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第3章 アイの過去

第3章 アイの過去


    1


 10年くらい前になるかしら、わたしがOLだったころ、わたし、出社途中で誘拐されたの。わたしは、後ろから羽交い締めにされ・・・おそらく睡眠薬のようなものをかがされ・・・気が付いたときは、いままで知らない、ある部屋の中にいたわ。

 そこは、バス、トイレ、水道もあり、一日三回、誘拐犯人とおもわれる人物が、ドアの郵便受けから、食べるものを差し入れしてくれた。ただ、窓もドアも外から鍵がかかっていて、まるで独房のような状況だった。いくら叫んでも、外から助けはこなかった。時計があり電気がずっとついていたので、わたしは時計をみながら夜になると電気を消し昼になると明るくして日を数えたわ。

 部屋の中には、テレビ、ラジオ、パソコンなどはなかった。ただ一冊の本だけが置いてあった。やることのないわたしは、やがて、その本を少しずつ読み始めたの。

 正直にいいましょう。その本は、わたしに強い印象を与えた。わたしは、序々に自分が監禁されている状況であることを忘れ、夢中で読みふけったわ。時々、決まった時間に郵便受けから差し入れられる食事をとるのが遅れてしまうくらいに。

 わたしは、二週間かけて、この本を読み終えた。わからないところがあると、また戻って読み返したりしていたので、時間は十分あったにもかかわらず、このくらいかかったの。そのおかげで、わたしは、その本のことをだいたい理解できたと思う。

 不思議なことに、わたしがその本を読み終えた頃から食事の差し入れが急に途絶えてしまったの。何食か食べずにいたあと、わたしは空腹に絶えかねて、開くはずがないと思っていたドアのノブをひねると・・・ドアは簡単に開き、わたしは外に出ることができた。もしかしたら、そのときよりもう少し前に、既にドアの外に出られた可能性はあるわ。気が付かなかったけど・・・。いずれにせよ、特に本の後半部分を呼んでいた頃のわたしは、鍵が開いていたとしても外に出ようとする気がおきないくらい、本に夢中になっていたわ。

 わたしは、犯人の声も顔も知らないし、この本を書いた著者がその犯人であるのかも知らない。でもわたしにとって、そんなことは、もうどうでもいい問題となってしまったの。

 それよりも、自分に強い感銘を与えたこの本を世の中に送り出すことが、もっと大事だとおもったのよ。なぜわたしが選ばれたのか?それはわからない。でも、わたしは選ばれたことに感謝しているわ。

 その本の題名は「資本の修辞学」。

 私が書いたことになっているけれど、実は著者不詳、という種あかし。

 その本には、様々なこと、が書かれていたわ。ここでは特に今の社会の特徴を見事に言いあてている個所を少しだけ紹介しましょう。

 現代の「資本主義」社会の特徴として、死んだものが生き返る「幽霊」よりも、まだ生まれていないのに既に存在する「未来からの訪問者」のほうが、断然に多く、現実生活まで強い影響を与えている、という点があげられる。そのことに、みなさんは、気づいているでしょうか?それを、普通だと思っていないでしょうか?

 過去は存在する(した)が、未来は存在しない。

 存在しないものには、「向かう」ことしかできない。

 つまり、「過去からの訪問」はありえるが、「未来からの訪問」はありえない。

さらに、「過去からの訪問者」は「幽霊」だが、「未来からの訪問者」はありえないということになる。

 だが、現代社会では「未来からの訪問者」がありえないどころか、むしろ無数に存在している、という、特別な現象が起こっているのです。

 だとすれば、ここでもう一歩飛躍して言うなら、幻覚や妄想や世間の噂も、「存在しない」未来のようなものではなく、実際に存在しても、まったくおかしくないといえるのが、この奇妙な現代社会なのです。

「奇妙でない」のは、それが、個人の欲望に裏打ちされているからかもしれません。

とにかく皆さんも、わたしのように、この本を読んで勉強しましょう!必ず、道がみえてくるはずです!それは、わたしが身を持って経験済みのことです!


    2


 マコトの、中学2年生になる息子の圭治が、めずらしく自分から塾に行きたいと言いだした。親として、反対する理由はない。

 マコトはその塾のホームページを検索してみた。

 塾は、「クレヨン・コーポレーション」という会社が経営し、今、全国にその数をふやしつつあった。 代表は、アイと名乗る、やや顔色の悪く栄養不良にもみえなくはない細身の女性。年齢不詳だが、30歳台半ばくらいの年だろうか?

