俺の体より巨大な岩塊で雷を帯び、炎を纏い、雨のように降り注ぐ。

(破片が! 避けきれねえ!)

 

落石!


 空が、崩落する。  爪の隙間から剥がれた黒鉄の欠片が、隕石の群れのように俺を襲う。  

一つが当たれば、俺の体は潰れる。  

雷の粒子がそれらを加速させ、速度は音速を超える。

 「神術、最大展開!」

 俺は叫び、全身の神力を解放する。  

雷霆で鱗が輝き、雷霆を束ねるようにして当たるものを砕かんとして、いわば青い障壁を張る。  

 破片が、障壁に激突する。  

一つ目、二つ目、三つ目。  衝撃が、俺の腕を痺れさせる。  (硬え! こいつらの破片すら、俺の神術を削る!肉体だからか!!!こいつまさか肉体を贄にする力を!!)


 五つ目で、障壁に、雷霆の防衛線には亀裂が入る。  


十個目で、俺の体が吹き飛ばされる。

 (くそ、押される!)

 巨脚が、迫る。  その爪底が、俺の頭上十歩の距離。  風圧だけで、俺の飛行が止まる。  


(しまった潰される!!!!)

 その時。

 「我が石よ、砕け散れ!」

 下から、轟音が響いた。  

「セオリク!!」空を裂く光の矢。

何かがが、巨脚の爪に集中する。

 

 続けるのは爆発。  

石のような奔流の爪はやがて表面から奥へと削り取られる。

黒鉄の甲殻に、亀裂が走る。  

やがてはやつの、巨獣の爪にもあたり少しは雷の脈動が乱れ、青白い光が噴き出す。


(少しだけずるいな、お前は神器が目覚めたばかりだろうに、だがさすがだ!セオリク!)

 巨脚の落下が、わずかに鈍るからだ。

その隙に。

「今だ!」

 俺は加速する。  

火雷を纏い、巨脚の側面を掠めて飛び上がる。  

爪の隙間をくぐり、甲殻の表面を駆け上がる。  

熱い。硬い。生きている。  

だが、亀裂が入った。  そこが突破口だ。

 巨獣の行進は続く。  

次の脚が振り上げられ、大地が再び震える。  


 「あほが!」

(無駄な攻撃は隙になるだけだ!)

俺はもう、地面にいない。  

巨体の背に、取り付いていた。

(次は、俺の番だ……!)

 ドクン。ドクン。  足下で、雷の鼓動が鳴る。  


(間違いない...この鼓動心音!ならば俺も最大を出そう!)


 


「ドゥラグ=ゴウグ=ダルグ=グラグル」



 「...きかん...だがまだだ!まだ俺の全てではない!」



ドクン!


鼓ッ!

「久しいぞ!この昂まり!そして恋しいぞ!この鼓動!」


 「この高揚感!なんたる万能さを感じさせてくれる!」

ドクン。

 ……ドクン。


 世界が、止まったように思えた。

 いや、止まったのではない――すべてが、その心臓の拍動に合わせて動かされているのだ。

そう思わせる、この鼓動は。

鼓ッ!

 ドクン。

 空が鳴る。霧が震える。雷が跳ねる。

 その音は、もはや血流によるものではない。神術だ。


 「――来たか、『心音』。」


 胸の奥が、熱を超えて灼けていく。

 心臓が自らを打つ。自分の血肉を鼓面として叩きつける。

 ただの鼓動ではない、存在の再起動。

 死んだ心臓を、再び打ち鳴らす神の槌だ。

「思えば最初からこうではないか。なんどもきた道だ。」


(そうだあったではないか!すでに!アスフィンゼと出会した時に!)

“同時に火で血圧は強制的に上昇させてられてしまう。”


(故に!)

“おかげで心臓の鼓動が早まり血が早く作られるようになる。”


(心臓の鼓動がッ!!)


 ドクン――ドゥオン――ドゴンッ!


 骨が鳴る。

 血が沸く。

 筋繊維の一本一本が雷線となり、全身を奔る。


 (……ああ、これだ。これが、俺を蘇らせたあの“音”だ。)


 初めてそれが鳴ったのは、死の縁――すべての光が消えた時。


──「心音」について、少し考察してみようか。


(ん?誰かの記憶かまた。)

まず、あれは単なる“鼓動の高鳴り”なんかじゃない。

もっと根源的な、生命そのものを叩き起こす――“心臓という名の戦鼓”だ。


通常、人間の血流は筋肉の収縮や運動によって補助されている。

だが「心音」の発動者は違う。

彼の心臓は、もはや臓器ではない。

“巨大な戦鼓”として自らの胸腔を打ち鳴らし、血液を爆発的に叩き出す。


(ほう)


そうか

 心臓は止まっていた。

 だが、勝手にして心臓を殴りつけた。

 「まだ終わっていない」と。

 そして、心臓は死を拒み、己自身を叩き起こした。

(ベックオ時は俺はぼろぼろになって治ったわけじゃない..死んでから蘇っていったんだ。そう思えば肉塊やほかも...)

 ドクンッ! ドクンッ! ドクンッ!!


ガルシドュース!


ガルシドュース!


赤帝!


