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《彼に激しい嵐を》 《おじいさん》
《彼に激しい嵐を》
彼に果てない小道を
足音に秘めた悲喜を受け入れよう、あるいは忘れさせよう
彼に濃い木陰と鳥のさえずりを
青い着に落ちるように
彼に江に面した高閣を
過ぎ去った影が川の流れにのって絶え間なく流れるように
彼に眠れない夜を
自分自身と語り合えるように
彼に激しい嵐を
ぐらつきながら涙に濡れた瞬間を収めさせよう
《おじいさん》
毛筆はまるでもう一人のあなたで、
細やかな体に、白ひげの頭髪。
春の門聯も、葬式の門聯も、結婚の門聯も、招待状も書くあなたは、
近所の人々の形にならない祝福と悼みを定め、
会ったことのない人々のために招待と訪問をかたちにする。
春風も、細雨も、如意も、平安も書くあなたは、
清め、ならし、田字の格子に折った赤い紙の上で、
自分の運命を書く。
大雪が押し寄せる時、干からびたあなたの手は一本の枝のようだ。
もう書かない。あなたは墨によって次第に書き終わらされ、
白い色は黒い骨を持っている。