 彼女はもともと高校教師だったのだが、高校教師から塾経営へと転職。その後、派遣会社や、人材養成セミナー、化粧品・健康食品販売から、バイオビジネスまで、多種多様の仕事をてがけ、現在、クレヨン・コーポレーション社長。さらには、彼女の成功の秘密、全国展開をにらんだ今後の展望について紹介されていた。

 確かに、凄腕のようだ。

 またYou Tubeには、講演のビデオをいくつかアップされていた。そのひとつが、さきにのべたような「資本の修辞学」という彼女の著作の宣伝だった。

また、こんなエピソードを語ったビデオもあった。


 それは日常的に家庭で体罰を受けているある男の子の話だった。

 その父親は「しつけ」と言って子どもを怒鳴ったり、たたいたりしていた。ご飯中にごはんをこぼしたり、宿題ができなかったりするとたたく。子どもは、父親に怒られないように気をつかって、ビクビクしながら過ごしていた。

 それは度がすぎていた。日常的な体罰は、しつけの範囲を超えている。その父親の場合も「しつけ」のつもりだったと弁解するだろうが、それは、「しつけ」の範囲を超えているものだった。

体罰というのは、子どもが間違いや失敗をしたら痛みを与えて教え込むというものなのだが、これは動物を「調教する」のと同じ発想だ。こうした発想は、子どもを「人格のある一人の人間」として見ていないと言えるだろう。体罰は子どもの身体のみならず、心に痛みを与え、傷を負わせるという点で、人権侵害だ。

 体罰が「しつけ」として教育的効果を発揮することはなく、むしろ健全な心身の成長発達に悪影響が大きいので、体罰によらないしつけをすべきと考えられている。

これは、友人による「いじめ」でも全く同じだ。いじめる友人が、個人にせよ集団にせよ、「いじめ」は相手を「人格のある一人の人間」として見ていない。「いじめ」は子どもの身体のみならず、心に痛みを与え、傷を負わせるという点で、人権侵害だ。「いじめ」は健全な心身の成長発達に悪影響が大きいと考えられている。

 さて、夫婦の間で子育てに関しての方針が合わない場合、きちんと話し合うことが大切といわれている。それでも父親が体罰を止めようとしない場合、母親は、児童相談所や市区町村の虐待相談窓口(子ども家庭支援センターなど)に相談してみるとか、別居・離婚という選択肢も考えなければならない、とされている。だが、実際、そのような行動を母親がおこすことは必ずしも多くはない。

 父親も母親も行動を起こさなかったこの子供は、かわりに自分で、家出という行動を起こした。その受け皿となったのが、アイの家でありアイの塾だった。この子供は、アイの家で安心した生活をおくりはじめたのだった。


 それは、倫理的な、子供に対する思いやりに裏打ちされた、筋のとおったやり方であり、これこそがクレヨン・コーポレーションの理念だ、という宣伝だった。

 だが、そのビデオをみたとき、軽々と常識を超えて行くそのやり方に、マコトは一種の恐ろしさのようなものも感じたのは確かだった。

 

    3


 勉強嫌いの圭治が、自ら塾に行きたい、と言いだすには、何か他の理由があるに違いないと、最初から容易に想像できた。好きな女の子が通っているから、とまではいかなくても、友達に会いにいくのだろう。夜の10時まで、堂々と、家の外に居られるというのは、他のことではありえない。そして、塾の帰り、車で迎えに言った母親とコンビニに寄り、何か買ってもらうのも楽しみなのだろう。

 だが、塾通いをはじめてしばらくすると、息子の圭司は、黙ってマコトの家を出て、アイの家に泊まり込んで暮らすようになったのだった。

「家にいるより、父親や母親と暮らすよりも、アイ先生と一緒がいい」

 そう圭司は、マコトに言った。

 マコトは、家に戻るよう、圭司と話あい、説得した。

 そして話し合いの中で、マコトは、驚くべき事実を知った。

 アイの家に、塾の子供が泊まることは、しばしば行われていたが、その中には、「子供の人権を守るため」というような人情話ですまないケースも混じっていた、ということ。

その中のひとつが、圭司の宿泊だった。

 圭司は、アイの愛人になりたかったのだった。

 ただ、息子の圭治にいわせれば、自分のケースは、はじめてのことではなく、今の塾の人気講師「ヒデオ先生」の頃からあったことなのだという。

 それらのほうが「すこしやばい」、と圭司はマコトに言ったが、そのことばどおりマコトは聞いた時にぞっとした。


 ヒデオは、学校も家も嫌いだった。塾は、それとの比較で、嫌いではなかった。アイのことは、気になる存在だったようで、喜んでアイの家に泊まりに行った。

 そこで、自分の父親と、ひそかにあこがれていたアイが、愛人関係にあり、自分の外泊が「誘拐」という口実で、父親からアイに1000万円の「愛人への援助金」がわたった、と知ったヒデオはショックを受けた。

