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青灰の地より  作者: 不病真人
第一部 龍と男に焔 第一章 覚醒

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第十四話 森から出発したわれらが解体人

 空は青く、風は乾いていた。

 だがその青は、やがてひび割れた硝子のように、町へと近づくごとに不穏な色を帯びていった。


 一行の旅は続く。

 先頭に立ちしはベックオやレウェイチョなどの猛者を倒した我らが解体人、龍を解体せし者、その人ガルシドュース。

灰の大地から出しこと、五日ほどの日を過ぎていった。

その後ろでは

 煩いほどに饒舌な旅の吟遊詩人のリドゥ、火の女ことアスフィンゼらがいた。


リドゥは相も変わらずにその口を一向に閉じようとはせず、ただ、ただ、見聞を言いふらしていた。


「それで、お二人方がいたあの場、おそらく三百二十年前ほどに建立されたですね。」

そう言う声と共に時間は過ぎ、道のりも着実に歩まれていく。


やがて町が見えてくる。


 それなりの大きさの石造りの門が建てれいた町で、馬車や行人が行き交う。


 石造りの門をくぐると、開いた道にて見えてきた町の姿はまさに奇怪であった。


 まるで町全体で活気を装っているかのように、晴れない暗い顔をしていた通行人たち。

その顔にはどこか重苦しいような沈黙を孕んでいた。


「いやな...顔だ...好きじゃない。」

話せば良くないことはわかっていた。しかしなぜか勝手に言葉が出てきた。


 見るに何もわからない子どもたちは笑っていたが、その母親の目は影に覆われていて笑ってなどいない。


 リドゥが肩をすくめ、首元の襟を直す。


 「うーむ、町というのは良いものですな。匂い、声、形、皮膚に触れる予感……それらすべてが詩へと〜

 だがこの町の空気は……小生が情報交換してきますぞ」


 「また詩か」とガルシドュースが溜息をついた。

(よく情報収集と言って唄っては飲んでるだけじゃないか...俺にはわからないぞ....)

そう話しては行き交う旅人や町人に聞く混むリドゥであった。


 しばらくして、リドゥが小さな酒場から出ては顔を見せた。


「で、詩人。情報は拾えたの?」


 「もちろんでございますとも、麗しきアスフィンゼ様。もちろんですとも。

一番は市場の塩売りがこっそりと教えてくれました、高値で塩を買わされましたが、初見の町なんてこんなものですぞ。」

 リドゥは得意げに、右手を胸に当てて、左手を高く掲げては、踊るようにして言う。


 「あの騎士がまた来るぞ、ただでさえ〜子供がどっかいってんってのに〜……とね」


 「……騎士?」ガルシドュースが眉をひそめる。


 「ええ、迷惑しているだけとのことで、本来重要でない話しではありますが、いかんせん子供たちの話をすると嫌がられてしまいます。


「そして、つまり、その騎士は街人が曰く、常日頃に「南の丘で魔女どもが集会を開いておる。かの古き契印の名残りよ。」と叫んでいたそうな」


 そのしてるうちに、蹄鉄の音らしき音が近づく。

そこに続いたのは広場に響き渡る、演説のような声があった。


 ⸻


 「我が名はガレヌ・フォデ・グリオス・セクリオ・ド・ラングシェ。」

声の主は騎士のような外見をしていた。三十代ほどの見た目な壮年の紳士であった。


 「民よ、聞け!其方らの中に潜む災厄を知れ!」


領地を巡回しているかのように騎士は鞍上でゆっくりと視線を巡らせていた。同時にその足元にかけては乗っている馬の前足や後足が、焦れたように何度も音を鳴らしては、地を掻く。


