4/5
《故郷》 《サックスを吹く女性》
《故郷》
夜が深くなり、私だけと星だけが
眠れずに、窓は半開き
寒さを恐れる風が木の上を駆け巡り
叫びは別の風に追いやられ、過去のような遠方へ
信江は静かに、さらに遠く
あいまいな灯りの駅で
入線する列車が出発なのか帰途なのか、わからない
今夜のホームで、誰の涙が戻ってくるのか
誰が去る際に軽く手放したのか
川の祝福を
故郷は、一段のレールの上で遠く近くと
《サックスを吹く女性》
立ち尽くす葉片は、そらされた耳のよう
風は風を忘れ、雲は雲を止めた
陽光が江面を守り、楽譜は長い流れ水
音色の外で私は彼女を見ている
キーを叩く指から、青い精霊たちが飛び出す
ネイルアートを施したその主は、なじみのある面影
注釈や特別な説明がなければ
市場で値切りをした後、あわてて立ち去る背中は
双子の姉妹のようだ
これらすべてが、私をずっと考えさせる
彼女たちがサックスを愛するのは、まるでサックス自身のよう
多彩な生活を手にしたなら、自らを大きな音で奏でるのだろう