 父親も、アイも汚れている、と。

 その後、ヒデオは、塾をやめ、家もでた。だが、結局、最終的に彼が向かったのは、アイの家だった。そして、アイと暮らしはじめた。

 アイの目ににらまれると、ヒデオは考えることが停止してしまうのだった。

 父親が、アイの家に、アイに会いに来ると、アイは、彼を追い返した。そして、かわりに、ヒデオを裸にした。陰毛はようやくはじめたばかり。そして、勃起はするが、まだ精液を放出したことないペニスを、アイは指でつまんだ。当時、まだ夢精も経験してなかったヒデオは、挿入など想像だにできなかった。 

 ヒデオが、はじめて、ペニスから精液を放出したとき、アイはヒデオに言った。

「お父さんのに、似ているわね」

 アイの狼のような眼に射すくめられて、何も言えないヒデオにアイは言った。

「かわいそうな子。おまえだけは、苦しみがなるべく遅く来ますように」

そして、アイはつぶやくように独り言を言ったという。

人生の多くは悲しい、少しだけ幸せな日常を、長い間過ごしている間に、その悲しみや困窮が、わたしたちの肉体と精神と知性をゆがめ、こわばらせてしまう。

 でも、わたしたちの両親も、そのまた親も同じ苦しみを味わって来たし、わたしたちの子供たち、その子供たちも同じ苦しみをうけるだろう。そして、その時々の時代で、身を守るすべを少しでもみつけられなかった者たちは、もっと、貧しく、過酷な労働、生活を課されるだろう。

 まだ、そうなっていない、あなたをみるだけで、わたしがどれだけ、癒されることか。

 最初は、二人は抱き合うだけだった。それで十分な、秘密の共有だった。ヒデオは、「ヒデオのことが好き」と言ったことのある、同級生の絵美のことを、少しだけ思い出したが、彼女の気持ちを推し量るような心の時間など、ゆっくりとれるはずもなかった。


 その後、中学卒業後、ヒデオは、高校へいかず、アイの塾で、勉強を積み、大検にうかり、大学の医学部へと進んだ。彼の独学の苦労は、後のクレヨン・コーポレーションの学習塾のノウハウのひとつとなった。ヒデオは、大学生のときから、塾の名物講師の一人として働いた。

 中学校でいじめにあって不登校になっても、なんとか辻褄あわせで中学校の卒業はできる。義務教育だからであろう。しかし、高校の場合はそうはいかない。公立高校でも、3カ月の欠席が続くと、留年、そして退学の措置は容赦なくとられる。

 その際、すぐに働く者もいれば、大検を受けて、大学入学の資格をとり、大学受験をおこなう選択を行う者もいる。それは、昔も今もかわらない。そして、このコースについて、適切な教育プログラムを、クレヨン・コーポレーションは提供することができたのであった。

 成長の過程で、ヒデオは、アイの「眼力」を身に付けた。アイの「人たらし」あるいは「男たらし」の能力は、アイに「鍛えられた」ヒデオへと受け継がれた。

 そう、ヒデオは最初すべてを否定した。学校も両親も社会も。そして、その後、すべてを肯定することで、「伝説のナンパ師」となった。

「なぜ、太陽が朝のぼるかわかるかい?」

「知らないわよ。あなたが教えてよ」

「ああ、知っているとも。ぼくらが恋をしているからさ」

 前の恋人、後の恋人。好みは自由自在。ステーキは、レアが好きでも、たちまちウエルダン好きに変わる。王様が変われば、世の中も変わるのが普通のことさ。

 そこでのヒデオのセックスは、思い出をつづる言葉の修飾語のようだった。女性の肉体を、彼は、冬の寒い部屋で暖炉の暖かさに触れるかのように抱いた。そこでの女性の体は、パチパチ燃える薪のようだった。あたかも暖炉のようにヒデオに扱われたら、女性も嫌な気持ちにはなるはずもなかった。

 それこそが、ヒデオの「伝説のナンパ師」の力のひとつであった。


    4


 アイの経営する塾、あるいはクレヨン・コーポレーションは、常に、ポジィテイブメッセージを発信し続けた。ただ、かつての時代のように、そのメンバーが団結して、なにかひとつの行動を起こすことはなかった。

 かつての理想は、人の集団が協力しあい、埃と泥と血と汗にまみれて勝ち取る解放区だった。だが、クレヨン・コーポレーションでの理想は、各個人が、砂漠と孤独と不眠と不安と闘って得る解放区なのだった。

 それは、例えば、圭治が、塾の友人と、教師のアイらを伴って、BBQをしたり、旅行にでかけたりすることだった。マコトは、息子の圭治がそれに参加することについて反対することはなかった。それは、今の時代の、彼らなりの解放されるための行動なのだから。

 どんな時代であれ、重要なのは、そこに集ってくる人たちがいるかどうか?ということだ。それに変わりはない。

 なので、マコトは、息子の圭治がいうところの「すこしやばい」ケースについて、真相を知っても、アイの活動を頭から否定する気にはなれなかった。アイの活動は、一定の意義があると思ったからだった。社会に対抗して、理想郷をつくろうとすれば、そこにはある程度のひずみが生じても仕方がない。それが、履歴書にない人生がある、ということだ。