 コッ、コッ……。


 蹄が乾いた地面を打ち、細かく足踏みを始める。左右の前足を交互に動かし、まるで「まだか」と問いかけるように、動きと共に、首を横にしていた。


 宥めるように騎士らしき人は手綱を軽く引き、わずかに腰を落としては重心を馬の背に伝える。

 それだけで、なんと、馬は動きを緩める。

ざわめきはまだあるようで、前足がまた一度、砂を掻いた。


 「……落ち着け、セルバーブ。」


 騎士が続け様に囁くして、「セルハーブ」、「セルバーブ」と何度か馬の名を呼ぶと、馬は鼻を鳴らし、騎士に首を垂れた。

 だがその身体には、微かに震える余熱が残っていた。大勢の人の声と気配で気を取られては、血が騒いでいる。

 騎士はその熱を責めず、むしろ頼もしさとして受け止め、讃えるようにその背を撫で回す。


 馬上の彼は、風を背に、軽く右足を動かす。踵が馬の胴へ当たるか当たらぬかの力で指示を出す。

 すると、馬は蹄をわずかに動かし、半歩だけ前へ踏み出した。それは舞台に上がる前の、静かな助走だった。


「聞けよ、見届けよ、我はガレヌ・フォデ・グリオス・セクリオ・ド・ラングシェ。」


「古の誓いにより誉れを賜りし者なり。」


「何よあれ。」

「またこのイカれ...」


ざわつく町の人々」


 「されど今はただ、誓いを胸に、この世を駆ける無名にある、放浪の剣よ!」


 その声の主、馬上に立つ男は、高級そうな派手な黒い甲冑をまとっていた。

覗き穴から見える両目はをぎらついていた。

 かつての威厳と誇りを保ちつつ、しかしその身は薄汚れ、誰もが狂人と呼ぶような雰囲気をまとっていた。


 「町の南、忌み丘にて再び集結せし魔女の軍勢──それを討たずして真の夜明けは来たらず!

 この町を護るのは何者ぞ!?誰が剣を振るうのか!?」


やはり奇人か、狂人か、罵声染みた声がする。

「騎士様と思いきや変人でしかねぇんだわ。」

 聞くものはいない。慣れた手つきで生活に戻り、それに勤しむ町人たちであった。


勤勉か、愚鈍か。

どちらか、どうでもあるか。


 だが、ガルシドュースらの目には騎士の言葉に、それが仮初の失言ではないと見えた。

(そうではないはずか..?)

そこに恐れと焦りの匂いを読み取っていた。

それは、妄想で作れるような目をしてはいなかった。


「なぜよ!なぜだ!」


声を聞きながらにガルシドュースはある感覚、考えに包まれていく。

(セオリク、勇気を象徴する名前...俺はこの男が....その名の通りに見える...感覚だが...セクリオとなをつけるなんて....そうだセクリオ。)

再び騎士の方を見る。

(ドルザ語において“が勇気”呼べば“セオリク”勇気の男....お前はそうか?....そして.... ラングシェ...名か?地名か?)


しかし町は何とということもあり、誰も反応を示そうとしない、しばししては、来るから、としても、何と示せない。


 かれこれと反応を見ては、その人、壮年の紳士の顔をする、騎士セオリクは、誰にも応じられず現実にをつく。


 そして手を胸に当ててはこう叫んだ。


 「聞かぬふりをしても、真実は変わらない。」


 するに、一つの影が群衆を割って騎士の男の下に近づく。


ガルシドュースであった。


 セオリクは振り返り、槍を抱えては事を言う。


 「お主……剣を執る者か?」


 無言。

 だが、男──ガルシドュースはただ、無言


 それだけで、馬上で揺れる騎士はそれに相対するかのように、その瞳にはなんの揺るぎもなかった。。


 「……ふ、ふはは!ようやく現れたか……彼の地にて蔓延るあの邪悪なる軍勢に気づく勇者がついに。」


 だがその刹那、突如として広場に吹き抜ける冷風。


 風が吹き、鐘塔の鐘の音が揺れる。

 騎士が立ち上がり、叫ぶように言った。


 「おお、天よ見よ!いま再び、剣は掲げられた!

 ならば我が命、明日の暁まで捧げようぞ!」


 やがて、群衆の中に立つ詩人リドゥが言う。


「騎士殿──魔女など、影すらおりませんよ。

 あれは農民の迷信、旅人の虚構。真実であったとしも、誰も信じてくれません。信じたくもありませんからです。

彼ら彼すれば、より暖を取れる暖炉とより芳醇な葡萄酒を飲める夜こそが求めです、幻想は火に焚べては捨てられます。」


「……たとえそれが、危険が迫っている仮初のものであったとしてもか?」


「そうであれば――どちらが幻想だと言うのだ?」



 男は目を見開きながら言う。なぜ、なぜ、命の危機に面する可能があるかもしれない事を前にして、なお、なおもそれを幻想と信じられるのか。

そのこと自体が幻想ではないのか。

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