 世界の拍動が、自分の心拍と同期する感覚。

 視界が赤く染まり、風が脈を持つ。いや風ではなく俺の大きすぎる呼吸だ。

 足元の巨獣の背が、呼吸しているように感じる。

 その呼吸に、己の鼓動を合わせる。


 ――いや、違う。

 巨獣の鼓動が、俺に合わせている。


 「……ははっ!」


 思わず笑みが漏れた。

(この高揚感はいくつもあった。)


鼓ッ!

そうだ、心臓は停止していた、強くなったため、いや強くあるため体が変形した。


(最初の装甲形態もそうだったような...)

どれも高揚する。

言い換えれば、死の淵へといくほどの大変動だろう。

きっとその瞬間、脳が歓喜と錯乱を区別できなくなるのも当然だろう。

笑い出すのは、恐らく“生存の歓喜”と“狂気の混線”による副産物だ。


(ああ感じるぞ。)

 心臓が燃える。

 笑いが漏れる。

 全身の血液が、音を立てて流れるのがわかる。

 心拍は常識の限界を超え、血管という管を雷の管路へと変える。

(また俺は成長した、そしてまだまだ俺は強くなる。)

 ひと打ちごとに筋肉が膨張し、骨の隙間から白い蒸気が噴き出す。毛穴から飛び出す。


 ドクン──ドグン──ドグン──ドグドグドグドグッ!


 血液はもう液体ではない。

 奔流だ。

 体内で嵐を起こす熱と圧力が、神経を焦がし、痛覚を快楽に変える。

 身体は悲鳴を上げているのに、意識は高揚し、狂笑が浮かぶ。

ガルシドュース!ガルシドュース!ガルシドュース!

 「アッッッハハハハッ――!!」


 全身を貫く血流の奔流が、皮膚の下で雷鳴のようにうねる。

 拳を握れば、その音が空を震わせる。

 「心音」はただの鼓動ではない。

 それは命の再起動であり、理性の切断でもある。


(この常人を遥かに超えた感覚..いやすでにそうだ!誰が己が意思で心を動かせるというのだ!)


きっとそうだ、定上の身体が、その精神を満たす者のみが、

“自分という肉体を外部の楽の器なるものとして扱える”ようになして、その状態で強くする、己を、きっと、すでにそう言える。


 脳が焼ける。視界が赤と白の閃光で満たされる。

 (だが、怖くない……怖くなんか、ない。)

 体が崩壊に向かっているのを知っていながら、笑みが止まらない。


 「さあ、暴れようぜ……この鼓動の果てまで!」


心臓がまるで戦鼓のように激しく打ち鳴らされ、その鼓動が全身に反響する。

激しく感じた。

もはやその一打ごとに、血液は奔流となって全身を駆け巡り、心拍の爆発的な上昇により心拍出量は極限的に増加する。

もはや血流が加速の効果は、どんな生きる存在が限界の何百倍、何千倍にも達しているはずだ。


 ドクン――ドクン――ドクン――!!!


 その瞬間、背に走る稲妻が羽のように展開した。

 雷鳴の翼。

 鼓動の度に、雷光が羽ばたく。


 巨獣の背に刻まれた傷が、まるで導線のように光り出す。

 心音が共鳴している――まるで、大地そのものを共振させているかのように。


 鼓動が速まるたび、雷が濃くなり、炎が白に変わる。

 世界がその跳躍、その躍動に従う。


 それはまるで、ひとつの宣告のようだった。


 言うなれば“我は此処ぞ”と世界に宣言するが如く。


無数の鼓動と賛美の声。


 ガルシドュースと。


これは懐かしい。


(そうだ、技を叫べば強くなる、技が!」

ならば今は、この心音とは神術持ちが戦いの中で常に行うことを、生きるだけでも活用すると。


 心臓が戦鼓を打つたび、雷が走り、空が吠え、大地が震える。

 この鼓動が止む時、世界もまた沈黙するだろう。


無尽なる万能感をもたらしては、心がさらに踊る。

「ああははははは!」



 (体がとても強くなった気分だ...)

嗚呼そうだ。


ならばこれはもう単なる「実力の発露」ではない。

一定の到達点に至った者のみが使用できる“技”に近い。そうだ、きっと。


 笑わずにはいれない。感じるものはいつにもます、以前よりもはるかに大きな負担。


装甲形態すらも超える負荷。


(なんとなく、わかる。

おそらくは身体の限界を強制的に突破する代償として、狂笑、激怒、そう言ったある種の性格のなど多様な副作用を伴う。

きっと肉体の大きな変化から及ぶものか、または精神が肉体を影響するか。

超規格の“何かの薬剤”のような現象である。

 

(心臓が激しく痛むな...)

 心臓を無理やり鼓動させ、肉体を覚醒へと叩き起こしたような気分で、そうならばその代償として、苦しむも当然...


(だが此処までの鼓動...そうだ俺は鼓動が強くなるたびに強くなった。

ならば能力もまた飛躍的に強化されるはずだ。


 「こいつでしまいだ!」


ガルシドュース!


「我が心音と共に!すなわちこの賛美と共に消え去れ!醜い怪物よ、速いとて、大きすぎるその体躯ならばどうだ。貴様が背にいるこの俺をどう潰す?無理だ!死ねぇ!」


「ドゥラグ=ゴウグ=ダルグ=グラグル!アルダシグル=ドゥルナ=バグド!(我は真なる双拳を打つなり!) ドゥルナ=バグド(双打)!」

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