 だが、残念ながら、組織が大きくなり、経済力をもち、新たな技術を手に入れたクレヨン・コーポレーションは、いわゆる「越えてはならない一線」を越えてしまったようだった。


 だが、これらはすべて、マコトの言いわけだったかもしれない。

 単に、マコト自身もまた、アイに夢中になっていっただけのことなのかもしれない。  

 やがてマコトは、単に、アイのもとに集まる人に対して嫉妬しはじめていた。

信奉者に対して。

 アイのひきとった、引き取り手のいない可哀そうな子供たちに対して。

 アイの家に泊まる塾の子供たちに対して。

 マコトだけではない、「身代金」という口実をつくって、アイに対してお金を貢ぐ男たちに対して。

 父親よりアイのいうことを聞く、息子の圭司に対して。

 そして、「伝説の」塾講師のヒデオに対して。


 どうして、アイは、おれ以外の多くの人に愛を与えるのか?

 どうして、アイは、おれが愛する者を、奪っていくのか?

 どうして、アイは、おれだけのものではないのだ?


    5


 そして、マコトは、アイに会いに行った。そして息子の圭司から聞いた話が本当なのか確かめようとしたのだった。

 マコトは、アイに「身代金」を何も言わずはらってもかまわないとおもいつめていた。それで、アイが自分の息子の圭司に近寄らないと約束してくれるなら。

「身代金」かわりに、貢いだ生徒の親が複数いることはわかった。皆、アイは自分だけをみている、と勘違いして、あるいは「騙されて」、アイに大金を貢いだのだ。

ア イにとって、圭司やマコトもそんな中の一人にすぎないのではないか?

 息子の圭司から聞いた、今の塾講師のヒデオの過去の前例と同じような運命が、息子の圭司にもこれから待ち受けているのではないか?


 それに対して、アイはマコトにこう答えた。

「わたしが、塾の先生をしていて、塾に通ってくるものたちが偏差値の高い大学に行ったとか、成績があがったとかは、二の次なの。わたしの一番の喜びは、生徒たちが、とにかく喜んで自分の塾に通ってくるということ。生徒たちは、家庭や学校に背をむけて、非行に走るようにわたしの塾に来るのよ。それは、わたしが、彼らにかけた魔法の力のおかげなの。でも、わたしは別に悪いことをしているわけではないわ」

「人の心をもてあそぶことが悪いことではないというのかい?」

とマコトは問うた。

「でも、勉強のできる子供たちは、みんな、わたしでなければ他の人たちにもてあそばれているじゃあないの。親とか先生とかマスコミとかに」

「それは少し違うと思う」

「そうかもね。でも、わたしは、自分のやっていることを自覚してやっているところが彼らとは違うの。わたしにとって、生徒たちが自分のところに通ってくるということは、わたしの社会に対する復讐なの。外からみれば、暖かい家庭だったり立派な教師がいるすばらしい学校だったり。でも、その中にいたわたしはずっと不幸だったのよ。いじめにもあった。でも絶望もわたしの心の中の子供の心を殺すまでは至らなかった。わたしはがんばった。塾の経営、そして会社の経営に成功し、富と名声を得、そして心地よいこの世界をつくったのよ」

「ぼくらだって、この世界を必ずしも心地よいとはけっして思っていない」

「わたしの社会に対する復讐は、自分をこんな風におとしめた人たちの子供が自分のところに来るということで達成されるの。社会的に『立派』といわれる家庭の子供たちが、魔法の力で自分の塾にきて自分と関係をもつ。それは、子供たちが彼らを否定し、彼らを捨てわたしを選んだということなの。わたしは、彼らから彼らの大切な子供たちを奪う。子供たちが、彼らでなくわたしを信頼するということが、奪ったということよ。彼らは子供の信頼という大切なものを失い、わたしがそれを手に入れるの。彼らが知ったら、最もさげすみ、認めたくないと思うだろうわたしを、彼らは選んだの。

それが、わたしにとっての、復讐という名のおいしい料理よ」

「復讐?言っていることがよくわからない」

「わたしは、自分の考えていることを説明するのに、小さなクレヨンの話をよくするからそれを紹介するわ。その小さなクレヨンは、相手のために色を塗ってあげるのが仕事なの。どんどん塗っているうちにクレヨンが、だんだん『短く』なっていき、最後はなくなって星になって一生を終える。このクレヨンの一生は、すばらしい。でも、そのクレヨンの色は何色でしょう?それは、本当に相手が、自分はその色に塗ってほしいと思うような色ですか?どんなクレヨンの色でもいいのですか?だから、わたしが色を塗りましょう。

 あなた、わたしがなぜ、こんなクレヨンの話しをするかわかる?これは、いじめ、両親の離婚、といった問題をかかえる子供たちへのメッセージなのよ。あなたたちはひとりじゃないということ。あなたたちのまわりには、このクレヨンの話のように多くの人がついていること。そして、自分は、大きな宇宙の中で、なんと小さなことにくよくよしているんだと感じてほしい、というメッセージがこめられたお話なの」

 マコトはそれに対して言った。

「それは大切なメッセージかもしれない。でもぼくの心にはそのメッセージは響かない。そういうのって、貧乏人にむかって、もっとお金をたくさんもてば貧乏でなくなるよ、というのと同じことではないかい?

 ぼくなら、クレヨンのように耐えることではなくて、闘うことを伝えたい。内面の反省ではなく、周囲の状況をかえること。どんなものも、変わらないものはないと知ること。状況はかわらない、とあきらめることをしない。全部が違うかもしれない。そして、全部変わることは実際に有りうるのだ、と」

 

 長い話のあと、アイは一息いれた。

「マコトさん。せっかくおみえになったのですから、食事も一緒にしませんか?」

「いえ、そんなつもりは」

「そう、たいしたものではありません。メニューはカレーライスです。カレーライスはお嫌いですか?」

「いえ」

「もし、お時間があるなら、是非食べていってください。それは、昔わたしの生徒だったタイチという方が、レシピを考えたものです。今は死んでしまっていないママが、昔つくってくれた、思い出のカレーライスなんですって。でも、とにかくおいしいの。是非、食べていかれて」

「はあ」

「もちろん、秘密はスパイスにあるわ。でも、他に、玉ねぎは形が消えるまでしっかり煮込むこと。そして、ジャガイモは、電子レンジで火を通したあと、少しだけしか煮込まない。それもおいしさの秘訣さよ」

 カレーライスを食べながら、アイはそのカレーライスにまつわる物語を語りはじめた。


    6


 彼は、三十一歳の時にいままで勤めていた会社を辞めた。

 同僚や上司の姿をみるにつけ、このまま勤めていても、彼の期待するような人生の変化は望めないと思ったからだった。たとえ、彼自身が、自分の期待が何かとは具体的にこたえられないにしても。

 ただし、彼は無計画に会社を辞めたわけではなかった。

 退社前の五年間、仕事が終わると、料理学校で料理の腕を磨いた。退社後は、今まで貯金したお金で世界中を旅行して、各国の料理を食べ、調理法の研究をした。

 彼が、魔法のカレーライスの作り方を魔法使いに教わったのは、この修業中だった。

 そしてついに、彼は自分の店をかまえることになった。

 それは、彼にとって新しい生活だった。朝早く起きて電車で出勤する代わりに、夕方に起きて自転車で店に向かった。途中、材料の買い出しをして、夜八時から店を開いた。

 店が混み始めるのは、真夜中すぎからだった。

 お酒と簡単な食事。そして、特別メニューは、食べた人が幸福になるという謳い文句のカレーライスだ。

 店は夜通し営業し、朝の六時に閉めた。

 二つの変化が彼の生活に起こった。

 一つは、料理の味がよく分かるようにと煙草を吸わなくなったこと。

 もう一つは、今の生活が変わればいいと思うかわりに、今の生活がいつまでも続くようにと願うようになったことであった。

 魔法のカレーライスは人気の的になった。

 食べたことのあるカレーの話は、おいしいが、食べたことのないカレーの話は、おいしく感じられない、しかし、食べたことがないから食べたいという人だっている。おいしさは、結局、食べてみなければわからない。

 実際、このカレーライスは、おいしいだけでなく、ある効果があるということで、評判になった。

 食べた後、不思議な力がわいてきて、困難な仕事や複雑な人間関係が、魔法を使ったかのように解決するのであった。

 食べた者達の目は、自分達の周囲の状況だけにとどまらず、自分達の外にある状況・・・社会全体にも向かっていった。個人を取り囲んでいる社会の問題を解決していかない限り、個人の問題は解決しても、際限なく現れてくるというのは、ある意味で当然のことである。

 沢山の人が、彼の魔法のカレーライスを食べて、力を得て、不幸を克服していった。その数が増えていくにつれて、その力を社会全体の改革に使おうとする流れが自然にでき、徐々に大きくなっていった。

 彼自身は、そういう自分のカレーライスがもたらしている影響に気付かず、毎晩、喜んで食べてくれる客に、カレーライスを出し続けた。この生活に満足し、生き甲斐を感じていた。

 しかし、人は、ことがおこってから初めて後悔し始める。

 彼の幸福のカレーライスがもたらした力で、人々は社会の革命を引き起こした。すべての不幸がこの地上から消え去るために。

 革命の混乱は大きくなり、彼の店の営業も難しくなってきた。

 彼は、革命などどうでもよかった。彼にとって大事なのは、ずっと今の店と生活が続いていくことだったのである。

 閉店の日、彼は自分の幸福が壊れてしまったと感じた。一人、店の中で、自分のつくった「人を幸福にする魔法のカレーライス」を食べた。せっかくの味が、涙で塩辛くなって、変わってしまっていた。


 注意していたつもりだったが、アイの話を聞きながら、カレーライスを食べているうちに、マコトは強い睡魔に襲われてきた。

 どうやら、アイのところで出されたこのカレーライスには、ある毒物が混入されていたようだった。

なんて、ぼくは無防備だったんだろう。

 お人よしすぎる。

 アイのところに泊まって、アイに「洗脳」されていった、子供たちと、まるで同じではないか。

意識を失いつつあるマコトの耳に、アイの声が響いた。

「あなたの詮索好きには困ったものだわ。いろいろなことを知りすぎたようね。でも、わたし、あなたのそういう好奇心旺盛なところ、とても感心もしているの。だから、わたしの世界に招待してあげるわ」


     7


 夢の中なのか?

 マコトは、車をひとり運転していた。


 いつの日からか、出勤前、町の中央を流れる川べりに車をとめ、土手をおりその川のほとりでタバコを一服するというのがマコトの日課になっていた。

歩いたり自転車にのったりして出勤するサラリーマンや、通学途中の学生たちが多く川沿いを通るが、いったいどれだけの者が自分の行動に注意をはらっているのかはわからない。

水面には、川の向かい側にたつ、比較的大きな建物が映っている。そして川に映ったその建物の下を、ゆうゆうと大きな黒い鯉が泳いでいる。

「タバコは、棺おけの蓋をとめる釘だ、って、誰か言っていたっけ」

 高校を卒業してから、故郷をはなれ、あちこちを転々としたあとついに落ち着いたのがこの町だ。働き、結婚し、子供を育てる。ようやくつかんだ平和といえるかもしれない。

 しかし、最近、自分の子供が大きくなるにつれ、あるいは、職場にずいぶん若い子がはいってくるようになるにつれ、故郷を思い出す機会が増えてきた気がする。望郷ということばとは違う。淋しさではなく、今まで忘れていたものを少しずつ思い出すことが自分の生活が豊かにしていく気がする。

 その朝は、上流で雨がふらない日が続いていた上に風がまったくなく、川の水面がとてもきれいだった。川に映るいつもの建物は、鏡に映っているかのようだった。目の前を一匹の鯉が悠々と通過したとき、マコトは、自分が川に映る世界にひきこまれるような錯覚をおぼえた。


 気がつくと、マコトは、座ってタバコを吸っていた川べりを離れ車で走っていた。車の窓ごしにふりそそぐ太陽の光は、いつもにましてマコトを優しくつつみこんだ。

なんだろう、この解放感は?

 妻も、大学生の娘と高校卒業が近い息子も、もう自分なしで十分やっていけるだろう。これからの生活費も、年金といままでの貯金でなんとかなりそうだ。今までの努力で得た報酬だ。かたわらの、忙しそうな人たちに、少し優越感をだきながら、街を車で横切っていく。人の顔や、街の建物がいつもと違って見える。そこにすべての可能性を感じるのは若い人たちと同じである。一生かかってもまわりきれない、まだ見ぬ、いろいろな場所や人。

 若さは失ったが、そのかわり金と経験を得た。幸い、病によってなんらかのハンディキャップがあるわけではない。「家庭」というハンデイは、みずから背負ったものだし、それを捨てることに対する罪悪感はない。むしろ、そのハンデイは、損得がひっくりかえるジョーカーのような存在になるかもしれないと夢想するのは都合のよすぎる妄想か?

 旅するなら、若いころ一時すごしたように、海外もいい。海外なら、普通のなんでもない一挙一動がすべて新鮮だ。切符を買ったり、スーパーで買いものをしたり、喫茶店にはいったり、公園を散歩したり、普通のことをしてもみな新しい。

「しかし、いったいどこまで車を走らせてきたのだろう?」

 いつのまにか、車は、マコトの知らない風景の中を走っていた。カーナビをつける。

「チエッ。故障か。まあそれならそれでいいか」


 だが、故障ではなく、そこはカーナビの効かない街だった。


    8


 マコトは、特に目的もなく、車を走らせていた。あいかわらず、カーナビは使えない。

 むこうにトンネルの入り口がみえた。そのトンネルにはいる手前の道の脇に、ひとりの女性が立って手を振っていたのでマコトは車をとめた。

 髪の毛は短く、ふっくらとしたおかめ顔で、少し肩がいかっている。目や眉は太く、どこか仏像を思わせる個性的な顔ではある。年は30歳から40歳といったところか。

「こんにちは」

「いったいこんなところでどうしたのかい?」

「はじめまして。わたし、アイっていうの。よろしくね」

そのアイは、マコトの知るアイと同じ顔をしていたが、マコトに「はじめまして」といったことに、マコトは少しとまどった。

 彼女をトンネルの入り口で乗せたと思ったら、彼女はすぐに、トンネルの真ん中くらいで車を止めるように言った。そこで乗りこんできたのは、軍服姿の男だった。続いて、トンネルから出る手前で、もう一人。やせた、ぶかぶかのTーシャツをきた、少し暗い感じの男。二人は後部座席に座った。マコトの横の助手席には、アイと名乗った女性が座っている。

 トンネルをぬけた後、アイが言った。

「みちなりにあと30分くらいで目的地よ」

「目的地?いったいなんてとこだい?カーナビが動かないから見つかるか自信がないよ」

「山が深いからしかたがないのよ。私が行き方を知っているから、心配なく」

 奇妙なとりあわせの4人だった。

「その、変わった迷彩服。にいちゃんは、自衛隊かね?」

 うしろにいる一人、Tーシャツの男が、となりの軍服姿の男に話しかけた。

「自衛隊?それって、なんだ?」

「自衛隊っていえば、災害のときに、どこからともなく現れ、いろいろ援助をしてくれる、あれさ。今はイラクにも行っているけど」

「イラク?イラクってたしか中東だよね。日本軍は、今、そんなところまでいっているのか?」

アイが言った。

「日本軍と自衛隊はちがうのよ。日本軍は、アメリカにまけたの。自衛隊は、日本がアメリカ軍にゆるされた警察みたいなもの」

「日本がアメリカにまけた?」

「そんなこともおまえ知らなかったのかよ」

とTーシャツの男が馬鹿にしたように言った。

「そうか、やっぱり負けたんだ。でもすぐには、信じられなくてね」

「もう80年くらいたつのよ」

と、アイが言った。

 マコトは、後ろの席の二人をバックミラー越しに観察した。軍服姿の男も、Tーシャツの男も、まだ若い。20歳くらいだろうか?

「アイさんがいうんだから嘘じゃあないんだろう。でも、こんな、お国のためでなく、自分のために死んだやつの言うことを誰が信用できるか」

「君たちのころと今では時代が違うんだ」

「違うだろうが、あんたらが選ぶ自殺の方法は、昔ながらのものばかりさ。車の中で練炭をもやしたり、排気ガスをホースにつなげて窓から車内にひきこんだり」

「当時は、車なんてなかったろう?」

「うるさい。あと、わすれちゃいけないのは、樹海だな。あそこは、あいかわらず君たちの仲間内では、『聖地』のようだな」

「野球少年にとっての『甲子園』、ミュージシャンにとっての『武道館』みたいなものね」

「でも戦争の時は、インターネットはなかったろう?」

「なくたって、そういう自殺願望のある連中は、自然に友達になっていったさ。うわさ話で、あいつがやった、うまくいった、失敗した、とか。そういうのは昔からあったぜ。たまたま、今は、インターネットという道具を利用しているだけだろう?」

「そうね。インターネットのせいで、自殺が増えたというのは、たぶん間違っているわね」

マコトがおもわず口をはさんだ。

「お兄さんたち、ふたりとも、死んだことあるの?」

突然の、マコトの質問に、マコトをのぞく3人は大笑いした。

その笑い声を聞くと、マコトは、前をむいてひたすらブレーキとハンドル操作に専念するしかなかった。ちょうど道もカーブが多い山道にさしかかったころという関係もあったが。

「彼はなかなか、察しがいい」

「お前も、彼くらい察しがよければ、死なずにすんだのにな」

「お国のため、という大義名分があれば、いくらでもいいわけができるよな。おまえらはずるいよ」

「俺は死にたくて死んだわけじゃあない」

「俺だってそうだ」

「なに言っているんだ。自分で死を選んだくせに」

「後悔しているんだ。こんなはずじゃあなかったって。そりゃあ、実行する前はやる気まんまんだったさ。でも、意識がうすれていく中、やっぱりやめよう、車からでよう、と思ったんだ。でも、もうそのときは手足が動かなくて、もうあともどりできなかったんだ」

「それで、未練たらしく、死んでからもこうやってこの辺をうろついているのか」

「運転手さん、大丈夫?顔色わるいけど」

と、心配そうにアイがマコトたずねた。

「大丈夫です」

「もうすぐ、目的地だから。あと、この人たちのいうこと、真にうけないでいいからね。ほんの冗談。ごっこ遊びなんだから」

(ごっこ遊びにしても、もっと性質のいいものにして欲しいものだ)

と、マコトは思った。

「ここよ。ここをまがって」

 ちいさなわき道にはいるよう、アイが合図し、マコトはそこにはいってしばらく走って車をとめた。3人は車をおりた。

 マコトは折れてきた道をもどり、メイン道路に戻った。だが、1kmほど、走ったあと、マコトはUターンして、また道をもどりはじめた。どうしても、降りた3人が気になったのである。ところが、いくら探しても、さっき3人を降ろすためにまがったわき道がないのである。マコトは何回も、わき道があっただろう場所を往復した。しかし、みつからない。

そうしているうちに、マコトは、今度は、タイチとリコとシュンに出くわしたのだった。

 マコトは、車を降りると、タイチたち3人から彼らの不思議な話を聞いた。3人の、話を要約するとこんな風だった。

 彼らにいわせれば、この世界は、アイという女性のつくりだした、幻想の世界、あるいは現実の影の世界だという。タイチは、幻想を産み出したり消したりすることのできる『魔法』が使えるが、この世界ではそれができないという。

 3人は、シュンの『魔法使いからの連絡本』に書かれる情報を待ちながら、この街を探検するつもりだという。普通、頭の中の風景は、イメージで、現実の影にすぎないから、太陽がおちると影が消えるように消える。つまり時間の経過が現実をとりもどす。しかし、この世界の太陽は、決して沈むことのない『人工太陽』だ。太陽が沈まない、つまり時間がない。だから幻想がいつになっても消えないのだ、という。どうやって、ここからでることができるか、これから探っていかねばならないのだ、と。

「マコトおじさんが車にのせた、そのふたりの若者も、時間が止まったこの世界で死ねずにいるのかもしれないな」

とシュンは言った。

 3人のこういう話を、信じる、信じないはともかく、マコトは喜んで、この新しい3人を車にのせて、この街を探検しようと思った。少なくとも、さっき車に乗っていた不気味な人たちより、こんどの若者たちの方が何倍も感じがよかった。

「ただ探るといっても・・・なにか目的がないと・・・なにかこころあたりはあるのかい?」

というタイチに、シュンとリコが言った。

「大きな磁力をもつ巨大な岩があるとか、おおきなエネルギーをもつ火山があるとか。きっと、そういうエネルギーをつかってこの世界が成り立っている、という仮説はどうかい?」

「たとえば、その『人工太陽』をのぼらせる工場みたいなものが、この街のどこかにあるというものはどう?今の世界の前に見えていた、大きな溶鉱炉をイメージして。それに、わたしたちがみつけた壁画に記されていた物語の中で、沈まない太陽を動かしているといわれていた工場の電源を切るという話がでてきたじゃない?」

「じつは、それは、『ミュー』をはじめとする魔法使いたちの間でも有力な仮説のひとつだ。リコさんたちがその壁画をみつけたことは、単なる偶然じゃあないのではないか?と。

でも、この街がどれだけの広さがあるのかさえ、まだわからないんだ。その工場がどこにあるか探し当てるには、とりあえず、地図を作るように、あちこちまわってみないと」

「なんかつまらない旅行だな。宝さがしとか世界の危機を救うための冒険旅行だったら、楽しくてわくわくするんだろうけど。これは、自分たちの脱出する方法をさがす旅だろう?」

そういうタイチに、リコは、咎めるように言った。

「自分がこの世界で魔法が使えないからといって、いじけたようなことばかり言わないでよ。魔法が使えないときだからこそ、知恵をいっぱい使わないといけないんじゃない?」

「ぼくが、いじけている?そうかもしれない。今まで、自分が魔法を使えることを少しうっとうしく思ったりしていた。でも、失くしてみて、ぼくが間違っていたこと、ぼくにとって大切な能力だったということが、ようやくわかったよ」

「人生はいつもゼロからスタートできるわけじゃあないさ。マイナスからまずゼロにしなくちゃあいけないことはいくらでもある」

マコトは、よく心得ているといった口調でタイチをたしなめた。

「ぼくは、アイという女性が、やっていることのすべて間違っているとは思えないんだ。ただ、『薬』や、いわゆる『魔法』とでもいえるものをつかって、他人をあやつり人形のように支配することは、行き過ぎたことだと思うんだ」

 タイチは反論した。

「彼女にも良いところがあるというのかい?ぼくらを、こんな世界に閉じ込め出られなくした彼女に少しでも分があると?とんでもない」

 怒るタイチをシュンがたしなめた。

「議論しても、この状況はかわらないさ。まずは、この街が、アイという女性の幻想、現実の影であると気づくことが大事なんだと思う。たぶん、ほとんどの人たちは、そのことに気づきもしないでこの街で暮らしている。ある特別な感性をもった人だけが、アイという存在に気づく。まず気づくこと。それがすべてのはじまりなんだ」

シュンは言った。

「だから、マコトおじさんは、ぼくらの仲間になる資格が十分あるんだよ」


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